連載「減量の科学」全10回の第4回です。
糖質を減らすのがいいのか、脂質を減らすのがいいのか。地中海式はどうなのか。この問いは何十年も繰り返され、そのたびに「今度こそ決着がついた」という見出しが並びます。ところが、直接比較した無作為化比較試験を並べてみると、見出しが伝えてきたものとはかなり違う景色が見えます。
この回で扱うのは、食事の型そのものの優劣ではなく、型を比べる研究が何を測り、どこで差がつき、どこで差が消えたかです。個別の献立や摂取量の指示は書きません。
結論を先に書きます。総エネルギーを揃えた比較では、三大栄養素の配分による体重の差は小さく、多くの試験で統計的に有意になりません。6か月時点で見えた差は12か月で縮み、その頃には型の違いよりも、指示された内容をどれだけ続けられたかのほうが結果を説明します。「どの型か」より「続いたかどうか」が効く、という身も蓋もない構図です。

型を直接比べた最大級の試験
この領域で最も設計が丁寧な試験のひとつが、健康的な低脂質食と健康的な低糖質食を12か月比べたものです。
Gardner CD, Trepanowski JF, Del Gobbo LC, et al. Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion: The DIETFITS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018;319(7):667-679.
糖尿病のない18歳から50歳の成人609名を、低脂質群305名と低糖質群304名に無作為に割り付けました。平均年齢40歳、女性57%、平均体格指数33です。行動変容の指導は両群に22回ずつ行われ、いずれの群でも「長期に続けられる範囲でできるだけ脂質(あるいは糖質)を減らす」ことと、食事の質を高めることが強調されました。12か月を完了したのは481名(79%)です。
12か月時点の実際の栄養素構成は、低脂質群と低糖質群でそれぞれ糖質が48%と30%、脂質が29%と45%、タンパク質が21%と23%でした。意図した差はついています。それでも体重の変化は低脂質群 -5.3 kg、低糖質群 -6.0 kg、群間差は0.7 kg(95%信頼区間 -0.2〜1.6)で有意ではありませんでした。
この試験にはもう一つの主題がありました。あらかじめ「低脂質向き」「低糖質向き」とされる遺伝子型のパターンを定義し、割り付けと交互作用があるかを検証したのです。609名のうち244名(40%)が低脂質型、180名(30%)が低糖質型に分類されました。結果は、食事と遺伝子型の交互作用(P = .20)も、食事とインスリン分泌の交互作用(P = .47)も認められませんでした。体質に合わせて型を選ぶという発想は、少なくともこの検証では支持されていません。
配分を4通りに割り付けた試験
Sacks FM, Bray GA, Carey VJ, et al. Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. The New England Journal of Medicine. 2009;360(9):859-873.
過体重の成人811名を、脂質・タンパク質・糖質の割合が異なる4つの食事に割り付け、2年間追跡した試験です。脂質20%または40%、タンパク質15%または25%という二要因の設計で、糖質はその残りとして35%から65%まで振られました。指導は個別と集団の両方で、2年間にわたって提供されています。
6か月時点で、どの群も平均6 kg(初期体重の7%)を減らしました。その後は戻りが始まります。2年後の体重減少は、タンパク質15%群で3.0 kg、25%群で3.6 kg。脂質20%群と40%群はどちらも3.3 kg。糖質65%群で2.9 kg、35%群で3.4 kg。すべての比較で P > 0.20 でした。試験を完了した80%の参加者の平均減量は4 kgで、初期体重の10%以上を減らせたのは14%から15%にとどまります。
この試験で唯一、体重減少とはっきり結びついた変数があります。集団指導への出席回数です。1回の出席あたり0.2 kgという関係が報告されました。満腹感、空腹感、食事への満足度、出席率は、どの型でも同程度でした。型の違いは、続けやすさの違いにすらなっていなかったことになります。

統合してみると
Ge L, Sadeghirad B, Ball GDC, et al. Comparison of dietary macronutrient patterns of 14 popular named dietary programmes for weight and cardiovascular risk factor reduction in adults: systematic review and network meta-analysis of randomised trials. BMJ. 2020;369:m696.
121件の試験、21,942名を統合したネットワークメタアナリシスです。14の名前つき食事プログラムと3種類の対照食が比較されました。通常の食事と比べた6か月時点の体重減少は、低糖質食で4.63 kg、低脂質食で4.37 kg(いずれも確実性は中程度)と、ほぼ並んでいます。収縮期血圧の低下も5.14 mmHg と5.05 mmHg でほぼ同じでした。三大栄養素が中庸な食事は、体重も血圧もわずかに劣ります。
名前つきプログラムのなかで、6か月時点の体重減少が大きかったのはアトキンス(5.5 kg)、DASH(3.6 kg)、ゾーン(4.1 kg)でした。ただし著者らの結論はそこにありません。12か月になると、すべての三大栄養素パターンと名前つきプログラムで体重減少は縮み、心血管危険因子への利益は地中海食を除いて事実上消えました。6か月の見出しと12か月の結論は、同じ研究の中で食い違います。
地中海式は別枠か
上の統合で唯一例外的に扱われた地中海食については、単独の検討も重ねられています。エスポジート(Esposito)らのメタアナリシスは、16件の無作為化比較試験・19の比較群・3,436名(うち地中海食群1,848名、対照食群1,588名)を統合し、体重で -1.75 kg(95%信頼区間 -2.86〜-0.64)、体格指数で -0.57(-0.93〜-0.21)という差を報告しました。効果はエネルギー制限を併用したとき(-3.88 kg、-6.54〜-1.21)、身体活動を増やしたとき(-4.01 kg、-5.79〜-2.23)、追跡が6か月を超えたとき(-2.69 kg、-3.99〜-1.38)に大きくなっています。つまり地中海食そのものの効果というより、エネルギー制限や活動量と組み合わさったときの効果です。
対照を他の減量食に限ると、差はさらに縮みます。マンチーニ(Mancini)らが12か月以上の追跡がある5件・998名を集めた系統的レビューでは、地中海食は低脂質食より体重減少が大きかった(-4.1〜-10.1 kg 対 2.9〜-5.0 kg)ものの、他の比較食(-4.7〜-7.7 kg)とは同程度でした。血圧や血中脂質への効果も、比較食とおおむね同等です。
Shai I, Schwarzfuchs D, Henkin Y, et al. Weight loss with a low-carbohydrate, Mediterranean, or low-fat diet. The New England Journal of Medicine. 2008;359(3):229-241.
3つの型を直接比べた2年間の試験もあります。中等度の肥満322名を、エネルギー制限つきの低脂質食、エネルギー制限つきの地中海食、エネルギー無制限の低糖質食に割り付けました。平均体重減少は低脂質群2.9 kg、地中海群4.4 kg、低糖質群4.7 kgです。この試験の特異な点は遵守率の高さで、1年時点で95.4%、2年時点でも84.6%が割り付けられた食事を続けていました。介入を完了した272名に限れば、それぞれ3.3 kg、4.6 kg、5.5 kgと差は広がります。血中脂質は低糖質食で、血糖の指標は地中海食で相対的に良好でした。

遵守率が結果を動かす
同じ試験の参加者を、遵守という切り口から分析した報告があります。
Greenberg I, Stampfer MJ, Schwarzfuchs D, Shai I. Adherence and success in long-term weight loss diets: the Dietary Intervention Randomized Controlled Trial (DIRECT). Journal of the American College of Nutrition. 2009;28(2):159-168.
24か月時点の継続率は全体で85%、内訳は低脂質食90%、地中海食85%、低糖質食78%でした(p = .042)。自己申告による遵守スコアは、開始1か月時点の81%から24か月時点の57%まで下がっています。脱落は女性(29%)が男性(14%)より多く(p = .001)、喫煙者でも高い傾向でした。多変量解析で脱落を予測したのは、開始時の体格指数と6か月時点での減量の少なさです。そして2年間で5%以上の減量に成功したことを予測した主要な変数も、6か月時点の減量幅でした(オッズ比 1.5、95%信頼区間 1.35〜1.67)。
遵守と食事の質を同時に見た解析もあります。ハウザー(Hauser)らは、先のDIETFITS試験の448名を、食事の質の改善の大小と、割り付けられた栄養素目標への近さの大小で4群に分けました。低糖質群では、質も遵守も高い部分集団の体格指数の変化が -1.15 kg/m2(95%信頼区間 -2.04〜-0.26)で、両方とも低い部分集団より有意に大きい。低脂質群でも -1.11 kg/m2(-2.10〜-0.11)と同様でした。ところが、質だけが高い群も、遵守だけが高い群も、有意差には届きません。片方だけでは足りない、という結果です。
食事を厳密に管理すると
これらはすべて、参加者が自分で食べるものを選ぶ自由生活下の試験です。提供する食事をすべて管理した研究では、話がやや変わります。
Hall KD, Guo J. Obesity Energetics: Body Weight Regulation and the Effects of Diet Composition. Gastroenterology. 2017;152(7):1718-1727.
糖質と脂質を等エネルギーで入れ替えた管理給食試験32件を統合した解析では、エネルギー消費量(26 kcal/日、P < .0001)も脂肪の減少(16 g/日、P < .0001)も、脂質の少ない食事のほうがわずかに大きいという結果でした。低糖質食が代謝上有利だという主張とは、逆の向きです。ただし差の大きさに注目してください。1日16 gの脂肪は、長期には無視できないとしても、自由生活下の試験で検出できる水準をはるかに下回ります。管理給食で見える生理的な差は、実際の生活では遵守の差に埋もれてしまいます。
| 比較 | 6か月時点 | 12か月以降 |
|---|---|---|
| 低糖質 対 低脂質 | 低糖質がやや大きいことがある | 差は縮み、有意でなくなる報告が多い |
| 三大栄養素の配分(4群) | どの群も同程度 | 2年後も P > 0.20 |
| 地中海式 対 低脂質 | 地中海式がやや大きい | 他の減量食とは同程度 |
| 遵守率の高低 | — | 6か月の減量幅が2年後を予測 |
何が残るか
ここまでの結果を、乱暴にまとめれば「どれでも同じ」になります。ただしそれは正確ではありません。より正しい言い方は、「総エネルギーを揃えると、三大栄養素の配分が体重に与える差は、試験で検出できる水準を下回ることが多い」です。差がないことが証明されたのではなく、差があるとしても小さい、という状態です。
体重以外の指標では、型による違いが残ります。低糖質食では中性脂肪が下がりHDLコレステロールが上がりやすい一方、LDLコレステロールの低下は小さくなります。低脂質食はその逆です。地中海式は、体重への効果は他と同程度でも、心血管危険因子への利益が12か月時点でも残った唯一のパターンでした。何を目的にするかで、見るべき指標が変わります。
研究の限界も挙げておきます。これらの試験の摂取量は、第1回で見たとおり自己申告に依存しており、系統的な過少申告を免れません。追跡を完了しなかった人は試験によって15%から21%おり、続けられた人だけを見れば結果は良く見えます。追跡は長くても2年で、その先は分かりません。そして、どの試験も「割り付けられた食事を指示された」効果を測っているのであって、特定の食品の効果を測ってはいません。減量にともなう筋量の保持については別の記事も参考になります。
次回予告
第5回は「タンパク質と満腹感——高タンパク食の証拠」を扱います。三大栄養素の配分で唯一、体重以外の面で比較的一貫した所見が得られているのがタンパク質です。満腹感、食事誘発性熱産生、除脂肪体重の保持について何が示され、何が示されていないか。そして腎臓への影響という古くからの懸念が、現在どこに位置づけられているかを見ます。
この連載の全10回
- 第1回|エネルギー収支——「カロリー計算」はどこまで正しいか
- 第2回|体重が落ちない時期——代謝適応という現象
- 第3回|食欲のホルモン——レプチン・グレリン・GLP-1
- 第4回|食事の型を比べる——低脂質・低糖質・地中海式(この記事)
- 第5回|タンパク質と満腹感——高タンパク食の証拠
- 第6回|食べる時間——時間制限食と体内時計
- 第7回|運動で痩せるのか——エネルギー代償という壁
- 第8回|筋量を守りながら減らす——除脂肪体重の保持
- 第9回|リバウンド——維持できた人は何をしていたか
- 第10回|総括——減量研究の限界
出典
- Gardner CD, Trepanowski JF, Del Gobbo LC, Hauser ME, Rigdon J, Ioannidis JPA, Desai M, King AC. Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion: The DIETFITS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018;319(7):667-679.
- Sacks FM, Bray GA, Carey VJ, Smith SR, Ryan DH, Anton SD, McManus K, Champagne CM, Bishop LM, Laranjo N, Leboff MS, Rood JC, de Jonge L, Greenway FL, Loria CM, Obarzanek E, Williamson DA. Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. The New England Journal of Medicine. 2009;360(9):859-873.
- Ge L, Sadeghirad B, Ball GDC, da Costa BR, Hitchcock CL, Svendrovski A, Kiflen R, Quadri K, Kwon HY, Karamouzian M, Adams-Webber T, Ahmed W, Damanhoury S, Zeraatkar D, Nikolakopoulou A, Tsuyuki RT, Tian J, Yang K, Guyatt GH, Johnston BC. Comparison of dietary macronutrient patterns of 14 popular named dietary programmes for weight and cardiovascular risk factor reduction in adults: systematic review and network meta-analysis of randomised trials. BMJ. 2020;369:m696.
- Shai I, Schwarzfuchs D, Henkin Y, Shahar DR, Witkow S, Greenberg I, Golan R, Fraser D, Bolotin A, Vardi H, Tangi-Rozental O, Zuk-Ramot R, Sarusi B, Brickner D, Schwartz Z, Sheiner E, Marko R, Katorza E, Thiery J, Fiedler GM, Blüher M, Stumvoll M, Stampfer MJ. Weight loss with a low-carbohydrate, Mediterranean, or low-fat diet. The New England Journal of Medicine. 2008;359(3):229-241.
- Greenberg I, Stampfer MJ, Schwarzfuchs D, Shai I. Adherence and success in long-term weight loss diets: the Dietary Intervention Randomized Controlled Trial (DIRECT). Journal of the American College of Nutrition. 2009;28(2):159-168.
- Hauser ME, Hartle JC, Landry MJ, Fielding-Singh P, Shih CW, Qin F, Rigdon J, Gardner CD. Association of dietary adherence and dietary quality with weight loss success among those following low-carbohydrate and low-fat diets: a secondary analysis of the DIETFITS randomized clinical trial. The American Journal of Clinical Nutrition. 2024;119(1):174-184.
- Hall KD, Guo J. Obesity Energetics: Body Weight Regulation and the Effects of Diet Composition. Gastroenterology. 2017;152(7):1718-1727.
- Esposito K, Kastorini CM, Panagiotakos DB, Giugliano D. Mediterranean diet and weight loss: meta-analysis of randomized controlled trials. Metabolic Syndrome and Related Disorders. 2011;9(1):1-12.
- Mancini JG, Filion KB, Atallah R, Eisenberg MJ. Systematic Review of the Mediterranean Diet for Long-Term Weight Loss. The American Journal of Medicine. 2016;129(4):407-415.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。自己流の極端な食事制限は避けてください。食事の型を変えたあとに強い倦怠感・めまい・便通の大きな変化が続く場合は、医療機関にご相談ください。糖尿病・脂質異常症・腎疾患・摂食障害などの持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方は、食事の内容を変える前に必ず主治医に確認してください。






