住む場所で体重は変わるか 農村と都市の肥満の差は国や年齢層で向きが変わる

農村はよく動くから太りにくい、都市は便利だから太りやすい。その見方は国や性別、調査した年代で変わる。米国や韓国、中国などの研究から、住む場所と肥満の関係を確かめる。余暇の活動と仕事中の活動、食事の違い、膝に痛みがある人への食事・運動支援まで、住所だけでは分からない条件をたどる。

35.6%と30.4%。米国の成人を調べた研究では、肥満に該当した人の割合は農村のほうが都市より高かった。自然の多そうな住所が、そのまま低い体重を意味するわけではなかった。[12]

田舎の親戚は働き者で、街で働く自分は座ってばかり。そんな身近な印象から、住む場所と体重を結びつけたくなることがある。しかし韓国の全国調査では、男性と女性、若い層と年長の層で、地域差の現れ方がそろわなかった。[5]

住む地域を変える話より先に、同じ地域名の下で何を比べているのかを見たい。農村と都市の比較は、景色を採点する作業とは違う。年齢や性別、調査時期、どの活動を測ったかによって、読み取れる暮らしの輪郭が変わる。[3][5][12]

ロシアのメズマイ村にある農村の家々を写した横長の集落の風景 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

米国では、余暇に動かない人も農村に多かった

米国の研究は、1999〜2006年の全国調査に参加した20歳以上の14,039人を解析した観察研究である。身長と体重を実測して、BMIが30以上の人を肥満と分類した。BMIは身長と体重から求める体格の指標であり、肥満の分類には測定値が使われた。[12]

男女別でも農村の肥満割合が高く、男性では農村37.7%、都市32.5%、女性では農村33.4%、都市28.2%だった。この調査では男女とも農村の割合が高いという共通点があった。[12]

暮らしの違いとして目を引くのは余暇の身体活動である。余暇に身体活動をしないと回答した人は、農村38.8%、都市31.8%だった。研究で用いた活動の推奨水準を満たすか、それを上回った人は農村41.5%、都市47.2%である。「農村に住む」という情報と、「余暇に体を動かしている」という情報は、別々に確かめる必要があった。[12]

食事も調べている。農村の成人は食物繊維と果物の摂取が少なく、加糖飲料の摂取が多かった。食事の評価には、前日の摂取内容を聞き取る方法を使っている。比較に含まれたのは、食物繊維、果物、加糖飲料という実際の摂取内容だった。[12]

重要なのは、こうした行動を考慮しても地域差が残った点である。年齢などの社会人口学的要因、健康状態、食事、座って過ごす行動、身体活動を統計的に調整した後も、農村の肥満のオッズは都市の1.19倍だった。95%信頼区間は1.06〜1.34である。ここで比較した指標は、地域別の肥満のオッズである。[12]

ここで残った差を、車移動や食品店の不足のせいだと埋めたくなる。しかし、この結果が示すのは、測定した行動だけでは地域差を説明しきれなかったことだ。研究者も、肥満につながりやすい環境をさらに調べる必要性を挙げている。食事と身体活動を調べた後にも、地域の環境を探る課題が残った。[12]

この米国研究では、身体活動に加えて、座って過ごす行動も統計的な調整に含めている。運動をしたかどうかだけで暮らしを代表させず、活動と座位行動の両方を解析に取り込んだ。そのうえで、農村と都市の肥満の差が残るという結果になった。[12]

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韓国では、男女と年齢で地域差の向きが変わる

韓国の研究は1998年の全国健康・栄養調査から、20〜64歳の男性2,583人と女性3,087人を対象にした。肥満の分類はBMIが25以上である。同じ「肥満」という日本語でも、米国研究の分類とは境界が異なるため、両国の割合をそのまま横に並べて優劣をつけることはできない。[5][12]

20〜49歳の男性では、居住地域による肥満割合の差は見られなかった。ところが50〜64歳の男性では大都市が最も高く、農村が最も低かった。男性全体をひとまとめにすると、年齢によって違う比較を覆い隠してしまう。[5]

女性では別の形になる。20〜49歳では都市より農村のほうが肥満割合が高く、年長の女性ではその地域差は見られなかった。つまり同じ国の同じ調査でも、「都市ほど高い」と言える層と、「農村ほど高い」と言える層、差が確認されない層があった。[5]

肥満に関係する健康行動の地域差は、主に年長の集団で見られ、若い集団ではそうではなかった。年齢によって、肥満の地域差だけでなく、関連する健康行動の地域差の現れ方も変わっていた。論文は、性別・年齢・居住地域を考慮した対策を求めている。[5]

自分に近い情報を探すとき、「韓国の研究だから日本でも同じ」と距離を縮めるより、対象者が誰だったかを見るほうが役に立つ。若い女性を含む数字か、年長の男性の数字か。その確認がないまま「都市型の肥満」という言葉だけを受け取ると、自分とは違う集団の特徴を背負いかねない。[5]

韓国の解析では、全国調査の層化された多段階の抽出方法を考慮して統計を計算している。単に大都市と農村から身近な人を集めた比較よりも、全国を代表する標本としての性質を生かした設計だった。著者らは、韓国で進む行動の変化が地域によって異なる段階にあることを論点に挙げている。[5]

農村と都市の差は、年代とともに動いている

中国の子どもの研究は、1985年から2010年までの全国調査を使った。1985年、1995年、2000年、2005年、2010年の全国調査で、各時点の集団の肥満割合を比べた。[3]

標準化した肥満割合は、全体で1985年の0.1%から2010年の5.0%へ上昇した。各調査時点、各年齢集団では都市のほうが農村より高かった一方、1995〜2010年の増加の速さは農村のほうが大きかった。低い側にあることは、その後も変化が小さいことを意味しない。[3]

この研究の中心は、農村と都市の開きが徐々に縮まっていた点である。都市の割合が高いという順位だけを見て農村への対応を後回しにすると、増える速度を見落とす。論文も、まだ割合が低くても農村の子どもを予防の対象に含めるべきだとしている。[3]

成人でも、地域を固定した風景のように扱えない例がある。インドの首都圏で35〜64歳を対象にした研究は、1991〜1994年と2010〜2012年に、同様の方法で住民を調べた。年齢構成を調整した平均BMIは、都市で24.4から26.0へ、農村で20.2から23.0へ上がっていた。[20]

都市は元から高く、農村も上がっていた。さらに血圧と空腹時血糖の集団平均も両地域で上昇した。総コレステロールが高い人の割合については、都市で低下し農村で増加しており、健康指標の動きまで同じではなかった。体格の比較だけで、その地域の健康状態を代表させることはできない。[20]

田舎で育った親の若いころの生活と、今その地域で暮らす人の生活を、同じものとして話さない。この注意は、農村をひとくくりに評価するためでなく、年代を伴う結果を年代ごと受け取るためのものだ。中国とインドの研究は、地域の順位と変化の速さを分けて読む材料になる。[3][20]

インドの調査人数も、都市では最初が3,048人、後の調査が2,052人、農村ではそれぞれ2,487人と1,917人と異なる。いずれも住民集団を代表する横断調査として行われた。調べたのは喫煙や飲酒といった行動、過体重や腹部肥満、血圧、空腹時血糖、総コレステロールで、身体測定と血液検査を含む幅広い項目だった。[20]

数字で読む農村と都市の比較

14,039人:実測した身長・体重で地域差を解析した米国成人の人数である。[12]

BMI25以上:韓国研究の肥満の分類。米国研究とは分類の境界が違う。[5]

0.1%から5.0%:中国の子どもの標準化した肥満割合の変化である。[3]

20.2から23.0:インド首都圏の農村で見られた、年齢構成調整後の平均BMIの変化である。[20]

823人:農村と都市の膝の変形性関節症がある人を含む、食事・運動支援の試験参加者数である。[6]

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宮川涼 Founder

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