食べたものを書いているのに、記録の数字と体重の見通しが合わない。二重標識水と食事記録を比べた研究から、過小報告の大きさ、記録方法による違い、体格との関係を読む。比較基準を確かめ、記録中の食事の変化と測定の限界を分けて、日常の記録を見直すための視点を示す。
夕食の片づけを終えて、食事記録を開く。朝のパン、昼の定食、夜の魚とご飯。今日も埋めたつもりだったが、台所で味見をしたことや、帰り道で飲んだものは、どこに書けばよいのだろう。思い出せない量には、いつもと同じ数字を入れる。画面は整っていても、その数字が食卓をどこまで写しているかは別の問いだ。
成人の食事調査を二重標識水による測定と比べた系統的レビューでは、59研究、計6,298人をまとめ、多くの研究で摂取エネルギーの過小報告を認めた。技術を使った方法も、この問題から自由ではなかった。[5] 記録の数字は、調査方法と比較基準をそろえて読む必要がある。
ここで問うのは、記録すれば痩せるかではない。書かれた数字を、どれだけ正確な摂取量として扱えるかだ。体重が思ったように動かないとき、申告と測定値の差を確かめるために、記録の外側から食事を確かめた研究を読む。

二重標識水が測るのは、食事そのものではない
二重標識水は、日常生活でのエネルギー消費量を測る方法である。食事記録に書かれた摂取量とは独立した物差しとして用いられる。体重が安定している条件では、摂取エネルギーと消費エネルギーが等しくなるという関係を利用し、両者を比べて申告の妥当性を調べる。[20] 比較の相手は食事の内容ではなく、日常生活で消費したエネルギー量だ。
この「体重が安定している条件」が大切だ。減量中なら、消費したエネルギーのすべてが、その期間に食べたものから供給されるとは限らない。体内に蓄えたエネルギーの変化も考慮する必要がある。過体重または肥満の高齢者を対象とした2025年の方法比較研究では、消費量だけと比べる方法と、消費量に体内のエネルギー蓄積の変化を加えて摂取量を算出する方法を比べている。[2]
結果は、どちらの方法でも過小報告の割合が50%だった一方、過大報告に分類された割合は10.2%から23.7%に変わった。妥当と分類された割合も40.3%と26.3%で異なった。[2] 同じ食事の申告でも、比較する基準を変えると評価が動く。過小報告だけを探すのではなく、何を基準に不足や過剰と呼んだのかを読む必要がある。
この研究の50%は、過小報告に分類された申告の割合である。[2] 食事調査の記事では、「何人がずれたか」と「どれだけずれたか」が同じ百分率で表される。申告の割合から、各人の不足量を計算することはできない。
日常では、昨日の記録と今朝の体重を並べれば、すぐに答えが出そうに感じる。しかし、この研究の比較は、申告、測定した消費量、体内の蓄積の変化を組み合わせたものである。[2] 家庭の記録との違いは、独立して測定した消費量を比較基準に持つ点にある。数字が合わないという疑問と、研究上の基準で過小報告と判定されることは、分けておきたい。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
丁寧に書く方法にも、それぞれ違う誤差がある
食事調査には、最近の食事を思い出して答える方法、その都度食べたものを記す方法、普段どの食品をどれくらい食べるかを質問票で答える方法がある。2020年のレビューは、これらの方法同士ではよく一致しても、栄養摂取を客観的に評価する指標と比べると、すべてに系統的な誤報告が見られると整理している。[15] 同じ答えが出ることと、正しい答えが出ることは同じではない。
系統的な誤差とは、ばらつくだけでなく、ある方向へ偏る誤差である。成人の系統的レビューでは、同じ調査法を使っていても研究間で過小報告の程度が大きく異なり、24時間の食事を思い出す方法は、他の方法より過小報告の程度とばらつきが小さかった。[5] 誤差が小さい方法でも、その程度は研究ごとに異なる。[5]
具体的な比較がある。50〜74歳の男性530人、女性545人を対象とした2018年の検証研究では、12か月の間に、繰り返しの24時間食事思い出し調査、秤量しない4日間の食事記録、食物摂取頻度質問票を実施し、二重標識水などの客観的指標と比較した。[9] 減量法を割り付けた試験ではなく、測定方法の正確さを確かめる研究である。
調査の回数も具体的に決められていた。参加者には、12か月で思い出し調査6回、4日間の食事記録2回、頻度質問票2回、24時間の尿の採取2回、二重標識水の測定1回を求めた。尿はたんぱく質、カリウム、ナトリウムの摂取量を確かめる客観的指標に用いられている。思い出し調査を3回以上完了したのは男性92%、女性87%で、平均完了回数は男性5.4回、女性5.1回だった。[9] 方法名だけでなく、繰り返しの回数と完了状況まで含めた検証である。
エネルギー摂取量の平均的な過小評価は、思い出し調査で15〜17%、食事記録で18〜21%、頻度質問票で29〜34%だった。[9] 日々の記録なら当然いちばん正確、という並びではなかった。思い出し調査は繰り返し行われており、食事記録は秤量しない方法だった。方法の名前だけで、普段使っている記録と同じ条件だとみなさないことも必要だ。
頻度質問票は、普段の食事を全体として振り返る道具である。それに対し、食事記録は、記録した日の食事を残す道具である。この比較では、後者や繰り返しの思い出し調査の方が、調べた栄養素の絶対的な摂取量をよく推定した。[9] 目的と期間が違う道具の結果を、同じ精度のカロリー帳として扱うと、誤差の性質が見えなくなる。
さらに、エネルギーのずれを直せば、すべての栄養素も正しくなるとは限らない。同じ研究では、エネルギーで調整したたんぱく質やナトリウムの値は客観的指標に近づいた一方、頻度質問票でのカリウムの推定には同じ改善が見られなかった。[9] 数字の整え方に、万能の補正はない。
2020年のレビューも、すべての食品が同じ程度に少なく申告されるわけではなく、たんぱく質は比較的過小報告が少ないと述べている。一方、どの具体的な食品がよく抜けるかは分かっていない。[15] 食品別の抜け方は、今後確かめる課題として残っている。[15] 日常の例として味見や飲み物を点検するのはよいが、それを全員に共通する犯人の一覧にはしない。
体格が大きい人ほど不正確、と言い切れるか
体格と過小報告の関係は、多くのレビューで取り上げられてきた。2020年のレビューでは、体格を表す指標であるBMIが高いほど、エネルギーの過小報告が大きくなる傾向を整理している。[15] 2018年の検証研究でも、肥満のある参加者で過小報告が多かった。[9]
異なる結果もある。2022年の研究は、成人221人の申告摂取量と二重標識水による消費量を比較した。絶対量で見ると、肥満のある人、活動量の多い人、若い人で過小報告が大きかったが、体の大きさとの関係を考慮する補正を行うと、体重の影響が消えた。[6] 対象は体重の安定した成人であり、著者らは肥満のある人が、ない人より大きく過小報告するとはいえないと結論している。[6]
この補正は、単純に体重で割る操作とも異なる。体の大きさに応じた量の変わり方を考慮して比較する方法である。[6] 必要なエネルギー量が異なる集団を、申告と消費の差の絶対量だけで比べると、体格との関係をどう解釈するかが変わり得る。体格と誤差が関係するという知見と、どの尺度でも同じ差があるという主張は別だ。
調査対象の偏りにも目を向けたい。BMIが40以上の重度の肥満のある成人を扱った2024年の系統的レビューでは、該当する15研究のうち、対象人数が分かった8研究、計1,784人に含まれる該当者は63人、3.5%だった。妥当性のデータを示した6研究のうち5研究で過小報告が認められたが、著者らはこの集団の研究参加が少ないと指摘している。[1]
「肥満のある成人」という大きな区分の中でも、誰がどれだけ調べられたかで、言える範囲が変わる。[1] この集団の妥当性を判断するには、参加者の代表性も課題になる。[1] 体格を記録の信用度に変換するのではなく、比較の条件を確かめる方が、科学の使い方として筋が通る。
数字で読む食事記録のずれ
59研究、6,298人:成人の系統的レビュー。多くの研究で摂取量の過小報告が見られた。[5]
15〜17%:50〜74歳の検証研究で、繰り返しの思い出し調査に見られた平均的なエネルギー過小評価。[9]
18〜21%:同じ研究の、秤量しない4日間の食事記録での平均的な過小評価。[9]
29〜34%:同じ研究の頻度質問票での平均的な過小評価。個人の補正率ではない。[9]
6,497測定:消費量の予測式を作った研究で使用した二重標識水の測定数。人数と同義ではない。[3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







