メタボ健診の特定保健指導で体重は減ったのか 参加者の1.98kgと割り当ての差0.29kg

特定健診で腹囲が基準を超え、保健指導の対象になると体重は減るのか。参加者自身の1年の変化を見た全国の分析と、腹囲85cmの境目の前後で群の差を見た7万人あまりの男性の研究は、物差しが違う。早食いに絞った指導と対面・オンラインの比較も合わせ、結果票の読み方を考える。

特定保健指導を受けた男性は、1年で体重が1.98kg減っていた。2008年に指導の対象になった人を国のデータベースで追った研究で、腹部の肥満に加えて危険因子を2つ以上持つ人向けの「積極的支援」に参加した男性の値である[4]。対象になりながら参加しなかった男性は、0.42kgの減少にとどまった[4]。

同じ制度を別の方法で調べた研究は、ずっと小さな数字を出している。男性74,693人のデータで、腹囲85cmの境目のすぐ上とすぐ下を比べると、指導の対象に割り当てられたことと結びついた体重の差は、1年後で0.29kgだった[2]。この差は年とともに薄れ、3〜4年目には統計的に意味のある差ではなくなった[2]。著者らは、指導は臨床的に意味のある減量と結びつかなかったと結論している[2]。

1.98kgと0.29kg。ただし、1.98kgは参加した人自身の1年の変化で、参加しなかった男性も0.42kg減っていた[4]。0.29kgのほうは、割り当てられた群とそうでない群の差である[2]。物差しの違う2つの数字で、片方が間違っているというより、2つの研究は違う問いに答えている。どちらの数字を自分に重ねるかで、健診のあとに届く指導の案内の封筒の見え方は変わってくる。この記事では、日本の特定保健指導を検証した研究を、何と何を比べたのかに注意しながら1つずつ読む。食べる速さそのものと体重の関係は「よく噛んでゆっくり食べるダイエットの科学 食事量と体重は同じように変わるか」に、オンラインの減量指導の全般は「オンライン診療の減量指導は対面に届くか 画面より先に確かめたい支援の中身」に譲る。

ポーランドで撮影された写真血圧計を使って血圧を測っている場面 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

腹囲と危険因子で、指導の濃さが決まる

制度の骨組みから確かめておく。2008年から、日本のすべての医療保険者に、中年の加入者を対象とした特定健康診査(特定健診)と特定保健指導を行うことが義務づけられた[4]。焦点は代謝症候群(メタボリックシンドローム)に置かれている[4]。腹部の肥満があり、そのほかの危険因子を2つ以上持つ人には積極的支援、1つの人には動機付け支援という、濃さの違う指導が用意された[4]。

男性を対象にした研究の書き方では、年に一度の健診で腹囲が85cm以上で、心臓や血管の病気の危険因子を1つ以上持つ人が、健康な生活習慣についての相談と、必要に応じた医療での経過観察の対象になる[2]。対象の年齢は40〜74歳である[1][2]。

2026年の総説によれば、日本の健診の仕組みは40年をかけて形づくられてきた[18]。1982年の老人保健法のもとで始まった地域の健診は、高血圧の発見と管理を進めることで、脳や心臓の血管の病気による死亡と、入院の需要を減らすことに寄与した[18]。生活習慣病が目立つにつれて国は健康日本21を打ち出し、続いて2008年に、内臓脂肪型の肥満とそれに伴う代謝の危険を狙う特定健診・特定保健指導を始めた[18]。健診では身体の計測、血液などの検査、病歴、生活習慣の質問票がそろえて行われる[18]。指導は、訓練を受けた専門職が、続けられる生活の変え方を目指して組み立てた行動の支援として行う[18]。

つまり、指導の入り口に立つかどうかは、まず腹囲で決まる。この腹囲という入り口が、後で見る研究の比べ方にも、制度の死角にも関わってくる。

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

参加した人と、しなかった人を比べると

冒頭の1.98kgは、国のデータベースを使った記述的な分析から出た数字だ[4]。2008年に特定保健指導の対象になった人のうち、参加した31,790人と参加しなかった189,726人について、危険因子の変化と、薬による治療を始めたかどうかを3年間比べている[4]。

1年後の体重の減少は、積極的支援で男性が1.98kg(参加しなかった男性は0.42kg)、女性が2.25kg(同0.68kg)だった[4]。動機付け支援では、男性が1.40kg(同0.30kg)、女性が1.53kg(同0.42kg)である[4]。腹囲の減り方も積極的支援の参加者で最も大きく、男性で2.34cm、女性で2.98cmだった[4]。こうした減少は3年の間ほとんど変わらず、代謝症候群の危険因子もより大きく改善していた[4]。薬による治療を始めた人の割合は、参加者のほうが有意に小さかった[4]。

別の研究も、似た差を見つけている。2011〜2012年の健診の結果がそろった40〜64歳の積極的支援の対象者76,565人で、1年間の体重の変化を比べたものだ[8]。参加しなかった人の平均は男性で−0.45kg、女性で−0.66kg、指導を終えた人では男性で−1.32kg、女性で−1.68kgだった[8]。

ただし、この比べ方には大きな落とし穴がある。指導を受けるかどうかを、本人が選んでいるからだ。案内を受け取って面談に行く人は、行かない人と比べて、もともと体重を気にしていたり、時間の都合がついたりするのかもしれない。そうであれば、参加者の体重が減ったのは指導のおかげなのか、指導を受けるような人だったからなのか、区別がつかない。国のデータベースの分析の著者らも、選択の偏りがありうると認めたうえで、特定保健指導は代謝症候群とその先の病気を防ぐ実行可能な戦略になりうると、控えめに書いている[4]。

立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

腹囲85cmの境目で比べると、差は0.29kg

選ぶ人の違いを避けるために使われたのが、回帰不連続デザインという方法である[2]。腹囲が85cmをわずかに超えた人と、わずかに届かなかった人は、体つきも生活もほとんど変わらないはずだ。境目のすぐ下にいた人は、測った日にたまたま息を少し長めに吐いていただけかもしれない。違うのは、境目を超えたかどうかで指導の対象に割り当てられたかどうかだけ。その2つの群を比べれば、割り当ての効果を、くじ引きに近い形で取り出せる。

対象は、2013年4月から2018年3月までに健診を受けた40〜74歳の男性74,693人で、平均年齢は52.1歳、開始時の平均腹囲は86.3cmだった[2]。1年後、指導の対象に割り当てられたことは、体重で−0.29kg(95%信頼区間−0.50〜−0.08)、BMIで−0.10、腹囲で−0.34cmの差と結びついていた[2]。差は統計的には確かでも、大きさは小さい。しかもこの差は時間とともに薄れ、3〜4年目には意味のある差ではなくなった[2]。上の血圧、下の血圧、HbA1c(血糖の状態を映す値)、LDLコレステロールには、1〜4年目のどの時点でも変化の証拠が見られなかった[2]。

同じ方法で、医療の使い方とお金を調べた研究もある[1]。土木・建設の会社の健康保険の加入者で、2014年に健診を受けた113,302人のうち、腹囲が境目から±6cmの範囲に入る51,213人を分析した[1]。年齢の中央値は50.0歳、女性は11.9%である[1]。指導の対象に割り当てられたことは、3年以内の外来の受診日数が1.3日少ないことと結びついていた(95%信頼区間−11.4〜−0.5日)[1]。一方、薬の使用、入院、医療費の総額には、変化の証拠がなかった[1]。

1.98kgと0.29kgのあいだにあるもの

まず、物差しをそろえておく。1.98kgは参加者自身の変化で、参加しなかった男性も同じ1年で0.42kg減っている[4]。0.29kgは群の差なので[2]、比べるなら、参加者と非参加者の差のほうになる。そのうえで残る食い違いを生んでいるものは、少なくとも3つ考えられる。

1つ目は、さきほどの選択の偏りだ。参加者と非参加者の比較には、指導の効果と、指導を受ける人の性質が混ざっている[4]。境目での比較は、この混ざりを避けるために組まれた[2]。

2つ目は、「割り当て」と「参加」の違いである。境目の研究が比べたのは対象になったかどうかで、実際に面談を受けたかどうかではない[2]。対象になっても受けない人が多ければ、割り当ての効果は薄まって見える。横浜市の国民健康保険の加入者で、2021年に特定保健指導の対象になった1,377人を、何もしない群、案内の手紙を送る群、電話をかける群に無作為に分けた試験では、利用した人の割合はそれぞれ10.5%、15.3%、13.7%だった[7]。3つの群の差は、統計的に意味のある水準に届かなかった[7]。対象の77.9%が男性で、平均年齢は63.1歳と、働く世代の健康保険とは顔ぶれが違う。それでも、案内が届いても利用するのは1割台という数字は軽くない。電話の群に限ると、電話に出て案内を受けた人は、出なかった人より利用が多かった[7]。

3つ目は、どこにいる人を見ているかだ。境目の比較が教えてくれるのは、腹囲が85cm前後の人についての答えである。腹囲がもっと大きい人でも同じことが言えるかは、この方法だけでは分からない。積極的支援の対象者を調べた研究では、男性で体の大きい人ほど体重の減りが大きかった[8]。

2026年の総説は、健診の受診が死亡の少なさと結びつき、保健指導が肥満の指標、代謝の値、薬の開始に好ましい改善を示してきたと整理する[18]。経済的な評価でも、費用対効果がよいことが示唆されている[18]。同時に、長期の効果が控えめであること、肥満でないのに心臓や代謝の危険が高い人を見つけきれていないことを限界に挙げる[18]。参加率を上げることと、肥満にもとづく基準を超えて危険を分け直すことが、これからの優先課題とされている[18]。

数字で読む特定保健指導

1.98kgと0.42kg:積極的支援に参加した男性と、参加しなかった男性の1年後の体重の減少。[4]

2.98cm:積極的支援に参加した女性の、1年後の腹囲の減少。[4]

−0.29kg:腹囲85cmの境目の前後で比べた、指導の対象への割り当てと結びついた1年後の体重の差。[2]

1.3日:割り当てと結びついた、3年以内の外来の受診日数の減少。医療費の総額には変化の証拠がなかった。[1]

10.5%:横浜市の国民健康保険で、案内を何もしなかった群が特定保健指導を利用した割合。[7]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約