有酸素運動と筋トレ、痩せるのはどちらか 体脂肪と内臓脂肪で変わる答え

有酸素運動と筋トレは、体重、体脂肪量、除脂肪量、内臓脂肪のどれを見るかで評価が変わる。比較試験をまとめた論文から、脂肪を減らす効果と筋肉を保つ役割、併用の意味を読み解く。研究で結果が食い違う理由や運動量と期間の影響を確かめ、忙しい日常で運動を選ぶ視点を示す。

有酸素運動と筋トレを比べると、脂肪量では差が出ても、体脂肪率では差が出ない。健康な成人の比較試験をまとめたレビューに、そんな結果がある。[2] 「痩せる運動を選びたい」という同じ願いでも、成績表のどの欄を見るかで答えが変わる。

帰宅後に歩く時間を取るか、筋トレをするか。予定に入れられる時間が限られるほど、どちらかを選びたくなる。だが、お腹の脂肪を減らしたいのか、減量中も筋肉を保ちたいのかで、運動に求める役割は変わる。まず自分の目的を言葉にしてから、比較試験の結果を読んでいこう。

選ぶ前に確かめたいのは、何を減らしたいか、何を保ちたいか、そしてどの条件で比較された結果かである。本稿では運動同士の比較に焦点を絞る。基礎代謝や減量後の体重維持は、筋トレとリバウンド予防の科学 基礎代謝を守れば体重は戻らないのかを読むに譲る。

「痩せる」を、体重と脂肪と除脂肪量に分ける

体重が減る、脂肪の重さが減る、体脂肪率が下がる。これらは研究でも別々の評価項目として扱われる。除脂肪量は脂肪を除いた身体の量であり、筋肉そのものの重さと同一視せずに読む必要がある。有酸素運動、筋トレ、両者の併用を比較したレビューも、脂肪量と体脂肪率を主要な項目に、体重と除脂肪量を別の項目に置いている。[2]

そのレビューは、代謝面で健康な成人を対象とする無作為化比較試験を集めたものだ。無作為化比較試験とは、参加者を偶然によって運動などの条件に割り付け、結果を比較する研究である。系統的レビューには36研究、1,564人が含まれ、データ不足の研究を除いた31研究をメタ分析、つまり複数の研究結果を統合する解析に用いた。[2] 同じ運動名でも、参加者や実施方法まで完全に同じではない。

10週間以上の研究では、有酸素運動は筋トレに比べて、体重を平均1.82kg多く減らし、脂肪量を平均1.06kg多く減らした。差の95%信頼区間は、体重で−2.72〜−0.93kg、脂肪量で−1.88〜−0.24kgだった。[2] 信頼区間は、群間の平均差の推定にどれくらいの不確実さがあるかを読む範囲だ。

ここでの1.06kgは「有酸素運動をすれば脂肪がその量だけ落ちる」という数値ではない。筋トレを行った群との平均的な差である。[2] 検索結果の見出しに数字が出てきたら、開始前からの変化なのか、何もしない群との差なのか、別の運動との差なのかを確認したい。比較相手を省くと、同じ数字でも期待する内容が変わる。

一方、有酸素運動の除脂肪量の保持は筋トレより平均0.88kg少なく、95%信頼区間は−1.73〜−0.03kgだった。体脂肪率の変化には、有酸素運動、筋トレ、併用の間で有意差がなかった。[2] 脂肪の重さの比較と、身体全体に占める脂肪の割合の比較は、同じ答えになるとは限らない。

朝の体重が動かないと、その前日の運動を取り消したくなるかもしれない。だがこの比較は、運動を続けた期間の群平均についての結果である。[2] 体組成の見方そのものは体重と体脂肪で見るダイエットの成績 数字が動かない朝に体の中身を見直す理由で扱うが、ここでは少なくとも、体重の勝敗を脂肪や筋肉の勝敗にそのまま移さないことが出発点になる。

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脂肪を減らすなら、有酸素運動が優位になる条件がある

脂肪量の比較では有酸素運動が有利でも、条件を読むと単純な種目の序列ではなくなる。先ほどのレビューでは、10週間未満の研究では運動種目間に有意差がなく、有酸素運動、筋トレ、併用の運動量をそろえた条件でも、脂肪量、体重、体脂肪率、除脂肪量の変化に有意差がなかった。[2] 運動の種類だけでなく、量と期間が結果を左右する比較条件なのである。

朝の霧がかかった公園で、ジョギングをする人が園内の道を進んでいる。
朝の霧がかかった公園で、ジョギングをする人が園内の道を進んでいる。
写真: John Robert McPherson / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

脂肪量の変化を比べるなら、始めてからの期間をそろえて考えたい。最初の数回だけで運動を入れ替えると、長い介入で得られた結果を参考にするための時間も短くなる。

このレビューは1980年1月から2023年1月までに公表された比較試験を検索し、介入期間だけでなく、併用を同日か別日に行うか、運動量がそろっているかも分けて解析した。[2] 同じ「有酸素運動対筋トレ」でも、比較の条件には複数の軸がある。歩く日だけ長い時間を確保しているなら、種目の違いと時間の違いが重なっている。自分の予定を考えるときにも、名前と実施量を一組で見ると選びやすい。

筋トレ自体にも脂肪を減らす効果は報告されている。過体重・肥満の人を含む114試験、4,184人の系統的レビューでは、筋トレ単独は運動をしない対照群に比べ、全身の脂肪量が平均1.0kg少なく、体脂肪率は1.6ポイント有意に低下した。除脂肪量は平均0.8kg増え、95%信頼区間は0.6〜1.0kgだった。[6] 有酸素運動との競争で劣る指標があることと、筋トレに効果がないことは別である。

同じレビューで、筋トレと食事のエネルギー制限を組み合わせた介入は、介入をしない群に比べて脂肪量を平均5.3kg減らし、95%信頼区間は−7.2〜−3.5kgだった。[6] 大きな数値だが、食事条件を含む介入全体の結果である。「筋トレで脂肪がこれだけ減った」と紹介すると、研究から食事の部分だけを抜き取ってしまう。

健康な成人を対象に、全身の筋トレを運動なしと比較した別のレビューでも、脂肪量は平均0.55kg減少し、95%信頼区間は−0.75〜−0.34kg、体脂肪率は1.46ポイント低下した。[7] 過体重・肥満の人を集めたレビューの数値と異なっていても、対象の条件を比べる必要がある。対象、選ばれた試験、介入内容が違う。健康な成人のレビューでは、4週間以上の全身の筋トレを対象に58研究を集め、54研究を統合解析に用いた。測定方法は体脂肪率と脂肪量の効果の違いに関係し、性別は関係しなかった。[7]

内臓脂肪では、筋トレの結果が研究によって違う

お腹の脂肪を問うときも、研究では内臓脂肪と皮下脂肪を分けて扱う。過体重・肥満の成人を対象にした古いレビューは、画像検査であるCTやMRIで内臓脂肪を測った試験を集めている。[4] 服のきつさや体重の変化を、画像で測定した内臓脂肪の結果と同じものとして扱うことはできない。

2012年のレビューでは35研究を採用し、有酸素運動は運動なしの対照群より内臓脂肪を減らした。統合した効果量は−0.33、95%信頼区間は−0.52〜−0.14だった。一方、筋トレと対照群の比較では有意な効果が確認されず、有酸素運動と筋トレを直接比較した9研究でも、差は有意ではなかった。[4] 「有酸素運動に有意な効果」「筋トレに有意な効果なし」と並べても、そのまま両者の有意な差になるわけではない。

2021年の運動量を検討したレビューでも、中等度以上の有酸素運動は内臓脂肪を減らしたが、筋トレと併用運動では有意な効果を確認できなかった。[5] しかし2023年に84の無作為化比較試験、4,836人をまとめたネットワークメタ分析では、有酸素運動、筋トレ、併用運動のいずれにも内臓脂肪を減らす効果が報告された。[1] ネットワークメタ分析は、直接比較だけでなく共通の比較相手を介した間接比較も用いる解析である。

さらに、健康な成人の筋トレを調べたレビューは、内臓脂肪の減少を標準化平均差−0.49、95%信頼区間−0.87〜−0.11と報告している。[7] 標準化平均差は異なる測定尺度の結果を統合するための数値だ。−0.49はkgや減少率ではなく、尺度をそろえた効果の大きさを表す。

ただし、2023年のネットワークメタ分析の結論では、筋トレは比較した介入の中で最も効果が小さいとされた。[1] 内臓脂肪を主な目標にするなら、筋トレの改善が報告された点と、この相対的な評価を一緒に読む必要がある。

2012年のレビューは過体重・肥満の成人を対象に、健康な成人の筋トレのレビューとは異なる試験を集めている。[4][7] 新しい論文だから以前の結果をすべて取り消すのでも、昔の結論に合う研究だけを残すのでもない。自分が知りたいのは全身の脂肪量なのか、お腹の内臓脂肪なのかを先に決め、その項目について何と比較した結果かを読む。

2023年の解析では、内臓脂肪以外にも全身の脂肪、腹囲、皮下脂肪などが検討され、有酸素運動、筋トレ、併用運動、高強度インターバルトレーニングで改善が報告された。ただし、体重については筋トレの有意な改善が確認されなかった。[1] お腹の変化を見たい日に体重だけを測ると、この研究が評価した腹囲や脂肪の情報は得られない。運動名を決める前に、健診や測定で確認できる項目を見ておけば、次に知りたい変化も具体的になる。

数字で読む運動の比較

10週間以上の比較:有酸素運動は筋トレより脂肪量を平均1.06kg多く減らした。95%信頼区間は−1.88〜−0.24kg。[2]

除脂肪量の保持:同じ比較で有酸素運動は筋トレより平均0.88kg少なかった。95%信頼区間は−1.73〜−0.03kg。[2]

筋トレ単独と運動なし:過体重・肥満の人のレビューでは脂肪量が平均1.0kg減少し、除脂肪量は平均0.8kg増加した。[6]

内臓脂肪の大規模な統合:84試験、4,836人を含む解析で、有酸素運動、筋トレ、併用運動に改善が報告された。[1]

内臓脂肪への運動全体の効果:過体重・肥満の成人の無作為化比較試験を統合した効果量は−0.28、95%信頼区間−0.37〜−0.19だった。[20]

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