12週間の筋力トレーニングを終えた高齢者56名を、24週間後に追跡した研究があります。監督つきの介入が終わったあと、自費で続けるかどうかは本人の自由でした。

群介入後も続けていた人の割合
高負荷群17%
低負荷+群21%
低負荷群11%

ここまでは、想像のつく数字かもしれません。問題は、その前の行にあります。

「参加者は、介入の前・最中・後を通じて、高い水準の自己決定的動機づけを報告した。群間に差はなかった(p > .05)。」

「それにもかかわらず、介入後に筋力トレーニングを続けた参加者はごくわずかだった。」

「長期の継続は、介入中の高い自己決定的動機づけにもかかわらず、限られていた。」

(Van Roie ら, 2015, Gerontology)

やる気は高かった。それでも続かなかった。

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動機づけは、継続を予測しない

2026年の研究は、この点をより厳密に検証しています。88名の高齢者を26週間追跡し、心拍データから算出した累積MET・分という客観的な指標で遵守を測りました。

心理的プロファイル累積MET・分(処方量に対する割合)
自律的で自信の高い群129 ± 66%
中程度に自律的で自信のある群116 ± 38%

差がありません。そして心肺持久力、握力、柔軟性、移動能力の改善も同程度でした。

著者らの結論は「高齢者におけるベースラインの自己効力感と自律的動機づけの差は、構造化され、十分に支援された自宅運動プログラムにおいて、遵守や体力のアウトカムを有意に予測しなかった」。そして理由の推測として「このプログラムは、運動行動の一貫した客観的モニタリングと、研究チームからの定期的な指導・フィードバックを含んでいた。こうした構造化された行動支援が、心理的プロファイルの影響を減らした可能性がある」と述べています(Munns ら, 2026, European Review of Aging and Physical Activity)。

支援の枠組みがあれば、やる気の差は消える。

監督つきが、脱落を「増やす」場合がある

1,514名を3年間追跡した大規模試験が、直感に反する所見を報告しています。

時点脱落率
1年後11.0%(166名)
3年後14.9%(225名)

1年後の脱落を予測した因子は——低学歴、低い握力、低い心肺持久力、低い身体活動水準、そして監督つき運動群への割り付け。3年後も同じ因子に加え、記憶機能の低下が予測因子となりました(Viken ら, 2019, Medicine & Science in Sports & Exercise)。

通うことが負担になる人にとって、監督つきは続けにくい選択肢でもあります。

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遵守率は、実は高い

一方で、介入期間中の遵守率そのものは、想像より高い数字が報告されています。

対象遵守率
サルコペニアのある地域高齢者(17RCT 2,975名)85%(79〜89%、範囲71〜100%)
自宅での動画運動プログラム(26論文1,292名)継続率91.1%、出席率85.0%
地域の集団運動(6か月以上、10研究)平均69.1%(SD 14.6)
プログラムを完遂した人の割合(9研究)65〜86%
利用可能なセッションへの出席率58〜77%

ところが、サルコペニアの解析は重要な但し書きを付けています——「運動の遵守は、介入の有効性と関連していなかった」。そして24週未満のプログラムのほうが、24週以上より高い遵守率と関連する可能性(p = .01)が示されました(Wu ら, 2025, Age and Ageing)。

よく通った人ほど良くなる、とは限らない。——これは、前提を揺さぶる所見です。

自宅動画の意外な強さ

26論文1,292名(65歳超)を統合した解析は、自宅での動画プログラムの条件を具体的に示しています。

要因出席率への効果
1回の時間を20分未満から60分超へ−24.390%(p < .001)
指導者との生の接触がない(ウェブ・DVD配信)オンライン同時セッションと比べて −11.482%(p = .010)
コロナ禍のロックダウン期間出席率 +10.321%(p = .019)、継続率 +9.577%(p = .032)

結論は「60分未満の、監督つき自宅動画運動プログラムが、高齢者を活動的に保つのに適した持続可能な運動様式でありうる」(Říhova ら, 2024, Telemedicine and e-Health)。

短いほうが続く。生で見てもらえるほうが続く。

オンラインプログラムの追跡研究では、82名のうち6か月時点で79.3%、12か月時点で70.7%が継続していました。「高い遵守」に分類されたのは6か月で51.3%、12か月で47.8%。障壁として挙がったのは動機と時間の不足、促進因子は社会的支援と外的な誘因でした(Machacova ら, 2025, Clinical Interventions in Aging)。

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ピラティスの場合

50歳以上の慢性筋骨格系疾患を対象にした7研究397名(73%が女性)の系統的レビューが、ピラティスに固有の所見を報告しています。

「集団運動への遵守は良好だったが、自宅運動への遵守は不良だった。」

「全体としては他の運動に対する有意な優越性は見出されなかったが、参加者はピラティスの集団運動に特有の心理社会的な便益を報告しており、楽しさが遵守への正の要因である可能性がある。」

「重大な有害作用の報告はなかった。」

(Denham-Jones ら, 2021, Musculoskeletal Care)

ピラティスが他の運動に勝るのは効果ではなく、続けやすさかもしれない——という位置づけです。

51研究2,485名(平均66.5歳)を統合したメタ分析も、この解釈と整合します。

比較身体的指標心理的指標
非活動的対照との比較0.55/0.68(p < .003/p = .0001)0.62/0.83(p < .001)
活動的対照(他の運動)との比較0.27/0.50(p = .04/p = .01)=小〜中—

結論は「ピラティスは、高齢者という多様な集団にとって、安全で、適応可能で、有望な運動アプローチであると思われる」(Meikis ら, 2021, Frontiers in Neurology)。

何が継続を左右するのか

55本のレビューを検討したアンブレラレビューが、10本以上のレビューで繰り返し挙げられた14の要因を同定しています。

継続に関わる要因
プログラムの特性/多職種の関与/監督/テクノロジー
参加者の特性・障壁・促進因子の事前把握/教育と適切な期待
楽しさと、不快な経験がないこと/日常生活への統合
社会的支援とつながり/コミュニケーションとフィードバック
進捗情報とモニタリング/自己効力感と有能感
参加者の能動的な役割/目標設定

著者らは「身体運動への遵守は、研究者と専門職が制御・修正できる複数の変数によって影響される」と強調しています(Collado-Mateo ら, 2021, International Journal of Environmental Research and Public Health)。

64研究を検討した別のレビューは、54の影響因子と38の行動変容技法を同定し、それを8つの実施戦略(個別化されたプログラム、適切な環境、多面的な社会的支援、モニタリングとフィードバック、感情的経験への対処、参加者教育、自己効力感の強化、参加者の自律性の発揮)に整理しました(Yang ら, 2024, International Journal of Nursing Studies)。

個人の側の要因も特定されています——高い社会経済的地位、独居、併存疾患が少ない、自己評価の健康が良い、服薬が少ない、身体能力が高い、認知機能が良い、抑うつ症状が少ないほど、遵守が良好でした。そして監督つきプログラムのほうが、一般に遵守率が高いとされています(Picorelli ら, 2014, Journal of Physiotherapy)。

続けている人が語ること

質的研究からは、数字に表れない要因が見えてきます。

研究抽出されたテーマ
Farrance ら, 2016(集団運動10研究)社会的つながり、参加者が感じる便益、プログラム設計、力づけられる/元気が出る効果、指導者、個人の行動
Jansons ら, 2025(慢性疾患40名の面接)自分のための安全な場所、ロールモデルと社会的ネットワーク、運動の価値を実感すること、運動生理士の支援、家族の責任より運動を優先すること
Stødle ら, 2019(81〜92歳7名)健康上の課題の経験が意味ある出発点になること、生活の扱いやすさの向上、熟練した指導による理解しやすさ、社会的・専門的支援
Cross ら, 2023(29名を24か月追跡)最初の6か月は集団での交流が動機の源。12か月以降と介入後は、有能感と移動能力の向上が動機を駆動した

Cross らの所見は実務的です——動機の源は、時期によって変わる。最初は人とのつながり、後になると「できるようになった実感」。

Jin ら(29名の面接)も、プログラム終了後の継続について「参加者は、動機づけをもとに始め、意志の力で続ける」とし、具体的な方法として運動を日常に埋め込むこと、自己調整の方略、けがを防ぐための調整、生涯にわたる運動者としてのアイデンティティを挙げています(Jin ら, 2025, Innovation in Aging)。

脱落した人の側からも報告があります。241名への調査では——脱落者は動機の総得点が低く(p < .01)、障壁の総得点が高かった(p < .001)。具体的には「クラスが難しすぎた」「クラスが簡単すぎた」「運動が好きでない」「体調不良」「運動で痛みが出た」という5つの障壁と、「運動したい」「1日の予定に運動を組み込んでいる」という2つの動機が、現参加者と元参加者で有意に異なりました(Gillette ら, 2015, Journal of Geriatric Physical Therapy)。

「難しすぎた」と「簡単すぎた」の両方が障壁になっている点は、指導する側にとって重要です。

それでも、運動は安全

1年以上の長期介入を扱った93RCT 28,523名(平均74.2歳)の統合は、安全性を確認しています。

アウトカムリスク比
健康上の理由による脱落1.05(0.95〜1.17)=差なし
死亡0.93(0.83〜1.04)=差なし
死亡(臨床集団に限定)0.67(0.48〜0.95)=低い

そして転倒と転倒による傷害が減少し、身体機能と認知機能が改善。これらの結果は「参加者のベースラインの特性(年齢、身体機能、認知状態)と運動頻度から独立している」ようでした(García-Hermoso ら, 2020, Sports Medicine)。

なお、環境要因については、8,299名に案内を出し589名が参加した研究で検討されています——「本研究では、生態学的要因(会場までの距離など)は脱落の有意な予測因子ではなかった。一方、個人の要因と研究関連の変数は予測的だった」(Peters ら, 2022, International Journal of Environmental Research and Public Health)。

監督と動機づけ方略の役割を直接比べる試験は、現在進行中です。120名を5群(対照、監督あり/なし × 動機づけ介入あり/なし)に分ける24週間の研究計画が公表されています(Gómez-Redondo ら, 2024, BMC Geriatrics)。

いま言えること

  • 高い動機づけがあっても、監督が終わると11〜21%しか続けなかった
  • 客観的に測ると、動機づけプロファイルの差は遵守にも効果にも現れなかった
  • 監督つき群への割り付けが、脱落の予測因子になった大規模試験がある
  • 介入期間中の遵守率は、思われているより高い(85%、91.1%など)
  • ただし「遵守は介入の有効性と関連していなかった」という報告がある
  • 24週未満のプログラムのほうが遵守率が高い可能性
  • 自宅動画では、1回60分超にすると出席率が24%下がる
  • 指導者との生の接触がないと、出席率が11%下がる
  • ピラティスでは集団運動の遵守が良好、自宅運動は不良。楽しさが要因と推測されている
  • 動機の源は時期で変わる。最初は人とのつながり、後は「できるようになった実感」
  • 「難しすぎた」と「簡単すぎた」が、どちらも脱落の障壁になっている
  • 1年以上の長期運動でも、健康上の脱落と死亡のリスクは増えない

実務的な整理です。

「やる気があれば続く」——この前提は、データに支持されていません。高い動機づけを持ったまま、9割近くがやめています。

続くかどうかを決めているのは、環境と設計です。短い(60分未満)、人が見ている、日常に組み込まれている、楽しい。

だからこそ、通う場所を持つことに意味があります。自宅運動の遵守は、ピラティスでも他の運動でも一貫して低い。

ただし、通うこと自体が負担になる人もいます。監督つきへの割り付けが脱落を予測した試験もありました。合う形は人によって違います。

そして、最初の半年と、その後では動機が変わります。始めるときは人とのつながり、続けるときは「できるようになった」という実感。

出典

  1. Van Roie E, et al. Low- and High-Resistance Exercise: Long-Term Adherence and Motivation among Older Adults. Gerontology. 2015. DOI: 10.1159/000381473
  2. Munns A, et al. Similar exercise adherence and physical fitness outcomes are observed across distinct motivation profiles in older adults participating in a home-based structured exercise programme. European Review of Aging and Physical Activity. 2026. DOI: 10.1186/s11556-026-00421-1
  3. Viken H, et al. Predictors of Dropout in Exercise Trials in Older Adults: The Generation 100 Study. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2019. DOI: 10.1249/mss.0000000000001742
  4. Wu S, et al. Adherence to exercise intervention for community-dwelling older adults with sarcopenia: a systematic review and meta-analysis. Age and Ageing. 2025. DOI: 10.1093/ageing/afaf094
  5. Říhova M, et al. Adherence and Retention Rates to Home-Based Video Exercise Programs in Older Adults—Systematic Review and Meta-Analysis. Telemedicine and e-Health. 2024. DOI: 10.1089/tmj.2024.0100
  6. Machacova K, et al. Revolution or Empty Promise? A 6- and 12-Month Follow-Up to an RCT of the Online Exercise Program PERMANENTO in Older Adults. Clinical Interventions in Aging. 2025. DOI: 10.2147/cia.s530709
  7. Denham-Jones L, et al. A systematic review of the effectiveness of Pilates on pain, disability, physical function, and quality of life in older adults with chronic musculoskeletal conditions. Musculoskeletal Care. 2021. DOI: 10.1002/msc.1563
  8. Meikis L, et al. Effects of Pilates Training on Physiological and Psychological Health Parameters in Healthy Older Adults and in Older Adults With Clinical Conditions Over 55 Years: A Meta-Analytical Review. Frontiers in Neurology. 2021. DOI: 10.3389/fneur.2021.724218
  9. Collado-Mateo D, et al. Key Factors Associated with Adherence to Physical Exercise in Patients with Chronic Diseases and Older Adults: An Umbrella Review. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2021. DOI: 10.3390/ijerph18042023
  10. Yang Y, et al. Barriers and facilitators to exercise adherence in community-dwelling older adults: A mixed-methods systematic review using the COM-B model and Theoretical Domains Framework. International Journal of Nursing Studies. 2024. DOI: 10.1016/j.ijnurstu.2024.104808
  11. Picorelli AMA, et al. Adherence to exercise programs for older people is influenced by program characteristics and personal factors: a systematic review. Journal of Physiotherapy. 2014. DOI: 10.1016/j.jphys.2014.06.012
  12. Farrance C, et al. Adherence to community based group exercise interventions for older people: A mixed-methods systematic review. Preventive Medicine. 2016. DOI: 10.1016/j.ypmed.2016.02.037
  13. Jansons P, et al. Barriers and Facilitators to Long-Term Adherence in an Ongoing, Supervised, Gym-Based Exercise Program Among Adults With Chronic Conditions in Regional Australia. Journal of Aging and Physical Activity. 2025. DOI: 10.1123/japa.2024-0225
  14. Stødle IV, et al. The experience of motivation and adherence to group-based exercise of Norwegians aged 80 and more: a qualitative study. Archives of Public Health. 2019. DOI: 10.1186/s13690-019-0354-0
  15. Cross R, et al. A qualitative longitudinal study of motivation in the REtirement in ACTion (REACT) physical activity intervention for older adults with mobility limitations. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 2023. DOI: 10.1186/s12966-023-01434-0
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  20. Gómez-Redondo P, et al. The role of supervision and motivation during exercise on physical and mental health in older adults: a study protocol for a randomized controlled trial (PRO-Training project). BMC Geriatrics. 2024. DOI: 10.1186/s12877-024-04868-8

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。運動中に痛みが出る、翌日まで強い痛みが残る、めまいや動悸がある場合は中止し、医療機関にご相談ください。運動で痛みが出ることは脱落の主要な障壁のひとつであり、我慢して続けるべきものではありません。持病のある方、転倒の既往がある方、複数の薬を服用している方は、開始前に主治医にご相談ください。

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