
認知症の研究は、本人と介護者の暮らしも見ている
MCIを対象にした結果に加え、すでに認知症と診断された人の研究もある。軽度から中等度のアルツハイマー病の30人を対象とした介入研究では、施設から募った60歳以上の参加者が、12週間のヨガに取り組んだ。専門医が診断した男性18人、女性12人が対象で、ポーズ、呼吸法、瞑想を1日1時間、週6日行った。[12] 地域の教室への参加より、かなり支援の多い条件を想定して読むべき結果である。
MoCAという認知機能を調べる検査の総得点は、開始前の18.23から終了後の21.10へ改善した。報告された95%信頼区間は2.17〜3.89である。言語、注意、遅延再生で有意な改善が報告され、遅延再生は時間を置いてから覚えた内容を思い出す働きを調べる項目だ。[12] 記憶だけでなく、言葉を扱うことや注意を向けることにも変化が見られた。
抑うつ症状の尺度の平均値は8.36から5.13へ下がり、その変化の95%信頼区間は−3.98〜−2.31だった。介護者負担も有意に減少し、変化の95%信頼区間は−2.54〜−1.23だった。[12] 後者は介護に使う時間が何分減ったかを表す数字ではない。本人の好みと同時に、連れて行く人や練習を見守る人の負担も、活動を続ける条件として考える材料になる。
ただし、この研究は無作為化比較試験ではなく、介入前後の変化を中心に扱っている。健康な対照者も含まれていたが、同じ診断の人に別の活動を割り付けて比較した結果としては示されていない。[12] 家庭で同じ時間数を再現する命令ではなく、医療・介護の担当者と支援された運動を検討するための結果である。認知症ケアのレビューも、認知機能、記憶、生活の質、日常生活動作について、限られたものから中程度までの根拠があると整理している。[4] 日常生活動作は、毎日の生活で行う動作や活動を指す。本人がどんな時間を過ごし、活動が暮らしのどこに収まるかも大切な視点だ。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
脳の変化は手がかり、進行予防は今後の課題
なぜ認知機能に変化が起こるのかを探る研究もある。MCIの人を対象にした小規模な無作為化試験では、12週間のヨガまたは記憶向上訓練を行い、ヨガ群14人、訓練群11人が完了した。記憶検査の変化と、安静時の脳の領域間のつながりを画像で調べている。[13] 脳のつながりとは、離れた領域の活動がどのように連動するかを見る研究上の指標である。
この試験では、言語記憶の成績の改善と、複数の脳領域間のつながりの増加に関連があった。ヨガ群では抑うつと視空間記憶にも有意な改善が報告された。[13] 記憶への変化を、気分や脳の活動と合わせて捉える手がかりになる。関連を見つけた段階なので、特定の脳領域が変わったから記憶が良くなったと決めるのでなく、次の研究で確かめる仕組みの候補として受け取るのが妥当だ。
画像の分析では、何でも同じ「つながり」としてまとめていない。研究者は、デフォルトモードネットワークという脳領域の集まり、言語を処理するネットワーク、上頭頂のネットワークに注目し、言語記憶と視空間記憶の変化との対応を調べた。言語記憶の改善は、言語処理のネットワークと左下前頭回とのつながりの増加にも関連していた。一方、視空間記憶の改善と、上頭頂のネットワークと内側頭頂皮質のつながりには逆向きの関連があった。[13] 脳の活動は、どこでもつながりが増えればよいという単純な図式ではなく、記憶の種類と領域の組み合わせで読む対象なのである。
別の画像研究は、自分で認知機能の低下を感じ、心血管系の危険因子を持つ女性を対象にした。12週間のヨガを完了した11人と、記憶向上訓練を行った11人を比較すると、訓練群で脳の灰白質の体積が減った領域があった。灰白質は脳の組織の一部である。一方、ヨガ後の右海馬体積の増加は、統計的な補正後には有意でなくなった。[14] 大きな見出しになりやすい脳画像にも、結果の強弱がある。
さらに、主観的な認知機能低下と脳血管の危険因子を持つ女性79人の無作為化試験では、ヨガ群で24週後の主観的な不調の評価に大きな効果量の改善が見られた。血液中の指標や遺伝子の働きも調べられた。[15] 自分の不調の感じ方に利点があるという結果は励みになるが、MCIの人の客観的な記憶検査や、認知症の発症を調べた結果とは対象も評価も異なる。
血液の評価は、開始時、12週、24週に行われた。免疫の調節に関わるサイトカインなどの測定に加え、遺伝子がどのように働いているかを調べる分析も用いられた。ヨガ群では、インターフェロンガンマなどに関わる加齢関連の遺伝子発現の特徴が変化した。また、加齢の指標として調べたエオタキシン1は、記憶訓練群で時間とともに増加したが、ヨガ群では増加しなかった。[15] この研究は本人の不調の感じ方と血液中の変化を組み合わせ、認知機能への利点を説明する生物学的な手がかりを探している。
その試験では24週の追跡を完了した割合が、ヨガ群65%、記憶訓練群95%だった。[15] 続けられた人だけの変化を見るときには、途中で参加をやめた人がいることも結論に関わる。クンダリーニヨガの系統的レビューも、有望な結果を確かめるために、より大きく設計の整った比較試験を求めている。[8] 研究が増えることと、すべての人に同じ結果が出ることは別の話だ。
全体を支える系統的レビューでは、MCIと認知症の10研究、421人を検討し、多くで認知機能、気分、バランスが改善したと報告した。一方、含まれたすべての研究で偏りの危険が高かった。[1] MCIを対象にヨガ以外の心身活動もまとめたレビューは、9研究を検討し、認知機能や日常活動への利点とともに、1年時点の認知症リスクの低下も報告した。一方、少人数、評価の違い、活動を行う比較群の不足、長期追跡の欠如を限界に挙げている。[16] ヨガ単独の予防効果を確立した結果ではなく、心身活動全体に見られた有望な報告として位置づけられる。したがって、今の根拠から認知症への進行を防ぐと約束することはできない。
安全の報告も具体的に見たい。ヨガのレビューで安全を調べたのは4研究で、めまいが1件報告された。[1] MCIの37人の試験では、ヨガに関連すると判断された有害事象はなかった。[11] 安全の報告があることは参加を考える材料になるが、痛みやめまいを我慢して参加する理由にはならない。体調が変わったら練習を止めて相談する方針を、参加前に家族や担当者と共有しておこう。

よくある誤解
「認知症と診断されたら、体を動かす意味はない」と決めつけることは、研究の結果に合わない。軽度から中等度のアルツハイマー病の参加者では、12週間のプログラム後に認知機能と抑うつ症状の検査値が改善し、介護者負担も減少した。[12] 認知症の本人が参加できる活動を、医療や介護の支援の中で検討する理由になる。研究で取り組んだのはポーズだけでなく、呼吸法と瞑想を合わせたプログラムだった。
「介護者の負担が減るのは、本人の記憶が良くなったからだ」と因果を決めるのも適切ではない。[12]の研究は認知機能、抑うつ症状、介護者負担を介入前後に測っているが、どの変化が他の変化を起こしたかまでは示していない。負担の減少そのものは大切な結果であり、本人の検査点数だけに成果を絞らず、支援する人の状態も評価する意味がある。
「家で練習しないから、本人には向かない」と決めるのも急ぎすぎだ。研究では教室への参加と満足が得られても、自宅での練習は少なかった。[11] 家族が声をかける回数を増やす前に、参加しやすかった条件を振り返る余地がある。予定が決まっていたのか、説明が分かりやすかったのか、人と一緒にいるのがよかったのか。研究で測った継続の課題を、本人の性格への評価に置き換えずに考えよう。
今日からできること
- 持病のある人・服薬中の人は、始める前に主治医に運動の可否を相談する。痛みやめまいが出たら中止する。認知機能の不安がある人は、説明を受ける方法と見守りの必要性も確認しておく。
- 参加可能と確認できた本人は、指導者のいるヨガで、無理のないポーズと呼吸の練習に取り組む。週1回・1回60分、12週間の教室は、主観的な認知機能低下のある女性の研究で用いられた組み方である。MCIや認知症の人は、支援者と参加条件を整えてから行う。[15]
- 家庭でも練習できる本人は、教室で習った内容を指導用の録音に合わせ、毎日1回12分取り組む方法を検討する。これは教室と併用した研究の練習時間であり、自己流で難しい姿勢を足さず、担当者が本人に合うと確認した内容で行う。[15]
- 本人と家族は、教室に通いやすかった条件や本人が楽しめたことと、支える人の負担を振り返り、医療・介護の相談時に伝える。家庭練習が少なくても教室への満足度が高かった試験や、介護者負担を評価した研究がある。[11][12]

本人と家族の暮らしに合う時間を、オンザショアで選ぶ
家族が送り迎えしやすい曜日と時間帯を、先に本人と決めておく。オンザショア立川店は8:00〜23:30、年中無休なので、通院や家族の仕事の予定から空いている時間を選べる。
所在地は東京都立川市曙町2-14-10、エトロワビル3F。JR立川駅北口から徒歩1分の溶岩ホットヨガスタジオである。溶岩プレートを敷いた室内でのホットヨガに加え、常温のヨガもあり、ヨガのレッスンは25種類以上から選べる。どのレッスンにするかは、公式サイトのレッスン案内を本人と一緒に読んで決めたい。
シニアはまず常温のヨガから検討する。暑さに弱い方・持病のある方は医師に相談してから参加を考え、医師から運動を止められている方は利用できない。体験は税込1,980円で、60分のレッスンとバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタル込みである。
通う条件は公式サイト、費用は料金ページ、申込みは体験予約で確認できる。体験を考える段階から、本人の希望と家族の予定を合わせて、続ける場所を選びたい。
参考文献
- A systematic review of the health effects of yoga for people with mild cognitive impairment and dementia — D. Karamacoska et al., 2023, BMC Geriatrics. DOI: 10.1186/s12877-023-03732-5
- Yoga for Dementia Care: A Review — Amitava Acharyya, 2024, Preventive Medicine: Research & Reviews. DOI: 10.4103/pmrr.pmrr_47_24
- A randomized controlled trial of Kundalini yoga in mild cognitive impairment — H. Eyre et al., 2017, International psychogeriatrics. DOI: 10.1017/s1041610216002155
- The Impact of Kundalini Yoga on Cognitive Function and Memory: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials — S. Giridharan et al., 2024, Cureus. DOI: 10.7759/cureus.63161
- A Meta-Analysis of Studies of the Effect of Mind Body Exercise on Various Domains of Cognitive Function in Older People With or Without Mild Cognitive Impairment — Ji-Woo Suk et al., 2025, Journal of Evidence-based Integrative Medicine. DOI: 10.1177/2515690×251363709
- Feasibility of a Yoga Intervention for Individuals with Mild Cognitive Impairment: A Randomized Controlled Trial — G. Tremont et al., 2022, Journal of Integrative and Complementary Medicine. DOI: 10.1089/jicm.2021.0204
- Yoga an integrated mind body intervention for improvement in quality of life in individuals with Alzheimer’s disease and their caregivers — Meenakshi Kaushik et al., 2025, Frontiers in Aging. DOI: 10.3389/fragi.2025.1449485
- Changes in Neural Connectivity and Memory Following a Yoga Intervention for Older Adults: A Pilot Study — H. Eyre et al., 2016, Journal of Alzheimer’s Disease. DOI: 10.3233/jad-150653
- Yoga Prevents Gray Matter Atrophy in Women at Risk for Alzheimer’s Disease: A Randomized Controlled Trial — Beatrix Krause-Sorio et al., 2022, Journal of Alzheimer’s Disease. DOI: 10.3233/jad-215563
- Cognitive and immunological effects of yoga compared to memory training in older women at risk for alzheimer’s disease — Adrienne Grzenda et al., 2024, Translational Psychiatry. DOI: 10.1038/s41398-024-02807-0
- Impact of mind-body interventions in older adults with mild cognitive impairment: a systematic review — M. Farhang et al., 2019, International Psychogeriatrics. DOI: 10.1017/s1041610218002302
冒頭の写真: 手をつないで並ぶ二人の後ろ姿を、背中側から捉えた横長の写真。(写真: https://pixabay.com/users/pasja1000-6355831/ / CC0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。持病のある方・服薬中の方は、運動を始める前に主治医にご相談ください。
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