「筋力トレーニングをすると長生きできるのか」という問いには、ここ数年で答えの精度が上がりました。2022年に英国スポーツ医学誌と米国予防医学誌に別々のグループによるメタアナリシスが相次いで掲載され、数十万人規模のコホート研究を統合した結果が出そろったからです。

結論を先に述べると、筋力トレーニングをしている人は、していない人より全死亡リスクが約15%低い。ただしその関連は週30〜60分で最も強く、それ以上増やしても下がらず、週2時間を超えると差が消える可能性がある——これが現時点の統合結果です。しかも根拠はすべて観察研究であり、「筋力トレーニングが死亡を減らした」と因果を断定できる段階にはありません。

研究が「筋力トレーニング」と呼んでいるもの

この分野の研究が扱う「筋力強化活動(muscle-strengthening activity)」は、レジスタンストレーニングやウェイトトレーニング、自重運動(腕立て伏せや懸垂など)を指し、重い荷物運びや力仕事の庭作業は含まれません。統合解析の中心となった Momma らのレビューでは、含まれた16件のコホート研究のうち13件が自己申告の質問票、3件が面接で活動量を測っていました。測られているのは「週に何分(何回)そうした運動をしたと本人が答えたか」であり、重量・反復回数・強度は記録されていません。

していない人と比べてどれだけ違うか

Momma H, Kawakami R, Honda T, Sawada SS. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. British Journal of Sports Medicine. 2022;56(13):755–763.

Momma らは2021年6月までの文献から16件の前向きコホート研究を統合し、筋力強化活動を「している」人と「していない」人を比べました。

アウトカム研究数/参加者相対リスク(95%CI)確実性(GRADE)
全死亡7件/263,058名0.85(0.79〜0.93)非常に低い
心血管疾患7件/257,888名0.83(0.73〜0.93)非常に低い
がん全体6件/540,543名0.88(0.80〜0.97)非常に低い
糖尿病5件/202,486名0.83(0.77〜0.89)低い

全死亡で15%、心血管疾患と糖尿病で17%、がん全体で12%のリスク低下です。一方、大腸・腎・膀胱・膵臓のがんでは関連が見られませんでした。GRADE(証拠の確実性を4段階で評価する枠組み)の判定はほぼ「非常に低い」で、主な理由は研究の大半が米国のものだったことです。全死亡の統合は研究間のばらつき(I2=83%)も大きく、著者らは出版バイアスにより推定値が過大である可能性にも触れています。

Shailendra P, Baldock KL, Li LSK, Bennie JA, Boyle T. Resistance Training and Mortality Risk: A Systematic Review and Meta-Analysis. American Journal of Preventive Medicine. 2022;63(2):277–285.

同じ年の Shailendra らのメタアナリシスも、10件の研究から全死亡で15%(RR 0.85、95%CI 0.77〜0.93)、がん死亡で14%(RR 0.86、0.78〜0.95)の低下を示しました。2019年の Saeidifard らの統合(11件、370,256名、平均追跡8.85年)では全死亡が21%低下(HR 0.79、0.69〜0.91)です。3つの独立した統合が同じ範囲を指しています。

用量反応——週30〜60分で最も低く、それ以上は下がらない

Momma らは活動時間と全死亡の関係を連続的な曲線として推定し、リスクが最も低くなる点を週40分(RR 0.83、95%CI 0.79〜0.86)に見いだしました。曲線はそこから上向きに戻り、相対リスクが1.00を下回っていたのは週140分前後までです。著者らはこれを「J字型」と呼び、心血管疾患(週60分で最大18%低下)とがん全体(週30分で最大9%低下)でも同じ形でした。Shailendra らの用量反応解析(4件)でも、最大27%の低下は週60分前後(RR 0.74、95%CI 0.64〜0.86)で、それ以上の量では低下幅が縮んでいます。

Kamada M, Shiroma EJ, Buring JE, Miyachi M, Lee IM. Strength Training and All-Cause, Cardiovascular Disease, and Cancer Mortality in Older Women: A Cohort Study. Journal of the American Heart Association. 2017;6(11):e007677.

米国 Women’s Health Study の女性28,879名(平均62.2歳、心血管疾患・糖尿病・がんのない人)を平均12.0年追跡した解析(有酸素活動を調整済み)の結果です。

週あたりの筋力トレーニング全死亡のハザード比(95%CI)
0分(基準)1.0
1〜19分0.73(0.65〜0.82)
20〜59分0.71(0.62〜0.82)
60〜149分0.81(0.67〜0.97)
150分以上1.10(0.77〜1.56)

週150分以上の群ではハザード比が1を超えていますが、信頼区間は0.77〜1.56と広く、この群の人数が少ないことを反映しています。著者らは「週150分前後を超える量のリスクはさらに調べる必要がある」と慎重です。

Patel AV, Hodge JM, Rees-Punia E, Teras LR, Campbell PT, Gapstur SM. Relationship Between Muscle-Strengthening Activity and Cause-Specific Mortality in a Large US Cohort. Preventing Chronic Disease. 2020;17:E78.

米国がん協会のコホート72,462名(13年間で18,034名が死亡)でも、週1時間未満(HR 0.88、95%CI 0.82〜0.94)と1〜2時間未満(HR 0.90、0.84〜0.97)は全死亡が低く、週2時間以上では差が消えました(HR 1.01、0.92〜1.09)。著者らは「多い量で関連が消える理由は不明」としています。

時間ではなく回数で見ると

Coleman CJ, McDonough DJ, Pope ZC, Pope CA. Dose-response association of aerobic and muscle-strengthening physical activity with mortality: a national cohort study of 416 420 US adults. British Journal of Sports Medicine. 2022;56(21):1218–1223.

米国の416,420名の解析は、回数で用量を見ています。筋力強化運動は週1回で全死亡のハザード比0.89(95%CI 0.81〜0.97)と有酸素運動に上乗せの低下を示し、週7回では0.99(0.94〜1.04)と差がなくなりました。著者らの結論は「最小有効量は週1〜2回」です。

時間で見ても回数で見ても、曲線の形は同じです。少量で利益の大半が得られ、量を増やしても利益は増えず、多すぎる領域では差が消える。これが4つの独立したコホートに共通する所見です。

有酸素運動と組み合わせたとき

筋力トレーニングは「有酸素運動の代わり」ではなく「追加」として位置づけられます。Momma らの統合では、両方を行う人はどちらも行わない人と比べて全死亡が40%低く(RR 0.60、95%CI 0.54〜0.67、581,194名)、心血管死亡が46%低く(RR 0.54、0.41〜0.70)、がん死亡が28%低い(RR 0.72、0.53〜0.98)結果でした。Saeidifard らの統合でも、単独の21%低下に対し併用では40%低下(HR 0.60、0.49〜0.72)です。一方、筋力トレーニングだけで有酸素運動の分を埋め合わせられるかについて、Saeidifard らは「置き換えの効果を判断するデータは不十分」と明記しています。

ガイドラインは何を推奨しているか

Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. British Journal of Sports Medicine. 2020;54(24):1451–1462.

WHO の2020年ガイドラインは、成人に週150〜300分の中強度または週75〜150分の高強度の有酸素身体活動と、すべての年齢層に「定期的な筋力強化活動」を推奨しています。現行の各国ガイドラインが筋力強化活動に置く目安は「週2日以上」で、Momma らは自らの曲線を踏まえて「週2日以上という現行の推奨は妥当だが、より多い量には注意が要る」と述べています。ガイドラインは「日数」、コホート研究は「分」で書かれていて直接には対応しませんが、週2日で合計30〜60分なら両者を無理なく重ねられます。

なぜ「多いほど良い」にならないのか

週2時間を超えると利益が消える所見の読み方は3つあります。

  1. 本当に生理的な上限がある。高強度の負荷が血圧や血管に与える影響を挙げる論者もいますが、直接検証したデータはなく、Momma らも「高い量の影響は不明」と書いています。
  2. 人数が少なすぎて推定が不安定。週150分以上の群は各コホートで少数派で、信頼区間はいずれも1をまたいでいます。「害がある」証拠ではなく、「利益が確認できない」が正確な読みです。
  3. 測り方の問題で曲線が曲がって見える。次の節で扱う、最も見落とされやすい要因です。

この数字をどこまで信じてよいか

無作為化試験がない

死亡をアウトカムにした筋力トレーニングの無作為化比較試験は、事実上存在しません。Saeidifard らの統合に含まれた11件のうち無作為化試験は1件だけで、残りはコホート研究です。数万人を10年以上追跡する試験が現実的でない以上、ここまでの数字はすべて「関連」であり、因果の証明ではありません。

逆の因果と「一度きりの測定」

Lee DH, Rezende LFM, Ferrari G, et al. Physical activity and all-cause and cause-specific mortality: assessing the impact of reverse causation and measurement error in two large prospective cohorts. European Journal of Epidemiology. 2021;36(3):275–285.

コホート研究の最大の弱点は逆の因果(reverse causation)です。体調が悪い人や診断前の病気を抱えた人は運動を減らすため、「運動しない人の死亡率が高い」のは運動不足の結果ではなく原因の側かもしれません。Lee らは、2年ごとに活動量を尋ねた2つの米国コホート133,819名(死亡47,273名)でこの歪みを測りました。身体活動を初回の1回だけで測ると、10 MET時/週あたりの全死亡ハザード比は0.95(0.94〜0.96)、直近の回答だけでは0.78(0.77〜0.79)、回答を累積平均すると0.87(0.86〜0.88)と、同じデータでも解析法で推定値が大きく変わりました。

特に重要なのは用量反応の形です。初回測定や直近の回答では J 字型・U 字型に見えた曲線が、累積平均を使うと0〜150 MET時/週の範囲で単調な右下がりになったのです。これは身体活動全体の解析ですが、筋力トレーニングの研究はほぼすべてが初回1回の測定に依存しており、J 字の右側の上がりの一部が測り方の産物である可能性は否定できません。

健康な人ほど運動する

もう一つは交絡です。Coleman らの解析は年齢・性別・所得・学歴・喫煙・BMI・慢性疾患を調整していますが、調整は測った変数の分しか効きません。運動する人が食事や睡眠など測られていない面でも異なれば、その差が「効果」に紛れ込みます。

有害事象——どのくらい怪我をするか

一般の人が週30〜60分の筋力トレーニングをしたときの怪我の頻度を前向きに調べた研究は乏しく、まとまった数字があるのは競技者のデータです。Keogh と Winwood の系統的レビューは、ウェイトリフティングやボディビルなどの競技者を対象にした20件の研究から、怪我の発生率をボディビルで1,000時間あたり0.24〜1件、ストロングマンで4.5〜6.1件、ハイランドゲームズで7.5件と報告しています。部位は肩・腰・膝が多く、肉離れ・腱炎・捻挫が中心でした。著者らは「一般的なチームスポーツと比べれば発生率は比較的低い」としつつ、20件中低バイアスと判定できたのは5件、前向き設計は4件だけだと注記しています。軽い負荷の一般の人ではより低いと考えるのが自然ですが、裏づける直接のデータはありません。

医師に相談したほうがよい人

ここで引いた主要なコホートは、いずれも重い持病のない人を対象にしています(Kamada らは心血管疾患・糖尿病・がんのない女性、Patel らは主要な慢性疾患のない人)。心臓の病気や治療中の高血圧、糖尿病、骨粗しょう症、整形外科的な問題がある人、妊娠中・産後の人には WHO ガイドラインが別枠の推奨を設けており、一般成人向けの数字をそのまま当てはめることはできません。運動時に胸の痛みや息切れ、めまいが出る人は、負荷をかける前に主治医に確認すべき対象です。

この証拠から何が言えるか

  1. 筋力トレーニングをしている人は、していない人より全死亡リスクが約15%低い。3つの独立したメタアナリシスが同じ範囲を示している。
  2. 関連は週30〜60分で最も強く、それ以上増やしても強まらない。週2時間以上では差が消える可能性があるが、害の証拠ではない。
  3. 有酸素運動との併用で40%前後の低下となり、筋力トレーニングは有酸素運動の代わりではなく追加である。
  4. WHO と米国のガイドラインが示す週2日以上は、この用量反応と矛盾しない。
  5. 根拠はすべて自己申告に基づく観察研究で、確実性は「非常に低い」。J 字の右側は、一度きりの測定による見かけの可能性が残る。

要するに、研究が支持しているのは「週に短時間でも続けること」であり、「多くやるほど長生きする」ではありません。量を競う理由も、量を恐れる理由も、いまのデータからは出てきません。

出典

  1. Momma H, Kawakami R, Honda T, Sawada SS. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. British Journal of Sports Medicine. 2022;56(13):755–763.
  2. Shailendra P, Baldock KL, Li LSK, Bennie JA, Boyle T. Resistance Training and Mortality Risk: A Systematic Review and Meta-Analysis. American Journal of Preventive Medicine. 2022;63(2):277–285.
  3. Saeidifard F, Medina-Inojosa JR, West CP, et al. The association of resistance training with mortality: A systematic review and meta-analysis. European Journal of Preventive Cardiology. 2019;26(15):1647–1665.
  4. Kamada M, Shiroma EJ, Buring JE, Miyachi M, Lee IM. Strength Training and All-Cause, Cardiovascular Disease, and Cancer Mortality in Older Women: A Cohort Study. Journal of the American Heart Association. 2017;6(11):e007677.
  5. Patel AV, Hodge JM, Rees-Punia E, Teras LR, Campbell PT, Gapstur SM. Relationship Between Muscle-Strengthening Activity and Cause-Specific Mortality in a Large US Cohort. Preventing Chronic Disease. 2020;17:E78.
  6. Coleman CJ, McDonough DJ, Pope ZC, Pope CA. Dose-response association of aerobic and muscle-strengthening physical activity with mortality: a national cohort study of 416 420 US adults. British Journal of Sports Medicine. 2022;56(21):1218–1223.
  7. Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. British Journal of Sports Medicine. 2020;54(24):1451–1462.
  8. Lee DH, Rezende LFM, Ferrari G, et al. Physical activity and all-cause and cause-specific mortality: assessing the impact of reverse causation and measurement error in two large prospective cohorts. European Journal of Epidemiology. 2021;36(3):275–285.
  9. Keogh JW, Winwood PW. The Epidemiology of Injuries Across the Weight-Training Sports. Sports Medicine. 2017;47(3):479–501.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。心臓や血管の病気、治療中の高血圧や糖尿病、骨や関節の疾患がある方、運動時に胸の痛み・息切れ・めまいを感じる方は、負荷のかかる運動を始める前に医療機関にご相談ください。

author avatar
宮川涼 Founder
PAGE TOP
ご体験予約