連載「ピラティスの処方箋」全10回の第2回です。

第1回では、「週2回・8週間」という組み合わせが、最適量の証明ではなく、臨床家の合意と介入研究の都合から慣例化したことを見ました。では、頻度そのものを動かしたとき、結果はどれくらい変わるのか。

現場では「週1回でも続けたほうが良い」「週3回ならもっと早く楽になる」といった説明が並びがちです。しかし頻度を直接比較した試験は少なく、しかも総セッション数(=週あたりの総量)と頻度が同時に動くデザインが多い。筋力トレーニングの統合では、総量を揃えると頻度の差は小さくなりやすい、という別の知見もあります。

結論を先に述べます。慢性腰痛では週2回が週1回より痛み・障害で有意に優れるという試験がある一方、週3回が週2回を一貫して上回るとは言えず、痛みが減る速さも頻度では加速しなかった。頻度の差の多くは、総量の差と読み替えられる可能性がある。

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頻度を直接比べた試験は何を示したか

非特異的慢性腰痛に対して、ピラティスの週あたり回数を正面から比較した比較的大きな無作為化比較試験があります。296名を、教育冊子のみ、ピラティス週1回、週2回、週3回の4群(各74名)に割り付け、6週間実施しました。主アウトカムは6週時点の痛みと障害です。

Miyamoto GC, Franco KFM, van Dongen JM, et al. Different doses of Pilates-based exercise therapy for chronic low back pain: a randomised controlled trial with economic evaluation. British Journal of Sports Medicine. 2018;52(13):859-868.

冊子のみと比べると、いずれのピラティス群も痛みが有意に改善しました。平均差は、週1回が -1.2(95%CI -2.2〜-0.3)、週2回が -2.3(-3.2〜-1.4)、週3回が -2.1(-3.0〜-1.1)です。障害でも同様で、週2回の平均差がもっとも大きく(冊子比 -4.7、95%CI -6.4〜-3.0)、週3回(-3.3、-5.0〜-1.6)、週1回(-1.9、-3.6〜-0.1)と続きます。

比較痛みの平均差(95%CI)障害の平均差(95%CI)
週1回 vs 冊子-1.2(-2.2〜-0.3)-1.9(-3.6〜-0.1)
週2回 vs 冊子-2.3(-3.2〜-1.4)-4.7(-6.4〜-3.0)
週3回 vs 冊子-2.1(-3.0〜-1.1)-3.3(-5.0〜-1.6)
週2回 vs 週1回-1.1(-2.0〜-0.1)-2.8(-4.5〜-1.1)

用量どうしの比較では、週2回が週1回より痛み(平均差 -1.1、95%CI -2.0〜-0.1)と障害(-2.8、-4.5〜-1.1)で有意に優れました。一方、抄録に報告された用量間の有意差は、この週2回対週1回が中心です。週3回の点推定は週2回より痛み・障害とも大きくはなく、むしろやや小さい側にあります。「回数を増やせば線形に良くなる」という単純な用量反応は、この試験では支持されていません。

ここで混同しやすいのが、統計的有意と臨床的重要性です。週2回対週1回の痛み差 -1.1 は信頼区間がゼロをまたがず統計的には有意ですが、その差が個人にとって意味のある変化かは、尺度の最小重要差や生活上の目標と照らさないと判断できません。抄録自体は最小重要差の閾値を示していません。Eliksらの総説は、同じ試験を引用して「週2回は週1回より良く、臨床的に重要な改善をもたらしうる一方、週3回が痛みと障害の低減をさらに押し上げるとは限らない」と整理しています。これは著者らの解釈であり、本稿でもその区別を保ちます。

費用効用の解析では、別の顔が出ます。支払い意思額の条件のもとで、週3回が費用対効果として選好される確率は 0.78 でした。痛み・障害の主解析では週2回が前面に出る一方、費用効用では週3回が残る——同じ試験内でも、問いの立て方で結論の重心が動きます。著者らはさらに、注意や期待といった非特異的要素が効果の一部かもしれない、と釘を刺しています。運動試験では盲検が難しく、セッション回数が多いほど接触も増えるため、頻度の効果と「会う回数」の効果が分離しにくいのです。

痛みが減る速さは、頻度で加速するか

同じ試験登録番号の二次解析が、痛みの「到達速度」を日次評価で追っています。ピラティスを受ける222名を週1回・週2回・週3回に分け、6週間、各セッション前後の数値的評価尺度で痛みを測りました。評価者は盲検ではありません。

Silva MLD, Miyamoto GC, Franco KFM, Franco YRDS, Cabral CMN. Different weekly frequencies of Pilates did not accelerate pain improvement in patients with chronic low back pain. Brazilian Journal of Physical Therapy. 2020;24(3):287-292.

生存時間解析では、痛みが30%、50%、100%減るまでの速さに、週あたり回数による差はありませんでした(いずれの比較も p>0.05)。完全に痛みが消えたと報告した割合は、治療開始直後の計測で週3回 44.6%、週2回 37.8%、週1回 29.7%。最終週ではそれぞれ 78.4%、77%、71.6%でした。序盤は高頻度群の割合が高く見えますが、終了時点では差が縮み、速さの解析でも頻度の優位は出ませんでした。

つまり「週3回にすれば早く楽になる」という期待は、この二次解析では支持されていません。 エンドポイント時点の平均差(Miyamoto)と、症状が閾値に達するまでの時間(Silva)は、別の問いです。平均では週2回が週1回より良い一方、到達速度では差が消える——この食い違いは、頻度を「効き方の速さ」の証拠として使うことへの慎重さを求めます。

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週3回は週2回より良いのか——結論が割れる

現場の感覚では、週3回は週2回の「上位互換」に見えがちです。しかしMiyamoto試験の痛み・障害では、週3回が週2回を上回るパターンは前面に出ていません。Eliksらも、プログラムはおおむね週1〜3回・4〜15週間・1回30〜60分で届けられてきたと整理したうえで、監督下・1回約60分・週2〜3回という推奨を示しつつ、週3回が有益効果をさらに押し上げるとは限らない、とMiyamotoを読んでいます。

一方、費用効用では週3回が選好されやすい、という結果もある。ここでの分岐は次のように整理できます。痛み・障害の平均差では週2回が週1回より有意に優れ、週3回が週2回を一貫して上回る証拠は弱い。症状改善の速さでは頻度による加速は示されていない。費用効用では条件付きで週3回が選好されうる。

研究間で結論が割れている、というより、同一試験系列の中でアウトカムごとに重心が違う、と言ったほうが正確です。「週3回のほうが良い」と一律に言うことも、「週2回で十分」と一律に言うことも、現時点の一次データにはやや荷が重い。Eliksらの整理は、この分岐を臨床向けに言い換えたものと読めます。

筋力研究が教える「頻度か、総量か」

Miyamoto試験のデザインでは、週あたりのセッション数が増えるほど、6週間の総セッション数も増えます。頻度と総量が同時に動くため、「週2回が良い」のか「週に2回分の量が多いから良い」のかを、この試験だけでは分離できません。その分離を試みたのが、レジスタンストレーニングの頻度メタ分析です。

Grgic J, Schoenfeld BJ, Davies TB, et al. Effect of Resistance Training Frequency on Gains in Muscular Strength: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2018;48(5):1207-1220.

22本を統合すると、筋力増加の効果量は週1回 0.74、週2回 0.82、週3回 0.93、週4回以上 1.08と、頻度が上がるほど大きくなり、全体では有意でした(p=0.003)。しかし総量を揃えた亜群では、頻度の効果は有意ではなくなりました(p=0.421)。著者らの結論は明快で、高頻度の利点の多くは追加の総量を載せる手段としてのものだ、という位置づけです。方法論的質は Downs and Black の平均18点(範囲13〜22)、良好は4本、残りは中等度でした。

筋肥大でも、似た構図があります。25本を統合した更新版では、総量を揃えると高頻度と低頻度に有意差はなく、直接測定・トレーニー・上肢下肢の分割でも差は出にくい、と報告されています。総量を揃えない研究のメタ回帰では高頻度が有利ですが、週1回と週3回以上の差は控えめだ、とも書かれています。

Schoenfeld BJ, Grgic J, Krieger J. How many times per week should a muscle be trained to maximize muscle hypertrophy? A systematic review and meta-analysis of studies examining the effects of resistance training frequency. Journal of Sports Sciences. 2019;37(11):1286-1295.

ただし、少し前の統合では結論のニュアンスが違います。10本を対象とした2016年のメタ分析では、高頻度の効果量 0.49±0.08、低頻度 0.30±0.07(P=0.002)で、総量を揃えたうえで筋群を週1〜3回訓練する比較では、週2回が週1回より肥大に有利、と述べています。週3回が週2回より優れるかは未確定、とも明記されています。

Schoenfeldら(2016)とSchoenfeldら(2019)は、同じ著者系統でも、対象研究の増え方と解析の切り口で結論の強さが変わります。研究間で結論が完全に一致しているわけではない、というのが正直な読みです。共通して言えるのは、「頻度の数字だけを独立変数のように扱うと誤読しやすい」「総量を見ないと頻度の議論が空転する」という注意です。ピラティスの用量比較試験は、この意味での総量均等デザインが乏しい。腰痛以外のアウトカム(バランス、体組成、心肺機能など)で週1回と週3回を総量均等に比べた質の高い試験は、現時点では研究が乏しい、と書くしかありません。

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ネットワーク統合が示す「下限」としての頻度

慢性腰痛に対する運動の種類を横断したネットワークメタ分析は、頻度の最適点ではなく、有益だったプログラムの下限に近い条件を示しています。118試験・9710名の統合で、痛み低減のSUCRAはピラティスが93%、障害低減が98%と最も高くなりました。

Fernandez-Rodriguez R, Alvarez-Bueno C, Cavero-Redondo I, et al. Best Exercise Options for Reducing Pain and Disability in Adults With Chronic Low Back Pain: Pilates, Strength, Core-Based, and Mind-Body. A Network Meta-analysis. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2022;52(8):505-521.

著者が「もっとも有益だった」とまとめた条件は、(1) ピラティスまたは筋力系を週1〜2回以上、(2) 体幹・筋力・マインドボディ系では1回60分未満、(3) ピラティスと体幹系では3〜9週間、です。ここでの「週1〜2回以上」は、週3回必須を意味しません。第1回で見たデルファイの「週2回」とも重なりますが、ネットワーク統合は「週2回が週3回より優れる」までは主張していません。下限の目安と、用量比較試験の結果は、別レイヤーの証拠です。

効果の大きさ、確実性、有害事象

頻度の差を読む前に、ピラティス全体の効果量の位置を押さえておきます。Cochraneレビューは10試験・510名を統合し、GRADEで確実性を評価しています。

Yamato TP, Maher CG, Saragiotto BT, et al. Pilates for low back pain. The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015;(7):CD010265.

最小限の介入と比べると、短期の痛みは平均差 -14.05(95%CI -18.91〜-9.19、低確実性、中程度の効果)、中期は -10.54(-18.46〜-2.62、中等度確実性)でした。障害は短期が -7.95(-13.23〜-2.67、低確実性、小さな効果)、中期が -11.17(-18.41〜-3.92、中等度確実性、中程度)です。バイアスリスクが低いのは7試験、高いのは3試験。著者らは高確実性の証拠は見つからなかった、と明記しています。

他の運動との比較では、障害に有意差はありませんでした(短期平均差 -3.29、95%CI -6.82〜0.24;中期 -0.91、-5.02〜3.20、いずれも中等度確実性)。信頼区間がゼロをまたぐ比較では、「差がない」のではなく「差があるともないとも言い切れない」と読むのが安全です。効果が小さい、あるいは示されにくい領域としては、(1) 他の運動に対する一貫した優位、(2) 長期追跡での差の持続、(3) 頻度を総量から切り離した効果、が挙げられます。

有害事象について、Yamatoらが拾えたのは2試験だけで、1つは事象なし、もう1つは軽微な事象でした。検出に十分な設計の試験は少なく、安全性が確立したと読むのは早計です。Miyamoto試験の抄録も有害事象の詳細を前面には出していません。頻度を上げるほど接触が増え、筋痛や疲労の報告が増えうる、というのは臨床的には想定されますが、用量比較として定量された有害事象データは乏しい。

限界と、現場で頻度をどう読むか

ここまでの文献を踏まえ、限界をはっきり書きます。

  • サンプルと代表性。 Miyamoto/Silva系列はブラジルの単一系統の試験です。国・医療制度・クラスの人数・価格の負担が違う現場へ、そのまま外挿できません。Cochrane統合でも合計510名です。
  • 盲検と期待効果。 Silvaの評価者は非盲検、運動試験一般で実施者と参加者の盲検は難しい。セッション回数が多いほど注意や期待が混ざりやすい、とMiyamoto自身が述べています。
  • 追跡期間。 用量比較の主解析は6週間です。Eliksらが整理する4〜15週間の帯の中でも短めであり、3〜6か月の監督セッションを頻度として正面から比べた証拠は乏しい。
  • 総量との交絡。 頻度を上げると総セッションも増える。筋力領域では総量均等で頻度効果が消える/小さくなる報告があり、ピラティスでも同じ分離ができていません。
  • 出版バイアスと対象の偏り。 頻度比較の一次試験自体が少なく、陽性結果が出やすいテーマが残りやすい。腰痛以外・若年健常者・高齢者の機能などでは、週1回対週3回の直接比較は研究が乏しい。

現場への翻訳は、次のような控えめな形になります。週1回でも冊子のみよりは痛み・障害が改善しうるが、同じ6週間なら週2回のほうが差が大きい、という試験がある。 週3回を「必ず上」とは言えず、改善の速さも保証されない。継続できる頻度を選ぶことが、総量を確保する現実的な手段になる——筋力研究の「頻度は総量の運び屋」という読みは、その意味で参考になります。器具と自重の比較は別記事、継続と脱落は別記事に譲ります。次回は、頻度ではなく1回のなかの時間・反復・セット数を扱います。

次回予告

第3回は「1回の量——時間・反復・セット数の実際」を扱う。週あたり回数を固定したとき、セッションの中身のどの成分が結果を動かしてきたのかを、介入研究の記述から読みます。

この連載の全10回

  1. 第1回|「週2回・8週間」はどこから来たのか——介入研究の用量の分布
  2. 第2回|頻度——週1回と週3回で差は出るのか(この記事)
  3. 第3回|1回の量——時間・反復・セット数の実際
  4. 第4回|強度をどう決めるか——ばね負荷・自重・主観的強度
  5. 第5回|進行——難度は何を基準に上げられてきたか
  6. 第6回|期間と立ち上がり——何週で何が変わるか
  7. 第7回|やめたらどうなるか——効果の持続と再開
  8. 第8回|個別とグループ——監督の密度は用量の一部か
  9. 第9回|併用——有酸素運動・筋力トレーニングと組み合わせたとき
  10. 第10回|総括——自分の用量を決める手順

出典

  1. Miyamoto GC, Franco KFM, van Dongen JM, Franco YRDS, de Oliveira NTB, Amaral DDV, Branco ANC, da Silva ML, van Tulder MW, Cabral CMN. Different doses of Pilates-based exercise therapy for chronic low back pain: a randomised controlled trial with economic evaluation. British Journal of Sports Medicine. 2018;52(13):859-868.
  2. Silva MLD, Miyamoto GC, Franco KFM, Franco YRDS, Cabral CMN. Different weekly frequencies of Pilates did not accelerate pain improvement in patients with chronic low back pain. Brazilian Journal of Physical Therapy. 2020;24(3):287-292.
  3. Grgic J, Schoenfeld BJ, Davies TB, Lazinica B, Krieger JW, Pedisic Z. Effect of Resistance Training Frequency on Gains in Muscular Strength: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2018;48(5):1207-1220.
  4. Schoenfeld BJ, Grgic J, Krieger J. How many times per week should a muscle be trained to maximize muscle hypertrophy? A systematic review and meta-analysis of studies examining the effects of resistance training frequency. Journal of Sports Sciences. 2019;37(11):1286-1295.
  5. Schoenfeld BJ, Ogborn D, Krieger JW. Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2016;46(11):1689-1697.
  6. Yamato TP, Maher CG, Saragiotto BT, Hancock MJ, Ostelo RW, Cabral CM, Menezes Costa LC, Costa LO. Pilates for low back pain. The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015;(7):CD010265.
  7. Fernandez-Rodriguez R, Alvarez-Bueno C, Cavero-Redondo I, Torres-Costoso A, Pozuelo-Carrascosa DP, Reina-Gutierrez S, Pascual-Morena C, Martinez-Vizcaino V. Best Exercise Options for Reducing Pain and Disability in Adults With Chronic Low Back Pain: Pilates, Strength, Core-Based, and Mind-Body. A Network Meta-analysis. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2022;52(8):505-521.
  8. Eliks M, Zgorzalewicz-Stachowiak M, Zenczak-Praga K. Application of Pilates-based exercises in the treatment of chronic non-specific low back pain: state of the art. Postgraduate Medical Journal. 2019;95(1119):41-45.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。腰痛が急に強くなったとき、脚の麻痺やしびれ、排尿・排便の障害、発熱を伴う場合は速やかに医療機関を受診してください。運動中に胸の痛み、強い息切れ、めまいが出る場合は中止してください。価格やクラスの人数、通院の負担は継続に影響するため、持病のある方は運動を始める前に主治医にご相談ください。

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