野球の背中の筋トレは球速にも届く?引く力の記録と投げる速さを分けて読む

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野球選手の研究でも、測定項目を先に見る

「野球選手を対象にした」という言葉だけで、球速の根拠だと受け取らないことも大切だ。大学男子野球選手24人の研究では、オフシーズンの体力づくりの一部として、バンドまたはチェーンを用いたベンチプレスを行った。参加者は大学での筋力トレーニング経験があり、初めて重りに触れる人たちではなかった。18〜39歳の女性、とくに筋トレ未経験者に同じ結果を見込めるかは、この試験だけでは判断できない。[8]

対応する筋力測定の結果を基に群分けしたあと、バンドを用いる群とチェーンを用いる群へ無作為に割り付けた。5週間の介入でベンチプレスを週2回行い、最大挙上重量は介入前後で有意に増加した。一方、バンドとチェーンの群の間には有意な差がなかった。[8]

ここで確認されたのは、野球選手の上半身最大筋力の改善である。野球選手が行った筋トレであることと、その効果を野球の投球速度として測ったことは同義ではない。ベンチプレスの記録についての結果を、背中の引く筋力や球速の増加へ読み替えない。そのままの測定項目に置いておけば、筋力づくりの成果として正当に評価できる。[8]

また、野球の打撃を調べた研究にも注意したい。大学野球選手19人を対象に、重さの違うバットでの準備運動を比べた研究では、上半身筋力と介入前のバット速度に関連が認められた。相関係数は0.51だったが、準備運動の方式によるバット速度への有意な効果はなかった。大学野球選手の結果が18〜39歳の女性にも当てはまるかは、競技経験を含めて検討が必要だ。[16]

相関係数とは、一緒に高くなったり低くなったりする傾向の強さを表す数値である。筋力の高い選手のバットが速い傾向と、筋力を伸ばせば同じ人のバットが速くなるという変化は、別の問いだ。まして、バット速度と投球速度は別の成果である。野球という名前のついた研究を、すべて球速の証拠箱に入れないようにしたい。[16]

この準備運動研究では、ある順番の平均変化が最も大きかったことも報告されている。しかし、方式による効果の検定では有意差がなかった。目を引く変化率だけを選んで、確実な上達法と扱うのは適切ではない。研究の中で大きく見える値と、比較によって確かめられた効果は、同じとは限らないのである。[16]

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強い人ほど速い、から練習方法を決めない

身体の大きさや経験の違う選手同士を比べるときには、さらに話が複雑になる。男子ハンドボール選手119人を調べた観察研究では、13歳未満の区分と15歳未満の区分で、肩の筋力や投球速度、ジャンプなどを比較した。年齢が上の区分は、上半身と下半身の多くの測定で高い成績だった。成長途中の男子の関係が18〜39歳の女性にも当てはまるかは、この観察研究からは判断できない。[11]

上半身の測定には、肩を内側・外側へ回す力や頭上からのメディシンボール投げ、競技の投球速度が含まれた。年齢区分間の上半身の成績差の効果量は0.76〜2.13だった。また、身長や体重、メディシンボールの投距離は、特に若い区分で投球速度の違いを説明する重要な要素とされた。[11]

これは、背中を鍛えた前後で球速がどれだけ変わるかを試した研究ではない。身体的特徴と投球速度がどう関係するかを観察したものである。「球が速い選手にはこういう特徴がある」という情報は、選手を理解する助けになる。それでも、その特徴を単独で変えれば球速が同じように上がるとは断定できない。[11]

年少者のデータを大人の練習に持ち込む場合も、対象の違いを残して読む必要がある。成長途中の選手の身長や体重と球速の関連を見て、体を大きくすることを成人全員の目標にしてはいけない。この研究が示した身体的特徴は、投球成績を理解するときに一緒に記録すべき情報であって、読者の体型を採点する物差しではない。[11]

キャッチボールの相手の球が速いと、つい自分の背中の弱さを原因にしたくなる。しかし、相手と自分を比べる話と、自分の練習前後を比べる話は分けたい。相手の筋力記録だけを聞いて答えを決めるより、自分がどの課題を続けて、どの記録が変わったかを追う。研究の対象者同士の関連を、そのまま自分の変化量に変換しないための整理である。[11]

同じ「上半身が強い」という言葉でも、ベンチプレスの最大重量と肩を回す力では測定が違う。背中の引く動きの成績を、押す動きの研究結果で埋め合わせることもできない。記事の見出しにある筋肉名より、実際に何を測定した研究なのかを先に確認すると、筋トレと投球の距離を見失いにくい。[1][8][11]

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よくある誤解

「筋トレの記録が伸びれば、投げる速さも必ず伸びる」は言い過ぎだ。男性のベンチプレス試験では、最大筋力と押し出す速度が改善した一方、ハンドボール投球速度には有意な変化がなかった。筋トレの成果を認めることと、競技への転移を未確認のままにしないことは両立する。[1]

「投げる競技なら、成功したプログラムを丸ごと使える」も慎重に扱いたい。男子エリートハンドボール選手の試験では負荷をかけた投動作が有望だったが、水球選手を対象とした別の比較研究では、最大筋力を重視した方法とパワーを重視した方法のどちらも競技成績を改善せず、肩の痛みが増えたと報告された。種目も対象も違い、同じ結論を保証しない。男女の水球選手の結果を18〜39歳の女性の野球に当てはめられるかは、競技と対象を分けて検討する必要がある。[2][3]

水球の研究では、最大筋力群に男性14人と女性8人、パワー群に男性13人と女性8人が割り付けられた。筋力や投球速度に加え、肩の痛みも評価している。女性も含むが、18〜39歳の女性の野球で同じ経過になるかは未確定だ。ハンドボールの改善結果だけを残して、この不都合な結果を隠してはいけない。負荷を扱う練習を始めれば、能力と快適さが一緒に上向くとは限らないのである。[3]

「速く投げられなかったなら、もっと重くすればよい」とも限らない。筋力の伸びと投球速度が一致しなかった試験がある以上、重量の不足だけで説明するのは飛躍になる。まず、狙った成果が筋力なのか球速なのかを戻って確認したい。痛みを伴う場合には、練習量を増やして答えを探さず、医師に相談する。[1][3]

肩の痛みが増えた試験は、背中の筋トレ全般を危険とする証拠でもない。水球選手に実施したプログラムで起きた結果として受け止める。良い結果を全員に約束しないのと同じように、悪い結果をあらゆる種目へ広げない。競技成績と痛みの経過を同時に見た研究だからこそ、成功を球速だけで判断しない視点が得られる。[3]

今日からできること

  • 記録の冒頭に「引く筋力を伸ばす」「投げる速さを確かめる」など、その日の目的を書く。男性35人の試験でも筋力と投球速度は別々の測定であり、達成した項目を分けて残す。[1]
  • 参考にした練習の対象者と期間を確認する。6週間・週2回のベンチプレス試験と、8週間・週3回のハンドボールの投練習試験を、同じ条件の比較だと考えない。[1][2]
  • 野球の研究を読むときも、結果が最大重量なのか、バット速度なのかを先に確かめる。大学選手24人の筋力研究と19人の準備運動研究では、測った成果が違う。[8][16]
  • 投球の変化を振り返る際には、投げ方の違いも書き添える。男子選手34人の試験では立位、助走あり、ジャンプ投げを分けて評価しており、通常の投練習群の改善も投げ方で異なった。[2]
  • 肩の痛みを成績とは別に残す。男女を含む水球の試験では、筋力重視とパワー重視の両群で痛みが増えた。痛みがあるときの判断は、重量の自己更新より先に医師へ相談する。[3]

数字が上がらなかった日にも、どの欄が変わらなかったのかを残せば、次に相談する材料になる。引く運動の記録が上向き、投球の記録が横ばいなら、その組み合わせをそのまま伝える。筋トレを失敗と呼ぶ必要も、球速の伸びを想像で補う必要もない。研究でも起きた成果のずれを、自分の記録でも見える形にするのである。[1]

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参考文献

[1] Effect of Resistance-Training Programs Differing in Set Configuration on Maximal Strength and Explosive-Action Performance — Cuevas-Aburto J, Jukic I, González-Hernández JM, Janicijevic D, Barboza-González, 2021, International journal of sports physiology and performance. DOI: 10.1123/ijspp.2019-1005

[2] Comparison of In-Season-Specific Resistance vs. A Regular Throwing Training Program on Throwing Velocity, Anthropometry, and Power Performance in Elite Handball Players — Hermassi S, van den Tillaar R, Khlifa R, Chelly MS, Chamari K., 2015, Journal of strength and conditioning research. DOI: 10.1519/jsc.0000000000000855

[3] Relationship between strength training and shoulder pain in male and female water polo players — Barrenetxea-Garcia J, Gil SM, Esain I, Torres-Unda J., 2023, Journal of exercise rehabilitation. DOI: 10.12965/jer.2346472.236

[8] Effect of compensatory acceleration training in combination with accommodating resistance on upper body strength in collegiate athletes — Jones MT., 2014, Open access journal of sports medicine. DOI: 10.2147/oajsm.s65877

[11] Physical fitness and throwing speed in U13 versus U15 male handball players — Fernandez-Fernandez J, Granacher U, Martinez-Martin I, Garcia-Tormo V, Herrero-M, 2022, BMC sports science, medicine & rehabilitation. DOI: 10.1186/s13102-022-00507-0

[16] Acute effects of various weighted bat warm-up protocols on bat velocity — Reyes GF, Dolny D., 2009, Journal of strength and conditioning research. DOI: 10.1519/jsc.0b013e3181b3dd32

この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。

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