「ピラティスで痩せますか」——これは体験レッスンで最も多い質問のひとつです。

この問いには、研究に基づいた明確な答えがあります。しかもその答えは、多くの人が期待するものとも、逆に「痩せません」という否定とも違う、やや込み入った形をしています。体重・BMI・体脂肪率は下がる。しかし腹囲は有意に変わらず、除脂肪量(筋肉を含む脂肪以外の重さ)はまったく変わらない——これがメタアナリシスの示した内容です。

この記事では、その数字を正確に紹介したうえで、なぜそういう結果になるのか、そして「痩せたい」という目的に対してピラティスをどう位置づけるべきかを整理します。

メタアナリシスが示した数値

ピラティスと体組成の関係については、過体重・肥満の成人を対象としたメタアナリシスが公表されています。

Wang Y, Chen Z, Wu Z, Ye X, Xu X. Pilates for Overweight or Obesity: A Meta-Analysis. Frontiers in Physiology. 2021;12:643455.

PubMed、Cochrane Library、Web of Science、CNKI、EMBASE を対象に、開始時点から2020年11月までの無作為化比較試験を系統的に検索し、11件の試験、合計393名のデータが統合されました。比較対象は、他の身体運動を行う群、または何も介入しない群です。

統合された結果は次のとおりです。

指標平均差(MD)95%信頼区間p値判定
体重−2.40 kg−4.04 〜 −0.770.004有意に減少
BMI−1.17 kg/m²−1.85 〜 −0.500.0006有意に減少
体脂肪率−4.22 %−6.44 〜 −2.010.0002有意に減少
腹囲−2.65 cm−6.84 〜 +1.550.22有意差なし
除脂肪量−0.00 kg−1.40 〜 +1.401.00変化なし

さらに、介入期間が長いほど体重とBMIの減少が明確になる傾向、および肥満のある人のみを対象とした研究でより効果が明確になる傾向が報告されています。

この数字をどう読むか

「−2.40kg」は多いのか少ないのか

平均で2.4kgの減少。これを大きいと見るか小さいと見るかは、比較の基準によります。

減量を目的とした食事介入の研究では、数か月で5〜10%の体重減少を目標に置くことが一般的です。体重70kgの人なら3.5〜7kgにあたります。それと比べると2.4kgは控えめです。

一方、「運動だけで」という条件で見ると、この数字は珍しいものではありません。運動単独による減量効果は、多くの研究で限定的であることが繰り返し示されています。体重を大きく動かす主役は食事であり、運動は補助的な役割を果たす——これは減量研究における一貫した所見です。

信頼区間の幅を見る

体重の95%信頼区間は「−4.04 〜 −0.77」です。これは、真の効果がこの範囲のどこかにある可能性が高いという意味です。最も楽観的な場合で4kg、最も控えめな場合で0.77kg。1kgも減らない可能性が十分に含まれている、ということです。

健康情報の記事は平均値だけを取り出して「2.4kg減少」と書きがちですが、区間の下限を見ておくと期待の置き方が変わります。

腹囲が変わらなかったことの意味

ここは意外に思われるかもしれません。体脂肪率が4.22%下がったのに、腹囲は統計的に有意に変わらなかった。

考えられる説明はいくつかあります。腹囲の測定は測定位置や呼吸のタイミングでばらつきが大きく、統計的に差を検出しにくいこと。研究間で測定方法が統一されていないこと。そして脂肪は特定の部位を狙って落とせない(いわゆる部分痩せは起こらない)という、運動生理学で繰り返し確認されている事実です。

「お腹を引き締めたい」という動機でピラティスを始める方は多いのですが、腹部の脂肪を減らす手段としては、この研究は支持を与えていません。見た目の変化を感じる人がいるとすれば、それは脂肪量そのものではなく、姿勢の変化や体幹の使い方の変化による可能性があります。

除脂肪量が「0.00kg」だったことの意味

これが最も重要な数字かもしれません。除脂肪量(lean body mass)は、脂肪以外の重さ——筋肉、骨、水分などの合計です。平均差はちょうど0.00kg、信頼区間も「−1.40 〜 +1.40」と対称で、増えも減りもしなかったことを示しています。

これは二つのことを意味します。

良いニュース:減量に伴う筋肉の減少が起きていない。食事制限だけで体重を落とすと、脂肪と一緒に除脂肪量も減ることが知られています。ピラティス群では体重と体脂肪率が下がりながら除脂肪量が維持されていました。これは体組成の観点では望ましい変化です。

期待を修正すべきニュース:筋肉量は増えていない。「ピラティスで筋肉がつく」という表現をよく見かけますが、この解析では除脂肪量の増加は示されませんでした。筋肥大を目的とするなら、漸進的に負荷を増やすレジスタンストレーニングのほうが適しています。

なぜピラティスでは大きく体重が落ちないのか

エネルギー消費の観点から考えると理解しやすくなります。

体重減少は、摂取エネルギーと消費エネルギーの差で決まります。運動による消費を増やす場合、効いてくるのは強度 × 時間です。マットピラティスは、ジョギングや自転車のような持続的な有酸素運動と比べると、心拍数を高い水準で長時間維持する種類の運動ではありません。

また、運動によって消費が増えても、その分だけ体重が減るとは限りません。運動後に食欲が増える、無意識のうちに他の時間帯の活動量が減る(代償行動)といった現象が知られており、これが運動単独の減量効果を目減りさせます。

つまり「痩せなかった」のではなく、「そういう種類の運動ではない」というのが正確な理解です。

それでも体組成が改善した理由

では、なぜ体重・BMI・体脂肪率は有意に減ったのでしょうか。研究からは断定できませんが、いくつかの経路が考えられます。

運動習慣そのものの効果。週に1〜2回、決まった時間に運動する習慣がつくことで、生活全体の活動量が上がる可能性があります。

行動の連鎖。運動を始めた人が食事にも意識を向けるようになる、という変化は珍しくありません。研究では食事を統制していない場合が多く、この影響は分離されていません。

期間の効果。介入期間が長いほど効果が明確になったという所見は、蓄積が効くことを示唆します。短期間で判断すべきものではありません。

「有意差なし」は「効果がない」ではない

腹囲の結果(p = 0.22)を「腹囲には効果がない」と読むのは、厳密には正しくありません。統計学的に言えば、「効果があるとは言えなかった」が正確な表現です。この違いは重要です。

有意差が出ない理由は、大きく三つあります。

本当に効果がない場合。これは当然あり得ます。

効果はあるが、検出できるだけのサンプル数がなかった場合。統計的な検出力(power)の問題です。393名という総数は、メタアナリシスとしては大きいとは言えません。効果が小さいほど、それを検出するには多くの人数が必要になります。

測定のばらつきが大きく、効果が埋もれた場合。腹囲はまさにこれに該当しやすい指標です。臍の位置で測るのか、肋骨と腸骨の中間で測るのか、呼気の終わりで測るのか。研究間で手順が異なれば、統合したときのばらつきは大きくなります。腹囲の信頼区間が「−6.84 〜 +1.55」と幅広いのは、この不確かさを反映しています。

健康情報を読むとき、p値が0.05を超えたかどうかだけで白黒をつけるのは乱暴です。信頼区間の幅と、その範囲に臨床的に意味のある値が含まれるかを見るほうが、実態に近づけます。

体組成はどう測られているのか

「体脂肪率が4.22%下がった」という数字を理解するには、体脂肪率がどう測られるかを知っておく必要があります。

生体電気インピーダンス法(BIA)は、体に微弱な電流を流し、その通りにくさから体組成を推定する方法です。家庭用の体組成計やスタジオの測定器の多くがこれです。手軽ですが、体内の水分量に強く影響されます。食事、飲水、発汗、月経周期、測定時刻によって数値が動きます。

DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)は、微量のX線を用いて脂肪・除脂肪・骨量を分けて測る方法です。BIAより精度が高いとされますが、装置が高価で研究施設に限られます。

皮下脂肪厚(キャリパー法)は、皮膚をつまんで厚みを測る古典的な方法です。測定者の技術に依存します。

メタアナリシスに含まれる研究がどの方法を使ったかは統一されていません。測定法が違えば数値の意味も変わるため、統合された「−4.22%」という数字にも、この不確かさが含まれていることを頭に置いておく価値があります。

自宅の体組成計で一喜一憂しない

実践的な助言としては、測定条件を揃えることに尽きます。起床後・排尿後・飲食前など、同じ条件で測る。そして日々の値ではなく、数週間の移動平均で傾向を見る。BIAの体脂肪率が1日で1〜2%動くことは普通にあります。

この研究の限界

誠実に紹介するために、この解析が抱える限界も書いておきます。

対象が過体重・肥満の成人に限られる。標準体重の人がピラティスを行った場合にどうなるかは、この解析からは言えません。もともと体脂肪率が高い人ほど下げ幅が大きく出やすいことは、運動介入研究に共通する傾向です。

運動研究では盲検化ができない。薬の試験と違い、参加者は自分がピラティスをやっているかどうかを知っています。「効きそうだ」という期待が行動(食事や他の活動)に影響する可能性を排除できません。

食事が統制されていない研究が多い。体重の変化を見るうえで、これは大きな交絡要因です。

「ピラティス」の内容が研究ごとに異なる。マットかマシンか、何種目を何分行うか、強度はどうか。同じ名前でも中身は同一ではありません。

追跡期間が短い。多くの研究は数週間から数か月です。1年後、2年後に差が保たれているかは、この解析からはわかりません。

これらは「だからこの研究は信用できない」という話ではなく、結果を一般化するときに考慮すべき条件です。研究は常に特定の条件下での観察であり、条件が変われば結果も変わりえます。

体重以外に何が変わりうるか

減量を目的に運動を始めた人が途中で辞めてしまう典型的なパターンは、「体重が思ったより減らない」ことによる失望です。ここで視野を広げておくと、継続の助けになります。

運動が体に及ぼす影響は体重だけではありません。血圧、血糖の調節、脂質の値、睡眠、気分、日常動作のしやすさ——これらは体重が変わらなくても改善しうる指標です。実際、体重がほとんど変わらなくても健康指標が改善するという現象は運動生理学でよく知られています。

ピラティスについても、体組成以外の側面を調べた研究があります。睡眠の質を調べたメタアナリシス、高齢者のバランスを調べたメタアナリシス、メンタルヘルスへの影響を調べたメタアナリシスなどです。それぞれ効果の大きさや対象は異なりますが、「体重が落ちなければ意味がない」という前提そのものが、運動の価値を狭く捉えすぎていると言えます。

「体重は変わらないのに服が変わる」現象

よく報告される体験として、体重は変わらないのに服の着心地が変わる、というものがあります。これには複数の説明が可能です。

体脂肪が減り除脂肪量が増えれば、同じ体重でも体積は小さくなります(脂肪のほうが軽くかさばるため)。ただし今回のメタアナリシスでは除脂肪量は増えていないので、この説明は限定的です。

より現実的なのは姿勢の変化です。骨盤の傾きや胸郭の位置が変われば、同じ体型でもシルエットは変わります。ピラティスが姿勢に働きかける運動である以上、この経路のほうが説明として自然でしょう。

もっとも、これは体験の説明としては筋が通るものの、研究で定量的に検証された話ではありません。「そう説明できる」と「そう証明されている」を分ける、という本記事の姿勢はここでも同じです。

「痩せたい」人がピラティスをどう使うか

研究結果を踏まえたうえで、現実的な使い方を整理します。

1. 減量の主役は食事だと理解する

身も蓋もない結論ですが、これが最も重要です。ピラティスを週1回やっても、摂取エネルギーが変わらなければ大きな変化は期待できません。逆に、食事を整えたうえでピラティスを続ければ、除脂肪量を保ちながら体脂肪を減らすという望ましい形に近づきます。

2. 体重計の数字以外の指標を持つ

体重は水分や食事内容で日々1kg前後変動します。週単位・月単位の傾向で見ること、そして体重以外の変化——階段が楽になった、同じ服の着心地が変わった、姿勢を保ちやすくなった——にも目を向けることが、続けるうえでは重要です。

3. 有酸素運動や筋力トレーニングと組み合わせる

目的が減量なら、エネルギー消費を稼げる運動を別に加えるのが合理的です。目的が筋肥大なら、負荷を漸進させるトレーニングが必要です。ピラティスはそれらと競合するものではなく、併用できます。

4. 「部分痩せ」を目的にしない

腹部を集中的に動かしても、その部位の脂肪が優先的に減ることはありません。腹囲の結果が有意でなかったことは、この点と整合的です。

エネルギー収支という考え方を、もう少し正確に

「摂取カロリー < 消費カロリーなら痩せる」という説明は広く知られていますが、実際の体はもう少し複雑に振る舞います。ここを理解しておくと、運動への期待が現実的になります。

一日の消費エネルギーは、おおまかに次の要素で構成されます。

  • 基礎代謝:生命維持に使われる分。全体の6〜7割を占める最大の要素で、体格(とくに除脂肪量)に強く依存します
  • 食事誘発性熱産生:食べたものを消化・吸収する際に使われる分。1割程度
  • 運動による消費:意図的な運動で使う分
  • 非運動性活動熱産生(NEAT):家事、通勤、立ち座り、姿勢の維持など、運動以外の動作で使う分

ここで見落とされがちなのが最後のNEATです。運動を始めると、疲労によって無意識のうちにNEATが減ることがあります。レッスンで消費した分、その日の残りの時間で座っている時間が増える、という具合です。これが運動単独の減量効果を目減りさせる一因と考えられています。

また、体重が減ると基礎代謝も減ります。体が小さくなれば維持に必要なエネルギーも減るためです。この適応があるため、同じ食事・同じ運動を続けていても減量は次第に鈍化します。

これらは意志の弱さではなく、生理的な反応です。「頑張っているのに減らない」と自分を責める必要はありません。仕組みを知っていれば、停滞期を想定内として扱えます。

週1回で意味はあるのか

現実的な質問として、週1回のレッスンで何が期待できるかを考えます。

体組成の変化という点だけで言えば、週1回の運動が体重に与える影響は小さいと考えるのが妥当です。メタアナリシスに含まれた研究の多くは週2回以上の頻度で行われています。

ただし、週1回には別の意味があります。体の使い方を学ぶ場としての機能です。レッスンで学んだ呼吸や姿勢の取り方を日常に持ち帰れば、残りの6日間の過ごし方が少しずつ変わります。座り方が変わる、階段の上り方が変わる、荷物の持ち方が変わる——こうした変化の積み重ねは、週1回の60分よりはるかに大きな時間を占めます。

この観点で言えば、週1回のレッスンは「運動の機会」というより「学習の機会」と位置づけたほうが、効果を引き出しやすいかもしれません。

自宅で補う場合

頻度を上げたい場合、自宅で行うことも選択肢です。ただし注意点があります。ピラティスの種目は、見た目が同じでも使っている筋が違いうることが表面筋電図の研究で示唆されています。独学で形だけ真似ると、狙いと違う筋を使っている可能性があります。

現実的なのは、レッスンで確認した数種目だけを自宅で反復するやり方です。種目数を増やすより、正確に行える種目を確実に繰り返すほうが、学習としては効率的です。

年齢と体組成

体組成は加齢とともに変化します。一般に、加齢に伴って除脂肪量は減少し、体脂肪の割合は増える傾向があります。この変化は、同じ体重を維持していても静かに進行します。

今回のメタアナリシスで除脂肪量が減らなかったことは、この文脈で見ると意味が増します。減量の過程で除脂肪量を保てるかどうかは、その後の代謝や身体機能に影響するためです。ただし前述のとおり、増やす効果は示されていません。除脂肪量を積極的に増やしたい場合は、負荷を漸進させるレジスタンストレーニングが必要になります。

なお、高齢者を対象としたピラティス研究では、体組成よりもバランスや身体機能を主要な指標に置いたものが多くなります。目的が変われば、見るべき指標も変わるということです。

誇大な表現に注意する

この分野は、根拠のない数字が流通しやすい領域です。「1回のレッスンで◯kg減」「◯kcal消費」といった断定的な表現を見かけたら、その数字がどの研究に基づくのかを確認してください。多くの場合、出典は示されていません。

消費カロリーは体重、強度、持続時間、個人の効率によって大きく変わります。同じレッスンでも人によって違います。単一の数字で表せるものではありません。

まとめ

研究が示したこと(11 RCT・393名)

  • 体重 −2.40kg、BMI −1.17、体脂肪率 −4.22%(いずれも統計的に有意)
  • 腹囲 −2.65cm(p=0.22、有意差なし)
  • 除脂肪量 −0.00kg(p=1.00、変化なし)
  • 介入期間が長いほど体重・BMIの減少が明確になる傾向

そこから言えること

  • ピラティスは体組成の改善に寄与しうるが、その効果は控えめ
  • 筋肉量を増やす手段としては支持されていない
  • 減量に伴う除脂肪量の減少は起きていない(これは利点)
  • 部分痩せの手段としては支持されていない
  • 減量が主目的なら、食事の管理と、エネルギー消費の大きい運動の併用が現実的

期待を正しく設定することは、がっかりして辞めてしまうことを防ぎます。ピラティスを「痩せるための運動」として始めると期待外れになりやすく、「体の使い方を整える運動で、続ければ体組成にも良い方向の変化が出る」と捉えると、長く続けやすくなります。

出典

  1. Wang Y, Chen Z, Wu Z, Ye X, Xu X. Pilates for Overweight or Obesity: A Meta-Analysis. Frontiers in Physiology. 2021;12:643455. doi:10.3389/fphys.2021.643455

この記事は研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。減量や体組成の変化には個人差があります。持病のある方は医療機関にご相談ください。

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宮川涼 Founder
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