30代のメガネは知的な印象につながるのか。眼鏡あり・なしの写真や動画を比べた研究では、知性の評価が逆向きに動く例もある。見る人の評価、画像を採点する人工知能、実際の能力を分け、男性・女性の仕事用写真や日常の眼鏡選びに、研究の数字をどう受け止めるかを考える。
撮影を終えた会社のプロフィール写真に、眼鏡を外した顔と、いつもの眼鏡をかけた顔が並んでいる。外すと頼りなく見える気がする。かけると少し堅い気もする。どちらを仕事用にするか、画面の前で迷う。
眼鏡で知的に見えるという結果はある。しかし、写真を比べる別の研究では、眼鏡をかけない方が知性の評価も高かった。「眼鏡なら知的」という一方向の決まりにはならない。[1][17] ここでは、30代の男性・女性が写真を選ぶ場面を入口に、研究で比べたものをほどいていく。
そして、知的に見えることと、知能検査の成績が高いことは別の問いである。動画を見た人の採点と、近視の人の検査成績を調べた調査は、同じ「知性」の話に見えても測定しているものが違う。[14][17] フレームには履歴書も試験結果も入っていない。

動画では知的に見えたが、全員ではなかった
眼鏡と知性の印象を直接比べたものに、学生の男女を眼鏡あり・なしで撮影した動画研究がある。評価者は、映った対象者のうち8人中7人を、眼鏡をかけたときの方が知的だと評価した。[17] よく聞く眼鏡のイメージと方向が合う結果だ。
ただし、この7人という数字は、眼鏡を支持した評価者の人数ではない。撮られた側の人を数えている。[17] 「多くの人が眼鏡姿を好んだ」と言い換えると、誰が何人いたのかが入れ替わる。研究の数字を読むときは、採点する人と採点される人を別々に思い浮かべたい。
この実験の撮影対象は男女の学生であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、この結果だけでは判断できない。[17] 扱うのは、眼鏡の着脱に伴って、同じ学生への知性の判断がどう違うかである。眼鏡をかけて勉強した結果、能力が伸びたかを追った研究ではない。[17] 仕事用の写真に置き換えるなら、「知っている内容」ではなく「知らない相手にどう見えるか」に近い問いになる。
もう少し丁寧に読むと、全員が同じ方向に評価されたわけでもない。[17] 対象者が限られた実験の結果を、顔や眼鏡を問わない法則へ広げることはできない。自分の眼鏡姿がそのまま同じ評価になるという保証にはしない方がよい。
さらに、この動画研究は1975年の報告である。[17] 昔の研究だから間違いと切り捨てる必要はないが、現在の日本で働く30代の男女に、そのまま同じ反応が起きると決めるのも飛躍になる。研究が示した比較を尊重しつつ、読者自身の写真選びとは距離を残しておく。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
写真の研究では、眼鏡なしの評価が高かった
逆方向の結果を示したのが、ヨルダンの大学生を対象にした横断研究である。横断研究とは、ある時点の状態や評価を比べる調査をいう。18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、ヨルダンの大学生という評価者の範囲を踏まえて考える必要がある。[1] この研究では517人が、4人それぞれの眼鏡あり・なし、計8枚の写真を見て、魅力、自信、知性を10点の尺度で採点した。[1]
同じ人物の写真を比べた結果、眼鏡なしの写真は、これらの評価項目すべてで有意に高く採点された。[1] 有意とは統計上の差が認められたという意味であり、読者自身にも目に見えて大きな差が出る、という意味ではない。この結果から差の具体的な点数を補って語ることは避けたい。
眼鏡をかけていない評価者は、眼鏡なしの写真の大部分について、魅力の点数を有意に高くつけてもいた。[1] 撮影された側の装いだけでなく、採点する側の眼鏡使用も調べられているのが興味深い。ただし、この結果を「眼鏡を使わない人は眼鏡姿を嫌う」と、人格や好み全体の説明にするのは強すぎる。
著者たちは、この研究のアラブ系のヨルダンの大学生では、眼鏡が魅力、自信、知性に関する人物像に不利に働く可能性があると結論づけている。[1] 知性が上がる結果だけを拾って眼鏡を勧めるのも、逆にこの写真調査だけを見て外すよう勧めるのも、どちらも結果の選び取りになる。
ここで重要なのは、517人が評価したからといって、517人の顔を調べたことにはならない点だ。写真の人物は4人である。[1] 評価者の多さは、写真に登場する顔の種類の多さと同じではない。アンケートの人数が大きく見えるときほど、画面に映る側の人数も確かめると読み違えにくい。

食い違いの理由を、写真と動画だけに決めない
動画では知的と判断された対象者が多く、ヨルダンの写真調査では眼鏡なしの知性評価が高かった。[1][17] この並びを見ると、「動けば眼鏡が有利、静止画なら不利」と考えたくなる。だが、そこまでの結論は出せない。
違う研究どうしでは、媒体だけでなく、撮影された人、評価者、実施された時代も異なる。[1][17] 写真と動画のどちらか一方だけを変えた実験としては扱えないからだ。食い違いを説明する仮説と、実験で確かめた理由は分ける必要がある。
同じことは文化にも当てはまる。ヨルダンの研究が対象を明確にしているのは、その集団の結果を読むために大切である。[1] しかし、それだけで「国が違うから結果が逆になった」と確定はできない。原因を文化だと言い切るには、それを切り分ける比較が必要になる。
読者にとっての使い道は、万能の眼鏡を探すことより、他人の実験結果を自分の顔の判決にしないことにある。たとえば社内紹介、仕事の応募、友人に送る近況写真では、選びたい写真の目的が違う。これは写真を選ぶための整理であって、それぞれの場面で眼鏡の効果が検証されたという話ではない。
信頼の話も、知性の評価へ混ぜないでおきたい。隣の記事「30代女性の笑顔は写真でも信頼を生む?目元と任せる場面で変わる第一印象を読む」には笑顔と信頼の問いを譲り、ここでは眼鏡の有無と知性・魅力の採点に絞る。任せられそうな人と、知識がありそうな人は、写真を選ぶ側の言葉としても区別できる。
人工知能の魅力点は、周囲の人の好みではない
人に聞く代わりに、人工知能に顔写真を採点させた研究もある。平均年齢24.5歳の女性40人を、眼鏡やイヤリング、口紅の有無、歯並びの条件を変えて撮影し、計960枚の写真を解析した研究だ。[2] 人工知能は、専用のデータで学習した画像解析の仕組みを用い、魅力の点数と推定年齢を出した。[2]
歯並びを不揃いに見せた顔では、眼鏡着用によって魅力の評価が17.8%低くなったと報告されている。[2] 数字の主語は、この条件の画像に対する人工知能の評価である。人間の好感度が同じ割合で下がったわけでも、女性本人の魅力がその分失われたわけでもない。
この研究では、歯並びや検討した装いの変更が推定年齢に及ぼす影響は、いずれも1.5歳未満で、実質的な影響はないとされた。[2] 魅力の採点が動くことと、年齢が違って見えることさえ同じではない。眼鏡を外す話が、いつの間にか若く見せる話になっていたら、測った項目へ戻る合図になる。
また、眼鏡をかけた画像では、推定年齢が高くなるにつれて魅力の評価も高くなる関係があり、著者たちは眼鏡の不利な効果が年齢とともに消えると結論づけた。[2] ただし、これは同じ女性が年を重ねる様子を追跡した結論ではない。30代になったら眼鏡が有利に転じる、と年齢の境目を作ることはできない。
この画像研究を日常へ持ち帰るときは、写真の条件をそろえた点にも目を向けられる。対象者は標準化した姿勢で笑顔を撮影され、歯並びは個人ごとに作った模型で不揃いに見せる条件が用意された。[2] 街で見かけた眼鏡の人と、別の場所で会った眼鏡なしの人を比べるのとは、比較の作り方が異なる。研究の数字は、こうした撮影と解析の組み合わせに属する。
また、960枚という画像の多さを、そのまま960人分の顔の多様さとして受け取らないようにしたい。同じ女性を条件を変えて撮った画像が含まれ、参加した女性は40人だった。[2] 写真が多いこと、人物が多いこと、評価する人が多いこと。この区別は、顔の研究を読むための道具になる。インターネットで数字だけが切り取られていても、まず人数と画像数を見直すことはできる。
数字で読む眼鏡と印象の比較
8人中7人:動画で、眼鏡姿の方が知的と評価された撮影対象者を数えた数字だ。[17]
517人と4人:ヨルダンの写真調査の評価者数と、写真に写った人数である。[1]
10点尺度:写真の魅力、自信、知性をそれぞれ採点するのに使われた。[1]
40人と960枚:女性の装いなどを変え、人工知能が解析した研究の対象者数と画像数を示す。[2]
17.8%低下:不揃いな歯並びの画像で、眼鏡着用に伴って変化した人工知能の魅力評価である。[2]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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