DHEAのサプリで体脂肪は減るか 高齢者225人に1年飲ませ、体組成は偽薬と変わらず

DHEAは年齢とともに減る副腎のホルモンで、若返りのサプリとして売られてきた。動物で脂肪が減った報告、血中の値と体格の相関、高齢者に1〜2年飲ませた試験を並べ、体脂肪に何が起き、何が起きなかったかと、飲むと増える性ホルモンの注意点まで論文で確かめる。

毎日、同じ形の錠剤を一つ飲む。中身が本物のホルモンになるか、何も入っていない偽薬になるかは、くじで決められている。DAWNと名付けられたこの試験に加わったのは55〜85歳の健康な男女225人で、本物の組は50 mgのDHEAを毎日口から1年間飲み続けた[3]。

1年が過ぎたとき、本物を飲んだ人の血液では、DHEAと、その硫酸が結びついた形であるDHEA-Sが、若い成人に見られる濃さまで上がっていた[3]。血液の上では、確かに時計の針が戻っていた。ところが体組成、つまり体の中の脂肪と、脂肪以外の組織の量は、男性でも女性でもDHEAによる影響を受けなかった[3]。

血液の数字は若返り、体の中身は年齢のまま。この食い違いが、DHEAという物質の扱いにくさをよく表している。動物では脂肪を減らす働きが報告され、人の世界では「若返り」の栄養補助食品として大量に売られてきた[6][12]。期待がどこから来たのかと、人の試験が何を答えたのかは、分けて確かめた方が見通しがよい。

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DHEAは、血液の中で最も多いステロイドホルモン

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)と、その硫酸の形であるDHEA-Sは、人の血液を流れるステロイドホルモンの中で最も量が多い[12]。副腎でつくられ、なかでもDHEA-Sは副腎由来のステロイドとして最も多く血中を回っている[6]。

量が多いのに、役割ははっきりしない。1995年の総説は、DHEA-Sが人で最も多い副腎のステロイドでありながら、その生理的な役割も、もとになるDHEAの役割も分かっていないと書いた[6]。2018年の総説も、人の病気におけるDHEAの役割は、テストステロンやエストラジオールなどの材料になること以外ほとんど分かっていないとしている[14]。

材料としての働きは比較的よく調べられている。DHEAとDHEA-Sは体の多くの組織に取り込まれ、その場で男性ホルモンや女性ホルモンとして働く物質に作り替えられる[14]。ホルモンそのものとしてより、ほかのホルモンの原料として体を回っている、という見方である。

もう一つの特徴は年齢による減り方だ。DAWN試験の論文は、DHEAの値が年齢とともに大きく下がると書いている[3]。この年齢による低下が、インスリンの効きの悪さ、肥満、心臓や血管の病気といった、年を重ねると増える病気の原因の一部ではないかという考えを生んだ[7]。

期待は肥満だけにとどまらなかった。動物実験で調べられた病気や項目を並べると、がん、糖尿病、老化、肥満、免疫、骨密度、うつ、慢性疲労症候群、メタボリックシンドロームと続き、ほぼ一冊の医学書の目次になる[14]。一つの物質にこれだけの役が割り振られたことが、すでに慎重に読む理由になる。

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動物で脂肪が減っても、人に移せるとは限らない

DHEAが肥満の薬として注目されたのは、動物の結果からだった。DHEAを分泌しない種類の小さな哺乳類では、DHEAかその代謝物が、食べる量とは別に肥満を抑える物質として働く可能性が示された[6]。口から与えると脂肪の量が減り、体重の増え方も小さくなった[6]。仕組みの候補としては、エネルギーを無駄に使う空回りの代謝や、細胞の中の小器官ペルオキシソームでの脂肪酸の分解が増えること、新しく脂肪をつくる働きが減ることが挙げられた[6]。膵臓からのインスリンの出方や、インスリンの効き方の変化が関わる可能性も書かれている[6]。

ただし、もともとDHEAを分泌しない動物で起きたことを、DHEAを大量に分泌している人にそのまま当てはめるのは無理がある。2014年の総説は、結果が食い違う理由として、動物モデルへの頼りすぎを最初に挙げ、DHEAは本質的に人の分子だと書いた[12]。人では実現できない量を使った投与の方法や、DHEAが体の中で速く代謝されることも、データの解釈を難しくしているという[12]。

量の差はかなり大きい。2022年の総説は、人の試験で使われてきた100 mg前後の量が、動物実験で使われた量の約20分の1にあたると指摘し、人の試験はDHEAの可能性を確かめるには不十分だと論じた[9]。この著者は、男性ホルモンや女性ホルモンとしての働きを持たないDHEAの類似物質を開発し、その物質が臨床試験に入っていることも紹介している[9]。

この主張は、量を増やせば人でも脂肪が減ると示したものではない。動物の結果を人で再現するには、どの量なら安全で、どの量なら効くのかという、まだ答えの出ていない問いが間にある。

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血液のDHEA-Sが低い人ほど太っているのか

動物の次に期待を支えたのは、人の観察だった。サウジアラビアの病院で、19〜30歳の健康な女性65人を、BMIが27を超える肥満の26人と、27未満の39人に分けて調べた研究がある[4]。BMIは体重を身長の2乗で割った体格の指標である。肥満の組では、DHEA-Sの値が痩せた組より低かった[4]。全員で見ると、DHEA-SはBMIと負の相関を示し、相関係数は−0.25だった[4]。ヒップ囲とも−0.27の負の相関があり、腹囲や、腹囲をヒップ囲で割った比よりも、ヒップ囲のほうがDHEA-Sとよく結びついていた[4]。

同じ研究には、逆向きに見える結果もある。肥満の組の中だけで見ると、DHEA-Sは空腹時のインスリンと正の相関を示し、相関係数は0.43だった[4]。研究者は、インスリンがDHEA-Sの分泌を独立に調節している可能性を挙げている[4]。体格がDHEA-Sの値を左右しているのか、その逆なのかを、この1回の測定だけで決めることはできない。

人の研究をまとめた2004年の総説は、もう少し広い範囲を見ている。DHEAの硫酸が結びついていない形、つまり遊離のDHEAが高いことは、男女ともに肥満が少ないことと、男性ではお腹の脂肪が少ないことと関連していた[7]。一方で、DHEA-Sと体脂肪の関係については食い違う結果が報告されており、対象者の年齢の違いが交絡、つまり見かけの関連をつくる別の要因になっていた可能性があるという[7]。

相関は、あくまで「一緒に見られた」という記録である。DHEA-Sが低い人に肥満が多いという観察は、DHEAを飲めば脂肪が減るという予測を生んだが、その予測が正しいかどうかは、飲ませて比べる試験でしか確かめられない。

高齢者に1年、2年と飲ませた試験は何を測ったか

冒頭のDAWN試験は、骨を中心に調べた無作為化比較試験だった。偽薬と比べて、DHEAを飲んだ女性ではテストステロン、エストラジオール、そして成長に関わるIGF-1の値が上がったが、男性では上がらなかった[3]。

骨では、女性に限って小さな変化があった。12か月後、女性では腰の背骨の骨密度にDHEAの良い影響が見られた一方、股関節や太ももの付け根、全身の骨密度には影響が無く、男性ではどの部位にも有意な変化が無かった[3]。研究者は、女性には控えめで限られた骨への益があり、男性には骨の益が無いと結論している[3]。体組成については、すでに書いたとおり男女とも変化が無かった[3]。

2年間続けた試験もある。60歳以上で、DHEA-Sが低い高齢の男女を対象に、二重盲検、つまり参加者も研究者もどちらを飲んでいるか知らない形で行われた[18]。高齢女性は50 mgのDHEAか偽薬、高齢男性は75 mgのDHEAが30人、テストステロンの貼り薬5 mgが29人、偽薬が32人で、毎日2年間続けた[18]。比べる相手として、若い女性30人と若い男性32人も調べられている[18]。

この試験は、体重計ではなく、食事の脂肪がどこへ行くかを追った。試験の始めの時点で、高齢者は若い人より体脂肪が多く、食事でとった脂肪を燃やす割合が高く、皮下脂肪へ蓄える割合が低かった[18]。2年後、テストステロンは高齢男性で食事の脂肪を上半身へ多く蓄える方向へ動かしたが、DHEAもテストステロンも、体の部位ごとの脂肪量、食事の脂肪の燃え方、空腹時の脂肪の分解には影響しなかった[18]。研究者は、年齢に伴う変化はDHEAでは直らず、テストステロンでも一部しか直らなかったとまとめた[18]。

2022年の総説は、こうした試験を広く見渡している。50〜100 mgのDHEAを高齢者に最長2年与えた試験では、体組成、最大酸素摂取量、筋力、インスリンの効き方のいずれにも、はっきりした益の証拠は出なかった[9]。脂肪だけでなく、筋肉の力や持久力の指標でも、答えは同じ方向だった。

数字で読むDHEAの試験

225人:DAWN試験の参加者数。55〜85歳の健康な男女で、50 mgのDHEAか偽薬を毎日1年飲んだ[3]

75 mg:2年の試験で、DHEA-Sが低い高齢男性30人が毎日飲んだDHEAの量。同じ試験の高齢女性は50 mgで、体の部位ごとの脂肪量はDHEAでもテストステロンでも変わらなかった[18]

12人:50 mgのDHEAと偽薬を3か月ずつ入れ替えて飲んだ男性の数。平均59.0歳で、DHEA-Sの上昇のほかに有意な変化は無かった[17]

−0.25:19〜30歳のサウジアラビアの女性65人で測った、DHEA-SとBMIの相関係数。ヒップ囲とは−0.27だった[4]

28人:副腎の働きが落ちた女性のうち、50 mgのDHEAと偽薬を12週ずつ入れ替える試験を最後まで続けた人数。体組成も筋力も変わらなかった[13]

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宮川涼 Founder

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