体脂肪率が何%で生理が止まるかは、1つの値では言えない。17%と22%という古い仮説、生理の乱れがある運動する女性76人の体脂肪率が平均24.7%だった試験、食べる量を増やした群で生理が来やすかった結果から、数字より食事の不足を見る理由を読む。
体組成計のアプリに、先月より低い体脂肪率が出た。生理は予定の日を過ぎて、まだ来ない。検索窓に「体脂肪率 何% 生理止まる」と打つ。並ぶのは15%、17%、20%、22%と、少しずつずれた数字である。
体脂肪率が何%を切ると生理が止まる、という1つの値は、この記事で読んだ研究からは出せない。1987年の総説は、初経にはおよそ17%、生殖の力を保つにはおよそ22%の脂肪が要るという仮説を示した[1]。ところが、生理の間隔があく、または来ない運動する女性76人を集めた2021年のランダム化比較試験では、参加者の体脂肪率の平均は24.7%だった[8]。平均の値だけを並べれば、22%の線より上の集団が、生理の乱れを抱えていたことになる。対象も測り方も違う研究を並べた、私の読みである。
もう一つの芯は、その試験の結果である。1日に食べる量を、もとの必要量より20〜40%増やすよう割り振られた40人は、量を保った36人より、12か月の間に生理が来やすかった[8]。実際に増えた量は1日330kcalほどで、もとの18%ほどだった。著者らは、この控えめな増加で生理の回復を起こすのに足りたと書く[8]。体脂肪率の数字を目標にしたのではなく、食べる量を増やした。この試験が動かしたのは、そちらである。

「17%と22%」は、どこから来た数字か
二つの数字は、1987年の総説に出てくる[1]。同じ研究者は1990年にも総説を書いている[2]。出発点は観察だった。よく鍛えた運動選手、バレエダンサー、極端に食事を減らす女性の多くに、無月経がある[1]。無月経は生理が来ない状態のことで、初経がまだ来ない場合と、来ていた生理が止まる場合がある。それより軽いトレーニングや体重の減少でも、排卵のない周期や、黄体期(排卵から次の生理までの期間)の短縮が起こりうる[1]。
総説は、こうした生殖の乱れは脳の視床下部の働きの乱れによるもので、体重の減少や痩せすぎと相関すると書く[1]。そのうえで著者は、この関連は因果だと「提案」し、成熟した女性の体脂肪の高い割合(26〜28%)が生殖に直接影響しうるとした[1]。さらに、初経には体重に占める脂肪がおよそ17%、生殖の力を保つにはおよそ22%という、脂肪と除脂肪の最小の比が通常は必要だという仮説を、ほかの証拠とともに示した[1]。身長ごとの「臨界の体重」を予測する図表も付けている[1]。
1990年の総説も、成熟した女性の26〜28%という体脂肪の割合が、規則的な排卵の周期に必要だという証拠を示したと書き、身長ごとの目標の体重を載せている[2]。
ここで覚えておきたいのは二つだ。一つは、著者自身が17%と22%を「仮説」と呼んでいること[1]。もう一つは、26〜28%という数字が、この総説では生殖を支える側の数字として書かれていることである[2]。減らす目標ではない。
検索で並ぶ15%や20%についても書いておく。この記事で読んだ研究の中に、体脂肪率を15%や20%で区切って、生理が止まる人の割合を比べたものはない。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
脂肪は、ホルモンにかかわる組織でもある
なぜ脂肪の量が生理に関わると考えられたのか。1987年の総説は、知られている仕組みを四つ挙げる[1]。脂肪組織は男性ホルモンを女性ホルモン(エストロゲン)に変える。体重、つまり脂肪の多さは、エストロゲンが強い形と弱い形のどちらへ代謝されるかを左右し、痩せた女性は弱い形を多く作る。肥満の女性や脂肪の多い若い女の子では、エストロゲンが血中の運び役のたんぱく質と結びつく力が下がる。そして脂肪組織はステロイドホルモンを蓄えられる[1]。体温の調節やエネルギーの代謝の変化が、間接の信号になっているかもしれないとも書く[1]。
脳から卵巣に向かうホルモン(性腺刺激ホルモン)の出方も変わる。この視床下部の乱れでは、その出方が年齢に合わず、思春期前の子どもに似た形になる。黄体形成ホルモンの分泌は、体重の減少の大きさと直接相関して減る[1]。
1990年の総説には、もう一つ興味深い一文がある。この型の無月経では下垂体と卵巣の働きは保たれており、そのことは、この無月経が適応で、うまくいかない妊娠を防いでいることを示唆するという[2]。体が壊れて止まるというより、足りない状態で先へ進まないよう、脳の側で止めている、という見方である。
新しい総説は、この話を「信号」の側から書き直している。2021年の総説は、機能性視床下部性無月経(脳の側の働きの変化で生理が止まる状態。ほかに構造上の原因が見つからないもの)では、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの脈打つような出方が抑えられ、黄体形成ホルモンとエストロゲンが下がり、排卵が止まると書く[10]。この状態の人では、利用できるエネルギー、体脂肪率、消費するエネルギーがいずれも低い[10]。脂肪から出るホルモンのレプチンが下がり、グレリンなどのホルモンが上がるという変化も記録されており、放出ホルモンの抑制と関連している[10]。
2010年の総説は、エネルギーの利用できる量と性腺刺激ホルモンの出方の結びつきはよく確かめられているが、二つをつなぐ実際の信号ははっきりしていないと書く[17]。そのうえで、脂肪に関わるホルモンの変化が、エネルギーの状態を視床下部に知らせている可能性を挙げている[17]。体脂肪率の数字は、その信号の、遠い影のようなものかもしれない。これは私の読みである。

体脂肪率24.7%でも、生理が乱れていた76人
数字の線が怪しくなるのは、実際の参加者を見たときだ。REFUELという名のランダム化比較試験は、2006年から2014年にかけて、二つの大学で、生理の間隔があく、または来ない運動する女性76人を集めた[8]。開始時の平均は、年齢21.0歳、BMI20.8、体脂肪率24.7%である[8]。
参加者は、食べる量をもとの必要量より20〜40%増やす群(40人)と、量を保つ群(36人)に割り振られ、12か月を過ごした[8]。生理は記録と、毎日の尿に出る卵巣のホルモンで細かく調べ、体の組成は3か月ごとに測った[8]。
割り振りどおりに全員を比べる解析で、増やした群は生理が来る見込みが高く、ハザード比は1.91(95%信頼区間1.27〜2.89)だった[8]。増やした群は、食べる量、体重、体脂肪率、甲状腺のホルモン(T3)の増え方も大きかった[8]。開始時の周期がはっきりしない人や、回復を判定するには参加の期間が足りなかった人の22人を除いた解析では、生理の働きが良くなった人は増やした群で64%、保った群で19%だった[8]。
著者らは、体重の4.9%、体脂肪率の13%、T3の16%という控えめな増加が、生理の回復と関連していたと書く[8]。脱落が予想より多かったこと、回復の定義に回復の質を含めていないことは、限界として挙げている[8]。
1990年の総説は、運動選手やダンサーでは体重が正常の範囲にあっても無月経が多いと書き、理由として筋肉が重いことを挙げる[2]。筋肉はおよそ80%が水で、脂肪組織の水は5〜10%しかない[2]。体重計の数字と体の脂肪の量は、同じものを測っていない。
24.7%は平均で、一人ひとりの値ではない。それでも、22%を超える平均の集団が生理の乱れを抱え、食べる量を少し増やした側で戻りやすかった、という結果は、1つの数字で線を引く考え方とうまく合わないように見える。これも対象と測り方の違う研究を並べた読みである。
鍵は、食べた量から運動の分を引いた「残り」
研究が見ているのは、利用可能エネルギーという量である。2016年の総説の定義では、食事からとったエネルギーのうち、運動で使った分を差し引いて、体のほかの働きに残る量のことだ[13]。同じ量を食べていても、運動を増やせば残りは減る。
総説によれば、この残りが少ない状態は、体脂肪や体重の少なさが有利になる競技、たとえば見た目を競う競技、体を持ち上げる競技、階級のある競技の選手に多い[13]。菜食やグルテンを抜いた食事をしている選手も、エネルギーと栄養が足りなくなる危険があるという[13]。
2024年の総説は、機能性視床下部性無月経を防ぐ目安として、除脂肪量(体重から脂肪の重さを除いた分)1kgあたり1日30kcalの利用可能エネルギーを医師らが勧めていると書く[4]。ただし同じ総説は、この値より下でも上でも、黄体形成ホルモンの脈が抑えられ、月経の乱れが起こりうると続ける[4]。目安の線も、くっきりした境目ではない。
不足の深さと長さも効く。食事のカロリーが減るほど、またエネルギーの不足が長く続くほど、月経の乱れの危険は高まり、この無月経の女性の利用可能エネルギーは、健康な女性より有意に低かった[4]。総説は、1日を通して規則正しく食事をとり、糖を含むエネルギーを切らさないことを勧め、糖は黄体形成ホルモンの脈や、T3、ストレスのホルモン(コルチゾール)に影響することが示されていると書く[4]。女性の選手を扱った2012年の総説は、1日の総量だけでなく、1日の中で起きる不足や過剰の回数と大きさも見て、起きた時刻の近くで手当てすべきだとしている[15]。
食べた量と運動を重ね続けると何が起きるかを実験で調べた研究は、同じサイトの「食べずに運動を重ねると体に何が起きるのか 利用可能エネルギーの不足と、月経・骨の実験」に譲る。ここでは、体脂肪率の数字とこの「残り」が別のものだという点だけを押さえておく。
数字で読む体脂肪率と生理
- 約17%と約22%: 1987年の総説が仮説として示した、初経と生殖の力の維持に要る脂肪の割合[1]。
- 26〜28%: 同じ研究者が、成熟した女性の規則的な排卵の周期に必要だとした体脂肪の割合[2]。
- 24.7%: 生理の乱れのある運動する女性76人の、試験開始時の体脂肪率の平均[8]。
- 1.91: 食べる量を増やした群で生理が来る見込みのハザード比。95%信頼区間は1.27〜2.89[8]。
- 1日30kcal: 除脂肪量1kgあたりの利用可能エネルギーとして、医師らが勧める目安。上でも下でも乱れは起こりうる[4]。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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