脂肪燃焼はランニングと自転車で違う?同じ強度で比べる有酸素運動の燃料

ランニングとロードバイクでは、同じ強度でも脂肪燃焼は違うのか。走る場合に脂肪の利用量が高かった比較試験を、強度のそろえ方、飲み物、運動後の測定とともに読む。運動中の脂肪酸化と長期の体脂肪減少を区別し、研究の数字から自分の運動を選ぶための視点を整理する。

休日の朝、走る靴を出すか、自転車の空気を入れるか。どちらも息が弾むなら、使う燃料も同じだろうか。中程度に鍛えた男性を比べた試験では、脂肪を使う速さの最大値は、ランニングの方が自転車より高かった。同じ相対的な強度でも、種目によって燃料の使い方が違う場合がある。対象は鍛えた男性であり、18〜39歳の女性に同じ差が出るかは、この試験だけでは判断できない。[7]

ただし、これだけで「体脂肪を減らすなら走る一択」とは決まらない。過体重または肥満の男性が消費エネルギーをそろえて高強度の間欠運動を行った別の比較では、運動後の脂肪利用に走行と自転車の有意な差はなかった。18〜39歳の女性の運動後にも同じ結果になるかは、男性の比較からは確定しない。いつ、何をそろえ、誰に測ったかで答えは変わる。[20]

ここで扱う脂肪燃焼は、運動中などに脂肪をエネルギーとして使う「脂肪酸化」である。研究は呼吸のガスからその速さを計算している。[7] 食べ方の問いは既存記事「有酸素運動の脂肪燃焼は食事で変わる?糖質制限と続けられる出力を研究で読む」に譲り、こちらでは走る場合とこぐ場合の比較条件を追う。

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同じ強度とは、同じ速さのことではない

ランニングマシンには速度、自転車の測定装置には出力が表示される。表示が違う時点で、単に数値をそろえることはできない。直接比較を行った試験では、最大酸素摂取量に対する割合を用いて強度を表している。最大酸素摂取量とは、運動時に取り込める酸素の最大量を示す指標であり、その何割を使うかで比較するのである。[7][12]

これが相対強度だ。同じ人でも、走るときとこぐときで上限が異なる。男性を対象にした比較試験では、最大酸素摂取量と最大心拍数はトレッドミルの方が有意に高かった。したがって、走るときの測定値をそのまま自転車の物差しにするより、種目ごとの上限に対する割合を見る必要がある。男性の測定結果なので、18〜39歳の女性の上限の差まで同じとすることはできない。[7]

実際、走行と自転車の両方の経験が同程度の選手を調べた試験では、それぞれの種目の最大酸素摂取量を基準にしている。達成された相対強度は走行が59.7±2.0%、自転車が59.2±1.9%だった。数字の近さは偶然の見た目ではなく、比べる土台をそろえた結果である。対象は両種目の経験がある選手で、18〜39歳の女性一般の負荷設定へ直接使える数字ではない。[12]

同じ相対強度という条件も、「同じ消費エネルギー」と同義ではない。前者は各種目での最大値に対する割合をそろえる考え方で、後者は運動で消費するエネルギーをそろえる考え方だ。長時間の走行と自転車の比較は前者を、高強度の間欠運動の比較は後者を採用している。どちらも比較を公平にする工夫だが、公平にした項目が違う。[12][20]

もうひとつは、絶対的な仕事量を決めて比べる方法だ。普通体重の男性27人と肥満の男性25人を調べた研究では、トレッドミルを時速7・8km、自転車を50・100Wに設定した。これは同じ速度や出力に対する体の応答を調べる設計であり、全員が同じ相対強度で運動した設計とは区別される。男性の体格群を比較した結果を18〜39歳の女性へそのまま適用することはできない。[17]

駅までの自転車と休日のランニングを思い浮かべると、この区別が役立つ。どちらも「いつものペース」というだけでは、研究の比較条件はそろわない。競技者を調べた研究でも、走行と自転車の生理的な指標の関係は一様ではなかった。対象はよく鍛えた男性トライアスリートで、18〜39歳の女性一般にも同じ関係があるかは別に確かめる必要がある。自分の感覚で似ていることと、測定上の条件が等しいことは分けて考えたい。[19]

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走る方が高かった脂肪酸化の最大値

直接の手掛かりになるのは、中程度に鍛えた男性12人による比較試験だ。参加者は自転車エルゴメーターと、ベルトが動くトレッドミルで、負荷を段階的に上げる運動を行った。各段階は3分で、運動中の呼吸ガスと心拍数を測った。ここでの数字は、一定のペースを長く続けた日の総量ではなく、段階的な測定で得られた速さである。18〜39歳の女性が日常の運動で得る値を予測するには、対象と課題の違いがある。[7]

脂肪酸化の最大値は、ランニングで0.65±0.05g/分、自転車で0.47±0.05g/分だった。走行の方が有意に高く、最大酸素摂取量の55〜80%の範囲でも、トレッドミルの方が脂肪酸化速度は有意に高かった。条件をそろえても種目差が残る、というのがこの試験の大切な結果である。[7]

一方、脂肪を最も速く使った強度には有意な差がなかった。自転車では最大酸素摂取量の62.1±3.1%、トレッドミルでは59.2±2.8%だった。脂肪を使う速さの最大値が違うことと、その最大値に達する強度が違うことは、別の問いなのである。[7]

この最大となる強度を、脂肪酸化が最大になる強度、いわゆるファットマックスと呼ぶ。運動と食事に関するレビューでも、脂肪酸化速度は低い強度から中程度に向かって上がり、高強度になると下がると整理されている。脂肪酸化速度には、中程度で高まり、高強度で下がる傾向がある。[13]

この試験の数字に付く「±」も読み飛ばしたくない。論文が報告する値にはばらつきが併記されており、走行にも自転車にも幅がある。ここに示した数値を、すべての参加者が同じように達成した速さとして受け取らないことだ。また、群として有意な差があることから、自分にも必ず同じ差が出るとは決められない。[7]

ただし、最大値を自分の予定時間に掛けて「今日はこれだけ体脂肪が減る」と計算するのは飛躍だ。この試験で得たのは、負荷を変えたときの脂肪酸化速度の最大値であり、日々の生活の中で体脂肪がどれだけ減ったかを測る数字ではない。単位がgでも、読んでいる対象は運動中の燃料利用である。[7]

走る方が高かったという結果は、そのまま受け取ってよい。ただし、対象は鍛えた男性であり、運動を始めたばかりの女性全員に同じ値を当てはめることはできない。レビューでは、最大値を得る相対強度も、鍛えた人と一般の人では異なる範囲で報告されている。[7][13]

長く動く試験では、飲み物までそろえて読む

段階的に負荷を上げる試験とは別に、中程度の運動を長く続けた比較もある。走行と自転車の経験が同程度の選手8人が、それぞれの最大酸素摂取量の約60%で120分運動した。水を飲む条件と糖質入り飲料を飲む条件を組み合わせ、順序を無作為にして比較した試験である。競技経験のある選手の結果なので、18〜39歳の女性一般に同じ差が出るかは別の検証が必要だ。[12]

この研究でも、脂肪酸化速度はランニングの方が高い方向だった。ただし、差が統計的に有意だったのは水の条件で、糖質入り飲料の条件では有意には至らなかった。後者を「自転車と完全に同じ」と言い換えることも、反対に「必ず走る方が高い」と押し切ることもできない。[12]

糖質入り飲料から取り込んだ糖質を使う速さにも注目したい。運動の最後の1時間の平均は、ランニングで1.14±0.10g/分、自転車で1.11±0.11g/分で、有意な差はなかった。脂肪の利用に差が出る場面があっても、飲んだ糖質の利用速度には有意な種目差がなかったのである。[12]

糖質入り飲料の条件で差が有意に至らなかったことは、条件の影響を読む大事な手掛かりだ。ここで分かるのは飲料条件ごとの比較結果であり、糖質によって種目差が消える機序までは確定しない。この試験で確認された比較結果と、差が生じた理由の説明は分ける必要がある。数字が曖昧なのではなく、数字から答えられる問いの範囲が決まっているのである。[12]

つまり、体の燃料利用を「ランニングの勝ち」とひとまとめにはできない。脂肪を見ているのか、飲料から入った糖質を見ているのかで比較の答えが分かれる。同じ参加者が同じような相対強度で運動しても、燃料ごとに結果を読み分ける必要がある。[12]

日常の運動記録に置き換えるなら、朝に水だけでこいだ日と、食後に走った日を比べて、差のすべてを種目に帰さないことだ。これは食事を抜く提案ではない。運動前後の条件も記録しておけば、自分の比較に何が混ざっているかを考えやすい。糖質の摂取も脂肪酸化に関わるというレビューの整理が、その理由になる。[13]

ロードバイクという検索語にも注意がいる。ここで使われたのは、条件を管理した自転車運動である。[7][12] 通勤路や坂道で得た感想に当てはめるときは、実験でそろえた強度と時間をいったん確認したい。研究室の自転車に信号待ちはない。

数字で読む走行と自転車の比較

男性12人の段階的な比較試験では、各負荷段階は3分だった。[7]

脂肪酸化の最大値は、走行0.65±0.05g/分、自転車0.47±0.05g/分だった。[7]

長時間の比較試験は、両種目の経験が同程度の選手8人による120分の運動だった。[12]

肥満を対象とした系統的レビューは64報を採用し、脂肪酸化の最大値を0.27〜0.33g/分と報告した。[3]

過体重または肥満の男性12人では、運動後2時間の脂肪酸化に種目による差はなかった。[20]

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