糖質制限で痩せないのは開始前の食事のせい?もとの糖質量と変化の幅を読む

糖質制限をしても体重が変わらないとき、開始前の食事はどう見ればよいのか。もとの糖質割合、総摂取熱量、置き換えた食品を分け、日常生活での比較試験と入院試験から考える。研究の平均を自分の目標にせず、減らしたものと増えたものを記録して、変化を読み違えないための視点を示す。

昼の弁当からご飯を減らした。夕方には小腹がすき、おかずを買い足した。夜、体重計の表示を見て「糖質制限なのに」と思う。ここで確認したいのは、ご飯を残せたかだけではなく、始める前と今で食事全体がどう変わったかである。

開始前の糖質量だけで、痩せない理由を決めることはできない。日常生活で低糖質食を試した研究では糖質とともに摂取熱量も減り、熱量をそろえた入院試験では糖質を減らしても体脂肪の減少が増えたわけではなかった。「何をどれだけ変えたか」は必要な情報だが、それだけで個人の結果を予言する材料にはならない。[3][7][13]

筋肉を保つ条件の話は、既存記事「糖質制限で筋肉が落ちるのは糖のせい?たんぱく質と摂取熱量をそろえて読む」に譲る。ここで扱うのは、自分の以前の食卓を比較の出発点にする方法である。体重を減らすことが全員の目標ではない。食事を見直す目的がある人に向けて、減らす競争になる前の読み方を考える。

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開始前の食事は、原因を決める札ではなく比較の土台だ

研究でいうベースラインとは、介入を始める前の比較の基準である。ただし、その中身には違いがある。ふだん食べていた食事を記録する研究もあれば、入院中に決められた食事を食べた期間を基準にする研究もある。低糖質食の研究を読むときは、「開始前」と書いてあるだけで自分の昨日の献立と同じ扱いにしないことが大切だ。[3][7][13]

過体重・肥満の成人が日常生活で食事を選んだ試験では、習慣的な食事からどの程度変わったかを比較している。一方、過体重・肥満の男性を入院させた試験では、高糖質の基準食を食べた後に、熱量とたんぱく質をそろえて食事を切り替えている。前者は暮らしの中で起こった変化を、後者は条件を管理した切り替えを読むのに向いている。[3][13]

この区別をつけると、「もともとご飯が好きだったから効く」「前から少食だったから効かない」という自己診断を急がずに済む。開始前の食事は結果を比べるための情報であり、特定の糖質量だった人ほど必ず大きく減量する、という判定表ではない。少なくとも、ここで取り上げる試験結果をそのような個人別の予測へ置き換えることはできない。[3][7][13]

自分の比較でも同じである。朝食のパンを変えたなら、以前のパンだけでなく、一緒に飲んでいたものや、その後に買っていた間食も思い出す。夕食の主食を減らしたなら、その分のおかずはどうしたかを並べる。これは食べ方の善悪を採点する作業ではない。「変えたつもり」の中身を、他人にも説明できる形へ戻す作業だ。

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もとの約半分が糖質だった試験では、熱量も変わっていた

日常生活で低脂質食と低糖質食を比べた無作為化試験では、対象は過体重・肥満の男女で、年齢は24〜61歳だった。無作為化とは、参加者を偶然に基づいて群へ分ける方法である。10週間を完了したのは31人で、研究全体の完了率は78%だった。18〜39歳の女性だけの結果ではないため、その減量幅を読者へそのまま当てはめることはできない。[3]

低糖質群では、習慣的な炭水化物の割合が総摂取熱量の約50%だったのに対し、介入中は平均15.4%となった。同時に、摂取熱量は平均で1日3195kJ少なくなった。重要なのは、糖質の割合だけを動かし、食事のほかの条件がすべて同じだった試験ではない点だ。食事を自由に選ぶ生活では、ある栄養素を減らす指示が、食事全体の量にもつながっていた。[3]

低脂質群でも変化は大きかった。脂質の割合は習慣的な36.4%から平均17.8%となり、摂取熱量は平均で1日2540kJ減っていた。体重の減少は低脂質群で平均6.8kg、低糖質群で平均7.0kgであり、体重と脂肪量の改善はほぼ同程度だった。これは群ごとの平均であり、個々の参加者が同じ経過をたどったことを意味しない。[3]

この試験から読み取れるのは、ふだんの食事から糖質を大きく減らした群では、熱量も減り、体重も減ったという組み合わせである。開始前の糖質割合だけが体重変化を決めた、とは切り分けられない。低脂質群にもほぼ同じ体重減少があったため、「糖質の減少幅が大きいほど、ほかの条件に関係なく勝つ」という説明にはならない。[3]

検索で見つけた平均体重減少を、自分の予定表に書き込む必要はない。対象には肥満の人も含まれ、研究には終点まで参加した人とそうでない人がいる。年齢や体格の違いを横へ置いたまま、数字だけを自分の期限へ持ってくると、比較したかった食事の中身が見えなくなる。まず持ち帰りたいのは減量幅ではなく、糖質割合と摂取熱量を別々に読む視点である。[3]

糖質を減らした後、何を食べたかまでが変化である

別の短期縦断研究では、過体重・肥満の成人18人が、ふだんの食事から低糖質食へ移った経過を追っている。食事内容は3日間の食事日誌で評価され、低糖質食の各段階はそれぞれ2週間だった。同じ人の前後を見る研究であり、低糖質食を選ばなかった比較群と無作為に比べた結果ではない。対象の平均年齢は39.8歳で、18〜39歳の女性に同じ変化が起こるかは、この結果だけでは判断できない。[7]

平均摂取熱量は、ふだんの2481kcalから、低糖質食の初めの段階で1400kcal、その後の段階で1558kcalとなった。体重の平均も107.4kg、103.6kg、102.1kgと変わり、摂取熱量の減少と体重減少には関連があった。著者らは、自分で選んだ食事の熱量が低くなったことで体重減少を説明できるとしている。これらは参加者の平均であり、読者に勧める摂取量でも体重でもない。[7]

ここで「糖質制限」という名前だけを残すと、大きな情報が落ちる。主食を減らした結果、献立全体が小さくなったのか。それとも、主食の代わりに別のものを足したのか。前後で同じ名前の食事法を実践していても、記録で確かめるべき内容は違う。この研究では実際に熱量も減っており、その結果を「糖質だけを減らした効果」として借りることはできない。[7]

置き換えた食品を考える手掛かりとして、健康なやせた男性7人を対象にした交差試験もある。交差試験は、同じ参加者が異なる条件を経験する方法だ。基準食を食べた後、炭水化物と熱量を一時的に減らし、続く日に選べる食品の条件を変えて摂取量を調べた。炭水化物は平均305gから110gへ減っていたが、これは実験の設定であって実践目標ではない。男性を対象とするため、18〜39歳の女性の摂取量へそのまま当てはめることはできない。[10]

その後、高炭水化物食品から自由に選ぶ条件では摂取熱量が平均10.5MJ、高脂質食品から選ぶ条件では16.6MJだった。直前に減らした熱量を取り戻すことだけでは、翌日の摂取量を説明できないという結果である。少人数の男性の短期実験なので、女性の長期的な体重変化へは直結しない。それでも、「何を抜いたか」だけで食事の変化を表し切れないことはよく分かる。[10]

立川駅の改札を出たところで、夕食の主食を控えるつもりを思い出す。そこで買うおかずや間食は、食事記録では脇役ではない。主食を減らした行だけに丸をつけ、買い足した食品を欄外へ追いやらないことだ。財布には買い足した分も残る。食事の記録にも同じように残しておきたい。

糖質の減少幅を読むときには、出発点と到達点を対で見る。低糖質群の開始前の割合だけを見れば、介入中に何を食べたかは分からない。介入中の割合だけを見れば、以前からどれだけ変わったかは分からない。さらにこの試験では摂取熱量も変わっていたため、割合の差だけを体重差の説明に使わないという読み方が必要になる。[3]

たとえば昼食の写真を残すなら、変更後の弁当だけでなく、以前はどんな組み合わせだったかも言葉で添えたい。以前の食事を正確に思い出せない部分は、想像で埋めなくてよい。分かる部分から比べれば、「糖質制限」という大きな名前を、自分の生活の具体へ戻せる。

数字で読む開始前と開始後

約50%から15.4%へ:低糖質群の炭水化物の熱量割合。日常生活での10週間の比較試験である。[3]

1日3195kJ減:同じ低糖質群で伴っていた平均摂取熱量の変化を示す。[3]

2481kcalから1400kcalへ:成人18人の短期縦断研究での、ふだんの食事と低糖質食の初期段階の平均である。[7]

10.5MJと16.6MJ:男性7人の短期交差試験で、糖質と熱量を減らした後に選べる食品が異なった日の平均摂取熱量だった。[10]

17人:熱量とたんぱく質をそろえて食事を切り替えた入院試験の男性参加者数である。[13]

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宮川涼 Founder

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