食べ方は変えていないのに、体重より先にウエストが気になる。更年期の変化を加齢、脂肪の分布、筋肉に分け、追跡研究と運動・食事の試験から読み解く。閉経後の研究を移行期にそのまま当てはめず、体重だけに頼らない見方と、極端な食事制限に走らず続けるための具体的な考え方を示す。
去年のパンツを出した朝、脚は入るのにウエストで手が止まる。体重計を見ても、服の窮屈さを説明できるほど増えてはいない。夕食の量はいつも通りだ。「昔と同じことをしているのに」という戸惑いは、数字と輪郭が同じ速さで変わるはずだと思っているところからも生まれる。
中年期の女性では、加齢、閉経に向かうホルモンの変化、生活習慣が重なって体重や体組成が変わる。体組成とは、脂肪や筋肉など、体重の中身である。レビューでは、体重増加には加齢に伴う活動量やエネルギー消費の減少が関わり、閉経のホルモン変化は脂肪がお腹周りに集まることにも影響すると整理されている。[7][13]
だから、昔の体重に戻す方法だけを探す前に、何が変わっているのかを分けたい。この特集の体重と体脂肪を扱う記事では測定の見方を扱う。本稿の焦点は、閉経に向かう時期と閉経後で根拠の厚さが違うこと、そして食事と運動の役割を、その時期の体の変化にどう対応させるかである。[2][9]

体重が増えることと、お腹に脂肪が集まることは別である
更年期という言葉を使うと、ある日を境に体が全面的に変わるように感じやすい。しかし論文では、閉経前、閉経への移行期、閉経後を区別する。中年期の変化をまとめたレビューは、体重の変化の多くを暦の上の加齢と、体組成や脂肪分布の変化を主として卵巣の加齢と関連づけている。誕生日を重ねる変化と、閉経に向かう変化は、同じ人の中で同時に進む。[13]
加齢と閉経に向かう変化を区別すると、生活を見直すときの焦点も具体的になる。体重を減らすことと、お腹の脂肪や筋肉の状態を考えることを、別の目標として置けるようにするためである。体重の横ばいを見て、体の中身まで変わっていないと決めることはできない。服の変化を確かめることと、内臓脂肪を測定することにも区別が要る。[13][19]
内臓脂肪は、お腹の内部にある脂肪であり、皮膚の下にある皮下脂肪とは研究上分けて測られる。閉経前の健康な女性を毎年測定し、4年間追った観察研究では、皮下脂肪は女性全体で増えた一方、内臓脂肪が有意に増えたのは、追跡中に閉経後となった女性だった。年齢とともに増える部分と、閉経の進行と関連する部分が同じではなかったのである。[12]
この研究は、最初は閉経前だった白人女性103人とアフリカ系米国人女性53人を対象とした。追跡終了時に閉経後となった51人では、体脂肪と体重も時間とともに有意に増えていた。観察研究として閉経段階の変化を追った結果である。食事や活動量も同時に追跡しており、ホルモン、生活、年齢の変化が重なった結果として読む必要がある。[12]
別の追跡研究では、47〜55歳の女性を対象に、230人と148人の集団をそれぞれ平均約1.3年と3.9年追った。全身と部位別の脂肪の指標に相対的な2〜14%の増加があり、特に腹部を中心とする領域の脂肪量の増加が目立った。短い追跡では4%、長い追跡では14%の増加だった。[19]
ここでの「相対的な増加」は、最初の脂肪量に対する増加の割合を指す。もともとの脂肪量を基準とした増え方であり、対象も測定部位も決まっている。この研究では、全身と部位別の脂肪を画像で測定し、食事の質や身体活動との関連も調べた。食事の質と活動量が高いことは、複数の脂肪の指標が低いことと関連していた。[19]
暮らしの中で使うなら、「体重」「お腹周り」「動きやすさ」を別々に書き留めるという整理が考えられる。体重と体組成を混同しないための観察メモとして使う。体重が変わらず服の感じが違う日も、矛盾した記録として捨てなくてよい。研究が扱っている変化そのものが、単一の数字ではないからである。[13][19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
「代謝が落ちた」の一言では説明が足りない
以前と同じ夕食なのに体が変わったと感じると、まず「代謝が落ちた」と言いたくなる。中年期女性のレビューは、加齢に伴うエネルギー消費と身体活動の減少を、体重増加に関わる要因として挙げている。それに閉経に伴う脂肪分布の変化が重なる。食事量だけを見ても、生活全体の変化までは見えない。[7]
先ほどの4年間の追跡研究では、身体活動が閉経の2年前から有意に低下し、その後も低い状態にあった。また、閉経開始時より、その3〜4年前のほうが食事からのエネルギー、たんぱく質、炭水化物、食物繊維の摂取が多かった。少なくともこの集団では、閉経時に単純に食べる量が増えた、という説明にはなっていない。[12]
この研究では、食事を4日間の食事記録で、身体活動を体の動きを捉える加速度計で評価した。体組成には脂肪と脂肪以外を分ける画像検査を使い、腹部の脂肪には断層画像を用いている。食べた量、動いた量、脂肪が蓄積した場所を別々に測っている点が重要だ。本人の「いつもと同じ」という感覚だけでなく、それぞれの変化を照らし合わせている。[12]
エネルギー消費を詳しく測定したのは、この研究の参加者のうち34人である。年齢とともに、1日全体と睡眠中のエネルギー消費は有意に低下した。睡眠中の低下は、閉経後となった女性で7.9%、閉経前のままだった女性で5.3%だった。閉経後となった女性では、脂肪をエネルギーとして利用する脂肪酸化も32%低下したと報告されている。[12]
それなら、閉経後は誰でも安静時の消費が大幅に下がるのか。別の横断研究は、そう簡単には答えていない。35〜60歳の女性72人を閉経前、移行期、閉経後で比較したところ、安静時エネルギー消費には群間の差が認められなかった。一方、中程度の強度で自転車をこぐ際の脂肪酸化は、閉経前の女性のほうが閉経後より多かった。[18]
同じ人を時間とともに追う研究と、異なる段階の人を一時点で比較する研究では、答えられる問いが違う。睡眠中の消費と安静時の消費も、同じ測定ではない。横断研究では食事と身体活動の生活要因に群間差がなかった一方、移行期の女性は閉経前より体脂肪率が高く、腹部側と腰・臀部側の脂肪分布の比率も高かった。消費量だけでなく、脂肪の割合と分布に違いが現れていた。[12][18]
横断研究は年齢とホルモン値を考慮した解析も行い、体脂肪率や脂肪分布、運動中の代謝を比較した。閉経前と移行期では脂肪量と脂肪以外の量に有意差がなかったが、体脂肪率には差があった。量と割合は違う指標なので、どちらを測った結果なのかも確かめたい。結論では、移行期を生活習慣への介入を考える機会として挙げている。[18]
朝から夜までの予定を眺めるときには、食べ物の欄だけでなく、動いていた場面が今も残っているかを見る。駅まで歩いた道、昼休みに外へ出た時間、休日の用事などである。追跡研究で身体活動の低下が閉経前から見られたことは、食事と並んで動く場面を点検する理由になる。夕食だけが容疑者になっていると、生活のほかの証人が呼ばれない。[7][12]
移行期の女性を調べた試験は、意外に少ない
閉経後の女性の運動研究が見つかったからといって、閉経に向かう途中の女性にも、まったく同じ効果が出るとは限らない。年齢、月経の状態、症状、開始時の体組成が違う。更年期向けという見出しの下に、実際には閉経後の研究が並んでいることもある。対象の段階は、研究名と同じくらい大事な情報だ。[2][9]
閉経への移行期の体重変化を対象とした2014年の系統的レビューは、運動や栄養への介入研究を探した。系統的レビューとは、決めた方法で研究を検索し、採用基準に沿って整理する研究である。3,564件の候補から条件を満たしたのは3研究で、無作為化比較試験が2本、介入前後の比較が1本だった。[9]
無作為化比較試験は、参加者を偶然に任せて介入群と比較群に分け、条件の偏りを小さくする試験である。ただし、その型であっても質が自動的にそろうわけではない。このレビューで偏りのリスクが低いと評価された試験は、運動と食事の介入を組み合わせることで、移行期にみられる脂肪の増加を抑えられる可能性を示していた。[9]
残る研究は偏りのリスクが高く、レビューは質の高い試験の必要性を結論に含めている。「生活を変える余地はある」という方向と、「移行期だけに最適な処方が完成している」という主張は距離がある。ここを省くと、少ない根拠から具体的すぎる運動回数や食事量を勧めてしまう。[9]
その後の中年期女性のレビューも、食事の変化や身体活動について、早い時期から見通しを持って取り組むことを重視している。早く取り組むとは、症状がそろうまで待たず生活を点検することであり、変化を感じた瞬間から厳しい制限を始めることではない。何を続けられそうかを考えることと、研究の不足を認めることは両立する。[7][9]
移行期前後の女性を直接調べた新しい試験もある。38〜50歳の女性を12週間、週2回の筋力トレーニング群34人と、運動をしない待機群14人に無作為に分けた。途中で各群2人が脱落した。筋トレ群では脂肪以外の体の量が対照群より1.05kg多く増え、下半身と胸の筋力にも有意な改善があった。[20]
一方、総脂肪量、体脂肪率、内臓脂肪量、骨密度では、群と時間を合わせた変化の差は有意ではなかった。血糖、総コレステロール、血圧にも有意な差はなかった。筋肉と力の変化が出ても、脂肪や代謝の指標が同じ期間で動くとは限らない。移行期の根拠を増やす試験だが、改善した項目と変わらなかった項目の両方を残して読む。[20]
数字で読む更年期と体組成
7.9%減:閉経前から4年間追跡した観察研究で、閉経後となった女性の睡眠中のエネルギー消費の低下。閉経前のままの群では5.3%減だった。[12]
14%増:47〜55歳の女性を平均3.9年間追った観察研究での、腹部を中心とする領域の脂肪量の相対的な増加。[19]
2.6kg低い:50〜79歳の閉経後女性の観察データから、週150分以上の中程度の活動を3年間続けた場合に推定された体重の差。95%信頼区間は1.5〜3.6kg低い範囲。[16]
1.05kg増:38〜50歳の移行期前後の女性を対象とした無作為化比較試験で、12週間の筋トレ群が対照群より多く得た脂肪以外の体の量。脂肪の指標には有意な群間の変化の差がなかった。[20]
101研究・5,697人:閉経後女性の運動を統合したメタ分析。脂肪量の減少と筋肉量の増加を報告した。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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