ホットヨガの滝汗は効果の証?1回で失う汗の量と体の変化を研究で読み分ける

ホットヨガの滝汗は効果の証なのか。40.6度・湿度40%の90分で女性5人の汗は推定1.54L、体重の1.9%で、失ったのは主に水と塩だった。暑い部屋でも酸素の使い方は常温と差がなく、汗が多かったのは経験者の側だった。8週間続けても体重が動かなかった試験と、飲みすぎの症例も読む。

60分のレッスンが終わる。マットの端に汗の小さな水たまりができ、タオルは2枚とも重い。今日はよく効いた、と思う。滝のような汗は、効いた証なのか。

汗の量を効果の物差しにできる、と示した研究は見当たらない。40.6度、湿度40%の部屋で90分のビクラムヨガ(ホットヨガでいちばん広まっている形式[2])を行った女性5人の汗は、体重の差から推定して1.54Lで、体重の1.9%に当たった[12][16]。失ったのは主に体の水と塩で、汗に含まれた塩化ナトリウムは推定6.8gだった[16]。

一方、暑い部屋でも、酸素の使い方と消費エネルギーは、常温の部屋の同じヨガと差がなかった[6][14]。暑さで上がったのは心拍と、本人の感じるきつさのほうである[6]。90分のクラスで汗の速さが2倍近かったのは、20回以上通った経験者の側だった[4]。8週間、週3回汗をかき続けた試験でも、体重と体脂肪率は有意に変わらなかった[2]。汗は暑さに体が応えた量の記録であって、脂肪が減った量の記録ではない。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

40.6度の90分、女性5人の汗は1.54L

1回のホットヨガで、どれだけ汗をかくのか。それを量った研究は、思いのほか小さい。2020年の2本の報告は、同じ研究班によるもので、どちらも平均47.4歳の女性5人を調べている[12][16]。塩と水を調べた報告の5人は、ビクラムヨガを平均2.6年続けていた[16]。部屋は105°F(約40.6度)、湿度40%で、練習は90分である[12][16]。

汗の量は、練習の前と後の体重の差から推定した[16]。一方の報告は、裸の体重を量ったと書いている[12]。推定の汗の量は平均1.54L(標準偏差0.65L)で、体重のおよそ1.9%が減った[12][16]。練習のあいだに飲んだ水は平均0.38Lで、汗のおよそ25%しか補っていなかった[16]。

それでも、血液のナトリウムの濃さと、血液の浸透圧(溶けているものの濃さ)は変わらなかった[16]。汗の塩化ナトリウムの濃さは1Lあたり82mmolで、1回の練習で汗から出た塩化ナトリウムは推定6.8gだった[16]。体の水分のうち、細胞の外にある分は9.7%減り、塩分と水を体にとどめる働きのホルモンであるアルドステロンは、練習の前から後で3.5倍に増えた[16]。

著者らは、ビクラムヨガの汗は、体の水の濃さが上がる脱水というより、体液の量が減る状態を主に生んだと書いた[16]。そして、汗で増えたアルドステロンが腎臓でのナトリウムの取り戻しを増やし、その後の24時間で細胞の外の水分を元に戻すだろう、と続けている[16]。

カルシウムを調べたもう一方の報告も見ておく[12]。汗のカルシウムの濃さは1dLあたり2.9mgで、失ったカルシウムは推定41.3mgだった[12]。血液のイオン化カルシウムはむしろ上がり、骨の吸収にかかわる副甲状腺ホルモンは下がった[12]。著者らは、90分の練習で汗から失ったカルシウムは、副甲状腺ホルモンの分泌を増やさず、骨の吸収も始めなかったと結論した[12]。

5人の小さな研究で、対象は40代後半の経験者の女性である[12][16]。初めての人や、20代の人の汗の量を、この数字で言い当てることはできない。

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汗の速さが2倍近かったのは、経験者の側だった

汗の量は、人によってどれだけ違うのか。2014年の研究は、サンディエゴのヨガスタジオで募った18〜57歳の24人(男性5人、女性19人)を、20回以上通った経験者と、20回未満の初心者に分けた[4]。大学の運動生理学の実験室の環境室で、決まった手順の90分のクラスを、暑い環境で受けてもらった[4]。

吐く息を集めて酸素の取り込みから消費エネルギーを出し、ポーズごとに心拍を記録し、汗の速さと体の中の温度も記録した[4]。90分の平均の消費エネルギーは286kcal(標準偏差72kcal)で、人によって179kcalから478kcalまでの幅があった[4]。1回で最大1,000kcalという広く出回った主張には根拠がない、というのが研究の出発点だった[4]。

経験者と初心者では、体重あたりの消費エネルギー、心拍、終わりの体の中の温度、汗の速さに、有意な差があった[4]。汗の速さは、初心者が1時間あたり0.6kg、経験者が1.1kgだった[4]。予測される最大心拍に対する割合は、初心者が72.3%、経験者が86.4%で、体重あたりの消費エネルギーは3.7kcal/kgと4.7kcal/kgだった[4]。すべてのポーズは、軽い〜中くらいの強さに分類された[4]。

著者らは、ビクラムヨガは軽い〜中くらいの強さの運動の条件を満たし、週に何回か行えば、理論の上では体重の維持や減量に使える可能性がある、と結論している[4]。

経験者は、汗も多く、心拍も高く、消費エネルギーも大きかった[4]。汗が多いから消費が大きかったのか、強く動いたから汗も多かったのか、それとも暑さに慣れた体の汗の出方が違うのか。この研究の比べ方では、どれかに決めることはできない、と私は読む。少なくとも、汗の少ない初心者の90分が「効いていない」ことの証拠にはならない。

暑い部屋で上がったのは心拍と感じ方、酸素の使い方は同じだった

暑さそのものの影響を、同じヨガを暑い部屋と常温の部屋で比べて確かめた試験がある。2018年のランダム化交差試験は、14人に、同じ内容の約20分のヨガを、暑い部屋(35.3度、湿度20.5%)と常温の部屋(22.1度、湿度27.8%)で行ってもらった[6]。

最大の酸素摂取量に対する割合は、暑い部屋で30.9%、常温の部屋で30.5%で、差はなかった(p=0.68)[6]。一方、最大心拍に対する割合は67.0%と60.8%(p=0.01)、本人の感じるきつさは12と11(p=0.04)で、暑い部屋のほうが有意に高かった[6]。酸素の使い方で見ると、どちらも軽い強さの運動で、心拍ときつさで見ると、暑い部屋のヨガだけが中くらいの強さに入った[6]。著者らは、暑い環境で心臓と血管の負担が加わり、ヨガがきつく感じられても、酸素の使い方は同じで、どちらも軽い強さの運動に分類されると結論した[6]。

もう一つの試験は、時間を1時間に延ばした[14]。経験のある16人(女性14人、男性2人、平均40歳)が、決まった手順の1時間のビクラムのポーズを、40度と23.3度の部屋で、順番を無作為に決めて行った[14]。湿度はどちらも40%にそろえた[14]。平均と最大の酸素摂取量、最大に対する割合、心拍、消費カロリーは、両方の条件で差がなかった[14]。

ただし、燃料の内訳は違った。暑い部屋では、呼吸の比(吐く二酸化炭素と吸う酸素の比)が低く(0.89と0.95)、脂肪が使われる速さは1分あたり0.09gと0.05gで高く、糖質が使われる速さは0.44gと0.51gで低かった[14]。炎症に関わる物質のIL-6は、暑い部屋の後だけ15.5倍に増えた[14]。股関節を横に開く角度の伸びも、暑い部屋のほうが大きかった(6.6度と2.3度)[14]。著者らは、暑い部屋のヨガは常温と比べて有酸素の消費を有意に増やさないが、その場で脂肪を燃料として使う割合と、股関節の動く範囲を増やすかもしれない、とまとめている[14]。

これは1時間のあいだの燃料の使い分けの話で、体脂肪の量が減ったことを測った結果ではない。脂肪を使う割合が上がっても、消費カロリーの合計は同じだった[14]。

2025年の系統的レビューも、43の研究、942人(76%が女性)を集め、1回のホットヨガは、暑くないヨガと比べて体温と心拍を上げたが、エネルギーの消費は上げなかったとまとめた[7]。ヨガの強さを調べた2020年のレビューは、酸素の取り込みで見るとヨガは軽い強さに分類されることが多く、心拍で見るとヨガがいくつもの強さに分かれた、と書く[11]。二つの物差しの関係が直線的でないため、強さの分類が食い違う、という説明である[11]。

心拍が上がり、汗が流れ、きつく感じる。それでも、酸素の使い方は常温とほとんど同じだった。暑い部屋の体は、エネルギーを燃やすより熱を逃がすほうに忙しい、というのが私の読みである。

数字で読むホットヨガの汗

  • 1.54L: 40.6度・湿度40%・90分のビクラムヨガで、平均47.4歳の女性5人が失った汗の推定量。体重の1.9%に当たる[12][16]。
  • 25%: 同じ5人が練習中に飲んだ水(0.38L)が、汗を補った割合[16]。
  • 6.8g: 1回の練習で汗から出た塩化ナトリウムの推定量[16]。
  • 0.6kgと1.1kg: 90分のクラスでの、初心者と経験者の1時間あたりの汗の速さ[4]。
  • 30.9%と30.5%: 暑い部屋と常温の部屋の同じヨガで、最大の酸素摂取量に対する割合。差はなかった[6]。
  • 286kcal: 90分のクラスの平均の消費エネルギー。幅は179〜478kcalで、1,000kcalには届かない[4]。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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