体力をつけるランニングは人の後ろが楽?風よけの負荷と速さを分けて読む

体力をつけるために走るとき、人の後ろで楽に進めたら練習の効果も変わるのか。風よけによる速さと体力の向上を混同しないために、姿勢と酸素消費、抵抗と移動の効率を調べた研究を読む。競技者の自転車や水泳の結果をランニングへ移せる範囲を考え、仲間と走る日の記録の残し方につなげる。

向かい風の道で、友人の背中を追って走る。横に並んだ途端、さっきまでの楽さが気になる。そのとき「体力がついた」と思ってよいのか、それとも前の人が風を受けているだけなのか。走り終えた時計の数字だけでは、この問いは片づかない。

先に答えると、人の後ろを走ることで何%楽になるかを、ここで取り上げる研究から決めることはできない。抵抗や姿勢を変えた実験でも、速さ、酸素消費、本人が感じるきつさは必ずしも同じ方向へ動かない。だから、楽に進めた経験と、体力そのものが伸びた判断を分ける必要がある。[4][16]

屋外とマシンの違いは既存記事「ダイエットのランニングは屋外とマシンで同じ?風とベルトで変わる負荷の読み方」に譲る。本記事で考えるのは、屋外で人と走るときの位置と、その日の成績の解釈である。

歩調や靴の話は既存記事「体力をつけるランニングの歩調で効率は分かる?靴と坂で変わる消費を読む」に譲る。ここでは、人の後ろという位置を手がかりに、外から受ける抵抗が違う日の成績をどう受け止めるかを考える。水泳の抵抗低下を、そのまま道路の風よけの数字に置き換えないことが出発点である。[4][13]

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風よけの話では、何を同じにしたかが先である

誰かの後ろで抵抗を避けながら進む走り方は、一般にドラフティングと呼ばれる。ただし、知りたいことは名称より比較の中身だ。同じ速さで楽になるのか、同じきつさで速くなるのか。それとも、走り終えたあとに余裕が残るのか。これらを同じ「効果」という箱に入れると、練習の評価が曖昧になる。

この区別を考える材料が、競泳選手14人で通常の水着と体を覆う範囲の違う水着を比べた実験である。水中の流れを作る設備で抵抗や酸素摂取量を測り、プールでは泳ぎの成績を調べた。全身を覆う条件では受動抵抗が6.2%±7.9%、腰から足首までを覆う条件では4.7%±4.4%低かった。抵抗という外側の条件に差があった実験だ。対象は競泳選手であり、18〜39歳の女性が日常的に走る場面へ、この効果の大きさをそのまま当てはめることはできない。[4]

一方、最大下の泳ぎ、つまり全力より低い強さで測ったエネルギーコストは、それぞれ4.5%±5.4%、5.5%±3.1%低かった。エネルギーコストとは、移動に必要なエネルギーの負担を表す指標である。抵抗が何%減ったかと、移動の負担が何%減ったかは、同じ値ではなかった。[4]

さらに全力で泳ぐ成績には、通常の水着と比べて全体として3.2%±2.4%の改善があった。ここには「抵抗」「全力以下での負担」「全力時の成績」という別々の測定が並んでいる。負担が軽くなることと、その軽さを速さへ使うことを、研究でも分けて扱っているわけだ。[4]

この水泳の数字を、友人の背中について走るときの節約率に使うことはできない。水着を変える操作と、人の前後の位置を変える操作は違う。水中の結果は、抵抗の変化と体の反応を別々に確かめる考え方を示すものであって、道路上の答えを代行するものではない。[4]

例えば、今日は友人についていけたから次回も同じ速さを当然とする、という予定の立て方には注意したい。今回知りたいのが走る能力の変化なら、前後の位置も含めて条件を書き残す方が比較しやすい。速さを達成した事実は大切にしながら、その理由まで時計に答えさせないのである。

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酸素消費が同じでも、きつさまで同じとは限らない

酸素摂取量は、運動中に体が取り込んで使う酸素の量である。最大酸素摂取量は、強い運動で取り込める酸素量の上限を表す。一方、ある速さで運動している最中の酸素摂取量は、その場の負担を見る指標だ。自転車の姿勢を比べた実験では、最大値に対する割合をそろえて測定が行われている。[16]

対象は男性競技自転車選手9人だった。上体を起こす姿勢、下ハンドルを使う姿勢、空気抵抗を意識した姿勢を無作為な順番で比べ、最大酸素摂取量の70%に相当する運動を各10分行った。競技者を対象とした短時間の条件比較であり、18〜39歳の女性のランニングに、姿勢ごとの反応をそのまま当てはめることはできない。[16]

下ハンドル姿勢では、上体を起こした姿勢より換気量、血中乳酸、主観的運動強度が高かった。主観的運動強度とは、本人がどれほどきついと感じたかを数値にしたものだ。その値は13.6±1.2と12.1±1.5だった一方、酸素摂取量や心拍数には姿勢間の変化がなかった。[16]

この結果は、「酸素の数字が同じなら本人の負担感も同じ」という見方に合わない。息として出入りする空気の量と、取り込む酸素の量も別の指標である。姿勢を変えれば何でも省エネルギーになるのではなく、何を測るかによって見える違いが変わる。[16]

ここからランニングの猫背を勧めたり、前の人に近づく姿勢を決めたりはできない。自転車上の体の支え方を、そのまま走りへ移せないためだ。役立つのは、体感と測定値を対立させず併記する発想である。「脈は似ていたがきつかった」という記録を、矛盾として消す必要はない。[16]

友人と話しながら走った日は楽しかった、という感想も残してよい。ただ、その感想を空気抵抗の測定結果に変換する必要はない。人と走る場面には、前後の位置だけでなく、その日の速さの選び方や立ち止まった場面もある。科学の言葉を足すほど正確になるとは限らず、起きたことをそのまま書く方が比較に役立つ場合がある。

もう少し厳密に読むなら、変わらなかった指標も結論に含める。姿勢の研究で酸素摂取量と心拍数が変わらなかったことは、体感の差が無意味だという意味ではない。同時に、体感に差があったから酸素の消費も増えた、と補うこともできない。測定項目ごとに結論を止める読み方が、風よけの話にも必要になる。[16]

抵抗を減らした利益は、道具と動き方にも左右される

水泳のウェットスーツを扱ったナラティブレビューは、17研究を取り上げている。ナラティブレビューとは、複数の研究を整理し、全体の傾向や論点を文章で検討する研究の型だ。多くは競泳選手やトライアスロン選手がプールで短・中距離を泳ぐ研究であり、日常のジョギングとは対象も環境も異なり、18〜39歳の女性の走行時に同じ改善幅が生じるかは、このレビューでは判断できない。[13]

このレビューでは、ウェットスーツによる成績の改善が報告され、その大きさは最大11%だった。ただし、浮力の増加、抵抗やエネルギーコストの減少、技術の変化が関係し、泳力やスーツの種類によって変化の程度が違うとされている。最大という言葉を外して「誰でも11%」と読むことはできない。[13]

また、選手が不快と評価することも多く、着用への慣れも関わると整理されている。外から見ると有利そうな条件でも、使う本人の感じ方まで自動的に良くなるわけではない。抵抗を減らす工夫を評価するには、移動の効率だけでなく、その条件で動き続けられるかを見る必要がある。[13]

比較の条件をそろえる重要性は、別種目の室内測定にも表れている。国内トップ水準のボート選手8人を対象に、抵抗設定を標準化して機種の異なるローイングマシンを比べた試験では、酸素消費、心拍数、漕ぐ頻度、主観的運動強度などの反応はほぼ同じだった。対象は競技水準の高い選手であり、18〜39歳の女性のランニングにも同じ反応が生じるかは別に確かめる必要がある。機種の違いに対して反応が似ていた点も、この試験の結果に含まれる。[17]

ここで大切なのは、差が出た研究だけを集めないことだ。姿勢を変えても酸素消費が変わらなかった自転車の試験も、機種が変わっても反応が似ていたボートの試験もある。外側の条件が違うという理由だけで、その日の体の負担が違ったと断定することはできない。逆に、見た目の動きが似ているだけで同じとも決められない。[16][17]

走る仲間の後ろに入った日には、「風よけになったはず」という説明を最初から完成させず、位置と体感を別々に残したい。研究の結果を日常へ使うとは、似た数字を借りることだけではない。まだ区別しておくべき項目を知り、記録の欄を増やすことでもある。

同じ速さを比べるのか、同じ努力で出せる速さを比べるのかは、記録を読む前に決めておきたい。水着の実験で全力時の成績と最大下のエネルギーコストを分けたのは、この区別に対応する。どちらか一方の改善を見て、もう一方も同じ割合で改善したと扱うことはできない。走る日の目的が違えば、時計の同じ数字にも別の意味が生まれる。[4]

数字で読む抵抗・姿勢・移動の負担

14人:水着の条件による抵抗と泳ぎの成績を比べた競泳選手の人数。[4]

4.5%±5.4%:全身を覆う水着で低かった泳ぎのエネルギーコスト。ランニングの軽減率ではない。[4]

9人:姿勢を変えて換気や酸素摂取量を比べた男性競技自転車選手の人数。[16]

17研究:ウェットスーツのレビューの対象。最大の改善値を平均の改善と取り違えない。[13]

8人:抵抗設定を標準化し、ローイングマシンの機種を比較した選手の人数。[17]

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