ダイエット中のケーキと蒸しパンは、焦げ目だけで選んでよいのか。焼く・蒸す調理で変わる糖化物質を、食品研究と人の比較試験から読む。食品中の成分量、食後の血糖、空腹感、次の食事量を分け、蒸しパンなら痩せるという飛躍を避けながら、運動日の間食と家庭での加熱を考える。
菓子皿に、焼き色のついたケーキと白い蒸しパンを並べる。甘いものを食べたい気持ちは同じなのに、白いほうが体によさそうに見える。焦げ目を避ければ、ダイエットの選び方として正解なのだろうか。
焼くか蒸すかで、食品中にできる糖化物質の量は変わりうる。ただし、蒸しパンの減量効果を判断するには、体重を追った試験が必要だ。同じ材料を焼いた食事と蒸した食事を比べた人の試験では、糖化物質の量に違いがあっても、空腹感やその後の食事量に差は出なかった。[18][20]
見たいのは、色の濃さよりも、何を測った研究なのかである。食品の中でできる成分、食べた後の体の反応、次に食べる量は別の話だ。焦げ目から読み取る調理の特徴と、将来の体重は分けて考える。[19][20]

焦げ目は、糖とたんぱく質の反応を考える入口になる
食品を加熱するとき、アミノ酸と還元糖が反応して、風味や香りを生むことがある。還元糖は、この反応に関わる性質を持つ糖のことである。この仕組みがメイラード反応で、酵素を使わずに進む褐変反応とも呼ばれる。食品加工と栄養を扱ったレビューは、家庭の調理からパンづくりまで、この反応が味を形づくることを整理している。[19]
焼き菓子の香ばしさは、単なる飾りではない。調理中に起こる化学反応の結果でもある。ただし、この反応でできる物質を、全部まとめて悪いものと呼ぶのは不正確だ。同じレビューは、加工の仕方によって有益な反応生成物も有害な生成物もできると述べている。褐色になったという事実と、健康上の評価は重ねすぎないほうがよい。[19]
その中で注目されるのが、終末糖化産物、英字ではAGEsと呼ばれる物質群だ。糖化とは糖がたんぱく質などと酵素を介さず反応する過程であり、その先にできる物質が研究対象になる。皮膚と食事を扱ったレビューでも、食品を焼く、揚げる、あぶる調理と、水を使って煮る、蒸す調理では、食品中のAGEsの量が異なると整理されている。[18]
ここで「糖化物質」は、砂糖の量そのものを指していない。メイラード反応では、糖だけでなくアミノ酸も反応に関わる。したがって、甘さの印象と反応生成物の量を同じ尺度として使うことはできない。甘くない焼き食品にも加熱反応は起こり、甘い食品でも加工条件によって生成物の構成は変わる。[19]
パンや菓子の表面を見る行為には意味があるが、見た目は成分分析の代わりにはならない。焼き菓子の研究では、原料にある前駆体、つまり反応の出発材料と、加熱条件を組み合わせて生成を考える。店頭の色だけを使うと、その出発材料と工程の違いが抜け落ちるのである。[6][13]
ケーキの断面が白いから、糖化を心配する必要がない。表面が茶色だから、食べれば体がすぐ傷む。どちらも話を急ぎすぎている。日常で役立つのは、色を禁止の印として使うことではなく、食品の作り方に目を向けるきっかけとして使うことだ。[18][19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
焼く・蒸すの差と、ケーキ・蒸しパンの差は同じではない
焼く、揚げる、あぶる調理では、煮る、蒸すといった水を用いる調理よりAGEsが多くなることを、皮膚老化と食事のレビューは報告している。この方向性は、加熱方法を選ぶ視点として使える。ただし、研究で述べられた調理法の傾向を、そのまま売り場の全商品に順位づけする道具にはできない。[18]
ケーキと蒸しパンの比較では、加熱方法に加えて配合や大きさも確認したい。原材料欄を見れば、配合が同じかどうかを確認できる。焼いたものと蒸したものの違いを知りたいのに、材料も大きさも違う商品を選んでいたら、どの違いが判断に影響したのか整理しにくい。食品研究が原料と加工条件を並べて扱う理由もここにある。[6][13]
食品科学でいう食品の構造や成分の組み合わせは、反応が起きる舞台である。焼き菓子の複数の加熱生成物を扱うレビューでは、複雑な食品の中で反応を分析し、複数の物質を同時に抑えることの難しさが論点になっている。生成物の量は、焼き方と原料の組み合わせで評価する。[6]
蒸しパンを選ぶことは、調理の選択肢を広げる行動にはなる。しかし、白い見た目を栄養全体の保証にする必要はない。逆に、ケーキを選んだ日は食事を失敗した、と評価する必要もない。食品中のAGEsという軸で比べるのか、原材料の違いを見るのか、食べる場面を決めるのか。いま答えたい問いを先に定めたい。[18][20]
既存記事「超加工食品は食べすぎを招くのか 管理下の比較試験と例外から食卓を考える」では、食品の加工と食べすぎの問いを扱っている。ここで掘るのは加工食品全体の評価ではなく、加熱でできる糖化物質と、実際に食べた人の反応の距離である。乾燥や間食の大きさについては、隣の記事の干し芋と果物の問いに譲る。
運動日の買い物でも、問いを小さくすると判断しやすい。今日は蒸した食品を試してみたいのか。香ばしいケーキを食べたいのか。運動の予定があるからという理由だけで、食品中のAGEsの話を運動による帳消しの話へつなげるのは避けたい。人の比較試験で確かめられたのは、食事を調理した方法による食後の違いである。[20]
人の比較試験では、糖化物質が多くても食事量は増えなかった
食品の測定から人の体へ話を進めるとき、重要なのが無作為化比較試験である。ここでは、健康で過体重の成人19人が、同じ材料を焼いて作った食事と蒸して作った食事を食べ比べた。クロスオーバーという、同じ人が両方の条件を経験する方法で、食後の血液や尿、空腹感、続く食事の摂取量を調べている。健康で過体重の成人を対象にした結果であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、別に検証が必要だ。[20]
食事中で測ったのは、AGEsの一種であるカルボキシメチルリジン、略してCMLだ。焼いた食事では5.0mg、蒸した食事では2.8mgだった。調理方法を変えると、少なくともこの指標の量は違っていたのである。これは研究の食事についての測定値で、市販のケーキや蒸しパンに共通する含有量ではない。[20]
ところが、続いて食べた量、主観的な食欲、食欲を調節するホルモンの反応は、全体として食事間で変わらなかった。例外は、食欲に関わるホルモンであるグレリンの総合的な反応で、焼いた食事の後のほうが高かった。血糖の反応も焼いた食事のほうが高かったが、食事量が増えた結果ではない。[20]
ここは読み飛ばしたくない。ホルモンが変わったことと、空腹感が強くなったことと、実際に多く食べたことは別々に評価されている。グレリンの変化だけを取り出して「焦げ目があると食欲が止まらなくなる」と言えば、同じ試験で食事量が変わらなかった結果を落としてしまう。[20]
炎症の指標にも、食事間で明確な差はなかった。一方で、酸化ストレスに関わる尿の指標などには反応が見られた。研究の結論は、食欲や炎症に際立った影響を示さず、グレリン、酸化ストレス、血糖には影響する可能性がある、というものだ。何も変わらないとも、すべて悪くなるとも言っていない。[20]
対象は健康で過体重の成人であり、単回の食事の試験である。日常の間食を長く続けたときの体重変化や、運動直前の食べやすさと同じ結果ではない。小さな食後反応の試験を読むときは、測られた時間の範囲と、自分が知りたい生活の期間を分ける必要がある。[20]
食後の血液で測る変化と、食品そのものに含まれる量も区別したい。この試験では、焼いた食事の後に血液や尿のCMLなどが高くなる傾向があった。しかし「高くなる傾向」と、空腹感や炎症に明確な差が出ることは同じではない。食品中の量を測定し、体内の指標を追い、本人の感覚や食べた量を確認する。それぞれの段階を踏んだ結果を一緒に読むことで、成分の差を生活の効果に早変わりさせずに済む。測定値が動いた部分も、動かなかった部分も、食事を選ぶ根拠の一部である。[20]
数字で読む焼く・蒸すと食品中の成分
19人:健康で過体重の成人が、同じ材料の焼いた食事と蒸した食事を食べ比べた。[20]
5.0mg:焼いた食事に含まれていたCML。AGEsすべての総量ではない。[20]
2.8mg:蒸した食事のCML。市販の蒸しパンの代表値ではない。[20]
26研究:植物由来素材と焼き菓子のAGEs生成を検討した系統的レビューの対象数。[1]
10%未満から90%超:そのレビューで報告されたAGEsや前駆体の生成抑制率の幅。人の減量率ではない。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







