
肺機能の研究は、吐く量と速さにも利点を示している
肺機能を調べる際には、努力性肺活量、1秒量、最大呼気流量といった指標が使われる。[5] 努力性肺活量は、しっかり吸い込んだ後に力を入れて吐き出す空気の量である。1秒量は吐き始めの1秒間に出る量、最大呼気流量は吐く息の最も速い流れを表す。呼吸筋の圧力とは違い、空気の量や流れを見る検査だ。[5]
健康な成人を対象とした系統的レビューとメタ分析は、11研究、14の呼吸法介入群をまとめた。研究の質は、中程度から良好と評価されている。練習の期間は4週間から4か月で、セッションは少なくとも10分だった。[5] 複数の呼吸法を含んでおり、特定の呼吸法だけを証明する結果ではなく、呼吸練習をまとめて見た資料である。
解析では、努力性肺活量の効果量が0.53、1秒量が0.60、最大呼気流量が0.56と、改善を示す結果だった。各信頼区間は順に0.10〜0.96、0.19〜1.01、0.31〜0.82である。[5] 効果量は変化を比較するための尺度で、空気の量がその数字の割合だけ増えたという意味ではない。信頼区間は推定の幅を表し、研究同士の結果に大きなばらつきがあった点も合わせて受け取る。
努力性肺活量と1秒量の研究間のばらつきを示す指標は、ともに99%と高かった。[5] 改善を示したことは利点だが、参加者や呼吸法が違えば変化の大きさも違う。教室を選ぶ際に「全員が同じ割合だけ改善する」という説明より、研究で改善した項目と対象者を具体的に話せることのほうが、判断に役立つ。
健康な人を対象とした以前の系統的レビューでも、選ばれた研究の多くで肺機能の改善が報告され、少なくとも10週間の定期的なヨガで改善が見込まれると整理されている。体力の程度や呼吸練習にかけた時間との関連も示されていた。[8] 一度の深呼吸の直後だけを測る話ではなく、継続した練習の変化を読んでいる。
このレビューが見た指標には、吸う圧力、吐く圧力、換気量、努力性肺活量、1秒量、最大呼気流量が含まれている。[8] 同じ肺機能という言葉の中に、筋肉の働きと空気の流れが共存していることが分かる。ヨガで呼吸が変わるという見出しに出合ったら、何を測った結果かを見る習慣を持つと、期待の置き場所がはっきりする。
呼吸法を加える意味を考える資料もある。運動習慣の乏しい健康な中年の28人、平均年齢52.7歳を対象にした非無作為化研究では、姿勢の練習のみの群と、姿勢に呼吸法を加えた群を比べた。週1回70分、8週間の練習後、両群で全体的な呼吸機能が改善し、最大吸気圧の改善は呼吸法を加えた群だけに見られた。[10]
中年の研究であり、高齢者の資料と併せて読むと、姿勢の練習に呼吸の指示があることの意味を考える補助になる。[10] ヨガを習うとき、姿勢の形だけを追うのか、息の使い方にも取り組むのか。呼吸を主題にしたい人には、その違いを確認する価値がある。
ぜんそくに絞ったメタ分析もある。対象は18〜60歳の軽症から中等症の成人で、15論文をまとめ、姿勢、呼吸練習、瞑想を含むヨガを通常のケアと比較した。1秒量の標準化平均差は0.96、信頼区間は0.77〜1.14、最大呼気流量は0.38、信頼区間は0.18〜0.58で、改善の方向が報告されている。[7] 対象年齢の上限は60歳で、60歳を超える人は含まれていない。[7] 高齢者へ直接当てはめる資料ではなく、成人のぜんそくに関する補助療法の研究として読む。
このぜんそくの解析は、肺機能検査に加えて、ぜんそくのコントロールと健康に関連する生活の質も評価した。著者らは、軽症から中等症のぜんそくの補助的なケアとして、中程度の根拠があると結論づけている。[7] 呼吸の検査だけでなく、病気を抱えながら暮らす面にも目を向けた研究だ。通常の治療と組み合わせて比較した結果なので、吸入薬をヨガに置き換える提案にはならない。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
改善する検査も、変わらない検査もある
呼吸器の病気で治療中の人を対象としたメタ分析では、10件の無作為化比較試験、計1007人をまとめている。ヨガ群は対照群に比べて1秒量に改善が報告された。[6] 同じ解析で、努力性肺活量、最大呼気流量、最大随意換気量、1秒量と努力性肺活量の比には、有意な効果が認められなかった。[6]
健康な成人の解析では、努力性肺活量や最大呼気流量にも改善が示された。[5] これに対し、呼吸器疾患の患者の解析では、改善が確かめられた項目とそうでない項目に分かれた。[6] 呼吸に関する検査がすべて一斉に変わるわけではなく、対象者の状態と測定項目ごとに結果がある。この違いを知っておくと、研究を自分の体調に引き寄せて読む際の混乱が減る。
高齢者の小規模な前後比較にも改善はあるが、対照群がない研究では、ヨガ以外の変化の影響を切り離せない。[1] 高齢女性の研究も、示された圧力の数字はヨガ群の練習前後の値であり、それをそのまま対照群との差と扱うことはできない。[3] それぞれの結果を、研究が行った比較の範囲で読む。
ここまでの資料で、比較的直接に高齢者へつながる利点は、呼吸筋の力を練習する可能性である。[2][3] 一方、肺機能全体の改善の大きさや長期的な維持については、呼吸器疾患の患者の解析も追加の厳密な研究を求めている。[6] 息切れの治療や薬の変更を決める根拠にせず、継続できる活動を主治医と相談する材料にするとよい。
階段の途中で立ち止まる回数が気になる人もいるだろう。その気がかりは受診時に伝える大切な情報だが、本記事で引用した呼吸筋の圧力や空気の量の変化だけで、階段での変化の大きさは算出できない。[2][3][5] 検査で示された利点と、自分が暮らしで達成したいことを並べて相談すれば、期待が具体的になる。

よくある誤解
「肺機能が良くなったなら、肺そのものが若くなった」という受け取り方がある。しかし、高齢者の試験が示したのは呼吸筋の圧力や換気能力の変化であり、高齢女性の研究が示したのも検査項目の変化だ。[2][3] 努力性肺活量や1秒量の結果から、肺の組織が若返ったと説明する根拠は、これらの研究にはない。具体的に何を測ったかを言葉にするほうが、改善の価値を正確に伝えられる。
「ゆっくり呼吸できれば、肺機能は全部改善する」という理解も広すぎる。高齢女性の研究では呼吸数の低下と呼吸筋の力の改善が一緒に報告されたが、呼吸器疾患の患者のメタ分析では有意な変化がなかった検査もある。[3][6] 呼吸数だけを目標にするより、指導のもとで呼吸の練習に取り組み、自分の体調と目的を相談するほうが、結果の読み方に合っている。
「研究の頻度をそのまま増やすほど効果も大きくなる」という思い込みにも注意したい。週5日の呼吸練習は施設入所者の試験、週3回のヨガは高齢女性の研究、週1回は中年の研究に由来する。[2][3][10] 対象者も練習内容も異なるため、この数字だけを並べて回数の優劣を決めることはできない。呼吸法の名前や頻度だけでなく、自分が続けられる条件まで確認したい。
また、呼吸法の研究は、ホットヨガの効果をそのまま示す資料ではない。ここで紹介した高齢者の試験は、暑い室内での効果を検証した研究ではない。[1][2][3] 室温の選択は呼吸の効果とは別に考える。暑い部屋での運動は、この特集の暑さと安全の記事に譲る。
今日からできること
- 指導者のもとで、基本の姿勢と呼吸の指示を組み合わせたヨガに週1回、1回70分を参考に取り組む。8週間続けた中年の研究では、この組み合わせの群で最大吸気圧の改善が報告された。体調に合わせて休み、時間を無理に埋めない。[10]
- 姿勢と呼吸の練習を継続できる人は、高齢女性の研究で用いた週3回、1回65分、12週間のプログラムを参考に、指導を受けて体を動かす。呼吸だけを65分行うという意味ではなく、ヨガ全体の時間である。[3]
- 持病のある方・服薬中の方は、始める前に主治医に相談する。COPD(慢性閉塞性肺疾患)・ぜんそくなど呼吸器の病気がある人は、吸入薬などの治療を続け、強く速く息を吐く呼吸法や息を止める呼吸法を自己判断で行わず、実施してよいか主治医に確かめる。
- 息苦しさや痛みが出たら練習を中止して休む。検査で最大の力を出すことと、普段の練習で限界まで息を吸ったり吐いたりすることを混同せず、習っていない強い呼吸法を追加しない。

オンザショアへ通う前に、常温のヨガと予定を選ぶ
呼吸に関心を持ったら、まず公式サイトのレッスン案内を読み、自分の予定に合う曜日を考えたい。年中無休のオンザショア立川店は、毎日8:00〜23:30が営業時間だ。生活の中に通う時間を置けるか、参加前に見通しを立てられる。
常温のヨガと、溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガがあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンを扱う。シニアが最初に検討するのは常温のヨガだ。暑さに弱い方や持病のある方は、医師に相談してから参加を考える。呼吸の研究への関心と、自分が受けられる運動の条件を整理しておきたい。
所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fで、JR立川駅北口から徒歩1分だ。ヨガ以外にピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもある。
税込1,980円のヨガ体験には、60分のレッスンとヨガマット、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚のレンタルが含まれる。利用の条件として、医師から運動を止められている方は参加できない。妊娠中の方も溶岩ホットヨガは対象外だ。店の案内で場所を、料金で費用を確かめ、体験の予約で候補の日を確かめられる。自分の体調と参加内容が合うことを優先して選びたい。
参考文献
- Effects of Yoga on Respiratory Parameters, Functional Exercise Capacity, Dynamic Balance, and Quality of Life in Older Adults: Single Group Pretest/Posttest Experimental Study — Canan EREN YURDAKUL et al., 2026, Turkiye Klinikleri Journal of Health Sciences. DOI: 10.5336/healthsci.2025-114617
- Effects of Inspiratory Muscle Training and Yoga Breathing Exercises on Respiratory Muscle Function in Institutionalized Frail Older Adults: A Randomized Controlled Trial — D. Arnall et al., 2014, Journal of Geriatric Physical Therapy. DOI: 10.1519/jpt.0b013e31829938bb
- Do 12-Week Yoga Program Influence Respiratory Function of Elderly Women? — L. Bezerra et al., 2014, Journal of Human Kinetics. DOI: 10.2478/hukin-2014-0103
- Yogic Breathing Practices a Non-Pharmacological Alternative Medicine for Managing Pulmonary Functions of Healthy Adults: A Systematic Review and Meta-analysis — Nita Bandyopadhyay et al., 2026, Indian Journal of Community Medicine: Official Publication of Indian Association of Preventive & Social Medicine. DOI: 10.4103/ijcm.ijcm_929_24
- Impact of yoga on pulmonary functions in clinical population: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials (RCTs) — Vipin Rathore et al., 2025, Journal of Ayurveda and Integrative Medicine. DOI: 10.1016/j.jaim.2025.101189
- The effect of yoga on pulmonary function in patients with asthma: A meta-analysis. — Anshu et al., 2022, Complementary therapies in clinical practice. DOI: 10.1016/j.ctcp.2022.101682
- The Effects of Regular Yoga Practice on Pulmonary Function in Healthy Individuals: A Literature Review — Allison N Abel et al., 2013, The Journal of Alternative and Complementary Medicine. DOI: 10.1089/acm.2011.0516
- Positive Effects of Yoga on Physical and Respiratory Functions in Healthy Inactive Middle-Aged People — Kuniko Yamamoto-Morimoto et al., 2019, International Journal of Yoga. DOI: 10.4103/ijoy.ijoy_10_18
- Effect of comprehensive yoga therapy on pulmonary function among various groups with chronic obstructive pulmonary disease — J. John et al., 2022, Biomedicine. DOI: 10.51248/.v42i2.1267
冒頭の写真: 肺の内部構造を見られるように、一部を切り開いて示した肺の解剖模型。(写真: John Campbell / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。持病のある方・服薬中の方は、運動を始める前に主治医にご相談ください。
シニアヨガの科学特集のほかの記事
- シニアヨガで転倒は減るのか、バランス改善の数字から見える足元の変化と限界
- シニアヨガで転倒恐怖は変わるか 転ぶのが怖い毎日に、動く自信を取り戻す手がかり
- 60代からのヨガと柔軟性 関節の動く範囲は広がるか、前屈だけで測らない
- シニアヨガで下肢筋力は上がるか、椅子から立ち上がる力を論文で確かめる
- シニアヨガで歩行速度は変わるか 普段の足取りと速歩を別々に測った研究
- シニアヨガと変形性膝関節症の痛み・こわばり――膝を曲げる毎日を変える研究
- シニアの慢性腰痛とヨガの効果 痛みの点数とは別に日常動作が変わる可能性
- シニアヨガで骨密度は変わるか、閉経後の骨を支える運動の選び方と研究の読み方
- 高齢者の血圧とヨガ、どれくらい下がるのか 呼吸と休息から始める選択
- シニアヨガと血管の硬さ・心臓の調整力 検査の数字から見えるメリットと限界
- シニアのヨガと血糖値 2型糖尿病のHbA1cは下がるか、研究で読む続ける意味
- シニアヨガで睡眠の質は上がるか 眠った時間より翌日の調子に注目する研究
- シニアヨガと気分の落ち込み|高齢期のうつ症状はどう変わるか、試験を読む
- シニアヨガで不安とストレスは軽くなるか 緊張をほどく研究とホルモンの話
- シニアヨガと記憶・注意力の科学 覚える力だけでなく頭の切り替えにも
- 軽度認知障害とシニアヨガ 記憶だけでなく段取りの力を育てる研究の読み方
- シニアヨガと孤独・社会的なつながり 教室へ通う日に何を期待できるのか
- シニアヨガと生活の質 毎日の調子を変える力を、満足感と研究から読み解く
- シニアヨガと背中の丸み・後弯の改善――年齢で諦める前に知りたい姿勢の研究
- 椅子ヨガの効果を研究で読む 床に座れないシニアにも開かれる運動の入口
- シニアヨガとフレイル、衰えの入り口で歩く力と暮らしの余裕は変わるのか
- シニアの尿もれとヨガの効果|骨盤底を意識する練習で変わることを論文で読む
- シニアヨガは週に何回・何週間で変わるか 続く量を見つける研究の読み方
- パーキンソン病とシニアヨガの効果 動きと気分の試験から見える続ける価値
- がん治療後のシニアヨガ 疲労・睡眠・気分を整える研究と無理なく続ける入口
- シニアヨガと首・肩のこりや痛み 中高年の試験で見えた動きやすさへの道筋
- シニアヨガの安全性とけがの研究|痛みを我慢せず続けるために知る数字と選び方
- シニアのヨガ・太極拳・ウォーキング比較|体を変える運動は目的で選ぶ
- シニアのホットヨガと暑さの科学 汗の量より大切な、続ける環境の選び方
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
2






