筋力トレーニングを「誰かに見てもらいながら行う」ことと「自分ひとりで行う」ことの違いは、ジムの現場では当然のように語られてきました。しかし、同じプログラムを監督の有無だけ変えて無作為に比べた試験は意外に少なく、統合解析が初めて公表されたのは2022年です。ここで扱う「監督つき」とは、指導者がセッションに同席して負荷の設定・フォームの修正・声かけを行う条件を指し、比較の相手は同じ内容を紙やアプリで渡されて自分で行う群です。

結論を先に述べると、指導者がついた群は筋力の伸びが統計的にやや大きいが、その差は小〜中程度で、体組成にはほとんど差がなく、差の大部分は「重い負荷を選ぶこと」と「休まず通うこと」で説明される——これが現時点での最も正確な要約です。同時に、標本は小さく、盲検化は原理的に不可能で、費用対効果を調べた試験は一本もありません。効果の数字と限界の数字を、同じ重さで扱います。

統合解析が示した差の大きさ

監督の有無を直接比べた試験を系統的に集めた最初の統合解析は、英国のグループが2022年に公表しました。

Fisher JP, Steele J, Wolf M, Androulakis Korakakis P, Smith D, Giessing J. The Role of Supervision in Resistance Training; an Exploratory Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Strength and Conditioning. 2022;2(1).

含まれたのは12研究、監督つき群301名・監督なし群276名です。効果は標準化平均差(SMD:群間の差を標準偏差の何倍かで表した値)で示されています。

評価項目SMD(95%信頼区間)解釈
パフォーマンス・機能の全体0.28(0.02〜0.55)小さい効果、監督つきが有利
筋力0.40(0.06〜0.74)中程度の効果、監督つきが有利
体組成0.07(−0.01〜0.15)ほぼ差なし(信頼区間が0をまたぐ)

筋力では監督つきが有利ですが、信頼区間の下限は0.06で、ほとんど差がない可能性も否定されていません。体組成、つまり筋肉量や体脂肪については、監督の有無でほぼ差がありませんでした。「トレーナーがつくと体が変わる」という主張は、統合解析の水準では支持されていません。

個々の試験で何が起きたか

最も古典的な試験は、Mazzetti らが2000年に行ったものです。中程度に鍛えた男性20名を、パーソナルトレーナーが直接監督する群と監督なし群に無作為に分け、同一の期分けプログラムを12週間行いました。監督つき群はスクワットで7〜11週目、ベンチプレスで3週目と7〜12週目に1セットあたりの負荷が有意に重く、12週後の最大筋力も有意に高くなっています。

最も新しく、規模も相対的に大きいのが、ドイツのグループによる2025年の試験です。

Gavanda S, Held S, Schrey S, Oberwetter K, Lazzaro PM, Pergelt M, Geisler S. Optimizing Resistance Training Outcomes: Comparing In-Person Supervision, Online Coaching, and Self-Guided Approaches: A Randomized Controlled Trial. Journal of Strength and Conditioning Research. 2025;39(11):1129–1137.

トレーニング経験のある男女79名を、対面の監督つき、アプリ指導、PDFによる自己管理の3群に分け、週3回の全身トレーニングを10週間行いました。

スクワット1RMの増加ベンチプレス1RMの増加出席率
監督つき+26.6 kg+9.1 kg88.2%
アプリ指導+19.2 kg+8.2 kg81.2%
自己管理(PDF)+19.4 kg+7.7 kg52.2%

スクワットでは監督つき群が他の2群より有意に大きく伸びましたが、ベンチプレスでは3群のあいだに有意差がありません。この非対称は、Coleman らが2023年に鍛錬者36名で行った8週間の試験でも再現されています。スクワット1RMは監督つきが上回った一方、ベンチプレス1RMと等尺性膝伸展筋力は同程度で、垂直跳びはむしろ監督なし群のほうがやや良好でした。監督の利点は、技術的に複雑で、重量の設定に躊躇が生じやすい種目に集中していると読むのが自然です。

差が生まれる仕組み——重さの選び方

なぜ監督があると筋力が伸びるのか。人に見られていないと、人は軽い重量を選ぶのです。

Ratamess NA, Faigenbaum AD, Hoffman JR, Kang J. Self-selected resistance training intensity in healthy women: the influence of a personal trainer. Journal of Strength and Conditioning Research. 2008;22(1):103–111.

トレーニング経験のある女性46名に、普段10回行っている重量を選ばせ、その後に1RMを測って相対強度を計算した研究です。パーソナルトレーナーと訓練している19名は平均で1RMの約51.4%を選び、単独で訓練している27名は約42.3%でした。レッグプレスでは50%対41%、チェストプレスでは57.4%対48%、シーテッドローでは56%対42%です。

これは無作為化試験ではないので、意欲の高い人がトレーナーを選んでいる可能性は除外できません。それでも、Mazzetti らの試験で監督つき群の負荷が週を追って重くなったことと方向は一致しています。監督の効果の相当部分は「負荷の効果」である——この解釈が正しいなら、自分で十分に重い負荷を選び、記録を取って毎週わずかに増やせる人にとって、監督の有無による差は数字より小さくなるはずです。ただし、この推論自体を検証した試験はまだありません。

続けられるか——出席率の数字

もうひとつの経路は、単純に「通ったかどうか」です。Gavanda らの試験では自己管理群の出席率が52.2%にとどまり、監督つき群の88.2%と大きく開きました。病気による脱落は自己管理群12名・アプリ群7名に対し監督つき群は1名で、著者らは、監督のない条件では病気や怪我が「社会的に受け入れられやすい中断の口実」になっている可能性を指摘しています。

ただし、この差は誰にでも生じるわけではありません。Fisher らの統合解析では、未経験者を対象にした7研究の平均出席率が監督つき83.4%・監督なし73.1%だったのに対し、鍛錬者を対象にした研究では両群とも100%に達するものがあり、差があっても94.5%対84.7%程度でした。高齢者ではさらに差が消え、2024年の高齢者対象の統合解析では、34研究2,830名で両群の出席率がいずれも81%でした。出席率の差は「監督の効果」というより「対象者の特性」に依存すると考えたほうが、数字に合います。

高齢者では差が小さい

高齢者を対象にした統合解析は2本あります。Lacroix らの2017年の解析(11研究)は、筋力・パワーで監督つきが有利(SMD 0.51)と報告しましたが、含まれた研究の質は中程度(PEDroスケール中央値5点)で、著者ら自身が「慎重に解釈すべき」と書いています。監督なし群に監督セッションが全く含まれない研究では監督つきの優位が大きく(SMD 0.28〜1.24)、監督なし群にも数回の監督セッションが含まれる研究では差がほぼ消えました(SMD −0.06〜0.41)。

Gómez-Redondo P, Valenzuela PL, Morales JS, Ara I, Mañas A. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine. 2024;54(7):1877–1906.

より新しく規模の大きい2024年の解析では、監督つきが有利だった項目は膝伸展筋力(SMD 0.18)、椅子立ち上がり(0.25)、Timed Up and Go(0.21)、通常歩行速度(0.29)、健康関連QOL(0.21)でしたが、感度解析(結果を左右しうる研究を除いて再計算する手続き)で有意なまま残ったのは膝伸展筋力だけでした。両群とも重篤な有害事象は報告されていません。著者らは、監督つきを実施できない人にとって監督なしの運動は「安全で費用対効果の高い代替」になりうると結論しています。

短期の試験では差そのものが出ません。Orange らは平均53.6歳の成人36名に、ゴムバンドと自重の運動を週3回、4週間行わせ、監督つきと自宅実施を比べました。歩行・立ち上がり・階段昇降・等尺性筋力のいずれも両群で改善し、群間差はなく、12週間の中断後も改善の大半が維持されています。簡単な運動を短期間行うなら、監督の有無は結果を変えない

研究の限界——盲検化・標本・費用

Makaruk H, Starzak M, Płaszewski M, Winchester JB. Internal Validity in Resistance Training Research: A Systematic Review. Journal of Sports Science and Medicine. 2022;21(2):308–331.

筋力トレーニング研究133本の方法論を点検したこの系統的レビューでは、無作為割り付けを行った研究は68%あったものの、割り付けの隠蔽を報告したのは1本だけ、評価者の盲検化が満たされていたのは1.5%でした。監督の試験では参加者も指導者も自分がどちらの群かを知っており、Fisher らの統合解析は盲検化の項目をPEDroスケールから外して評価しています。評価者を盲検化していた研究は12本中3本でした。

標本も小さく、ここで紹介した個別試験の参加者は20〜79名、統合解析全体でも577名にすぎません。指導者が実験群にだけ熱心に働きかければ効果は膨らみますが、それを防ぐ手立てはありません。そして、ここで扱った試験のどれも、費用対効果の分析を行っていません。 スクワット1RMの差が7 kg程度、SMDにして0.4という利益がその費用に見合うかどうかは、研究上まったく答えが出ていない問いです。

傷害と安全性

監督の利点として最もよく挙げられるのが「怪我の予防」です。これを裏づける数字は、筋力トレーニングそのものではなく、スポーツ選手の傷害予防プログラムの研究から来ています。

Valentin S, Linton L, Sculthorpe NF. Effect of supervision and athlete age and sex on exercise-based injury prevention programme effectiveness in sport: A meta-analysis of 44 studies. Research in Sports Medicine. 2024;32(5):705–724.

44研究の統合では、傷害予防プログラム全体で傷害のリスク比は0.71、監督つきでは0.67(33%の減少)でしたが、監督なしでは1.04で、予防効果が確認できませんでした。ただし、これは競技スポーツの話であり、一般成人の筋力トレーニングにそのまま当てはめることはできません。筋力トレーニングの監督試験そのものでは、高齢者の統合解析で重篤な有害事象がなく、Gavanda らの試験で報告された、試験と無関係の怪我も自己管理群4名・監督つき群1名・アプリ群0名で、偶然の範囲とされています。「監督がないと危険」と言える証拠は、筋力トレーニングに関しては存在しないというのが正確なところです。

費用と、指導なしで再現できること

費用対効果の分析がない以上、判断は各人の状況に委ねられます。研究から言えるのは次の点です。

  • アプリ指導は出席率を保つ。 Gavanda らの試験でアプリ群の出席率は81.2%と対面に近く、ベンチプレスの伸びは対面と差がありませんでした。
  • 自重やバンドの簡単な運動なら、自宅実施で差が出ない。 Orange らの試験がそれを示し、高齢者の統合解析でも監督なしは「安全で費用対効果の高い代替」と評価されました。
  • 負荷の選び方は自分で修正できる。 監督なしで負荷が軽くなるという知見は、裏を返せば「軽くなっていることに気づけば直せる」ということです。
  • 部分的な監督でも差が縮む。 Lacroix らの解析では、監督なし群に数回の監督セッションが含まれるだけで差はほぼ消えました。

誰にとって差が大きく、誰には小さいか

差が大きく出やすい条件差が小さい・出ない条件
未経験者で、一人では通い続けにくい人もともと一人で訓練する習慣がある鍛錬者
スクワットのような複雑な高重量種目で最大筋力を狙うベンチプレスや機械を使う種目、自重・バンドの運動
10〜12週間以上、負荷を上げ続けるプログラム4週間程度の短期プログラム
監督なし群に指導の機会が全くない場合数回の監督セッションや、アプリによる進捗管理がある場合

体組成については、どの条件でも監督の有無で差がほとんどありません。

この証拠から何が言えるか

  1. 監督つきの筋力トレーニングは、監督なしと比べて筋力の伸びがやや大きい(SMD 0.40)が、信頼区間の下限は0に近く、体組成にはほぼ差がない
  2. 差が出るのはスクワットのような複雑な種目に集中し、ベンチプレスでは複数の試験で差が出ていない
  3. 差を生む仕組みは重い負荷を選ぶこと通い続けることで、いずれも監督以外の手段で部分的に再現できる。
  4. 高齢者では出席率に差がなく、感度解析に耐えた利点は膝伸展筋力だけ。短期・低強度の運動では差そのものが出ない。
  5. 標本は小さく、評価者の盲検化はまれで、費用対効果を調べた試験は存在しない。「監督がないと危険」と言える証拠も無い。

出典

  1. Fisher JP, Steele J, Wolf M, Androulakis Korakakis P, Smith D, Giessing J. The Role of Supervision in Resistance Training; an Exploratory Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Strength and Conditioning. 2022;2(1).
  2. Gavanda S, Held S, Schrey S, Oberwetter K, Lazzaro PM, Pergelt M, Geisler S. Optimizing Resistance Training Outcomes: Comparing In-Person Supervision, Online Coaching, and Self-Guided Approaches: A Randomized Controlled Trial. Journal of Strength and Conditioning Research. 2025;39(11):1129–1137.
  3. Coleman M, Burke R, Benavente C, et al. Supervision during resistance training positively influences muscular adaptations in resistance-trained individuals. Journal of Sports Sciences. 2023;41(12):1207–1217.
  4. Mazzetti SA, Kraemer WJ, Volek JS, et al. The influence of direct supervision of resistance training on strength performance. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2000;32(6):1175–1184.
  5. Ratamess NA, Faigenbaum AD, Hoffman JR, Kang J. Self-selected resistance training intensity in healthy women: the influence of a personal trainer. Journal of Strength and Conditioning Research. 2008;22(1):103–111.
  6. Lacroix A, Hortobágyi T, Beurskens R, Granacher U. Effects of Supervised vs. Unsupervised Training Programs on Balance and Muscle Strength in Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2017;47(11):2341–2361.
  7. Gómez-Redondo P, Valenzuela PL, Morales JS, Ara I, Mañas A. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine. 2024;54(7):1877–1906.
  8. Orange ST, Marshall P, Madden LA, Vince RV. Short-Term Training and Detraining Effects of Supervised vs. Unsupervised Resistance Exercise in Aging Adults. Journal of Strength and Conditioning Research. 2019;33(10):2733–2742.
  9. Makaruk H, Starzak M, Płaszewski M, Winchester JB. Internal Validity in Resistance Training Research: A Systematic Review. Journal of Sports Science and Medicine. 2022;21(2):308–331.
  10. Valentin S, Linton L, Sculthorpe NF. Effect of supervision and athlete age and sex on exercise-based injury prevention programme effectiveness in sport: A meta-analysis of 44 studies. Research in Sports Medicine. 2024;32(5):705–724.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。心臓や血圧の持病がある方、関節や腰に痛みがある方、運動中に胸の痛み・めまい・強い息切れが出る方は、筋力トレーニングを始める前に医療機関にご相談ください。

author avatar
宮川涼 Founder
PAGE TOP
ご体験予約