
肩まで同じように変わるかは、結果が分かれている
ここまでの研究を自分の体に当てはめる際、押さえたい限界は部位、対象、比較方法の違いである。高齢者の体力を統合した2021年のメタ分析では、下半身の柔軟性には正の効果があり、上半身の柔軟性には有意な効果がなかった。[2] 背中で手を回す動きも改善した個別試験がある一方で、研究を集めた結果としては、肩を含む上半身に下半身と同じ強さの結論は出ていない。[2][12]
上半身にも改善を報告した研究として、中高年と高齢の参加者20人が、太陽礼拝と呼ばれる一連のヨガの動きを8週間行った前後比較がある。背中に手を回す検査と、椅子に座って前へ手を伸ばす検査で、ともに有意な改善が認められた。[14] 上半身について何も期待できないという意味ではなく、期待を支える研究の形が下半身とは異なる、ということである。
この研究は参加者全員が練習する単一群の前後比較で、別の練習をする群や練習しない群との比較がない。[14] 背骨の女性の研究も前後比較である。[7] 練習後の改善を報告する価値はあるが、無作為に分けた比較試験と同じ確かさで、変化のすべてをヨガの効果と断定はできない。だからこの記事では、下半身の結論をメタ分析で支え、個々の部位の変化は対象と測定方法を添えて紹介している。
さらに、長期のハタヨガ研究では、ヨガ群の平均年齢は61.2歳、体操群は69.0歳、比較群は67.7歳だった。[8] 無作為化の方法は明記されておらず、群を設けた比較研究である。参加者の年齢構成も同じではない。大きな点数差は魅力的であるが、そのままヨガと体操の普遍的な差に広げる前に、この条件を添えておきたい。
対象の幅も意識したい。主なメタ分析の対象は特定の病気で集められた集団ではなく、ヨガと通常の運動の比較試験は健康で運動習慣の乏しい成人だった。[1][12] 膝や腰の病気による動きの制限と、普段動かしていない体の柔軟性は、本人には同じ「硬さ」と感じられることがある。持病のある方・服薬中の方は、運動を始める前に主治医に相談する。痛みを我慢して動く範囲を広げることは勧めない。
これらの研究が示したのは、練習の前後や比較群との間で測定された柔軟性の変化である。筋肉や関節の内部の仕組み、練習をやめた後の持続期間、参加者ごとの改善幅は明らかになっていない。[1][3][7][8][12][14] 下半身の改善を支える結果はあるが、肩や背骨も同じように変わるとは結論できない。
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よくある誤解
「普段運動していない人には、今から始めても変化はない」という思い込みから見ていこう。運動習慣の乏しい健康な成人を対象にした試験で、ヨガ後に柔軟性の検査が改善した。[12] 運動習慣の乏しい人にも練習による改善を示す結果である。参加の目標は、自分が取り組める動きを探すことでよい。
「床に手が付けば、全身の柔軟性は十分」という考えも、研究の測り方とは違う。背骨の研究では前後、横、ひねる方向が測られ、長期研究では複数の関節が評価された。[7][8] 前へ伸ばす検査で良い結果が出ても、それはその検査の成果として受け取る。背中に手を回す動きが目標なら、そのことを指導者に伝える方が話が具体的になる。見栄えのよい前屈だけを目標にすると、気になっていた肩の動きが話題から抜け落ちてしまう。
「ヨガなら普通の体操より必ず良い」という見方にも、比較相手の確認が欠けている。ストレッチ・筋力運動と比較した試験では両群が改善し、長期の体操との比較ではヨガ群の全体の柔軟性指標がより大きく増えた。[8][12] 練習内容も期間も異なる。この結果から選べるのは、ヨガも有力な候補に入れ、自分が続けやすい活動を探すという行動だ。すでに好きな運動がある人は、その活動も候補に残せる。

動く範囲の変化を、部位ごとに確かめる
長期研究の測定では、足首と膝、股関節と体幹、手首と肘、肩を別の指標にまとめていた。13の動きを標準図と比べ、各動きを0〜4の尺度で評価する方法である。ヨガ群22人、体操群20人、比較群24人を調べ、多くの部位別指標でヨガ群の増加が体操群より大きかった。[8] 足元への手の届き方だけを見ていると、手首や肘を含む研究の広がりは見えにくい。全体の結果と部位別の結果を併せて調べていたことが、この研究の特徴である。
50〜79歳の女性56人を対象とした前後比較では、週1回90分のハタヨガを20週間行い、背骨と太ももの裏の柔軟性の増加が報告された。[7] 背骨の前後と左右の動きを、足を腰幅に開いた立位で測った。ひねる範囲は体幹を直角に曲げ、脚を開いた姿勢で測定していた。さらに立位で足先へ手を伸ばす検査を組み合わせ、背骨と太ももの裏を評価している。[7] これは研究者が行った測定方法で、家庭で同じ姿勢を再現する勧めではない。前屈、横へ曲げる動き、ひねる動きという異なる方向を調べ、20週間後に背骨の動く範囲と太ももの裏の柔軟性の増加を報告した。肩の検査を使った研究とは、見ている場所が違う。[7][14]
別の生活環境でも、柔軟性の変化が報告されている
施設で暮らす60〜65歳の男性30人を対象にした比較研究もある。15人は選ばれたヨガの練習を行い、残る15人は通常の生活を続け、リハビリテーションのプログラムには参加しなかった。ヨガ群は月曜日から土曜日まで週6日、12週間練習し、始める前と終えた後に柔軟性とバランスを評価された。柔軟性は座って前へ手を伸ばす検査で測り、比較群に対して有意な改善が報告されている。[17]
この研究は男性だけで、年齢の幅も60〜65歳に限られる。地域で暮らす健康な成人の試験とは生活環境が異なり、無作為に分けたかどうかは明記されていない。柔軟性の改善幅や1回の練習時間も示されていない。[17] それでも、何を変えたのかは具体的だ。日常生活だけの群と、決まった曜日にヨガの練習を加えた群を比べている。施設で暮らす参加者にも、前へ手を伸ばす検査の改善が報告された点は、この題材に加わる知見である。
地域在住の高齢者を対象に、ヨガと地中海式の食事を組み合わせた研究もある。柔軟性は背中に手を回す検査と椅子に座って前へ手を伸ばす検査で評価された。栄養状態、バランス、歩行、筋力も調べており、柔軟性だけを単独で扱う試験とは異なる設計だった。[13]
柔軟性については、介入群で右腕の効果量0.43、左腕0.64、左脚0.37の有意な改善が報告された。[13] 論文の要旨にはこのほかに「right perineum」の効果量0.42も記載されているが、部位名に不整合があり、ここでは右脚の結果と断定しない。[13] 左右すべての脚に同じ変化があったという判断を置かず、部位が明確な結果を紹介する。
このプログラムは食事も同時に変えているため、報告された改善をヨガだけの効果として扱うことはできない。[13] 一方で、背中に手を回す動きの改善を報告した研究が、太陽礼拝の前後比較だけではないことも分かる。[13][14] 上半身の統合結果では有意な効果がなく、個別の条件では改善が報告される。この両方を踏まえ、肩の動きにも関心を持ちつつ、下半身と同じ結果を約束しないことが、現在の知見に沿った期待である。[2][13][14]

今日からできること
- 運動習慣を作る人は、取り組める内容を指導者と選び、ハタヨガを週3回、1回60分、8週間続ける練習を候補にする。運動習慣の乏しい健康な成人が行った比較試験の条件である。体調に合う範囲で動き、深さを競わない。[12]
- 通える回数が少ない人は、ハタヨガを週1回、1回90分、20週間行った研究を参考に、無理なく参加できるレッスンで体を動かす。50〜79歳の女性の前後比較で、背骨と太ももの裏の柔軟性の増加が報告された条件である。休憩を取り、痛みが出る動きは中止する。[7]
- 肩の動きが目標の人は、開始前と8週間後に、背中へ手を回す動きについて指導者と確認する。太陽礼拝の前後比較では上半身と下半身を測定しているが、練習の回数と1回の時間は示されていない。[14]
- 持病のある人・服薬中の人は、運動を始める前に主治医に相談する。骨粗しょう症と言われた人は、深い前屈や強いひねりを避け、主治医に可否を確かめてから参加する。痛みを我慢して深く曲げず、家族に体を押してもらって限界を試すことも避ける。
常温のヨガから試せる、オンザショア立川店
前屈の深さを目標にする前に、参加できるレッスンの内容を確かめたい。オンザショア立川店には常温のヨガがあり、8:00〜23:30の営業時間から通う予定を考えられる。年中無休で、JR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10のエトロワビル3Fにある。
溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガも扱い、ヨガのレッスンは25種類以上だ。ほかにピラティスやパーソナルトレーニングもある。シニアの方は、まず常温のヨガから考えたい。暑さに弱い方・持病のある方は医師に相談してから参加を検討する。医師から運動を止められている方は利用できない。
ヨガの体験は税込1,980円。60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。足元や肩など、気になる動きを言葉にしてから、店の案内で扱う種目を、料金で通う費用を確かめたい。体験予約の案内と公式サイトのレッスン内容を読み、通う曜日を自分の予定と照らし合わせる。参加の可否に不安があれば、先に主治医に確かめておきたい。
参考文献
- The effects of yoga compared to active and inactive controls on physical function and health related quality of life in older adults- systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials — D. Sivaramakrishnan et al., 2019, The International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. DOI: 10.1186/s12966-019-0789-2
- Meta-Analysis of the Effect of Yoga Practice on Physical Fitness in the Elderly — Sohee Shin, 2021, International Journal of Environmental Research and Public Health. DOI: 10.3390/ijerph182111663
- Effects of yoga on physical and psychological health among community-dwelling older adults: A systematic review and meta-analysis. — Ka-Yan Ko et al., 2023, International journal of older people nursing. DOI: 10.1111/opn.12562
- Does yoga engender fitness in older adults? A critical review. — K. Roland et al., 2011, Journal of aging and physical activity. DOI: 10.1123/japa.19.1.62
- Effect of Yoga Style on Improvement in Flexibility, Mobility, and Functional Movement in Healthy Adults — R. Harrington, 2025, The International Journal of Health, Wellness, and Society. DOI: 10.18848/2156-8960/cgp/v16i01/49-70
- Effects of hatha yoga exercises on spine flexibility in women over 50 years old — M. Grabara et al., 2015, Journal of Physical Therapy Science. DOI: 10.1589/jpts.27.361
- Flexibility of the elderly after one-year practice of yoga and calisthenics. — P. Farinatti et al., 2014, International journal of yoga therapy. DOI: 10.17761/ijyt.24.1.5003007856u32q52
- Yoga Is as Good as Stretching-Strengthening Exercises in Improving Functional Fitness Outcomes: Results From a Randomized Controlled Trial. — Neha P. Gothe et al., 2016, The journals of gerontology. Series A, Biological sciences and medical sciences. DOI: 10.1093/gerona/glv127
- Effects of a Yoga Program Combined with a Mediterranean Diet on Nutritional Status and Functional Capacity in Community-Dwelling Older Adults: A Randomized Controlled Clinical Trial — María del Carmen Carcelén-Fraile et al., 2024, Nutrients. DOI: 10.3390/nu16111601
- Effect of Surya Namaskar yoga practice on flexibility in the pre-elderly and elderly — Ni Made Ayu Regina Karasugi et al., 2023, Journal of the Medical Sciences (Berkala Ilmu Kedokteran). DOI: 10.19106/jmedsci005504202304
- Impact of Selected Yoga Practices on Balance and Flexibility among Geriatric Population — S. Raja et al., 2024, Journal of Advances in Sports and Physical Education. DOI: 10.36348/jaspe.2024.v07i05.002
冒頭の写真: 座った姿勢から上体を前へ倒し、前屈のヨガの姿勢をとる人物の様子(写真: MrAliMcCall / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。持病のある方・服薬中の方は、運動を始める前に主治医にご相談ください。
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