連載「ピラティスの処方箋」全10回の第8回です。
第7回までは、頻度・1回の量・強度・進行・期間・中断後の残存を用量の軸として見てきました。現場ではもうひとつ、しばしば見落される変数があります。監督の密度です。個別で見るのか、グループで見るのか。指導者がその場にいるのか、在宅の自主練習なのか。価格やクラスの人数の話に回収されがちですが、用量研究の観点では、これは処方の一部として読めます。
結論を先に述べます。監督ありのプログラムは、なしと比べて身体機能の一部で統計的に小さな上乗せを示すが、出席率そのものは同程度にとどまり、個別とグループの差は多くの主要アウトカムで信頼区間がゼロをまたぐ。ピラティス専用の直接比較は乏しい。
以下では、監督ありとなし、個別とグループ、技術要求の高い運動での監督、在宅の遵守、監督終了後の継続、限界と現場への含意の順に読みます。

監督の密度は用量の一部か
用量という語は、回数・時間・負荷を指すことが多いです。しかし同じ種目でも、フォームの修正が毎回入る条件と、口頭説明だけで在宅に任せる条件では、実際に届く刺激が変わり得ます。監督は、強度の上げ下げや安全の確保、正しい収縮の学習を通じて、処方どおりの用量が「実施される確率」を変えうる変数です。
ここで重要なのは、監督=常に優れる、という単純な物語ではないことです。監督ありとなしを比べた統合研究でも、出席率は同程度だった、という報告があります。差が出るのは「来たか」ではなく、「その場で何が起きたか」の側に寄ることがあります。また個別とグループの比較では、身体活動量そのものの群間差が統計的に有意でない、という更新メタ分析もあります。結論が割れている領域では、割れていることをそのまま書きます。
なお、ピラティスに限定した「個別対グループ」「監督密度」の大規模メタ分析は、今回の検索範囲では十分に見つかりませんでした。したがって本回の骨格は、運動全般・高齢者・骨盤底など隣接領域の統合結果です。クラスの人数や価格の議論にそのまま移す前に、一般化の限界を先に置きます。
監督ありとなし——身体機能の差はどれくらいか
60歳以上を対象に、監督あり(SUP)と監督なし(UNSUP)の運動を直接比べた無作為化比較試験を34本(計2830名)まとめたメタ分析があります。
Gomez-Redondo P, Valenzuela PL, Morales JS, Ara I, Manas A. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine. 2024;54(7):1877-1906.
両群の出席率はいずれも81%で、重篤な有害事象は報告されませんでした。SUPがUNSUPより優れた主な指標は次のとおりです。膝伸展筋力の標準化平均差(SMD)0.18(95%CI 0.07〜0.30、p=0.002、I2=0%)、立ち上がり(STS)SMD 0.25(0.00〜0.50、p=0.050、I2=80.9%)、Timed Up and Go(TUG)SMD 0.21(0.02〜0.40、p=0.035、I2=66.8%)、通常歩行速度 SMD 0.29(0.04〜0.55、p=0.026)、除脂肪量の平均差 1.05 kg(0.76〜1.34)、健康関連QOL(HRQoL)SMD 0.21(0.02〜0.40、p=0.035、I2=63.1%)。
読み方を分けます。統計的有意は、膝伸展・TUG・歩行速度・除脂肪・HRQoLなどで示されています。しかし効果量の点推定はおおむね小さな範囲(SMD 0.2前後)です。臨床的重要性(最小重要差)を超えるかは、尺度と個人のベースライン次第で、この統合だけでは断定できません。さらに感度分析では、膝伸展筋力だけが有意のまま残り、他の指標は落ちました。STSの信頼区間下限は0.00で、異質性も高い(I2=80.9%)。最大歩行速度(SMD 0.17、95%CI -0.03〜0.38)やVO2peak(0.32、-0.83〜1.47)では有意差が示されていません。
つまり「監督があれば何でも大きく良くなる」ではなく、一部の身体機能で小さな上乗せがあり、その上乗せは解析条件に敏感、という位置づけです。著者ら自身も、UNSUP側に少数の監督セッションが混ざるなど交絡の整理が必要だと述べています。
より古い統合として、65歳以上の健常高齢者におけるバランス・筋力トレーニングの監督ありとなしを比べたメタ分析もあります。
Lacroix A, Hortobagyi T, Beurskens R, Granacher U. Effects of Supervised vs. Unsupervised Training Programs on Balance and Muscle Strength in Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2017;47(11):2341-2361.
採用は11試験です。動的バランス(平均SMDbs 0.35、p=0.02)、バランステストバッテリー(0.53、p=0.02)、筋力・パワー(0.51、p=0.04)では監督ありが優位でした。一方、静的バランスは0.28(p=0.39)で有意ではありません。用量反応の間接比較では、監督セッションを10〜29回多く持つ条件で筋力・パワーのSMDbsが1.12と大きく、完全に監督なしの対照と比べたときの効果(SMDbs 0.28〜1.24)は、UNSUP側にも少数の監督が入る設計(-0.06〜0.41)より目立ちました。著者らは、週3回のうち2回を監督下にする、という実務的な目安を示しています。
ただし方法論的質の中央値はPEDro尺度で5と中程度で、試験数も少ないです。Gomez-Redondoらの新しい統合が感度分析で多くの差を消したことと並べると、監督の利点は方向としては繰り返し出るが、大きさの見積もりは研究間で揺れる、と読むのが妥当です。

個別とグループ——どちらが「効く」のか
監督の密度とは別に、実施の単位が個別かグループかも現場の大きな分岐です。身体活動(PA)介入を個別とグループで比べた、71試験(523効果量)の更新メタ分析があります。
Kritz M, Riddell H, Olsen D, Harden SM, Burke SM, Ntoumanis N, Thogersen-Ntoumani C. Individual versus group-based interventions: a systematic review and meta-analysis of physical activity, functional, psychosocial and health outcomes. Nature Human Behaviour. 2026;10(6):1109-1121.
グループ側の有利は、PAでg=0.086(95%CI -0.061〜0.233、p=0.249、n=22042)、心理社会的アウトカムでg=0.292(-0.171〜0.755、p=0.214)、健康アウトカムでg=0.125(-0.023〜0.272、p=0.096)と、いずれも統計的有意ではありませんでした。異質性はPAでI2=90.738と大きいです。機能的アウトカムだけ、外れ値除去後にグループ有利が有意となりました(g=0.164、0.032〜0.297、p=0.015、n=14429)。RCTに限った確実性評価は、PA・機能・健康が中等度、心理社会が低い、と報告されています。
ここでも「統計的有意」と「臨床的重要性」を分けます。機能のg=0.164は小さな効果量の帯にあり、信頼区間の下限は0.032です。ゼロは超えましたが、現場で感じる差がどれほどかは別問題です。一方、PAや健康の区間はゼロをまたぎ、グループが常に勝つとは言えません。著者らは、グループダイナミクスを意識した「true groups」が健康アウトカムでより大きな効果と関連した、とも述べています。形式的に人数がいるだけでは足りず、相互作用の設計が効く、という示唆です。
ピラティスのクラスはグループであることが多い一方、器具の個別セッションも一般的です。しかし本回の検索では、ピラティスに限定して個別とグループを直接比較した質の高い統合は乏しく、上記の一般運動の結果をそのまま移すことはできません。継続と脱落の記事とあわせ、実施形式は効果量だけでなく遵守の経路でも評価する必要があります。
技術要求が高い運動では、監督の意味が変わる
監督の効果が、運動の種類によって違う可能性もあります。骨盤底筋訓練(PFMT)は、正しい収縮の学習が結果を左右しやすい領域です。女性の尿失禁に対する監督ありとなしのPFMTを比べた系統的レビューがあります。
Kharaji G, ShahAli S, Ebrahimi-Takamjani I, Sarrafzadeh J, Sanaei F, Shanbehzadeh S. Supervised versus unsupervised pelvic floor muscle training in the treatment of women with urinary incontinence – a systematic review and meta-analysis. International Urogynecology Journal. 2023;34(7):1339-1349.
6本のRCTと1本の非無作為化試験が採用され、RCTはすべて高バイアスリスク、非無作為化は深刻なバイアスと判定されました。QOLでは監督ありが有利(SMD -0.64、95%CI -1.25〜-0.02、I2=75.4%、5RCT・n=235。尺度は低値ほど良い向きで統合)。骨盤底の機能・筋力でも監督ありが有利(SMD 1.11、0.28〜1.93、I2=74%、3RCT・n=117)。一方、尿症状の統合はSMD -0.34(-3.158〜2.46、I2=44.5%、n=166)で群間差なし。重症度の改善や患者満足も、差が示されないか、文献が乏しく結論不能でした。
著者らの要点は、教育と定期的な再評価を伴うなら、監督なしでも一定の効果が得られうる、というものです。逆に、正しい収縮を教えないままの在宅は弱い、とも読めます。ピラティスの体幹制御や呼吸の学習も、骨盤底ほどではないにせよ「正しい収縮・姿勢」のフィードバックが効く領域です。ただし尿失禁の治療効果をピラティス一般に外挿してはなりません。ここでは、技術学習の段階では監督密度が用量の実効性を変えやすい、という隣接証拠として扱います。

在宅プログラムの遵守——来ないのではなく、続かない
監督なしの最大の弱点は、効果量そのものより遵守(アドヒアランス)に出やすい、という見方があります。在宅の自己管理型理学療法について、非遵守が70%に達しうる、とまとめた系統的レビューがあります。
Essery R, Geraghty AW, Kirby S, Yardley L. Predictors of adherence to home-based physical therapies: a systematic review. Disability and Rehabilitation. 2017;39(6):519-534.
30本の量的研究を物語的に統合した結果、在宅プログラムの遵守を予測しやすい因子として、実施意図、自己動機、自己効力感、過去の運動遵守、社会的支援が挙げられました。監督の有無を直接の操作変数にした効果量ではありませんが、在宅に移した瞬間から、心理・社会的な資源が用量の一部になることを示します。
では、遵守を上げる介入は確立しているのか。Peekらが理学療法士処方の自己管理(主に運動)への遵守支援を扱った系統的レビューでは、12本のRCTから活動モニタとフィードバック、書面の運動指示、ブースター付き行動プログラム、目標設定など12種類の介入が拾われました。質はfairからhighとされる試験もあり、遵守を押し上げた報告もあります。しかし著者らは、臨床で推奨できるほどデータが十分ではない、と結論しています。運動以外の自己管理戦略へのRCTは見つかりませんでした。監督を外すなら「何かアプリを足せばよい」ではなく、遵守支援の証拠自体がまだ薄い、というのが現時点の読みです。
監督が終わったあと——継続の差は残るか
短期の監督プログラムを終えたあと、何が継続を支えるかも用量の問題です。慢性疾患(COPD、糖尿病、心血管疾患、変形性関節症)で監督プログラムを終えた成人について、継続介入を比べた系統的レビューとメタ分析があります。
Jansons PS, Haines TP, O’Brien L. Interventions to achieve ongoing exercise adherence for adults with chronic health conditions who have completed a supervised exercise program: systematic review and meta-analysis. Clinical Rehabilitation. 2017;31(4):465-477.
11試験・1231名です。12か月時点の「完全遵守」の統合割合は、施設ベースのフォローが0.34、電話フォローが0.30で、差は有意ではありませんでした(p=0.75)。センターに通い続けることと、在宅+電話は、この指標ではほぼ同じ位置にあります。監督の密度を長く高く保っても、長期の完全遵守は三分の一前後にとどまる、という厳しい数字です。
第7回の「やめたらどうなるか」と接続すると、用量の設計は開始時の監督だけでなく、監督を薄くしていく過程(weaning)まで含めて考える必要があります。ただしJansonsらの対象はピラティスではなく、疾患も限定的です。一般化には慎重さが要ります。
効果が小さい領域・有害・限界
効果が示されていない、または小さい領域をまとめます。
- 心肺指標。 Gomez-RedondoらではVO2peakの群間差は有意でなく、信頼区間も広いです。監督を厚くしても、有酸素能力が大きく伸びるとは限りません。
- 身体活動量の個別対グループ。 KritzらではPAのg=0.086で区間がゼロをまたぎます。グループだから活動量が増える、とは言えない。
- 尿症状そのもの。 Kharajiらでは監督の有無で尿症状の統合差は示されず、QOLや筋力とは乖離しました。アウトカムごとに結論が割れます。
- 出席率。 Gomez-RedondoらでSUPとUNSUPの出席率はいずれも81%。監督は「来させる」魔法ではありません。
有害事象について、Gomez-Redondoらは重篤例なしと報告しています。ただしこれは検出設計として十分とは限らず、報告の質にも依存します。「安全が証明された」ではなく、比較可能な範囲で重篤例が目立たなかった、と読むべきです。
研究の限界もはっきりしています。サンプルは高齢者や特定疾患に偏り、盲検は運動試験では困難です。追跡は短期が多く、Jansonsらでも12か月の完全遵守は低いです。出版バイアスの検討は各レビューで手法が異なり、Kritzらはファンネルがおおむね対称と述べる一方、異質性は極めて大きいです。Kharajiらは採用RCTがすべて高バイアスです。ピラティス固有の個別対グループ比較は乏しく、本回の数値をクラスの人数や価格の優劣に直結させる根拠にはなりません。
現場の何を変えるか
変わらないこと。 グループ形式をやめる必要はありません。Kritzらが示すとおり、個別とグループは多くの主要指標で明確な優劣がつきません。価格やクラスの人数は、効果量だけで決められない実務判断です。
変わること。 監督は「高級な付加」ではなく、学習段階や筋力・バランスの上乗せを狙うときの用量調整レバーです。Lacroixらが示唆したように、すべてのセッションを監督しなくても、一部を監督下に置く設計があり得ます。逆に、在宅へ移すときはEsseryらが示した自己効力感や社会的支援を、Peekらが言うとおり決定的なツールが乏しい前提で設計する必要があります。
用量としての監督密度。 第1回から見てきた「週何回・何週」に加え、何回に一度フィードバックが入るか、個別かグループか、を処方メモに書く価値があります。同じ60分でも、監督密度が違えば実効用量は変わり得ます。ただし現時点の効果量は小さく、感度分析に弱い。過度な期待は禁物です。
次回予告
第9回は「併用——有酸素運動・筋力トレーニングと組み合わせたとき」を扱います。ピラティス単体の用量だけでは届きにくい心肺や筋力の目標を、他の運動とどう分担するかを、併用試験の数字から読みます。
この連載の全10回
- 第1回|「週2回・8週間」はどこから来たのか——介入研究の用量の分布
- 第2回|頻度——週1回と週3回で差は出るのか
- 第3回|1回の量——時間・反復・セット数の実際
- 第4回|強度をどう決めるか——ばね負荷・自重・主観的強度
- 第5回|進行——難度は何を基準に上げられてきたか
- 第6回|期間と立ち上がり——何週で何が変わるか
- 第7回|やめたらどうなるか——効果の持続と再開
- 第8回|個別とグループ——監督の密度は用量の一部か(この記事)
- 第9回|併用——有酸素運動・筋力トレーニングと組み合わせたとき
- 第10回|総括——自分の用量を決める手順
出典
- Gomez-Redondo P, Valenzuela PL, Morales JS, Ara I, Manas A. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine. 2024;54(7):1877-1906.
- Lacroix A, Hortobagyi T, Beurskens R, Granacher U. Effects of Supervised vs. Unsupervised Training Programs on Balance and Muscle Strength in Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2017;47(11):2341-2361.
- Kritz M, Riddell H, Olsen D, Harden SM, Burke SM, Ntoumanis N, Thogersen-Ntoumani C. Individual versus group-based interventions: a systematic review and meta-analysis of physical activity, functional, psychosocial and health outcomes. Nature Human Behaviour. 2026;10(6):1109-1121.
- Kharaji G, ShahAli S, Ebrahimi-Takamjani I, Sarrafzadeh J, Sanaei F, Shanbehzadeh S. Supervised versus unsupervised pelvic floor muscle training in the treatment of women with urinary incontinence – a systematic review and meta-analysis. International Urogynecology Journal. 2023;34(7):1339-1349.
- Essery R, Geraghty AW, Kirby S, Yardley L. Predictors of adherence to home-based physical therapies: a systematic review. Disability and Rehabilitation. 2017;39(6):519-534.
- Peek K, Sanson-Fisher R, Mackenzie L, Carey M. Interventions to aid patient adherence to physiotherapist prescribed self-management strategies: a systematic review. Physiotherapy. 2016;102(2):127-135.
- Jansons PS, Haines TP, O’Brien L. Interventions to achieve ongoing exercise adherence for adults with chronic health conditions who have completed a supervised exercise program: systematic review and meta-analysis. Clinical Rehabilitation. 2017;31(4):465-477.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。運動中に胸の痛み、強い息切れ、めまい、動悸が出る場合は中止してください。尿失禁や骨盤底の症状、心臓や肺の病気で治療を受けている方、転倒のリスクが高い方は、運動の形式(個別・グループ・在宅)を決める前に医療機関にご相談ください。






