一回目は、たいてい楽しい。ミットの音が少しずつ変わり、汗が溶岩の床に落ち、帰り道の足が軽い。二回目も悪くない。三回目あたりで、金曜の夕方に会議が延びる。雨が降る。前の晩に眠れなかった。行かない理由が、急にいくつも並びはじめる。
運動を始めた人の多くが、このあたりでいったん止まる。止まったこと自体は珍しくない。問題は、止まったあとに戻ってこられるかどうかだ。この記事では、週1回のキックボクササイズを半年続けるために、予定の入れ方、記録の残し方、休んだあとの戻り方を、なるべく具体的に書いておく。気合いの話はしない。仕組みの話をする。

続かないのは、意志が弱いからではない
「習慣になるまで二十一日」という話を聞いたことがあるかもしれない。根拠のはっきりしない数字だ。実際に人が新しい行動を習慣にしていく過程を追った研究としては、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのフィリッパ・ラリーらが二〇一〇年に発表したものがよく知られている。参加者が毎日の小さな行動(昼食と一緒に果物を食べる、夕食前に走る、など)を続け、その行動がどれだけ「考えなくてもできる」ようになったかを記録した。その行動がほぼ自動的になるまでにかかった日数は、真ん中の値で六十六日。ただし人と行動によって十八日から二百五十四日まで、大きくばらついた。
この研究から読み取れることは二つある。一つは、習慣には二か月、三か月という単位の時間がかかるということ。三週目で止まりそうになるのは、まだ途中にいるからで、才能がないからではない。もう一つは、ばらつきが大きいということ。早く身につく人もいれば、時間がかかる人もいる。他人の速さと比べる意味はあまりない。
同じ研究では、ときどき一日抜けても、習慣ができていく流れはそれほど崩れなかったとも報告されている。一回休んだら全部おしまい、ではない。この事実は、あとで書く「休んだあとの戻り方」の土台になる。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
週1回でいい理由と、週1回の弱点
世界保健機関(WHO)が二〇二〇年に出した身体活動のガイドラインでは、大人に、中くらいの強さの有酸素運動なら週に百五十〜三百分、きつめの運動なら週に七十五〜百五十分を勧めている。あわせて、筋肉を使う運動を週に二日以上。日本の厚生労働省も「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」で、筋トレを週に二〜三日取り入れることを勧めている。
こうした目安から見れば、週1回・一時間のキックボクササイズだけで全部を満たすわけではない。それは正直に書いておく。ただ、同じガイドラインは「少しでも動くことは、まったく動かないよりよい」という考え方も示している。ゼロと週1回の差は、週1回と週3回の差よりずっと大きい。週1回を半年続けられた人は、そこから歩く量を増やしたり、家で短い練習を足したりする余地を持っている。ゼロのままの人は、その足がかりがない。
週1回の弱点は、一回休むと次まで二週間空くことだ。週3回なら一回休んでも二日後に戻れるが、週1回だと十四日。体の感覚も、覚えかけた動きも、少し薄れる。だから週1回で続けるには、「休まない」より「休んでも戻る」ほうに力を入れたほうがいい。

1対1は、なぜ続けやすいのか
大勢のクラスには、大勢のクラスの良さがある。周りの熱気に引っぱられて、一人では出せない力が出ることもある。ただ、続けるという点では、1対1にはいくつか有利なところがある。
一つは、前回の続きから始まること。トレーナーは、先週あなたが何に苦労していたかを覚えている。毎回ゼロから説明しなくていい。「今日はかかとですね」から始められる。
二つ目は、比べる相手がいないこと。隣の人の蹴りが高いとか、自分だけ息が上がっているとか、そういうことを気にしなくていい。比べるのは、先週の自分だけだ。
三つ目は、休んだことが分かってしまうこと。これは少し耳の痛い話だが、来なければ、来ていないことが相手に分かる。大部屋の隅で誰にも気づかれずに消えていく、ということが起きにくい。気まずさは、ときに足を前に出す力になる。
オンザショアのキックボクササイズは女性限定にしている。暑い部屋で汗だくになり、顔を真っ赤にして息を吐く。その姿を、気をつかわずに出せる場所であることも、続けやすさの一つだと考えている。
予定は、曜日と時刻で固定する
「時間ができたら行く」は、ほぼ行かない。時間は、できるものではなく、取るものだからだ。
続けている人は、たいてい曜日と時刻を決めている。「金曜の19時」のように、カレンダーの同じ場所に毎週同じ予定がある。その時刻が来たら、迷わずに動く。迷う回数が少ないほど、続く。
心理学では、こうした「いつ・どこで・何をするか」をあらかじめ決めておくことを「実行意図」と呼び、ニューヨーク大学のピーター・ゴルウィツァーらが研究を重ねてきた。目標を持つだけより、「もしこの状況になったら、こうする」という形で行動の引き金を決めておくほうが、実際の行動に移りやすいという考え方だ。「金曜に仕事が十八時に終わったら、そのまま立川駅の北口へ歩く」。この一文を、手帳でもスマートフォンでもいいので書いておく。
オンザショア立川店には、金曜の十九時からの「パーソナル美ボディ・キック」がある。曜日と時刻があらかじめ決まっているので、予定を固定したい人には向いている。事前決済なので、予約を入れた時点で支払いも済む。払ってしまえば行く、という単純な仕組みも、続けるうえでは案外ばかにできない。
予約は、その日のうちに次の回まで入れておく。レッスンが終わって汗が引かないうちに、次の週の予約を入れる。帰り道に「次はいつにしよう」と考える時間を残さない。Webの予約ページは二十四時間受け付けているので、駅のホームでも、帰りの電車でも入れられる。

目標は、数字より「一つの動き」で決める
「半年で何キロ」という目標を立てる人は多い。悪いことではないが、それだけだと、数字が動かない週にやる気が折れる。体重は食事や睡眠や季節で揺れるし、筋肉がついて体が締まっても数字にはすぐ出ないことがある。
そこで、半年後の目標を「一つの動き」で決めておくことを勧めたい。「ワン・ツー・フックを、フォームを崩さずに三ラウンド続けられる」「ミドルキックを蹴ったあと、軸足がよろけずに構えに戻れる」「前蹴りで、ミットを持つ人を一歩下がらせる」。こういう目標は、達成したかどうかが、自分にもミットを持つ担当者にもはっきり分かる。
動きの目標には、もう一つ良いところがある。途中の段階が見えることだ。三ラウンド続けるには、まず一ラウンド崩れずに打てるようになる必要がある。その前に、一分間息を止めずに打てるようになる必要がある。大きな目標を、週ごとの小さな課題に切り分けられる。その小さな課題が、次の節で書く「次回やること」の一行になる。
目標は、最初のレッスンでトレーナーと一緒に決めてもいい。何ができるようになりたいかを言葉にしておくと、一時間の組み立てもそれに合わせて変わる。1対1のレッスンでいちばん無駄が少ないのは、こうして目的がはっきりしているときだ。
上達は、三行で残す
続けるうえで、いちばん効くのは「うまくなっている」という手応えだ。ところが週1回だと、前回の自分を忘れる。先週より良くなっているのか、同じところで止まっているのか、分からなくなる。分からないと、やる気は少しずつ痩せていく。
そこで、レッスンのあとに三行だけ書く。
一行目は、今日直されたこと。「ストレートで後ろのかかとが回っていない」「ミドルキックで軸足のつま先が前を向いたまま」。言われたことを、言われた言葉のまま書く。
二行目は、今日できたこと。「ワン・ツーの戻しが速くなったと言われた」「三ラウンド目まで息が止まらなかった」。小さくていい。できたことを書く習慣は、自分を正しく評価する練習にもなる。
三行目は、次回やること。「かかとを回す」「ジャブのあとに右手を下げない」。一つだけにする。三つも四つも書くと、次の回に全部を意識しようとして、どれも中途半端になる。
この三行を、スマートフォンのメモに日付つきで残していく。三か月たって見返すと、一行目に何度も同じことが書いてある時期と、ある日を境にそれが消えている時期がある。消えた日が、その課題を越えた日だ。その日付は、体重計の数字よりずっとはっきりした上達の証拠になる。
体重を記録したい人は記録してもいい。ただ、体重だけを目標にすると、食事や水分や睡眠で毎日揺れる数字に一喜一憂することになる。一回のレッスンで体重がどれだけ減るか、というような数字は当てにしないほうがいい。汗で抜けた水分は、飲めば戻る。続けるための記録は、技と体の感覚を中心にしたほうが長持ちする。
週のあいだを、十分間でつなぐ
週1回のレッスンと次のレッスンのあいだには、六日ある。この六日を何もせずに過ごすと、毎回「思い出す」ところから始めることになる。かといって、毎日長い練習をする必要はない。十分間で足りる。
たとえば、レッスンの三日後くらいに一度、鏡の前で構えてみる。前回直されたところだけを、ゆっくり十回なぞる。かかとを回すストレート、肘を締めたジャブ、軸足のつま先を開くミドルキックのかたち。音を立てる必要はないので、集合住宅の部屋でもできる。
もう一つは、歩くこと。立川駅のまわりは、駅の北口から少し歩くだけで、まとまった距離を歩ける道がある。一駅分を歩く、エスカレーターを階段に替える。そういう小さな積み重ねは、WHOのガイドラインが言う「少しでも動く」に当たる。キックボクササイズの一時間を支える土台にもなる。
この十分間は、上達のためというより、週1回の予定を頭の中に置いておくためのものだと考えてほしい。体のどこかで、次の金曜を覚えておく。それだけで、行かない理由に負けにくくなる。
休んだあとの戻り方
休むことはある。風邪をひく、出張が入る、家族の予定が重なる。一回休むのは問題ない。問題になるのは、一回休んだことで「もういいか」と思ってしまうことだ。
一つの目安として、「二回続けて休まない」と決めておくといい。一回休むのは仕方ない。二回目は、何とかして行く。予定がどうしても合わない週は、家で10分間のフォーム確認やウォーキングをして、動くリズムをつないでおく。週1回の人にとって、二回続けて休むことは一か月近く空くことを意味する。そこまで空くと、戻るのに勇気がいる。
久しぶりに戻った日は、前回と同じ強さで動こうとしない。体はなまっているし、暑い部屋に体が慣れるのにも少し時間がかかる。最初の回は、いつもの七割くらいの強さでいい。担当インストラクターに「二週間空いた」「体調を崩していた」と、最初に伝えてほしい。1対1のレッスンなら、その日の体に合わせて、ラウンドの長さや休みの取り方、打つ強さを変えられる。
戻ってきた日に、記録の三行を読み返してから来るのもいい。前回の「次回やること」が書いてあれば、そこから始められる。空白のあとでも、続きから始められると、途切れた感じが薄くなる。
暑い部屋とつきあう
オンザショアのキックボクササイズは、溶岩プレートの床の上、室温三十五〜四十度・湿度六十〜七十パーセントの部屋で行う。常温の部屋より汗をかき、息が上がりやすい。続けるうえでは、この暑さとうまくつきあうことも大切になる。
レッスンの前から、少しずつ水分をとっておく。のどが渇いてから飲むのでは遅い。レッスン中も、休みのたびに口を湿らせる。睡眠が足りない日、食事を抜いた日、前の晩にお酒を飲んだ日は、暑さがこたえやすい。そういう日は、始める前に正直に言ってほしい。強度を下げても、来ないよりずっといい。
めまい、吐き気、頭痛、手足のしびれなど、いつもと違う感じがあれば、すぐに止めて休む。「もう少しだけ」は、暑い部屋ではいちばん危ない言葉だ。やめどきを知っていることも、長く続ける人の技術の一つである。
まとめ
続かないのは意志のせいではない。習慣には二か月、三か月という時間がかかり、その速さは人によって大きく違う。週1回は、すべての目安を満たすわけではないが、ゼロとの差は大きい。続けるための仕組みは、四つにまとめられる。曜日と時刻を固定して、終わったらその場で次の予約を入れること。レッスンのあとに三行の記録を残すこと。「二回続けて休まない」と決め、戻った日は七割の強さから始めること。そして、暑さとつきあい、やめどきを知っていること。
オンザショア立川店のキックボクササイズは、溶岩の暑い部屋(室温三十五〜四十度)で行う1対1のパーソナルで、女性限定。初めての方の体験は、1回 税抜4,980円(税込5,478円)、事前決済。金曜19時からの「パーソナル美ボディ・キック」は、通常1回 税抜10,000円(税込11,000円)、会員の方は初回 税抜5,000円(税込5,500円)で、こちらも事前決済になる。男性も一緒に出られる大勢のクラスとしては、ホットボクササイズがある。時間割は予約ページか公式 LINE で確かめてほしい。
スタジオはJR立川駅の北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F。年中無休で、8:00から23:30まで開いている。予約はWebの予約ページ(24時間受付)か、公式LINEから。レッスン中は電話に出られないことが多いので、質問は LINE でどうぞ。妊娠中の方と、医師から運動を止められている方は利用できない。持病や怪我のある方は、事前に医師に相談してほしい。
半年後のあなたの三行メモに、何が書いてあるか。それを確かめるために、まず次の金曜の予定を一つ、カレンダーに入れてみてほしい。
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