瞑想で右脳型になるという説は本当?左右の脳より注意のつながりを研究で読む

瞑想で左脳を休めて右脳型になれるのか。脳画像のメタ分析や比較試験から、注意に関わるネットワークの変化を読む。左右の領域が働くことと性格が変わること、瞑想中と安静時、経験者の特徴と訓練の効果を分け、数字が示す範囲を確かめる。右か左かで練習の出来を採点する前に知りたい話である。

目を閉じて呼吸を追っていたはずが、明日の仕事の段取りを考えている。「左脳を休ませて右脳を使う」という瞑想の説明は、そんな時に魅力的に響く。仕事の段取りが頭から離れない日には、脳の片側だけ退勤させられたら便利そうだ。しかし、瞑想の脳画像研究が描くのは、右側への一括した切り替えではない。注意を向ける瞑想のメタ分析では、複数の脳ネットワークが一貫して関わっていた。[3]

今の答えは、瞑想を「右脳型になる練習」と捉える根拠にはできない、である。集中する方法と言葉を繰り返す方法では、活動がまとまって見られる場所が異なり、左右両方の領域が含まれる。右側の領域が現れたという結果だけを抜き出して、右脳全体や性格の変化に広げる読み方はしない。[4]

人を右脳派・左脳派に分ける話は、既存記事「右脳と左脳の性格診断にエビデンスはあるか、1,011人の脳画像が支持しなかった右脳派」に譲る。ここで扱うのは、瞑想研究に出てくる左右の場所や「つながり」が、実際には何を比べた数字なのか、という問いである。[3][7]

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瞑想の脳画像は、左右の勝敗表ではない

健康な成人の集中型瞑想を扱った系統的レビューは、関連する研究を手順に沿って集め、結果を数量的に統合したものだ。対象となったのは28研究で、そのうち活動の場所を統合する解析に入ったのは10研究、計200人である。28研究の全参加者をまとめて解析した数字とは区別する。この区別だけでも、見出しの数字の受け取り方は変わる。健康な成人の研究を集めた結果であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、この統合結果だけでは判断できない。[3]

結果では、デフォルトモード、サリエンス、実行制御という3つの主要な機能的ネットワークを構成する領域が、一貫して集中型瞑想に関わっていた。ここでいうネットワークは、複数の領域をつながりとして捉える呼び方である。この記事では、脳の地図上のどこかを示す「領域」と、領域どうしの関係を捉える「ネットワーク」を分けて読む。[3]

研究者の答えがネットワークであるとき、読者の答えを右か左の片側に縮めると、せっかく測った関係がこぼれる。たとえば、呼吸に注意を向ける練習の研究を見て「右側の何かが写ったか」だけを探すと、ほかの領域との関わりが視野から消える。集中型瞑想の統合結果は、複数の系を含むモデルとして提示されている。[3]

さらにこのレビューでは、瞑想の熟練度、マインドフルネスの水準、注意の技能は、活動や機能的なつながりの大きさに有意に関わる一方、その領域的な広がりにはそうした影響が見られなかった。「上達すると使う脳の範囲がどんどん増える」という単純な階段とも違う結果である。どの場所かだけでなく、そこで捉えた活動や関係の程度が検討されている。[3]

ここで注意したいのは、統合されたのが横断的な機能的脳画像研究だという点だ。異なる経験を持つ人の特徴や瞑想中の活動を集めた結果は、同じ人が練習を続けたことで生じた変化と、そのまま同じ意味にはならない。瞑想に関連する神経活動の全体像を描く研究として読むのがよい。[3]

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呼吸へ集中する時と、言葉を唱える時は同じではない

「瞑想」という語の中には、異なる課題が入っている。2012年のメタ分析は、24実験から150の活動の位置を集め、集中型の方法と言葉や句を繰り返すマントラの方法などを分けて解析した。静かに座るという外見が似ていても、研究上は同じ箱に入れて終わりにしていない。[4]

集中型の解析では、左右両側の内側の脳回に加え、左上頭頂葉、左島、右縁上回に活動のまとまりが見られた。一方、マントラの解析では右縁上回、左右の補足運動野、左の中心後回にまとまりがあった。細かな部位名を覚える必要はない。読んでおきたいのは、どちらの方法にも左と右が現れ、方法によって組み合わせが異なることである。[4]

たとえば「言葉を使わないから左側を停止する」と説明したくなっても、集中型の結果には左側の領域が含まれる。「唱える瞑想だから右側を使わない」という説明も結果と合わない。マントラの結果には右縁上回が入る。研究の地図は、日常語の「論理」と「直感」を左右に置いた図より細かい。[4]

経験の短い人と長い人を分けた解析も行われた。短期の経験者では長期の経験者より前頭部の活動が見られ、長期の経験者では右縁上回の関与などが示された。著者らは、熟練者は注意の焦点を保ちやすくなることを支持する結果と解釈している。ただし、経験の違いを比べた結果を「右脳型の人へ変身した」と翻訳するのは飛躍である。[4]

同じ瞑想という看板でも、何に注意を向け、何を繰り返し、どの経験者を調べたのかで、比較の中身が変わる。動画を選ぶ場面なら「右脳活性化」という見出しより、呼吸に集中する案内なのか、言葉を繰り返す案内なのかを確認するほうが、研究で扱った課題と結び付けやすい。これは効果の順位ではなく、方法を取り違えないための読み方である。[4]

「左側に変化」があっても左脳型になったわけではない

瞑想中だけでなく、訓練後の安静時に領域どうしの活動の関連を調べる研究もある。マインドフルネス訓練と比較条件を扱った2022年のメタ分析では、実験・準実験の12研究から、訓練側226人、比較側204人の安静時の機能的結合が抽出された。機能的結合とは、ここでは領域間の活動の関連を測る指標として読めばよい。[7]

統合した結果、サリエンスネットワークに属する左中帯状皮質と、デフォルトモードネットワークの中心的な領域である後帯状皮質との結合が、訓練側で比較側より大きかった。効果量はヘッジズのgで0.234である。大事なのは、測ったのが特定の領域どうしの関係だということだ。この数字は脳全体の能力の上昇率ではない。[7]

左という文字が出てきても、結論は「左脳が強くなった」ではない。研究者らは、内側へ向ける注意の柔軟な制御に関わる、ネットワーク間の結合を示唆する結果と捉えている。解剖学的な左側の場所と、俗説でいう左脳型の性格は、言葉が似ていても別の話である。[7]

この研究の面白さは、訓練後の安静時を見ているところにもある。目の前の課題に取り組む時の活動と、訓練後の安静時に測った結合では、問いが異なる。「瞑想の脳画像で変化」とひとまとめにすると、測定した場面が消える。記事や動画の数字を見たら、まず瞑想中なのか、訓練後の安静時なのかを確かめたい。[3][7]

なお、効果量0.234を「23.4%向上」と読み替えることはできない。効果量として報告された数字と割合は異なる表し方であり、この研究の結果は特定の結合に関する比較である。百分率にすると身近にはなるが、意味まで変わってしまう。数字を親切そうに言い直す前に、測定の単位を置き去りにしないことだ。[7]

安静時の比較を読む際には、相手の条件も重要になる。このメタ分析は、訓練群の前後だけを集めたものではなく、比較条件に対する訓練の結果を扱っている。静かに過ごした後の感想と、比較群を置いて測定した結合の差は、同じ種類の証拠ではない。自分が落ち着いたという実感はそのまま持っていてよいが、その実感の説明として特定の脳領域を指名する時には、もう一段別の根拠が必要になる。[7]

また、複数のネットワーク間の結合が増えるという仮説のもとで解析されても、結果を説明する時には、実際に差が出た領域間の関係へ戻る。この統合結果で具体的に示されたのは、左中帯状皮質と後帯状皮質との関係である。仮説に登場したすべてのネットワークが一様に強化された、という読み替えは避けたい。研究で最初に立てた見通しと、解析して得た答えは分けて扱う。[7]

この手順を知ると、「瞑想で右脳が目覚める」という説明への疑問も、ただ信じるか否かではなくなる。どの練習を、どの対象に行い、何と比べ、どの場面の何を測ったのか。たとえば集中型瞑想の活動位置の統合と、訓練後の安静時結合の統合は、互いを置き換える数字ではない。違う問いへの答えを、その違いごと並べることに意味がある。[3][7]

数字で読む瞑想と脳のつながり

28研究:集中型瞑想の系統的レビューに含まれた研究数。活動の場所を統合したのは、このうち10研究である。[3]

200人:集中型瞑想の活動位置のメタ分析に入った10研究の参加者数である。[3]

24実験:集中型とマントラなどを分けたメタ分析の対象。活動の位置は150か所集められた。[4]

12研究:訓練と比較条件の安静時結合を統合した研究数。訓練側226人、比較側204人である。[7]

0.234:左中帯状皮質と後帯状皮質の結合について報告された効果量。右脳型になる割合ではない。[7]

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宮川涼 Founder

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