疲労回復の手作り飲料にビーツは使える?ゆでた後の成分と運動試験を読む

疲労回復の飲み物を手作りするとき、ビーツはゆでてもよいのか。硝酸塩を含む濃縮飲料の運動試験、ビーツ入りパンの血圧試験、皮や搾りかすのレビューを手がかりに、加熱した食品と研究用の飲料を比べる条件を読む。赤さや一杯の量だけで回復効果を決めず、家庭の調理で何を選べるかを考える。

ビーツをゆでた鍋の赤い汁を見て、実と汁のどちらを飲料に使うか迷う。運動帰りの一杯なら、せっかくの成分を残したい。ただ、赤い飲み物が完成したことと、疲れから戻る力が確かめられたことは別である。ビーツの濃縮飲料で運動中の成績が改善した試験はあるが、それは成分量を決めて運動前に飲ませた試験である。[1]

答えの芯は、ビーツを手作り飲料の材料として選ぶことと、その一杯に研究と同じ作用を期待することを分ける、である。ビーツ入りパンの試験では加工後の食品にも血圧への作用が認められたため、加工後の食品でも作用は確認されている。一方、その結果から家庭でのゆで方や疲労回復の配合を決めることもできない。[6]

既存記事「疲労回復にトマトジュースは役立つ?運動後の酸化指標と翌日の体感を読み分ける」には、トマト飲料と回復の問いを譲る。ここではビーツを調理して飲料にするとき、何をそろえれば運動試験と比較できるのかを考える。色、容量、成分量、測った結果を順に見ていこう。

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赤い一杯の量と、硝酸塩の量は同じではない

ビーツ研究に出てくる硝酸塩は、食事から摂取され、口の細菌によって亜硝酸塩へ、さらに体内で一酸化窒素へと変わる経路に関わる成分である。一酸化窒素は血管の働きに関係する。ビーツを飲めば赤い色がそのまま筋肉に届く、という話ではなく、食品中の成分が体内で変換される話なのだ。[6][7]

ここで硝酸塩と亜硝酸塩を同じ名前の略称として読まないことが大切である。健康な人を対象とした無作為化クロスオーバー試験では、硝酸塩を摂る条件と比較条件を同じ参加者が経験し、血漿中の亜硝酸塩や血圧などを比べた。摂取したものと、採血で増えたものは区別されている。クロスオーバーとは、参加者自身を比較の相手にもする試験の組み方である。[7]

その研究のビーツジュースの比較には、健康な参加者9人が加わった。飲料250mLに含まれる硝酸塩は5.5mmolで、水250mLと比較された。mmolは成分の量を表す単位であり、コップの容量とは違う。この試験を家庭の台所へ持ち帰るなら、「250mL飲めばよい」ではなく、「同じ容量でも含む成分量を確かめていた」と受け取る必要がある。[7]

別の運動試験で使ったのは140mLの濃縮ビーツ飲料で、硝酸塩は約12.5mmolだった。比較する飲料の硝酸塩は0.01mmolである。容量の小さい方が成分量も少ない、という並びにはなっていない。ただし別々の試験の数字なので、この違いをそのまま効果の強弱の順位にしてはいけない。[1][7]

家庭でビーツに水を加えて飲みやすくする場面を考えよう。コップに注ぐ量は目で追えるが、それだけでは研究と同じ硝酸塩を摂ったかどうかは判定できない。研究の飲料名を、自分のレシピ名に置き換えるだけでは条件がそろわないのである。比較のために必要なのは「ビーツ入り」という共通点の先にある、成分と摂取条件だ。[1][7]

さらに、体内での反応も全員同じとは限らない。硝酸塩を使った研究の事後解析では、開始時の血圧や血漿中亜硝酸塩の違いとともに、男女で血圧反応の差が示された。事後解析とは、試験後にデータを別の角度から調べる分析である。男性では血圧が下がり、女性では低下が認められなかったという分析であり、18〜39歳の女性にも男性と同じ低下を期待する根拠にはならない。摂取量に加え、開始時の体の状態も考える手がかりになる。[7]

同じ参加者を比較する試験にも、家庭の飲み比べとは違う役割がある。比較飲料を置くことで、単に何かを飲んだという出来事と、硝酸塩を多く含む条件の違いを分けようとしている。飲料を加えた日だけを眺めるより、何と比べて変わったかを追う設計なのだ。[1][7]

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加工したら無意味、という答えにはならない

「生でなければ成分が働かない」という考えを点検する材料になるのが、ビーツ飲料とビーツ入りパンを調べた研究である。正常な血圧の男性を対象に、無作為化、単盲検、クロスオーバーの食後試験が別々に行われた。単盲検は、試験条件について一方の立場の人に知らせずに比較する方法である。調べた中心は血圧で、運動後の筋肉の回復ではない。男性の試験であり、18〜39歳の女性に同じ血圧反応が生じるかは、この結果だけでは判断できない。[6]

飲料の試験には18人が参加し、ビーツジュース0、100、250、500gの条件を比べた。摂取後24時間の血圧を測ると、水の条件と比べて収縮期と拡張期の血圧が低下し、おおむね用量に応じた反応だった。収縮期と拡張期は、血圧表示でいう上と下の値である。ただし、ここで示された有意な差は、下がった幅の大きさをそのまま表す言葉ではない。[6]

パンの試験は14人で、ビーツなしのパン、赤いビーツ入り、白いビーツ入りを比較した。ビーツを100g加えたパンでも、摂取後24時間の血圧低下が報告され、赤と白の品種間には統計的な差がなかった。少なくともこの食品と評価項目では、加工を経た形にも作用があったのである。[6]

この結果は、赤いほど強いという選び方にも立ち止まらせる。研究では、低用量のビーツによる血圧への作用は加工やベタシアニンの存在によって損なわれなかったとされた。ベタシアニンは赤い色素の仲間である。飲料の色の濃さを、血圧への作用の強さを測る目盛りにするのは適切ではない。[6]

ただし、「加工後も作用があった」と「どのゆで方でも硝酸塩が同じだけ残る」は別の主張だ。パンを食べた後の血圧という結果は、その食品を食べた条件で評価されている。家庭の鍋でゆでたビーツ、ゆで汁を捨てた後の実、実と水を混ぜた飲料は、それぞれ比較すべき食品が違う。パンの試験を、鍋の中の成分収支の証明に使うことはできない。[6]

ゆでる前と後を比べたいなら、調理後の何を飲むのかを先に決めたい。実だけを使うのか、液体も使うのか、水を加えるのかで、レシピの中身は変わる。この区別は家庭の記録のための整理であり、どちらが回復によいという順位ではない。血圧への作用を示した加工食品があるからこそ、調理法の名前だけで働きの有無を決めず、完成品の条件で考える必要がある。[6]

運動成績が上がった試験は、山を歩く条件だった

濃縮ビーツ飲料を使った運動試験の参加者は男性10人である。標高約3,000mと約4,300mに相当する酸素の薄い環境を再現し、各環境で硝酸塩の多い飲料と少ない飲料を比較した。飲んだ時刻は運動の2時間前だった。夕方のヨガを終えてから飲む場面と、出発点が違う。男性10人の結果を18〜39歳の女性へそのまま当てはめられるかは、女性を対象とする比較で確かめる必要がある。[1]

課題は、まず低酸素環境で安静にし、その後に歩行とタイムトライアルを行うものだった。運動には45分の歩行と3kmのタイムトライアルが含まれ、傾斜10%のトレッドミル上で10kgの荷物を背負った。タイムトライアルは決められた距離をどれだけ速く終えられるかをみる課題である。買い物帰りの坂道を連想できても、体への負荷まで日常と同じにはならない。[1]

硝酸塩の多い飲料では、比較飲料より3kmの成績が、約3,000m条件で3.8%、約4,300m条件で4.2%改善した。前者の平均時間は約1,654秒対約1,719秒、後者は約1,810秒対約1,889秒だった。これは参加者が特定の課題を終える時間の差であり、疲労が同じ割合だけ消えたという数字ではない。[1]

歩行中には酸素摂取量の低下と末梢酸素飽和度の上昇がみられた。末梢酸素飽和度は血液中の酸素の状態をみる指標である。タイムトライアル中には、ふくらはぎの筋肉の酸素化も高かった。こうした測定は、運動成績と一緒に体の反応を調べるためのものだ。どれかの数値がよかったことを、そのまま翌朝の脚の軽さと呼ぶのは飛躍になる。[1]

この試験が役立つのは、期待する場面を具体化できる点である。「ビーツは疲労回復によい」という看板だけでは、運動前に使う話なのか、運動後に戻る力の話なのかが曖昧になる。実際に比べたのは前者であり、しかも低酸素環境での歩行課題だった。立川駅北口からスタジオへ歩く日の一杯へ置き換える際は、この距離を残しておきたい。[1]

数字で読むビーツの飲料と加工食品

140mL:低酸素環境の運動試験で用いた濃縮飲料の量。硝酸塩は約12.5mmolだった。[1]

2時間前:その試験で飲料を摂取した時刻。運動後の飲用ではない。[1]

3.8%と4.2%:異なる低酸素条件での3kmタイムトライアルの改善。疲労の減少率ではない。[1]

18人と14人:飲料とパンの血圧試験にそれぞれ参加した人数。別の試験である。[6]

250mLと5.5mmol:別の血圧研究で使ったビーツジュースの容量と硝酸塩量。容量と成分量を分けて読む例だ。[7]

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