食欲をそそる色は食べ慣れた料理で違う?色への期待と経験を研究で読み解く

食欲をそそる色を探すとき、赤や黄色という色名だけで選べるだろうか。同じ塩分でも評価が変わったしょうゆ、慣れた豚肉が好まれた比較研究から、料理への期待と経験の関係を読む。においと色の結びつきや記憶の実験も手がかりに、見た目の好みと食べる量を分け、いつもの食卓で確かめる方法を考える。

食卓に並べた、いつもの煮物が今日は妙に薄い色に見える。「味も薄いのかな」と、口に入れる前に考える。食欲をそそる色を探すなら、こんな料理ごとの予想を外せない。同じ塩分のしょうゆでも、色の濃さによって塩味への期待や好ましさが違った実験がある。[2]

ただし、濃いほどよいという話ではない。その実験で色と塩味の好ましさが最も高かったのは、中程度の濃さだった。[2] また、豚肉の比較研究では、測定上の柔らかさだけで消費者の好みを説明できず、食べ慣れとの関係が指摘された。[3] 「何色なら食欲が上がるか」という問いには、何の料理を、誰が見ているのかを添えたい。

既存記事「食欲をそそる色は鮮やかならよい?色相と彩度で変わる料理への期待を読む」に色そのものの違いを譲り、ここでは食べ慣れた料理への期待を扱う。色の評価、味の評価、実際に食べた量は区別する。しょうゆの研究で測ったのも、塩味への期待や好ましさ、感情であり、食事量の増加という結論ではない。[2]

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食欲をそそる色には、料理の名前が付いている

しょうゆの茶色を見て「塩辛そう」と考えるとき、その色は単独の色見本ではない。容器の中にあるものがしょうゆだと分かったうえでの期待である。消費者を対象にした実験では、しょうゆの色の強さと塩味への期待に有意な相関があった。[2] 色を手がかりに味を予想する場面として読むと、日々の食卓に近づく。

ここでいう期待は、食べる前に「どんな味がしそうか」と見積もることだ。好ましさは、その色や塩味をどれほど好きだと評価するかである。[2] 両方とも食事に関わるが、同じ質問ではない。塩辛さの予想と、好きかどうかの判断は別だ。実験を読むときも、期待の強さと好みの点数を混ぜずに追う必要がある。

例えば、買ってきた煮物を見て「いつもより薄い」と感じたら、その言葉を少し分けてみる。「色が薄い」のか、「味が薄そう」なのか、「食べたら薄かった」のか。それぞれを書く欄を分ければ、見た段階の予想と食べた後の感想を区別できる。これはしょうゆの実験を日常で考えるための整理であり、煮物でも同じ効果が出ると約束する方法ではない。[2]

色の名前だけを集めた献立表より、「いつもの料理をどんな色だと思っているか」という問いの方が、今回の研究には合っている。においと色の結びつきを扱ったレビューでも、学習した連想が中心的な説明となり、においへの慣れや、その発生源を名付けやすいかどうかが関連づけられている。[6] 色への期待には、食べ物を知っている経験が関わりうるのである。

ただし、このレビューが主に扱ったのは食事以外の場面でのにおいと色の対応だ。[6] 台所で同じにおいを嗅げば必ず食べたい気持ちが強まる、とまでは進めない。色を経験から切り離して考えないための手がかりと、食欲を増やす実証とは、役割が違う。

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同じ塩分のしょうゆでも、中程度の色が好まれた

しょうゆの実験には消費者100人が参加した。試料は薄い色、対照、中程度、濃い色の4種類で、塩化ナトリウム濃度はすべて12%だった。塩分をそろえて色を変え、塩味への期待、感覚的な好ましさ、感情を調べた研究である。[2] 塩分を共通にしたところが要点だ。消費者を対象にした結果であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、食経験や料理の違いを考慮する必要がある。[2]

色の好ましさの得点は、中程度の試料で6.17、薄い試料で3.98だった。塩味の好ましさも、中程度で6.30、薄い試料で5.78である。[2] この数字を読むとき、「6.30の塩味だった」と言い換えてはいけない。塩味の強さそのものではなく、その塩味への好ましさの得点だからだ。色の好みの差と塩味の好みの差も、別々の評価として見る。

中程度の試料は「興味がある」という肯定的な感情と結びつくことが多く、その割合は36%だった。一方、薄い試料には嫌悪、退屈、不安といった否定的な感情が関連づけられた。[2] 薄い色ならいつでも軽やかで好印象、という読み方は、このしょうゆの結果には合わない。この比較では、色を薄くした試料への評価が低かった。

それでも、最も濃い色を選べばよいとはならない。好ましさで最高点だったのは中程度だった。[2] 濃さと塩味への期待に関係があっても、期待を強め続ければ好みも上がり続ける、という直線にはできない。「味がしっかりしていそう」と「自分が好きな味でありそう」は、食卓では似た言葉でも、評価としては分けたい。

この実験で色をそろえたのは、しょうゆという食品の中での比較である。[2] しょうゆの濃さの結果を、そのまま白いご飯や果物の色選びに移すことはできない。また、参加者が何を食べ慣れていたためにこの色を好んだのかまで、ここで決めつけない。実験が直接支えるのは、同じ塩分条件でも色に応じて期待や評価が変わった、という点だ。[2]

食べ慣れは、測定した品質と好みの間に入る

料理への慣れを考える材料になるのが、スペイン、イタリア、デンマークの生産システムに由来する豚肉を比べた研究である。ロース138検体の性質を調べ、加熱した肉についてデンマークの消費者102人による受容性の評価を行った。[3] 食品を受け入れて好むかどうかを、肉の測定値と並べて検討した比較研究だ。

スペインの試料は色が濃く、肉の中の脂肪が多く、焼いた風味が強かった。イタリアの試料は機器で測った柔らかさで最も優れていた。一方、デンマークの消費者は、全体の好ましさ、風味、柔らかさの評価でデンマークの試料を有意に好んだ。[3] 機器が測る柔らかさと食べ手の好みでは、順位が異なった。

研究では、この好みに食べ慣れによる偏りが表れていると解釈している。また、異なる生産システムをまたいで消費者の好みを予測できる単独の理化学的指標はなかった。[3] 色が濃い、脂肪が多い、柔らかいといった特徴を、どれかひとつ取り出して「これが好まれる条件」と決める難しさが見える。夕飯の好みは、検査成績表の順位だけでは並ばない。

ただし、これは肉の色だけを変えた実験ではない。生産システムによって、肉の性質や風味なども違っていた。[3] したがって「見慣れた肉の色が好みを引き起こした」と因果を絞ることはできない。食べ慣れと受容性の関係を考える材料として使い、色だけの効果の証拠にはしないのが正確な読み方である。

さらに、評価したのはデンマークの消費者である。研究自体も、この集団の文脈で好みの結果を解釈する必要を示している。[3] 18〜39歳の女性の食卓へそのまま当てはめず、地域や食経験の違いも考える必要がある。[3]家族と同じ料理を見ていても好みが一致しないとき、誰かの舌の正解を決めるより、普段何を食べているかを聞くための研究として読みたい。

同じものを比べる研究と、性質の異なる食品を比べる研究では、答えられる問いも違う。しょうゆでは塩分を共通にして色を変えたため、色の条件と評価の関係を追える。[2] 一方、豚肉では国ごとの生産システムに由来する色、脂肪、風味などを含んだ違いを比べている。[3] どちらも食べ物の評価を扱うが、同じ種類の証拠として足し算しない。

例えば「いつもの肉の方が好きだった」という感想を聞いたら、何を見てそう思ったかだけでなく、食べた風味や柔らかさも聞ける。豚肉の比較で、消費者は全体の好ましさだけでなく、風味と柔らかさについても評価していた。[3] 家庭の感想を研究結果に一致させるためではない。「好き」の中身を色だけに狭めずに受け取るための問いになる。

この区別は、料理を作る側にも役立つ。見た目を変えた日の反応がよくても、同時に味付けや食材を替えたなら、色のおかげと決める前に条件を振り返れる。しょうゆの研究で塩分をそろえたことと、豚肉の研究で複数の性質を測ったことは、それぞれ異なる比較の組み立てを示している。[2][3] 家の食卓に採点表は要らないが、何を変えたかを思い出す余地は残しておきたい。

数字で読む色と食べ慣れ

100人:色の異なるしょうゆを評価した消費者数である。[2]

12%:しょうゆの試料では、この塩化ナトリウム濃度にそろえた。[2]

6.17と3.98:中程度と薄いしょうゆの、色の好ましさの得点である。[2]

102人:加熱した豚肉の評価には、デンマークの消費者が参加した。[3]

3日後:色と予想の一致を調べる記憶実験で、遅れて再認を調べた時点である。[19]

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宮川涼 Founder

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