レッグレイズで膝を伸ばすと腰が気になり、曲げると腹筋を使えていない気がする。そんな迷いを、脚を動かす股関節と腰を支える腹筋の分担から考える。若い男性の筋活動研究や股関節と腰の連動を調べた研究を読み、膝の角度だけで効果を決めない見方と、自宅で負担を調整する際の観察点を示す。
夜、床にマットを敷いて脚を上げる。動画の人は膝を伸ばしているのに、自分は少し曲げたくなる。曲げると続けられそうだが、これでは腹筋運動の手抜きなのか。その迷いでは、膝の見た目と、お腹の筋肉が担う仕事を分けて考えたい。膝を曲げて脚を浮かせた条件でも、腹筋の活動が増えた比較研究があるからだ。[3]
膝を曲げる形は、負担を調整する候補として扱ってよい。ただし「伸ばす形に比べて何割楽になる」「必ず腰を守る」とは決めつけない。曲げた膝そのものより、脚をどこに置き、どこを支え、腰や骨盤をどう動かすかまで見る必要がある。膝を曲げた腹筋運動同士でも、動き方によって腹筋と股関節を曲げる筋肉の活動は異なる。[5]
ここで答えるのは、仰向けで脚を上げ下げするときの負担の選び方である。座って上体と脚を支える姿勢は既存記事「ヨガの舟のポーズは膝を曲げてもよい?脚を伸ばす前に知りたい負荷の読み方」に譲る。「お腹 痩せ レッグレイズ」と検索して来た人にも、まずは体型の採点を脇に置き、脚と腰の動きを観察する時間にしてほしい。

膝を曲げても、お腹の仕事はなくならない
膝が曲がっていると、腹筋を休ませているように見えるかもしれない。しかし、見た目がコンパクトであることと、体幹を支える仕事がないことは別である。体幹とは胴体の部分を指す。脚を浮かせた姿勢で別の運動を行う場合にも、その姿勢を支えるための腹筋活動が生じることが比較実験で示されている。[3]
若い男性20人を対象にした研究では、ベンチに寝て重りを押す運動について、足を地面につける条件と、股関節を自分の力で曲げて膝を90度にした条件を比較した。使った重さは、最大で持ち上げられる重さの60%だった。股関節と膝を曲げた条件では、腹直筋や外腹斜筋を含む測定対象の筋活動が有意に高かった。男性を対象とした押す運動の比較であり、18〜39歳の女性のレッグレイズに同じ活動差が生じるかは、この結果だけでは判断できない。[3]
腹直筋はお腹の前側、外腹斜筋はお腹の側面にある筋肉である。この研究では筋電図、つまり筋肉の電気的な活動を記録する方法を使っている。研究者らは、脚を浮かせて押すときに体幹を安定させる必要があることや、股関節を曲げる筋肉による腰への牽引に対応することから、腹筋の活動が増えたと説明している。[3]
大切なのは、比較の相手が「膝を伸ばして浮かせた脚」ではなく「地面につけた足」だった点だ。この実験が比べたのは足の支持の有無であり、レッグレイズの膝曲げと膝伸ばしの優劣は比較の範囲外だ。それでも、膝が曲がっているから腹筋の仕事も消える、という見方には修正が必要だ。足の支えをなくすこと自体が、運動の条件を変えていたのである。[3]
自宅で確かめるなら、膝を曲げているかだけを採点しない。足が床にあるのか、空中にあるのか、太ももがどこを向いているのかを言葉にしてみる。これは研究と同じ運動を再現する指示ではなく、自分が何を変えたかを見失わないための整理だ。膝の角度だけを残したメモでは、足の支えという大きな違いが抜け落ちる。[3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
脚を上げる動きと、胴体を丸める動きは違う
「腹筋運動」という名前でまとめられていても、主に股関節を曲げるのか、胴体を丸めるのかで筋肉の分担は変わる。股関節の屈曲とは、太ももを胴体へ近づける方向の動きである。脚が動いたことと、お腹がどんな仕事をしたかを同じ意味で扱わないことが、レッグレイズを考える出発点になる。[5]
トレーニング経験のある男性18人を対象とした比較研究では、膝を曲げた従来の上体起こしと、胴体を曲げることに焦点を当てた修正版を調べた。それぞれ30秒間繰り返し、腹直筋、外腹斜筋、大腿直筋の筋活動と、胴体や股関節の動きを測った。大腿直筋は太ももの前側にあり、この研究では股関節を曲げる側の筋肉として評価されている。男性のトレーニング経験者の結果であり、18〜39歳の女性に同じ筋活動の配分が当てはまるかは別に確かめる必要がある。[5]
従来型では大腿直筋の平均活動や、時間を通じて積み上げた活動量が大きかった。一方、修正版では腹直筋と外腹斜筋の平均活動や、積み上げた活動量が大きかった。動きも異なり、修正版では胴体の曲がりが大きく、従来型では股関節の曲がりが大きかった。膝を曲げた運動という共通点があっても、実際の動作は同じではない。[5]
さらに、外腹斜筋は最大の活動では従来型が大きいのに、平均や積み上げた活動量では修正版が大きかった。「どちらの腹筋活動が高いか」という問いさえ、瞬間の山を見るか、動いている間を通して見るかで答えが変わる。運動動画の最も苦しそうな瞬間だけを切り取っても、研究の比較とは重ならない。[5]
この実験は上体起こしの比較であり、脚を上げる運動の成績表ではない。レッグレイズへ持ち帰れるのは、名前や膝の形ではなく、股関節と胴体の動きの配分に注目する姿勢だ。下腹が熱く感じる、太ももの付け根が疲れる、といった感覚を記録するのはよいが、その感覚だけで特定の筋肉の活動量を測れたことにはしない。[5]
脚の高さには、股関節と腰の動きが重なる
脚が高く上がれば、その分だけ股関節がよく曲がったと思いやすい。だが、太ももの動きには腰と骨盤の動きも関わる。健康な若い成人22人と子ども22人を調べた研究では、片側の股関節を自分の力で曲げる動作を映像から分析した。上げ始めの3〜5度ほどを除くと、股関節と腰は同時に動いていた。子どもを含む集団での動作分析であり、18〜39歳の女性の両脚レッグレイズに同じ比率が当てはまるかは確認が必要だ。[10]
平均すると、股関節の3度の動きに対して腰の1度の動きが伴った。また、脚を上げる途中では股関節の相対的な寄与が減り、腰の寄与が増えた。これは全員に守らせるフォームの比率ではなく、その対象と課題で観察された平均的な関係だ。「腰は動くはずがない」として脚の高さだけを追うと、動きを読み違える。[10]
脚を下ろす局面も、上げる局面の単純な逆再生ではなかった。股関節がほぼ出発位置へ戻っても、腰は明らかに曲がった状態に残っていた。したがって、脚が同じ場所に戻ったから体全体も開始時と同じ、とは限らない。この実験の結果は、反復運動を観察するときに、戻る途中や戻った後まで目を向ける理由になる。[10]
別の動作分析研究は、健康な高齢者34人の立位での脚上げを扱っている。ここでも太ももを上げる間、股関節と腰は連動した。上げる局面の太ももの総運動のうち、腰の寄与は26.6%だった。研究者らは、股関節の可動域を測る場合や腹部・股関節・腰の運動を教える場合に、この相互作用を考慮する必要を指摘している。高齢者の立位動作の結果であり、18〜39歳の女性が仰向けで行う脚上げにこの割合をそのまま当てはめることはできない。[6]
若い人の研究と高齢者の研究は、どちらも股関節だけを切り離して見ない点では一致する。ただし、対象の年齢や動作条件が違うため、数値を並べて「この年齢なら腰をこの割合だけ動かす」と処方することはできない。寝た状態の両脚上げに、そのまま当てはめる数値でもない。ここでは、脚の軌道と腰の様子を一緒に見るための知識として受け取る。[6][10]
脚を上げたところで写真を撮ると、動作の途中にあった違いは消える。若い成人と子どもの研究で、上げる間に腰の寄与が増え、戻すときには腰の曲がりが残ったという結果は、静止画の読み方にも関わる。同じ高さに足が写っていても、そこへ至った経路や腰の状態まで同じとは限らない。動画を見返すなら、到達点の高さだけを比べず、出発から帰着までを見たい。[10]
また、高齢者の立位の研究では、股関節と腰の動きの比率に大きなばらつきがあった。平均値の26.6%は、人ごとの違いを消した正解ではない。家族と同じ高さまで脚を上げようとしても、その高さに含まれる股関節と腰の分担は人によって異なる。年齢による違いも含む結果を、柔らかい人と硬い人の優劣の判定に使わないようにしたい。[6]
指導を受けるときにも、「脚がここまで上がる」だけでなく「腰も一緒に動いているかを見たい」と伝えられる。股関節の可動域と腰の寄与を区別する研究の視点を、相談の言葉へ変えるのである。自分で特定の筋肉の弱さを診断するより、実際の動作を共有する入口になる。[6][10]
数字で読む脚と腰の分担
20人:膝を曲げて脚を浮かせる条件と、足を地面につける条件を比較した若い男性の人数である。[3]
90度:上の比較で使われた膝の角度であり、全員のレッグレイズの正解角度ではない。[3]
18人・30秒:従来型と修正版の上体起こしを比べた男性の人数と、それぞれの反復時間である。[5]
22人ずつ:股関節と腰の連動を調べた若い成人群と子ども群の人数である。[10]
26.6%:高齢者の立位脚上げで、太ももの総運動に腰が寄与した割合である。[6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






