野球の背中の筋トレは球速にも届く?引く力の記録と投げる速さを分けて読む

上半身の筋力が改善しても、投球速度に有意な変化がなかった試験がある。一方、投動作を含む負荷練習で改善した男子ハンドボール選手の試験もある。競技と対象者、筋力・投球・打撃の測定の違いから、野球の背中の筋トレを評価する際の判断基準と、練習記録を分けて残す方法を整理する。

キャッチボールで相手のミットを鳴らしたい。ジムの記録では、先月より重い負荷を引けている。この進歩は投げる球にも届いているのか。背中の筋トレの成績表を、グラウンドでも開きたくなる場面だ。

答えの芯は、筋力の向上をそのまま球速の向上と数えないことだ。男性を対象にした無作為化比較試験では、ベンチプレスの最大筋力とバーを押し出す速度が改善しても、ハンドボールの投球速度には有意な変化がなかった。一方、男子エリートハンドボール選手では、競技練習に投動作を含む負荷練習を加えて投球速度が改善した試験もある。いずれも18〜39歳の女性の野球で同じ変化が得られるかは、この結果だけでは判断できない。[1][2]

野球の背中の筋トレを考える際にも、「引く力を伸ばせたか」と「野球で投げる速さが変わったか」は別々に確認したい。既存記事「背中の筋トレはネガティブ懸垂だけで十分?伸ばしたい力と測る課題を分けて読む」に種目の十分性という問いを譲り、ここでは筋力測定の成果が投球へ移るかという問いに絞る。

栄養補給を考える「野球のプロテインは打つ力で選べる?投げる速さと回復の研究を読み分ける」とも問いを分ける。ここで比べるのは飲むものではなく、筋力トレーニングの課題と投球の測定結果である。

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引ける重さと球速を、同じ成果にしない

筋トレの成果が別の動作にも現れることを、ここでは「転移」と呼ぶ。ただし、重いものを動かせること、軽いものを速く動かせること、ボールを投げることは、測定する課題が異なる。実際に同じ試験の中で、それらがそろって改善しない例がある。[1]

その試験では男性35人を、通常のセット構成で鍛える群、休みを反復の間に配る群、対照群へ無作為に分けた。使った種目はベンチプレスであり、背中で負荷を引く運動そのものではない。だから、この結果からローイングや懸垂の優劣を決めることはできない。読み取れるのは、上半身の筋力トレーニングで何を伸ばし、何が変わらなかったかという対応関係である。男性の結果を18〜39歳の女性へ適用するには、対象の違いを考慮する必要がある。[1]

評価には、ベンチプレスで持ち上げられる最大重量と、30kgの負荷を押し出す際の最高速度、ハンドボールの投球速度が含まれた。最大重量は大きな力を出す課題、押し出す速度は決まった負荷を速く動かす課題として区別できる。そして投球は、バーを手に持って行う測定とは別に実施された。[1]

ここを生活の記録に置き換えるなら、筋トレの欄と競技の欄を分けることになる。「背中の日は順調だった」という感想を消す必要はない。しかし、その横に球速が上がったという印まで自動的に付ける必要もない。試験でも筋力と投球速度は別の測定だったのだから、自分のノートでも別々に眺めるのが筋である。[1]

検索するときは「球速を上げる背中」とひとまとまりにしがちだが、練習を振り返るときには問いをほどきたい。背中を鍛える種目の記録が変わったのか、投げた球の測定が変わったのか。それぞれの成果を確かめてから、両者のつながりを考える。この順番なら、球速が変わらない日にも筋トレの進歩まで取り消さずに済む。

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筋力が伸びても投球速度が変わらなかった試験

先ほどの試験の介入期間は6週間、実施頻度は週2回だった。通常の群は5回を6セット、セット間の休みは3分。休みを配り直す群は30回を1セットとし、反復の間に31秒を置いた。総休息時間はどちらも15分、負荷は最大挙上重量の75%でそろえた。限界まで反復する方式ではなく、毎回できるだけ速く動かす意図で行われた。[1]

結果として、通常の群と休みを配り直した群では、最大筋力と押し出す速度が改善した。変化の大きさを標準化した指標である効果量は、通常の群で0.77、休みを配り直した群で0.56〜0.59だった。筋力と押し出す速度の変化について、両トレーニング群の間に差はなかった。[1]

ところがハンドボールの投球速度には、介入前後で有意な差がなかった。投球速度の効果量は通常の群で0.16、休みを配り直した群で0.22、対照群で0.02だった。押す力が伸びたという結果と、投球の改善を確認できなかったという結果を、同じ重さで受け止める必要がある。[1]

これは「筋トレは投球に役立たない」という最終判決ではない。この対象、この種目、この期間で、投球速度の有意な変化を認めなかったという結果だ。また、有意差がないことを、どんな小さな変化も絶対に起きないという意味にしてはいけない。肯定にも否定にも話を広げず、実施した課題と測った成果を結び付けて読む。[1]

週末だけ球技を楽しむ大人が、そのまま実験の負荷や回数を再現する必要はない。むしろ参考になるのは、休み方まで変えて筋力を伸ばしても、競技の数字は別途確かめていた点だ。トレーニングの細かな工夫が当たったからといって、競技への転移は、投球の測定結果で確かめる。[1]

休み方の比較にも読みどころがある。この試験では総休息時間と負荷の強さをそろえ、休息を置く位置を変えた。そのうえで筋力と押し出す速度の改善が同程度だったのであり、結論の範囲は、この負荷と休息の配分にとどまる。総量をそろえた比較なのかを確かめると、練習の名前だけで方法を選ばずに済む。[1]

また、両群とも負荷を日々の速度測定から調整していた。単に決まった重さを持ち続ける練習とは条件が異なる。自宅やジムで行う内容と研究を比べるなら、種目名や実施期間だけでなく、このような負荷管理も並べたい。結果が出た方法の一部分だけを切り出すと、同じプログラムを再現したつもりでも、比較の前提が変わってしまう。[1]

投げる練習を含めたとき、何が変わったか

別の無作為化比較試験では、男子のエリートハンドボール選手34人を、メディシンボールによる負荷練習群、通常のボールによる投練習群、対照群に分けた。メディシンボールとは、ここでは負荷をかけた投動作に使うボールである。平均年齢は18歳で、競技シーズン中の通常練習に加え、8週間にわたり週3回のプログラムを行った。18〜39歳の女性の初心者に同じ成果が得られるかは、別途確かめる必要がある。[2]

測定した投球は立位、助走あり、ジャンプを伴う形に分かれていた。加えて、ベンチプレスとプルオーバーの最大挙上重量、3kgのメディシンボールを頭上から投げる距離なども調べた。球速だけを取り出すのではなく、力の測定と複数の投げ方を並べた設計である。[2]

負荷をかけた投動作の群では、投球速度、最大筋力、パワー、筋量の増加が報告された。通常のボールを投げる群でも最大筋力、筋量、パワーは増加したが、投球速度の改善はジャンプ投げに認められた。対照群には有意な変化がなかった。通常の投練習であっても、改善は投げ方によって異なった。[2]

この研究は、投球に近い負荷練習を競技練習と組み合わせる道筋を示している。ただし、先ほどのベンチプレス試験と対象者も期間も練習全体も違う。別々の試験を並べて、「投げる練習はベンチプレスより何倍有効」と順位付けすることはできない。共通して見たいのは、どの練習に対して、どの投球課題が変化したかである。[1][2]

野球の投球は、この試験で測ったハンドボールの投球とは異なる。背中の筋トレだけを追加した効果とも違う。したがって、球速向上の可能性を考える材料にはなっても、野球をする人全員の処方箋にはならない。「投げる動作が入っている」という似た部分と、「別の競技を測った」という境界を一緒に持っておく読み方が必要だ。[2]

たとえば、キャッチボールの相手が女性の初心者である場合と、競技シーズン中の男子選手である場合では、生活の前提が違う。研究のプログラムをそのまま持ち込むより、何を目標に練習を組んだのかを読む。球速が目的なら球速を調べ、筋力が目的なら筋力を調べるという対応は、対象が違っても記録を考える手掛かりになる。

数字で読む筋力と投球の距離

35人:筋力、押し出す速度、ハンドボール投球を別々に評価した男性の無作為化比較試験。[1]

6週間・週2回:ベンチプレスを行った期間と頻度。筋力は改善したが、投球速度に有意な変化はなかった。[1]

0.16と0.22:同試験のトレーニング群における投球速度の効果量。筋力の効果量と混ぜない。[1]

34人・8週間:投動作を含む負荷練習を通常の競技練習に追加した、男子エリート選手の試験。[2]

119人:年齢区分ごとの身体的特徴と投球速度の関係を調べた、男子ハンドボール選手の観察研究。[11]

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宮川涼 Founder

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