基礎代謝を上げるには長く眠る?寝不足の翌朝の消費と食欲を分けて研究で読む

基礎代謝を上げるために長く眠ればよいのか。寝不足で安静時代謝が下がった試験と、変わらなかった試験を比較し、食事量の増加とは分けて読む。短い睡眠の実験条件、回復睡眠、減量中の体組成まで確かめ、寝る前に代謝対策を足すよりも、睡眠を削らない予定の組み方を考える。

目覚ましを止めても、まぶたが重い朝。「昨夜あまり寝ていないから、今日は基礎代謝まで落ちているのか」と気になる。眠気の重さを、そのまま消費カロリーの少なさに読み替えたくなる場面だ。

答えは、寝不足で翌朝の安静時代謝が下がった実験はあるが、必ず下がるとはいえない、である。人の介入研究をまとめたメタ分析では、部分的な睡眠不足によって食事からの摂取エネルギーは増えた一方、総消費エネルギーと安静時代謝には有意な変化がなかった。[2] 睡眠は大切だが、「眠るほど代謝の数字が高くなる」という話にはならない。

ここでは寝る前の代謝対策を探す前に、朝の消費、食べる量、睡眠を取り戻したあとの変化を分ける。運動を続けたあとの代謝は既存記事「運動習慣で基礎代謝量は増える?筋トレと有酸素運動を続けた後の変化を読む」に譲り、こちらは睡眠を短くした実験の読み方に絞る。

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「基礎代謝を上げる睡眠」で何を測っているのか

検索では基礎代謝という言葉を使っても、ここで扱う実験の中心は安静時代謝だ。たとえば健康な成人男女を対象にした試験では、一晩食事を取らずに過ごしたあとの朝、安静時の消費を間接熱量測定で調べている。[3] この男女を含む結果を、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには慎重さが必要だ。 仕事中の歩行やレッスン中の動きを全部足した消費と、同じ数字として扱わないことが出発点になる。

間接熱量測定を使った別の試験では、空腹時と食後の安静時代謝を分け、さらに食事に伴う熱産生も調べた。[6] 測定する場面が違えば、答えている問いも違う。「寝不足の朝にじっとしている体」と「食べたあとに使うエネルギー」とを、代謝という大きな箱に一緒に入れると話がずれる。

睡眠を削った晩の翌朝にだるく感じても、その感覚だけで安静時代謝の増減を決めることはできない。実際、同じように睡眠時間を短くする介入でも、安静時代謝の低下を認めた研究と有意な変化を認めなかった研究がある。[3][5][6] 自分の眠気を否定する必要はないが、眠気を測定器の代わりにしない。朝の体感と測定した消費量を、別々の情報として持っておく。

また「代謝が変わらなかった」は、睡眠不足でも体に何も起こらなかったという意味ではない。安静時の消費が変わらないまま、血糖の扱いに関わる指標が変わった試験もある。[5] 数字を読むときは、高いか低いかより先に、何の数字なのかを確かめたい。

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まとめた研究では消費より食べる側が動いた

部分的な睡眠不足とエネルギー収支を調べた系統的レビューは、合計496人を含む17研究を対象にし、そのうち必要なデータがそろった11研究、172人をメタ分析に用いた。[2] 系統的レビューは関連する研究を整理する方法、メタ分析は複数の研究結果を統計的にまとめる方法である。この区別があるため、496人全員から同じ効果量を計算したと受け取らない。若い女性だけをまとめた結果として扱わず、18〜39歳の女性の変化量を直接表す数字とは区別する。[2]

統合された摂取エネルギーの差は、対照条件より385 kcal多いという結果だった。95%信頼区間は252〜517 kcalで、推定値にはこの幅が伴う。[2] これは睡眠不足になった人全員が同じ量だけ食べるという意味ではない。研究群をまとめた差であり、個人の翌日の献立にそのまま加算する数値ではない。

一方、総消費エネルギーと安静時代謝には有意な変化がなかった。食事の内訳では脂質の摂取が多く、たんぱく質は少なくなったが、炭水化物には影響が認められなかった。[2] 「寝不足だから甘いものだけが増える」と限定するより、食べる量と構成がどう変わったかを見る方が、この結果に沿っている。

このメタ分析は、睡眠不足によって摂取側が増え、消費側がそれに見合って増えない収支が、長期的な体重増加に寄与しうると結んでいる。[2] ただし、短い介入での食事量の差を積み上げ、将来の体重を計算する読み方は避けたい。食べた差の数字と、長期の体重変化の実測は別の結果である。

夜更かしの翌日に食事量が気になったとき、代謝を上げる行動をさらに追加する前に、前夜の睡眠と食事を並べて振り返る余地がある。これは食欲を責めるための記録ではない。介入研究で摂取量が増えたという結果を、意志の強弱だけで片づけないための視点だ。[2]

食事量が増えたという結果を読むときには、空腹感と実際に食べた量も分けたい。このメタ分析が示した385 kcalは摂取エネルギーの差であり、「その分だけ強い空腹を感じた」という感覚の尺度ではない。[2] 昼食後にまだ何か食べたい日と、気づけば間食が増えていた日を、自分の振り返りで別々に書き留めるのも一案だ。食欲という言葉だけで全部を代表させない。

研究の結果を自分の生活へ移すなら、まず比較の相手を確かめる。短い睡眠の条件と対照条件との差であって、昨日の自分と今日の自分との差を直接測ったものではない。[2] 昨夜の睡眠だけで、その日の食事のすべてを説明しようとする必要もない。立川駅で夕食を選ぶときに思い出したいのは、数字どおりに食べたかを採点することより、睡眠を含めた生活の背景を一緒に見る姿勢である。

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翌朝の安静時代謝が下がった実験の条件

健康な成人男女を睡眠制限群36人と対照群11人に無作為に分けた試験では、睡眠制限群は毎晩4時間の睡眠を5晩続け、その後に12時間の回復睡眠を取った。対照群の睡眠は毎晩10時間だった。[3] 日常の少し遅い就寝をそのまま再現した条件ではなく、かなりはっきりと睡眠を短くした比較である。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるより、男女を含む実験条件での結果として読む。[3]

睡眠制限後の朝の安静時代謝は2.6%低下し、回復睡眠後には基準時点の水準へ戻った。対照群では安静時代謝に変化がなかった。[3] この試験は、短い睡眠が続いたあとに朝の消費が下がる可能性を示す。ただし、2.6%という差はこの条件の結果であり、昨夜の就寝が遅かった人の代謝低下率ではない。

重要なのは、回復後に「元より高くなった」ではなく「元の水準へ戻った」点だ。[3] 睡眠を取り戻すことと、代謝を際限なく引き上げることは違う。休息を不足分の埋め合わせとして考えるなら、数値の意味を取り違えずに済む。

研究の対照条件に10時間、回復条件に12時間という数字があっても、それを全員の毎晩の目標にはできない。[3] 研究で差を作るための睡眠条件と、個人が日常で必要とする睡眠の決め方を混同しないことだ。眠る時間を長くすればするほど利益が増える、という用量の関係を、この試験から作らない。

女性の試験では安静時も食後も有意差がなかった

非肥満で健康な閉経前の女性10人を対象とする無作為化クロスオーバー試験は、同じ参加者が短い睡眠と通常の睡眠の両方を経験する設計だった。年齢は22〜43歳で、毎晩4時間と8時間の条件を比較し、3晩後に測定している。[6] 18〜39歳の女性と年齢が重なるものの、それより上の年齢も含む小規模な実験として読む必要がある。

空腹時の安静時代謝は、短い睡眠で毎分1.01 kcal、通常の睡眠で毎分0.97 kcalだったが、その差は統計的に有意ではなかった。[6] 数字だけを見て「短く眠る方が代謝は高い」とは読めない。有意差のなかった結果を、自分の望む方向の小さな数字だけで結論に変えない姿勢が必要だ。

高脂肪の液体食を取ったあとの消費や、食事に伴う熱産生にも有意な違いは認められなかった。[6] この対象と条件では、食後に使うエネルギーの変化が短い睡眠と肥満の関係を説明する主要な要因だという仮説は支持されなかった。[6] 寝不足のあとに食べたら、必ず食後の消費まで鈍くなる、とはいえないのである。

食後の検査で使われたのは高脂肪の液体食で、食事に伴う熱産生は食後6時間にわたって評価された。[6] この結果を、いつもの朝食や仕事帰りの夕食なら何を食べても同じ、と広げるのは早い。食事の内容をそろえて睡眠条件を比較した結果として読むと、日常の献立の優劣を決める研究とは役割が違うことが分かる。

低下した試験と違うから、どちらかが間違いだと決める必要はない。対象、人数、睡眠を短くした期間、測定条件がそろっていない。[3][6] 研究の違いを消して「寝不足は代謝を下げる」と一本化するより、低下する実験条件も、変化が検出されない条件もあると覚える方が正確だ。

数字で読む睡眠不足と代謝

17研究・496人:系統的レビューの対象であり、全員が統合解析の対象ではない。[2]

385 kcal:部分的な睡眠不足後の摂取量の統合された増加。95%信頼区間は252〜517 kcalだった。[2]

2.6%低下:毎晩4時間の睡眠を5晩続けた実験後の朝の安静時代謝の変化。[3]

10人:女性のクロスオーバー試験の参加者数。安静時代謝と食事に伴う熱産生に有意差はなかった。[6]

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