
安全という結論にも、比較相手と体の条件がある
観察研究9件をまとめた2018年の系統的レビューには、ヨガ実践者9129人と非実践者9903人が含まれた。授業中の有害事象の割合は22.7%、過去12か月の割合は4.6%、生涯の割合は21.3〜61.8%と、対象期間によって数値が異なる。重大な有害事象は1.9%と報告された。[4] 最も多かったのは筋骨格系の事象で、けがでは捻挫や筋・腱の損傷が中心だった。多くは軽く、一時的な事象だった。[4]
非実践者との比較で、転倒のオッズ比は0.90、転倒に伴うけがは1.04で、信頼区間はそれぞれ0.76〜1.08、0.83〜1.29だった。一方、膝の半月板のけがはオッズ比1.72、信頼区間1.23〜2.41と高かった。[4] 観察研究ではヨガを選んだ人の特徴も結果に関わる。著者は健康な人のヨガを控えさせる理由はないとしつつ、重い急性・慢性疾患のある人には医療への相談を勧めている。[4]
骨折リスクの高い人に絞ると、評価はさらに慎重になる。50歳以上の男性と閉経後の女性を対象にした系統的レビューは9研究をまとめ、根拠の確実性は全体に非常に低いと評価した。無作為化試験で健康関連の生活の質への効果はなく、他の健康指標の結果は混在するか、研究がなかった。直接関連する有害事象がなかった研究が5件ある一方、2件の症例集積で椎骨の骨折が報告され、過度な背骨の前屈が関係した可能性が示された。[9]
転倒に関する大規模試験の結果も隠せない。地域で自立生活を送る60歳以上700人の試験では、平均年齢67歳で、アイアンガーヨガを基にした運動型ヨガと、座位のリラックスヨガを比較した。運動型には12か月にわたり週2回、1回1時間、計80回の指導付き授業が提供され、さらに週2日の自主練習が勧められた。対照は座位の呼吸・ストレッチのワークショップ2回で、各1時間だった。多くの授業はオンラインで行われた。[15]ヨガに関連する筋骨格系の有害事象は6人、重大な有害事象はなかったが、転倒は1人年あたり0.87回対0.64回で運動型が多く、発生率比は1.33、信頼区間は1.01〜1.75だった。[15]
この試験では運動型で計画的な身体活動やバランスへの自信などが改善した一方、研究者は現行の形を転倒予防に勧めないと結論した。[15] 「授業に関連する重大なけががなかった」と「追跡中の転倒が減った」は別の結果である。転倒の詳しい効果は特集の転倒の記事に譲るが、安全性を考える本稿でも、教室の中だけで完結しない評価として押さえておく。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
持病と当日の調子を伝えることが、内容を合わせる入口になる
日本の教室調査では参加者の53.5%に慢性疾患があり、42.3%は医療機関で薬を受けていた。有害事象のオッズは、慢性疾患がある人、当日の体調が悪い人、教室を身体的・精神的に負担と感じた人で有意に高かった。その後のヨガを妨げる重い事象は、70歳以上や慢性の筋骨格系疾患がある人で多かった。[2] 体調を伝えることは、遠慮の問題ではなく、研究が拾った条件を共有する行為である。
ここから実践に移すなら、「通院はあるが普段は困らない」という一言だけで済ませず、どんな病気で通っているか、どの動きで痛みが出るか、今日の調子が普段と違うかを伝える。病気の診断や薬の変更は教室で行う話ではなく、運動内容を相談するための情報である。研究でも病気のある人が医師と指導者とともに姿勢を調整することを勧めている。[10]
慢性疾患がある人の利益も調べられている。初めてヨガを始めた成人328人を、健康、不調がある、慢性疾患があるという群に分けて追った日本の研究では、教室は通常週1回、60〜90分だった。不調群と慢性疾患群では、初回後に緊張・不安や疲労の指標が低下し、活気の指標が上がった。3か月後にはストレスの指標が下がり、生活の質の指標が上がり、疲れやすさ、肩のこわばり、不眠などの主観的症状も軽減した。[20]
同じ研究で、不調群と慢性疾患群は健康群より有害事象が多く、症状の種類も広かった。しかし、授業中に練習をやめるほど重い事象ではなかった。参加者全体の約60%が教室への参加に大変満足していた。[20] 対照群を置いた無作為化試験ではなく、成人全般の調査である。成人全般について、不調の記録と利益の記録を両立させる姿勢が参考になる。
「症状を言うと参加させてもらえないかもしれない」と黙るより、何を目指し、どの負担は避けたいかを先に話すほうが、自分の目的を教室に持ち込める。利益の報告があるから症状を無視するのでも、症状の報告があるから利益を消すのでもない。身体の条件に合わせるという方針は、調整ヨガの試験や症例レビューに共通している。[5][10]

よくある誤解
「ゆっくり動くから、どんな姿勢でも安全」という思い込みは改めよう。症例報告と症例集積をまとめた2013年のレビューでは、76症例を調べ、頭立ち、肩立ち、蓮華座、強い呼吸法がよく挙げられていた。筋骨格系の事象が27件、神経系が14件、眼が9件あった。完全に回復したのは15例で、回復しなかった例と死亡例もそれぞれ1例ある。著者は初心者に頭立ちや蓮華座、強い呼吸法など極端な練習を避けるよう勧めた。[10] 動作の速さだけでなく、どの姿勢と呼吸法を選ぶかが関わる。
同レビューは、緑内障の人には逆転姿勢を、骨が弱くなっている人には強い負荷のヨガを避けるよう述べている。[10] 緑内障は目の病気として、骨の状態は姿勢選びの条件として、医師と指導者に相談する材料になる。個別の相談では、「この病気でこの動きをしてよいか」と、実際の内容を確認するのがよい。
「教室に行かず動画だけなら気楽で安全」という考えは、独学の調査と照らし合わせたい。ドイツのヨガ実践者1702人を対象にした横断調査では、平均年齢47.2歳で、21.4%が急性の有害作用、10.2%が慢性の有害作用を報告した。指導を受けない独学のみの実践は、急性、慢性いずれも高いリスクと関連し、手立ち、肩立ち、頭立ちは急性の事象に関連する姿勢として多かった。[12] 成人全般の調査として、見本をまねることと指導を受けることの違いを考える手がかりになる。
この調査では急性の有害作用を報告した364人に702件、慢性の有害作用を報告した173人に239件の事象があった。いずれも筋骨格系の不調が中心で、慢性疾患のある人は慢性の有害作用を報告するリスクも高かった。[12] 痛む場所や症状が続くかどうかまで指導者に伝えることが、自分の条件に合う練習を選ぶ材料になる。
急性の事象の76.9%、慢性の事象の51.6%は完全に回復したと報告されている。[12] 回復した人が多いという結果も、痛みを押して続ける理由には使わない。すでに痛むときはその動きをやめ、医療者や指導者に伝える。教室で症状を申告することと、次に参加する内容を相談することを、続けるための手順に含める。
「痛いほど効いている」も、研究が示した利益の測り方とは違う。生活満足度を測った試験は痛みを効果の指標にしておらず、穏やかな調整ヨガの試験も、一時的な痛みを有害事象として記録した。[5][13] 痛みは成果の点数ではない。姿勢を深く完成させたことより、負担を伝えたうえで次の参加を考えられることを大事にする。
今日からできること
- 運動を再開する人は、自分の体調に合うことを確認したうえで、指導者が高齢者向けに調整する穏やかなヨガを週1回、1回60分の教室で行う。慢性痛のある人を対象に10週間実施した研究の内容を参考にし、痛む動作はその場でやめる。[5]
- 初めて参加する人は、通院、服薬、腰や膝の痛み、当日の体調を指導者に伝える。持病のある方・服薬中の方は、始める前に主治医に相談する。[2][10]
- 骨粗しょう症などで骨が弱い人、背骨の圧迫骨折がある、または疑われる人は、背中を丸めた深い前屈、強いひねりや強い反らし、強い負荷の姿勢を避ける。参加前に主治医と、行ってよい動作を確かめる。
- 初心者は、頭立ち、蓮華座、強い呼吸法を避け、指導者と姿勢を調整しながら動く。難しい姿勢を完成させることを目標にしない。[10]
- 授業中や終了後に痛みが出たら、その動きをやめて、どの動作でどう感じたかを伝える。一時的な筋肉や関節の痛みも、我慢して次の練習へ持ち越さない。[5]

オンザショアで、痛みを我慢せず通うための入口を選ぶ
体験の前に、痛む動作と避けたい姿勢を主治医と確かめておく。レッスンの内容に加え、室内の暖かさも選ぶ条件になる。オンザショア立川店には溶岩ホットヨガのほかに常温のヨガがあり、まず常温のヨガから検討できる。
店はJR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。営業時間は全曜日8:00〜23:30で、年中無休だ。体調と生活の予定を踏まえて通う時間を選べる。溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガを含め、ヨガは25種類以上。ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングも扱う。
暑さに弱い方・持病のある方は医師に相談してから選ぶ。医師から運動を止められている方は利用できず、妊娠中の方は溶岩ホットヨガに参加できない。ヨガの体験は税込1,980円で、60分レッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。店のトップで内容を、料金ページで通う条件を確かめられる。体験の予約をする前に、自分が避けたい動作と希望する参加内容を確認しておこう。
参考文献
- Yoga-Related Injuries in the United States From 2001 to 2014 — Thomas A. Swain et al., 2016, Orthopaedic Journal of Sports Medicine. DOI: 10.1177/2325967116671703
- A large-scale survey of adverse events experienced in yoga classes — T. Matsushita et al., 2015, Biopsychosocial Medicine. DOI: 10.1186/s13030-015-0037-1
- Injuries and other adverse events associated with yoga practice: A systematic review of epidemiological studies. — H. Cramer et al., 2018, Journal of science and medicine in sport. DOI: 10.1016/j.jsams.2017.08.026
- Feasibility study of a modified yoga program for chronic pain among elderly adults in assisted and independent living. — K. Boehnke et al., 2020, Explore. DOI: 10.1016/j.explore.2020.11.010
- Effect of Yoga on Health-Related Outcomes in People at Risk of Fractures: A Systematic Review. — Kawon Kim et al., 2021, Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme. DOI: 10.1139/apnm-2021-0736
- Adverse Events Associated with Yoga: A Systematic Review of Published Case Reports and Case Series — H. Cramer et al., 2013, PLoS ONE. DOI: 10.1371/journal.pone.0075515
- Adverse effects of yoga: a national cross-sectional survey — H. Cramer et al., 2019, BMC Complementary and Alternative Medicine. DOI: 10.1186/s12906-019-2612-7
- Effects of yoga and aerobic exercise on wellbeing in physically inactive older adults: randomized controlled trial (FitForAge). — P. Welford et al., 2022, Complementary therapies in medicine. DOI: 10.1016/j.ctim.2022.102815
- Yoga to prevent mobility limitations in older adults: feasibility of a randomized controlled trial — E. Groessl et al., 2018, BMC Geriatrics. DOI: 10.1186/s12877-018-0988-8
- The effect of an Iyengar yoga-based exercise programme versus a seated yoga relaxation programme on falls in people aged 60 years and older (SAGE): a pragmatic, two-arm, parallel randomised controlled trial. — Juliana S. Oliveira et al., 2025, The lancet. Healthy longevity. DOI: 10.1016/j.lanhl.2025.100749
- The Safety of Yoga: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. — H. Cramer et al., 2015, American journal of epidemiology. DOI: 10.1093/aje/kwv071
- Health-related benefits and adverse events associated with yoga classes among participants that are healthy, in poor health, or with chronic diseases — T. Oka et al., 2021, BioPsychoSocial Medicine. DOI: 10.1186/s13030-021-00216-z
冒頭の写真: ヨガマット用のストラップを横長の画面に収め、用具の形が分かる写真。(写真: Андрей Романенко / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。持病のある方・服薬中の方は、運動を始める前に主治医にご相談ください。
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