ふくらはぎの内側や外側を意識して、つま先を開いたり閉じたりする。その違いは筋肉の働きに表れるのか。かかと上げの筋活動を比べた研究と、若い男性を対象に筋厚を測った試験を読み、結果が一致する部分と異なる部分、筋活動と筋厚を分けて考える視点、日常で向きを試す際の見方を整理する。
洗面台の前で、つま先を少し開いてかかとを上げる。正面に戻すと、同じ動きでも意識する場所が違って感じられた。「ふくらはぎの内側を使いたい」と思った途端、床に置く足の向きが気になり始める。
答えの芯は、向きによってふくらはぎの筋肉の働き方が変わる場合がある、ということだ。外向きでは内側の筋活動が外側より高い結果が複数の研究で見られる。一方、内向きにすれば必ず外側だけを強く使える、とまではそろっていない。[4][5]
もうひとつ確かめたいのは、測ったものの違いだ。その場の筋活動を測る実験と、運動を続けた後の筋肉の厚さを測る試験では、答えている問いが違う。足の向きによる働きの配分と、継続後の変化を順に見ていこう。[1][4][5]

外へ向けると内側が働く、という話には根拠がある
ふくらはぎの腓腹筋には、内側頭と外側頭と呼ばれる部分がある。ここでは内側頭を内側、外側頭を外側と書く。足の向きで両者の働きが変わるかを調べる研究では、筋電図という筋肉の電気的な活動を記録する方法が使われている。[4][5]
若い成人33人を対象にした横断研究では、つま先を内へ向けた場合と外へ向けた場合を比較した。立った姿勢でのかかと上げに加え、うつ伏せで抵抗に逆らって膝を曲げる動きも調べている。外向きでは、どちらの姿勢でも内側の活動が外側より高かった。内向きでは、両者の活動に統計的な差は認められなかった。若い成人の結果だが、18〜39歳の女性だけの傾向として扱うには、対象の違いを考慮する必要がある。[4]
この結果で大切なのは、比較の相手である。「外向きの内側が外側より高い」と「外向きの内側が正面向きの内側より高い」は別の問いだ。この研究の主要な結論は、外向きのときに内側と外側の間で差があったというものだ。その文を、向きを変えるだけで内側の働きが何倍にもなる話に広げることはできない。[4]
また、内側の活動が高かったからといって、外側が休んでいたことにはならない。研究が比べているのは活動の大小である。つま先は筋肉の電源スイッチではない。どちらかを点灯させ、もう片方を消す仕組みとして覚えるより、働きの配分に違いが出ると考えるほうが結果に合う。[4][5]
測り方にも目を向けたい。この横断研究では、電極を内側と外側の筋肉のふくらみに置き、正面向きのかかと上げで最大限力を出したときの値を基準に活動を比べている。記録した電気信号を基準値に対する大きさとして扱う方法であり、足の写真を見て内側が働いたと判定したわけではない。目で見える向きと、測定された活動を分けておくと、形だけから結果を決めつけずに済む。[4]
既存記事「ふくらはぎの筋トレは膝を伸ばす?女性が迷う寝ながらの運動とつま先立ちの違い」は、膝の姿勢と運動の選び方を扱っている。ここでは膝を曲げるかどうかの優劣へ話を広げず、かかとを上げる際の足の向きと、内側・外側の比較を追う。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
内向きの結果がそろわない理由は、条件ごとに読む
男女10人ずつ、計20人を対象にした別の実験では、内向きで外側の活動が内側より高かった。対象者には筋力トレーニングの経験があり、正面・内向き・外向きで、重りを使ったかかと上げを行った。外向きでは内側が優位、内向きでは外側が優位という結果である。18〜39歳の女性にも参考になるが、筋トレ経験者の結果を初心者へ直接当てはめることはできない。[5]
この実験は、体重の130〜135%に相当するフリーウエイトを使い、高さ3.81cmの台の上で行われた。各向きで10回実施し、そのうち適切に行えた5回の筋電図を分析した。洗面台の前で自分の体を持ち上げる場面とは、負荷も足元も異なる。参加者の平均年齢は23.7歳で、男女を含むが、初心者だけを集めた研究ではない。[5]
かかとを上げる局面と下ろす局面を分けて分析しても、足の向きと筋肉の組み合わせによる違いが認められた。つまり、この研究での違いは、上げる瞬間だけを切り取ったものではない。ただし、筋活動の差がその後のトレーニング成果の差になるかは、この実験の結果とは切り分ける必要がある。[5]
内向きで外側が優位だった実験と、内向きでは内外の差がなかった横断研究は、並べて読むべき結果だ。どちらかを消して「研究で証明」と言い切ると、足の向きにできることを大きく見積もってしまう。外向きで内側が優位になる点には共通性があるが、内向きの結果は同じではない。[4][5]
筋トレ経験者の実験でも、電気信号は最大限の力を出した静的な収縮の値を基準にしている。さらに、反復の中から分析する動きを選び、上げ下げそれぞれの局面を平均して比較した。研究の「活動が高い」は、こうした手順を通した比較の表現である。その場で感じる熱さや、動作後の疲れの評点と同じ尺度ではない。結果を生活へ持ち帰るときも、足の向きで活動に差が出たという部分までを受け取るのが妥当だ。[5]
日常に置き換えるなら、動画の足形をまねたのに外側へ特別な感覚がないとき、自分の動きが必ず間違っているとは考えなくてよい。そもそも内向きなら誰でも同じ配分になる、という結果ではないからだ。研究の違いを知る意味は、正解の足形を増やすことより、ひとつの形を過信しない見方を持つことにある。[4][5]
続けた後は、内側と外側の筋厚の変化を読む
その場の活動を測る研究とは別に、若い男性22人を対象とした無作為化比較試験がある。平均年齢は23歳で、足を外向き、内向き、正面向きにした条件で、ふくらはぎのトレーニングを9週間行った。左右の脚それぞれに条件を無作為に割り当て、超音波で内側と外側の筋厚を測っている。男性を対象にした結果であり、18〜39歳の女性で同じ増加率になるかは別に確かめる必要がある。[1]
実施したのは、座位の水平レッグプレスマシンを使った片脚ずつのカーフレイズ、つまりかかと上げである。全身の筋力トレーニングは週3回で、ふくらはぎの種目は最初の3週間に20〜25回を3セット、その後は4セットだった。足の向きだけを思いつくたびに変えた実験ではなく、決めた運動を継続した試験である。[1]
内側の筋厚は、外向きで8.4%、内向きで3.8%、正面向きで5.8%増加した。外側の筋厚は、外向きで5.5%、内向きで9.1%、正面向きで6.4%増加した。外向きと内向きの間では、増加の大きさに統計的な差が認められた。外向きは内側、内向きは外側の増加が大きいという結果である。[1]
ここには、足の向きが長期の変化にも関わりうる手がかりがある。同時に、どの条件でも内側と外側の筋厚は増えている。片側だけを育て、反対側を変えずに残した結果ではない。また、示された有意差は外向きと内向きの比較であり、正面向きを効果のない置き方として扱う読み方も適切ではない。[1]
対象が若い男性で、マシンを使った片脚の運動だった点も残しておきたい。自宅で重りなしの両足のかかと上げを行う場面とは、負荷も運動の条件も異なる。筋厚を増やす目的で読むなら、足の向きだけでなく、使った器具と継続の条件も一緒に見る必要がある。研究の数字には、何の寸法かという名札が要る。[1]
筋厚の増加率の大小も、測る場所と組み合わせて読む必要がある。内側の8.4%と外側の9.1%を並べて、内向きのほうが脚全体を大きくしたと判定することはできない。それぞれ別の部位での増加率だからだ。この試験が比べたのは、内側の変化が向きによってどう異なるか、外側の変化がどう異なるかである。ふくらはぎ全体の輪郭や周囲の寸法の話へ、数字だけを移動させないようにしたい。[1]
また、外向きでは内側8.4%に対し外側5.5%、内向きでは内側3.8%に対し外側9.1%という組み合わせだった。これは「狙った側以外も変化した」という読み方につながる。目的の部分を意識する工夫に意味がありうることと、ほかの部分を変えずに済むことは別だ。体形の一部だけを精密に指定する手段として足の向きを扱うより、同じ種目の中で刺激の配分を調整する候補として捉えるほうが、測定された変化に忠実である。[1]
数字で読むつま先の向きとふくらはぎ
33人:外向きで内側の筋活動が外側より高く、内向きでは差がなかった横断研究の参加者数である。[4]
20人:男女10人ずつの実験では、内向きで外側が、外向きで内側が優位だった。[5]
9週間:若い男性の試験で、足の向きを分けて筋厚の変化を追った期間である。[1]
8.4%と3.8%:内側の筋厚増加率を、外向きと内向きで比べた値である。[1]
9.1%と5.5%:外側の筋厚増加率を、内向きと外向きで比べた値である。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






