
楽に開けることと、痛みを防ぐことは別の問い
股割りが楽になれば、脚の付け根の不調も起きないのだろうか。柔軟性を扱う記事では、ここも飛躍しやすい。スポーツに関連する鼠径部痛、つまり脚の付け根の痛みについて、動きや筋機能との関係をまとめた系統的レビューとメタ分析では、発症前の追跡と、痛みがある人を後から調べる研究で、柔軟性の結果がそろっていない。対象はスポーツ関連の鼠径部痛を扱う競技者集団であり、18〜39歳の女性の日常の股割りにそのまま適用することはできない。[2]
このレビューは17研究を対象とし、うち8研究が前向き、9研究が後ろ向きだった。前向き研究では、外転の柔軟性の低下が後の鼠径部痛の危険因子になるという中程度の根拠があった。一方、後ろ向き研究では、外転の柔軟性が大きいことと鼠径部痛の関連も報告されていた。[2]
前向きとは、その後に何が起きるかを追う見方である。後ろ向きの比較で痛みのある人の特徴が分かっても、その特徴が痛みを起こしたのか、痛みの後で変わったのかは分けて考える必要がある。このレビューは診断基準や用語の不統一も問題として挙げており、「柔らかければ痛くならない」と一本化する読み方は合わない。[2]
さらに、スポーツ競技の危険因子と予防を整理した別の系統的レビューも、対象はスポーツ競技者である。18〜39歳の女性一般の股割りによる予防効果を示す結果とは区別する。このレビューでは、股関節外転可動域の低下は、鼠径部痛との有意な関連がない因子の側に分類された。一方、内転筋力や過去の鼠径部痛などは関連する因子として挙げられている。柔軟性だけを抜き出した結論には、研究間の違いがある。[18]
ここから「硬さは無関係」と逆向きに断言するのも急ぎすぎである。対象が競技者で、問うている結果は鼠径部痛である。普段ヨガをする成人の股割りの楽さとは同じ問いではない。開脚の記録を、そのまま将来の痛みの予測表にしないことが、日常への慎重な持ち帰り方になる。[2][18]
膝を曲げた形で不快感が減った日も、「危険がなくなった」と判定する必要はない。痛みを押して形を完成させることを練習の目標にせず、痛みがある場合の運動の可否は医師に相談する。家で気持ちよく座る工夫と、症状の原因を決める判断を分けておきたい。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
続けるなら、可動域と筋力を別々に見る
長く続ける話になると、開ける範囲だけでなく、内ももで力を出す能力も気になる。女性サッカー選手52人を対象とした無作為化試験では、内転筋の運動を多く行う方法と少なく行う方法を8週間比べた。対象は競技者であり、18〜39歳の女性一般に同じ筋力の変化を見込めるかは別の問いである。どちらの群でも内転筋力が増えたが、多い群が少ない群を上回る差は認められなかった。[15]
脚を開く角度が0度の検査では、体重当たりの内転筋トルクの増加は両群とも0.13 Nm/kgだった。低量群の95%信頼区間は0.07〜0.20、高量群では0.04〜0.22 Nm/kgである。トルクは関節を回そうとする力の指標であり、ここで増えたのは股割りの角度ではなく、測定した姿勢での筋力である。[15]
この試験は、量を増やせば必ずその分だけ成果も増える、とは限らない例になる。ただし、競技者向けの運動量をそのまま自宅の股割りへ移す話ではない。内転筋力を増やす運動の比較と、ストレッチの時間を増やす比較は別である。「少なくてもよかった」という言葉だけを抜き出すと、どの運動を何と比べたかが消えてしまう。[15]
両群はその後、週1回の維持プログラムを10週間続け、筋力を保った。一方、先に挙げた活動的な成人の試験では、8週間の内転筋運動後に4週間中断すると、筋厚と柔軟性が開始時の値に戻った。続けた研究と中断した研究を並べると、測った結果だけでなく、その後に何をしたかが大切だと分かる。[15][17]
もっとも、この違いを「誰でも休むと同じ速さで戻る」という予定表にはできない。参加者も運動も測定項目も異なる。筋力が維持された結果を、柔軟性が維持された結果と混ぜないことが必要である。自分の記録にも、練習をした日だけでなく、中断した時期を残しておくと経過を見直しやすい。[15][17]
膝を曲げた形を使うかどうかは、その日の姿勢を選ぶ問いである。筋力運動を組み込むかどうかは、継続する内容を選ぶ問いになる。両者を同時に考えてよいが、どちらも「とにかく床へ近づく」という目標だけには収まらない。自分は座りやすさを求めているのか、開く範囲を記録したいのか、力を出す練習もしたいのか。目的を言葉にしてから方法を選びたい。
日記の書き方も目的に合わせられる。座る練習なら「膝を曲げた形を選んだ」「途中で姿勢を戻した」のように行ったことを記す。角度を比べたいなら、姿勢を替えた回を別扱いにする。筋力運動も続けるなら、ストレッチをした日と区別して残す。メモがあると、続けた内容を忘れたまま、写真の印象だけで良し悪しを決めずに済む。
維持プログラムの研究が示したのは、取り組みを続けた期間の筋力の経過である。開始前と終了時だけでなく、その後も追っているからこそ、増えた結果が保たれたかを話せる。自分の練習でも、いちばん深く開けた場面だけを保存するか、扱いやすい形で続けた経過を残すかで、後から答えられる問いは変わる。[15]
そして、股割りの到達点をほかの人から借りる必要はない。競技者の筋力向上と、活動的な成人の柔軟性の変化は、それぞれの目的に沿って評価されている。研究を手掛かりにするとは、全員を同じ完成形へ近づけることではなく、自分が確かめたい変化に合う物差しを選ぶことでもある。[15][17]

よくある誤解
「膝を曲げて楽になれば、特定の内転筋が短いと分かる」という考えは、ここで扱った試験の結果からは導けない。膝を曲げて脚を倒す検査と股関節外転可動域を使った研究は、介入の前後を評価したものである。その結果を、家庭で個別の筋肉の状態を決める診断へ変えることはできない。[16]
「ストレッチ直後に大きく開かなければ意味がない」という考えも、単回の変化が1.0〜1.7度だった比較試験と合わない。小さな変化を調べる研究と、長期の練習後の姿を期待する話は時間の幅が違う。その場で何度も深さを試して、見栄えのよい結果だけを選ぶ必要はない。[1]
「内ももを鍛えると股割りの邪魔になる」という一律の説明は、筋厚と柔軟性がともに増えた結果と合わない。特定の内転筋運動を続けた試験では、筋厚と柔軟性が同時に増えた。一方、その試験で筋肉の厚さが増えたからといって、股割りの楽さを筋肉の長さの変化だけで説明することもできない。測ったものを測った名前で受け取るのが出発点である。[17]
今日からできること
- 膝を曲げる形と伸ばす形の記録を分ける。写真なら撮る位置と向き、上体の姿勢もそろえ、膝の位置を書き添える。角度の評価を希望するなら、角度計を用いた54人の試験のように、測定する動作と道具をそろえる方法を指導者と相談する。[16]
- 目標角度や保持秒数を、研究で得られた変化量から決めない。ここで扱う比較は、膝を曲げた股割りの目標角度や保持時間を選ぶ試験とは異なる。直後の見た目だけで判定しない。単回の変化が1.0〜1.7度だった研究を踏まえ、同じ形での経過を残す。[1]
- 「開く角度」「楽さ」「力の出しやすさ」を別の言葉で記す。8週間の内転筋運動では筋厚と可動域を別々に測っている。[17]
- 運動量を増やす前に目的を確認する。女性選手52人の試験では、筋力向上について高量群が低量群を上回る差はなかった。[15]
- 中断した時期もメモする。4週間の中断で柔軟性などが開始時へ戻った試験を、自分の経過を見直す手掛かりにする。[17]

オンザショアで、練習する時間を暮らしに置く
股割りをどこまで深くするかより、体を動かす時間を暮らしのどこに置くか。練習のたびに深さの記録を更新するより、暮らしの中に無理なく通える時間を探す。その予定を考える場所として、オンザショア立川店を紹介したい。営業時間は8:00〜23:30で、全曜日同じ、年中無休である。所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F。JR立川駅北口から徒歩1分という立地も、通う予定を組む際の材料になる。
店は溶岩プレートを敷いたホットヨガスタジオで、常温ヨガやピラティスもあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンを用意している。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。
予定を組む前に、店のトップで内容を確認できる。ヨガの体験は税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。料金と体験の予約も、持ち物や費用を含めて続ける予定を考える材料になる。
参考文献
[1] Acute changes of hip joint range of motion using selected clinical stretching procedures: A randomized crossover study — Hammer AM, Hammer RL, Lomond KV, O’Connor P., 2017, Musculoskeletal science & practice. DOI: 10.1016/j.msksp.2017.08.011
[2] Movement Patterns and Muscular Function Before and After Onset of Sports-Related Groin Pain: A Systematic Review with Meta-analysis — Kloskowska P, Morrissey D, Small C, Malliaras P, Barton C., 2016, Sports medicine (Auckland, N.Z.). DOI: 10.1007/s40279-016-0523-z
[15] The Effect of an 8-Week Low- or High-Volume Protocol of the Adductor Strengthening Programme on Hip Adduction Strength in Female Football Players-A Randomized Trial — Thorarinsdottir S, Isaksen Johansen S, Ruud Askim Elvestad T, Amundsen R, Bache-, 2025, Scandinavian journal of medicine & science in sports. DOI: 10.1111/sms.70039
[16] Immediate effect of MWM adductor stretch, myofascial release, and conventional stretching in asymptomatic individuals with hip adductor tightness: A randomized controlled trial — Metgud SC, D’Silva PV, Kamat PS., 2022, Journal of bodywork and movement therapies. DOI: 10.1016/j.jbmt.2022.04.006
[17] Effects of Copenhagen Adduction Exercise on Muscle Architecture and Adductor Flexibility — Alonso-Fernández D, Fernández-Rodríguez R, Taboada-Iglesias Y, Gutiérrez-Sánchez, 2022, International journal of environmental research and public health. DOI: 10.3390/ijerph19116563
[18] [Groin pain in sports games: a systematic review] — Zilles G, Grim C, Wegener F, Engelhardt M, Hotfiel T, Hoppe MW., 2023, Sportverletzung Sportschaden : Organ der Gesellschaft fur Orthopadisch-Traumatologische Sportmedizin. DOI: 10.1055/a-1912-4642
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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