連載「ピラティスの6原則を科学で検証する」全10回の第6回です。

プリシジョン(precision、精度)は、6原則のなかでもっとも直感的に納得しやすい項目かもしれません。雑に20回やるより、正確に5回やるほうがよい——そう言われれば、多くの人は頷きます。指導者が姿勢を細かく直すのも、この原則に支えられています。

しかし、この主張を検証しようとすると、その手前で足がとまります。正確さを測る物差しは、どれだけ信頼できるのか。そして、正確さの違いは結果を変えるのか。

結論を先に述べます。動きの「質」を目で評価する信頼性は、同じ人が繰り返し見る場合には保たれるが、評価者が変わると一致度は中程度にとどまる。そして、指導者がついているかどうかは結果をわずかに動かすが、その差は臨床的に重要な水準に届かないことが多い。精度を重んじる根拠は、精度そのものを測った研究からではなく、別の場所から来ています。

ピラティスの6原則を科学で検証する 第6回 プリシジョンフォームの精度は結果を変えるか|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

そもそも「正確さ」は測れているのか

フォームの良し悪しを判定する作業は、臨床でも現場でも、ほとんどが目視で行われます。この目視判定がどれだけ一致するかを、片脚スクワット系の課題について網羅的に調べたレビューがあります。

Ressman J, Grooten WJA, Rasmussen Barr E. Visual assessment of movement quality in the single leg squat test: a review and meta-analysis of inter-rater and intrarater reliability. BMJ Open Sport and Exercise Medicine. 2019;5(1):e000541.

31本の研究を統合した結果は次のとおりです。

一致度個々の研究の幅統合値(95%CI)解釈
評価者が変わったとき(評価者間)0.00〜0.950.58(0.50〜0.65)中程度
同じ評価者が見直したとき(評価者内)0.13〜1.000.68(0.60〜0.74)かなりの一致

注目すべきは個々の研究の幅です。評価者間ではゼロ、つまり偶然と変わらない一致度を示した研究もありました。著者らは、3段階以下の評定尺度を使うと評価者間の一致が高まること、含まれた研究の多くに何らかの方法論的バイアスがあることを付け加えています。

同じ傾向は、他の設計の研究でも確認できます。理学療法士44名が6名の動作を2回ずつ評価した研究では、評価者内の一致率は29%から96%、一致係数は0.01から0.96と極端に開き、評価者間では一致率45%から79%、係数0.22から0.71でした。Whatmanらは、経験を積んだ群ほど一致が良く、二分法で判定したほうが一致が良いと報告しています。

より大規模な検証もあります。理学療法士27名と学生20名が、スクワット・ランジ・片脚スクワット・デッドリフトの動画100本を、30日以上あけて2回評価しました。

Whelan D, Delahunt E, O’Reilly M, Hernandez B, Caulfield B. Determining Interrater and Intrarater Levels of Agreement in Students and Clinicians When Visually Evaluating Movement Proficiency During Screening Assessments. Physical Therapy. 2019;99(4):478-486.

結果は、評価者間のカッパ係数は0.18から0.53、評価者内は0.38から0.62。学生と理学療法士で一致度に大きな差はありませんでした。著者らの結論は「動作分析の標準化にさらなる努力が必要」というものです。

評価の方法を変えても事情は変わりません。

Chmielewski TL, Hodges MJ, Horodyski M, et al. Investigation of clinician agreement in evaluating movement quality during unilateral lower extremity functional tasks: a comparison of 2 rating methods. Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2007;37(3):122-129.

この研究は、動き全体をまとめて評価する方法と、体節ごとに分けて評価する方法を比較しました。健常者25名の片脚スクワットと側方ステップダウンを、3名の臨床家が体幹・骨盤・股関節について評価しています。評価者間の重みつきカッパは、全体法で0から0.55、体節法で0.23から0.53。全体の一致を示す一般化カッパは、片脚スクワットで体節法0.19、全体法0.01という低さでした。著者らは「どちらの方法も高い一致を生まなかった。逸脱の程度を判定する基準をより明確にする必要がある」と述べています。

この数字が意味すること

ここから導かれる帰結は、控えめに言っても重要です。「正確に動けているか」という判定は、誰が見るかによって変わる。同じ人が繰り返し見るなら、ある程度は安定します。しかし別の指導者に替わったとき、同じ動作が違う評価を受ける確率は無視できません。

これは精度という原則を否定するものではありませんが、その扱い方を変えます。フォームの評価は客観的な測定ではなく、観察者の判断を含む評定である。したがって「正しいフォーム」を単一の基準として語るより、評価の幅を織り込んだうえで、変化の方向を見るほうが実務に耐えます。第1回で見たとおり、そもそも論文でプリシジョンを含む伝統的な6原則に言及していたのは平均23%にすぎず、Wellsらのレビューは腰痛患者を扱う論文では呼吸以外の原則がほとんど触れられていないことを示していました。測れないものは、書かれもしないということです。

立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

監督がついていれば結果は変わるか

精度の効果を間接的に測る方法があります。指導者が見ていれば、フォームは正確に保たれるはずです。では監督つきの運動は、監督なしの運動より良い結果を生むのか。

Mataran-Penarrocha GA, Lara Palomo IC, Antequera Soler E, et al. Comparison of efficacy of a supervised versus non-supervised physical therapy exercise program on the pain, functionality and quality of life of patients with non-specific chronic low-back pain: a randomized controlled trial. Clinical Rehabilitation. 2020;34(7):948-959.

非特異的慢性腰痛の64名を、監督つき運動群32名と自宅での非監督群32名に無作為に割り付け、どちらも週3回・8週間の運動を行いました。8週の直後には、痛み(P=0.028、監督つき2.5±2.1/非監督3.5±1.5)、Roland-Morris障害尺度(P=0.004、3.1±2.2/5.1±3.0)、Oswestry障害指数(P=0.034、14.5±7.1/19.2±10.0)のいずれも監督つき群が良好でした。

ところが6か月後の追跡では、痛み・機能・運動への恐怖・生活の質のいずれにも群間差がありませんでした。著者ら自身が「差は小さく、臨床的に意味のある水準ではなかった」と明記しています。

この試験には評価すべき設計上の工夫があります。二重盲検を掲げ、評価者を盲検化し、8週・2か月・6か月という三つの時点で測っている点です。運動療法の試験では参加者の盲検化が不可能ですが、少なくとも測る側の期待は取り除かれています。それでも短期の差が中期に消えたということは、差が介入そのものではなく、介入を受けている最中の状態に依存していた可能性を示します。

高齢者を対象にした大規模な統合も、似た絵を描きます。

Gomez-Redondo P, Valenzuela PL, Morales JS, Ara I, Manas A. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine. 2024;54(7):1877-1906.

34本の試験(計2830名)を統合したこの分析では、出席率は監督の有無にかかわらず81%で同等、重篤な有害事象の報告はありませんでした。監督つきが有意に優れたのは膝伸展筋力(SMD 0.18、p=0.002)、立ち上がりテスト(0.25)、Timed-up-and-go(0.21)、通常歩行速度(0.29)、除脂肪量(平均差1.05 kg)、健康関連の生活の質(0.21)でしたが、感度分析まで残ったのは膝伸展筋力だけでした。Gomez-Redondoらは、交絡の調整が不十分であることを認め、さらに質の高い研究が必要だと述べています。

ただし、監督の価値がはっきり出る領域もあります。

Valentin S, Linton L, Sculthorpe NF. Effect of supervision and athlete age and sex on exercise-based injury prevention programme effectiveness in sport: A meta-analysis of 44 studies. Research in Sports Medicine. 2024;32(5):705-724.

スポーツにおける傷害予防プログラム44本を統合したこの研究では、全体の効果はリスク比0.71で、監督つきは0.67と有効だったのに対し、監督なしは1.04で効果が認められませんでした。実施率と傷害発生率の間には有意な逆相関があり(β=-0.014、p=0.004)、Valentinらは監督つきプログラムが傷害を33%減らすと結論しています。男女差はなく、女性のみの集団で0.73、男性のみで0.65でした。

三つの結果をどう読み合わせるか

並べると、次のような整理になります。慢性の痛みを抱えた人では、監督の有無による差は短期には出るが、半年後には消える。高齢者の身体機能では、ほとんどの指標で差が残らない。一方、傷害予防のプログラムでは、監督がなければ効果そのものが失われる。

この違いを説明しうる要因は、精度そのものではなく実施率かもしれません。傷害予防の研究で実施率と効果の関連が有意だったことは、そのことを示唆します。監督がついていると人は続ける。続けるから効果が出る。フォームが正確になったから効果が出た、という経路は、これらの研究からは直接には確かめられていません。

もうひとつ、これらの研究はいずれも「監督あり」対「監督なし」を比べたものであって、「丁寧に修正する指導」対「修正しない指導」を比べたものではない点に注意が要ります。精度の効果を直接測るには、同じ種目を同じ量だけ行い、フォームの修正だけを変えた二群が必要ですが、そうした試験は見当たりませんでした。第5回の呼吸と同じ空白がここにもあります。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

これらの研究の限界

信頼性の研究にも、監督の研究にも、それぞれ弱点があります。

信頼性の研究が扱っている課題は、片脚スクワット・ランジ・ステップダウンといった下肢の動作が中心で、ピラティスの種目そのものを評価した信頼性研究はほとんどありません。体幹の細かな分節運動や骨盤の傾きを評価するときの一致度は、ここで見た数字より良いかもしれませんし、悪いかもしれません。動画を見て評価する設計が大半であることも、対面で立体的に見る現場とは条件が違います。

監督の研究には、介入の中身が揃っていないという問題があります。監督つき群と非監督群で、実際に行われた運動の量や強度が同じだったかは、多くの試験で確かめられていません。Gomez-Redondoらが「非監督群に監督つきのセッションが混じっていないか」といった交絡を今後の課題に挙げたのは、この曖昧さを指しています。実施率が効果を左右するなら、量が違えば結果が違うのは当然です。

さらに、これらの研究の主要評価項目は痛み・障害度・身体機能・傷害発生率であり、「フォームが良くなったか」そのものではありません。精度が上がったかどうかを測らずに、精度の効果を推し量っている——この間接性が、いまの証拠のいちばん弱いところです。

この知見は現場の何を変えるか

変わらないこと。フォームを見て直すという営みをやめる理由はありません。関節に無理のかかる姿勢を避けること自体は、傷害予防の観点から合理的です。

変わること。「正しいフォームでなければ効果がない」という言い方は、支持されていません。評価そのものが評価者によって揺れる以上、単一の正解を前提にするのは無理があります。少し崩れていても続けることのほうが、完璧を求めて中断するより結果に近い可能性があります。

指導を受ける意味。監督の価値は、フォームの精度より、続けられることにあると考えるほうが証拠に整合します。自宅で続けられる人は自宅でよく、続かない人にとっては人がいることに意味がある——この整理なら、ここまでの結果と矛盾しません。

次回予告

第7回は「フローと運動強度——有酸素運動になりうるか」を扱います。動きを途切れさせないというフローの原則が、代謝の面で何を生んでいるのか。代謝当量や酸素摂取量の実測値を、中強度身体活動の基準と突き合わせます。

この連載の全10回

  1. 第1回|ピラティスとは何だったのか——起源・6原則・定義のずれ
  2. 第2回|センタリングと「パワーハウス」——中心という概念の実像
  3. 第3回|腹横筋の神話——選択的収縮は本当に起きるのか
  4. 第4回|コントロールと運動学習——なぜ「ゆっくり」なのか
  5. 第5回|呼吸——側方拡張呼吸と腹腔内圧
  6. 第6回|プリシジョン——フォームの精度は結果を変えるか(この記事)
  7. 第7回|フローと運動強度——有酸素運動になりうるか
  8. 第8回|コンセントレーション——注意の向け方と筋活動
  9. 第9回|マシンは原則をどう実装するか——ばね負荷の力学
  10. 第10回|総括——6原則のうち検証されたもの、されていないもの

出典

  1. Ressman J, Grooten WJA, Rasmussen Barr E. Visual assessment of movement quality in the single leg squat test: a review and meta-analysis of inter-rater and intrarater reliability. BMJ Open Sport and Exercise Medicine. 2019;5(1):e000541.
  2. Whatman C, Hing W, Hume P. Physiotherapist agreement when visually rating movement quality during lower extremity functional screening tests. Physical Therapy in Sport. 2012;13(2):87-96.
  3. Whelan D, Delahunt E, O’Reilly M, Hernandez B, Caulfield B. Determining Interrater and Intrarater Levels of Agreement in Students and Clinicians When Visually Evaluating Movement Proficiency During Screening Assessments. Physical Therapy. 2019;99(4):478-486.
  4. Chmielewski TL, Hodges MJ, Horodyski M, Bishop MD, Conrad BP, Tillman SM. Investigation of clinician agreement in evaluating movement quality during unilateral lower extremity functional tasks: a comparison of 2 rating methods. Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2007;37(3):122-129.
  5. Mataran-Penarrocha GA, Lara Palomo IC, Antequera Soler E, et al. Comparison of efficacy of a supervised versus non-supervised physical therapy exercise program on the pain, functionality and quality of life of patients with non-specific chronic low-back pain: a randomized controlled trial. Clinical Rehabilitation. 2020;34(7):948-959.
  6. Gomez-Redondo P, Valenzuela PL, Morales JS, Ara I, Manas A. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine. 2024;54(7):1877-1906.
  7. Valentin S, Linton L, Sculthorpe NF. Effect of supervision and athlete age and sex on exercise-based injury prevention programme effectiveness in sport: A meta-analysis of 44 studies. Research in Sports Medicine. 2024;32(5):705-724.
  8. Wells C, Kolt GS, Bialocerkowski A. Defining Pilates exercise: a systematic review. Complementary Therapies in Medicine. 2012;20(4):253-262.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。運動中に強い痛み、しびれ、関節の不安定感が出る場合は中止してください。痛みが続く場合や、転倒・怪我のあとで動作に不安がある場合は、整形外科などの医療機関にご相談ください。

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

ご体験予約