
研究で確かな部分と、まだ届いていない部分
治療後の疲労への期待を、最新の大きな整理で確認する。2025年の系統的レビューは、がんの人2041人を含む21件の無作為化比較試験をまとめた。治療中にヨガを行った研究と、治療後に行った研究を分け、短期・中期・長期の結果も区別している。[17] 治療中に始めるヨガの疲労への効果は、短期・中期・長期とも非常に不確かだと評価されている。[17] 治療が続いている人は、治療後の結果をそのまま自分に当てはめず、担当医に確認したい。
治療後の短期的な疲労では、5試験602人の統合結果で標準化平均差が−0.26、95%信頼区間が−0.42〜−0.09だった。レビューは、ヨガにはおそらく有益な効果があると評価し、根拠の確実性を中程度とした。[17] この特集でまず伝えたい利点はここにある。治療後の疲れを少し軽くする方向に、まとまった根拠がある。
治療後の短期の生活の質は、4試験275人で標準化平均差0.19、95%信頼区間−0.09〜0.47だった。改善がある場合とない場合の両方を含む推定で、根拠の確実性は非常に低い。[17] 疲労への小さな利点は期待できるが、生活全体が大きく変わると約束する結果ではない。
生活の質について、乳がんを対象にした分析には好ましい結果がある一方、最新レビューでは治療後の短期・中期とも根拠の確実性が非常に低かった。[5][17] 対象や評価時期、取り入れた試験が異なると、結論の強さも変わる。気分や活動のしやすさに期待しながら、本人の変化を確かめる姿勢を持ちたい。
睡眠の結果にも幅がある。睡眠を主題にした試験では改善が報告されたが、2024年の文献レビューは、がんに伴う睡眠の問題に対するヨガの根拠を混在したものと整理している。[4][7] また、2025年のレビューでは、治療後の長期疲労と長期の生活の質を報告した試験がなかった。中期の疲労も、1試験54人で不確実性が大きい。[17]
結果が不確かになる理由として、参加者がヨガ群か比較群かを知っていることによる偏りや、中長期を判断するには人数が少ないことが指摘されている。[17] 60歳以上に直接絞った試験も、女性や乳がんの人が多く、日本の男性シニア全体を代表する構成ではなかった。[2] 今ある結果から、自分に近い対象を探して読むのがよい。
安全性については、60歳以上の試験で介入に関連する有害事象は報告されなかった。[2] その一方で最新レビューは、有害事象や効果の持続についてもさらなる検証が必要としている。[17] 痛みを我慢して姿勢を完成させることは勧めない。持病のある人・服薬中の人、がんの治療後の人は、始める前に主治医に体調と運動の可否を相談することが入口となる。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
呼吸と休息を含む練習を、暮らしに置く
研究のヨガは、呼吸、穏やかな姿勢、注意を今の体に向ける練習を組み合わせていた。[1][2][4] 深く曲げることや難しい姿勢を完成させることだけが練習ではない。高齢の人の比較試験では、対面指導への参加は平均6回で、週1回の自宅練習も加わり、実践時間は平均で週183分だった。[2] 指導を受けて動きを覚え、その後の自宅練習へつなげる構成が、治療後の生活に取り入れる手がかりになる。
家族は、本人が参加する内容を選ぶとき、疲れや眠りだけでなく活動への気持ちも聞いてみたい。高齢の人の比較試験では、身体と機能の領域に健康教育群との有意差はなかったが、感情の領域には差があった。[2] 動作の上達だけで練習の価値を測ると、こうした変化を見落とす。本人が心地よく参加できる強さを選び、つらさが出たら中断できることを、続ける予定の中に含めよう。

疲労への支援は、ヨガと医療の相談を組み合わせる
2024年のガイドライン更新は、2013〜2023年に発表された113件の無作為化比較試験を整理した。がんの治療中と治療終了後では、勧められる対応を分けている。治療終了後には運動、認知行動療法、マインドフルネスのプログラムを推奨し、ヨガも勧められる選択肢とした。[6] ヨガを楽しむ時間を持ちながら、医療者と疲労への対応を選べる。
認知行動療法は、考え方や行動に働きかける治療である。ガイドラインでは、中程度から重い治療後疲労に対して、認知行動療法とマインドフルネスの有効性も示されている。疲労への対応全体で、根拠の質と確実性は低〜中程度と評価された。[6] 疲れが生活を妨げる人には、教室への参加だけで話を終えず、今の困り事を治療担当者に伝える意味がある。
同じガイドラインは、治療中には運動、認知行動療法、マインドフルネスに加え、太極拳や気功を推奨している。一方、ヨガを勧められる方法として挙げたのは治療終了後だった。[6] 治療が続いているか、終わってからの疲労なのかを確認すると、相談の出発点が明確になる。本人が「治療後」と考えていても、現在受けている治療や薬を医師に伝えたうえで、運動の条件を確かめたい。
2024年の文献レビューでも、がん関連疲労には有酸素運動と筋力を鍛える運動を支持する強い根拠があり、ヨガも勧められる方法に挙げられた。睡眠の問題に対するヨガの根拠は混在しており、運動には小さな好ましい効果があると整理している。[7] 疲労と睡眠のどちらが困り事の中心かを伝えれば、ヨガを含めて取り入れやすい活動を検討しやすい。
よくある誤解
「疲れるのは体力が落ちたから、もっと強く動くべきだ」という考えから始めると、研究で使われた内容を見落としやすい。高齢の人の疲労に変化が見られたヨガは、低〜中程度の強度で、穏やかなハタヨガと休息を重視するヨガを組み合わせていた。[1] 疲れた体に、努力不足という名前を付けない。研究が支持する入口は、追い込む動作だけではない。
「ヨガをすると眠れるから、睡眠薬を自分で減らしてよい」という理解も改めたい。睡眠の試験は通常のケアにヨガを加えたもので、結果の一部として薬の使用の改善が報告されている。[4] 服薬を変える判断は主治医と行う。練習後に眠りが変わったと感じても、処方を自己判断で変えず、治療を担当する医療者へ伝える。
「生活の質が改善したなら、気分も体も全部よくなる」という受け止め方には、評価項目の確認が役立つ。高齢の人の比較試験では全体と感情の領域に有意差があった一方、身体と機能の領域に群間の有意差はなかった。年齢別解析でも、60歳以上の全体と身体の領域に開始前と終了後の有意な差はなかった。[1][2] 欲しい成果を細かく言葉にしておけば、自分の変化を過大にも過小にも評価しにくい。

今日からできること
- がんの治療後の人・持病のある人・服薬中の人は、始める前に主治医に運動の可否を確かめる。治療が終わっているか、手術した側の腕のむくみ、骨の状態、しびれなど動きに関わる点と、現在の薬を伝え、避ける姿勢や負担を確認する。
- 医師から運動を認められた人は、指導者のもとで、呼吸、穏やかな姿勢、休息、体の感覚へ注意を向ける練習を組み合わせて行う。研究の週2回・1回75分・4週間を参考に、休憩や動作の調整を含め、自分の体調に合う指導へ参加する。この時間は個々の姿勢や呼吸だけに割り当てるものではない。[2][4]
- 指導を受けて自宅で行える内容を覚えたら、週1回、呼吸と穏やかな姿勢、休息を組み合わせたヨガを自宅でも行う。高齢の人の試験では、対面指導に加えて週1回の自宅練習が行われた。自宅練習だけの所要時間は論文の要旨に示されていないため、75分を自宅での目標にはしない。痛みや、腕のむくみ・しびれの変化があれば中断し、再開の可否を医師に確かめる。[2]
- 開始前と4週間後に、眠りと昼の疲れ、活動への気持ちを振り返る。夜の中途覚醒と、昼の予定を終えたときの負担を一緒にメモし、診察で伝える手がかりにする。[1][3][4]
オンザショアで、治療後の参加条件を確かめる
通院の曜日と、疲れが強く出る時間帯を予定表に重ねてみよう。主治医に運動の条件を確かめたうえで、公式サイトのレッスン案内を読み、通える曜日を自分で選ぶ。オンザショア立川店の営業時間は8:00〜23:30で、年中無休だ。治療後の暮らしの予定に合わせ、無理なく通う時間を考えたい。
JR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガに加え、常温のヨガ、ピラティスなどを扱い、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。治療後に参加を考えるシニアは、まず常温のヨガから。暑さに弱い方・持病のある方は医師に相談してから検討する。医師から運動を止められている方は利用できない。
体験レッスンは税込1,980円で、60分のレッスン、バスタオル2枚・フェイスタオル1枚・ヨガマットのレンタル込みだ。店の案内で種目を、料金で利用条件を確認できる。体験予約の前に、医師と確かめた運動の条件と、公開されているレッスン内容を自分で照らし合わせておこう。
参考文献
- The effect of YOCAS©® yoga on cancer-related fatigue and quality of life in older (60+) vs. younger (≤ 59) cancer survivors: Secondary analysis of a nationwide, multicenter, phase 3 randomized controlled trial — Evelyn Arana-Chicas et al., 2024, Journal of geriatric oncology. DOI: 10.1016/j.jgo.2024.102076
- Yoga vs. behavioral placebo for fatigue and quality of life among older cancer survivors. — E. Arana et al., 2023, Journal of Clinical Oncology. DOI: 10.1200/jco.2023.41.16_suppl.12023
- Influence of Yoga on Cancer-Related Fatigue and on Mediational Relationships Between Changes in Sleep and Cancer-Related Fatigue: A Nationwide, Multicenter Randomized Controlled Trial of Yoga in Cancer Survivors — P. Lin et al., 2019, Integrative Cancer Therapies. DOI: 10.1177/1534735419855134
- Multicenter, randomized controlled trial of yoga for sleep quality among cancer survivors. — K. Mustian et al., 2013, Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. DOI: 10.1200/jco.2012.43.7707
- Effects of yoga on improving quality of life in patients with breast cancer: a meta-analysis of randomized controlled trials — Erh-Jung Hsueh et al., 2021, Breast Cancer. DOI: 10.1007/s12282-020-01209-6
- Management of Fatigue in Adult Survivors of Cancer: ASCO–Society for Integrative Oncology Guideline Update — Julienne E. Bower et al., 2024, Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. DOI: 10.1200/jco.24.00541
- Lifestyle and integrative oncology interventions for cancer-related fatigue and sleep disturbances. — Carolyn Ee et al., 2024, Maturitas. DOI: 10.1016/j.maturitas.2024.108056
- Yoga for fatigue in people with cancer. — Sarah Messer et al., 2025, The Cochrane database of systematic reviews. DOI: 10.1002/14651858.cd015520
冒頭の写真: ヨガ教室で仰向けに横たわり、シャヴァーサナの姿勢をとる参加者たち(写真: Biswarup Ganguly / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。持病のある方・服薬中の方は、運動を始める前に主治医にご相談ください。
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