ダイエット停滞期は吸収率が上がったせい?カロリーを減らす前に便の研究を読む

ダイエット停滞期に、腸が食事のカロリーを以前より吸収するようになったのか。短期の食事量を変えた試験と、乳製品を増やした減量試験を比べ、吸収の変化と長期の体重変化を区別する。便中の成分や腸内細菌の変化から何が言え、なぜ食事をさらに減らす判断へ直結しないのかを読む。

食事記録には昨日と同じ献立が並ぶのに、体重の数字は動かない。そこで「食べる量を減らしたから、腸が残さず吸収するようになったのでは」と考える。記録アプリには摂取カロリーの欄があるが、今日の吸収率を入力する欄はない。

食事量を変えるとエネルギー吸収に関係する指標も変化しうる。ただし、健康な人の短期試験で見つかった変化を、そのまま自分の長期の停滞原因とは呼べない。乳製品を増やして便への脂肪排泄を促すという仮説も、減量中の比較試験では支持されなかった。[1][2]

ここで確かめるのは、食事をさらに減らす前に「吸収率が上がった」という説明を採用してよいか、という問いである。既存記事「20代のダイエット、カロリーは便から分かる?排泄エネルギーと個人差を読む」に便から測る方法と個人差の話を譲り、こちらでは食事制限に伴う変化と停滞への結び付け方を追う。

眠気や疲れを伴う場面は、既存記事「ダイエット停滞期に眠いのは食事の減らしすぎ?疲れと体重の横ばいを分けて読む」で扱っている。この記事は症状から不足を判断する問いへ広げず、腸の測定結果を停滞の説明に使えるかに絞る。

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食べた量と吸収の変化は、同じ証拠で判断しない

食事の熱量を調べることと、食事条件を変えた際に体内へ取り込まれるエネルギーがどう変わるかを調べることは、別の作業である。後者に取り組んだ健康な参加者の試験では、過食、通常の対照条件、少なく食べる条件を設け、消化可能エネルギーと代謝可能エネルギーを熱量計で評価した。食事を変えた事実だけで吸収を決めず、測定する段階を置いている。[2]

この区別が、停滞を考える入口になる。「先月より食事を減らした」は食事条件の話である。「腸の吸収率が上がった」は体内で起きた変化についての仮説だ。前者を知っていても、後者を測ったことにはならない。研究でも、食事条件と吸収に関係する指標を分けて調べている。[2]

さらに、「吸収率が変わる」と「その変化が体重の停滞を起こす」も異なる主張になる。短期の食事条件を入れ替える実験は、同じ人の条件間の違いを見るのに役立つ。一方、長期の減量を比べる試験は、体重や体脂肪の経過を評価する。見ている時間と結果が違うので、途中を省いてつなぐことはできない。[1][2]

昼のおにぎりを小さくしたという記録から、翌朝の体重までを腸だけで説明したくなることがある。しかし、食事の変更、吸収に関わる測定値、体重の経過をそれぞれ別の欄に置くほうが、研究の問いに近い。説明がもっともらしいことと、原因を確かめたことを区別するためである。[1][2]

ここで大切なのは、吸収がいつでも一定だと言い切ることでも、変化の可能性を否定することでもない。短期の変化を示す研究を認めたうえで、その結果が答えている範囲を保つ。自分の停滞についての判断は、研究で直接比較された条件に沿って行う必要がある。[2]

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短期試験が示したのは、腸内の指標が動くことだ

健康な参加者15人を対象としたランダム化クロスオーバー試験では、過食、対照、少食という食事条件を8日間の介入で調べた。クロスオーバーとは、参加者が異なる条件を経験して比較する研究の組み方である。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、短期間の健康な参加者で得た結果という条件を考慮する必要がある。吸収の評価に加え、便中セロトニン、腸内細菌、関連する遺伝子も調べた探索的解析だった。[2]

セロトニンという名前だけで、気分の話に読み替えないことが大切だ。この研究で測ったのは便中のセロトニンであり、研究者が検討したのはエネルギー吸収との関連である。便の測定値を、その人の気分や意思の強さに結び付ける研究ではない。[2]

食事条件に応じて便中セロトニンや腸内細菌のバクテロイデス、細菌由来の酵素であるトリプトファナーゼに関係する指標が変化した。また、同じ人の便中セロトニンの変動は、消化可能エネルギーと統計的に負の関連を示した。研究者の結論は、便中セロトニンの変化がエネルギー吸収に間接的に関連する可能性である。[2]

「関連」は、片方が増減するともう片方も一定の方向へ動く傾向を指す。セロトニンを操作して吸収量を自由に変えられるという因果関係は未検証だ。食事を変える介入がランダム化されていても、その中で調べた便中成分と吸収の関連まで、因果関係として扱うことはできない。[2]

たとえば、通常より少なく食べた条件で何らかの測定値が変わったとしても、それだけで「食事制限を続けると全員の吸収率が上がり、やがて体重が止まる」という筋書きは完成しない。この試験の対象は健康な少人数の参加者で、解析の焦点は短期の食事負荷と便中の指標だった。長期の停滞を予測する式として使うには、問いが違う。[2]

食事への反応を腸まで含めて考える研究は、単純な思い込みを修正する。一方で、食事記録のカロリーに独自の補正を加える道具ではない。「吸収が変わる可能性」と「自分は今これだけ余分に吸収している」の間には、個人の測定という段階がある。[2]

乳製品を増やして便へ脂肪を出す仮説はどうだったか

吸収の話を日常の食材へ結び付けるなら、乳製品の比較試験が参考になる。乳由来のカルシウムで便への脂肪排泄が増え、体重や脂肪がより減るのではないか。この仮説を、過体重・肥満の成人で検証したランダム化比較試験がある。[1]

参加者は男性11人、女性69人で、平均年齢は44歳だった。男女を含む中年中心の集団なので、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには対象の違いを考慮する必要がある。もともとのカルシウム摂取量はおよそ1日1000 mg。両群とも1日500 kcalの不足を設ける食事条件とし、乳製品の多い群ではカルシウムを1日1500 mg、少ない群では600 mgとして、24週間比べた。これは試験の設定であり、読者がそのまま採用する食事量の指示ではない。[1]

便への脂肪排泄の変化量は、乳製品の多い群が−0.57±0.76 g、少ない群が0.46±0.70 gで、群間の比較は有意ではなかった。乳製品を多くした群で便へ出る脂肪が増えるという仮説は支持されなかった。腸内細菌の構成の変化も両群で同様だった。[1]

この数値は、便に含まれた脂肪の総量ではなく、介入に伴う排泄量の変化である。多い群の値が負だったことを「脂肪を排泄しなくなった」と読むと、変化量と総量を取り違える。少ない群の値が正だったことも、その食事のほうが便へ脂肪を多く出す方法として優れている、という証明にはならない。比較の中心は、両群の変化の差が統計的に有意だったかである。[1]

また、便へ出た脂肪の重さと、便全体に含まれるエネルギーは、測っている対象が違う。この試験では便中脂肪の排泄を主要な評価項目に含め、便中エネルギーも別の評価項目として扱っている。脂肪排泄の変化量だけを、食事全体の吸収率の変化に読み替えることはできない。何を測った数値なのかを保ったまま読む必要がある。[1]

数値に添えられた±の幅も、読者個人の吸収率の上下幅を表すものではない。これは試験群の排泄量の変化に添えられた数値であり、食事記録のカロリーから差し引く補正値には使えない。便に出る脂肪という具体的な測定を経ても、乳製品を増やす仮説への支持は得られなかった、という点に判断を絞る。[1]

ただし、この結果は乳製品一般の価値を否定するものでもない。対象者のもともとの摂取量、食事制限を伴うこと、比較した期間という条件がある。ここで退けられるのは、その条件下で乳製品を増やせば便中脂肪が増え、減量がさらに進むという主張である。食材全体への好き嫌いの判定へ広げない。[1]

立川駅で帰りの買い物をするとき、「停滞したから明日から乳製品を増やそう」と献立を組み直す前に、この比較を思い出したい。便へ出す量を増やすという説明が付いていても、実際に測った試験では優位性が確認されなかった。筋の通った仮説にも、実験で止まる場所がある。[1]

数字で読む吸収と減量の研究

15人:短期の食事量とエネルギー吸収を検討した健康な参加者の人数である。[2]

8日間:短期の食事負荷を調べた介入期間であり、長期の停滞を追った期間ではない。[2]

24週間:乳製品の多い食事と少ない食事を減量中に比べた期間である。[1]

−0.57±0.76 gと0.46±0.70 g:乳製品の多い群と少ない群の便中脂肪排泄の変化量で、群間に有意差はなかった。[1]

167試験・11998人:食事制限と断続的断食を比べた系統的レビューの規模である。[4]

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