久々の運動で頭痛がするのはなぜか。運動の最中か直後に起き、最長48時間続く一次性運動時頭痛の総説と疫学を読む。1,838人の調査では生涯で12.3%、仕組みはまだ分かっていない。初めての頭痛や典型的でない頭痛でほかの原因を調べる目安と、心臓が原因の例を、総説の書く範囲で分ける。
日曜の夕方、3年ぶりに多摩川の土手を走った。息が上がり、最後の1kmで少し無理をした。シャワーを浴びるころ、頭の両側がずきずきと脈を打ち始める。運動不足の体が悲鳴を上げたのか、それとも何か別のことが起きているのか。
運動の最中か直後に起き、ほかの病気によらない頭痛には「一次性運動時頭痛」という名前があり、最長で48時間続く頭痛と定義されている[7]。総説は、ほかの原因を除く必要はあるとしたうえで、運動で起きる頭痛の多くは良性で、はっきりした原因がなく、自然に治まるものだと書く[12]。一方で、同じ総説は、初めて起きたとき、または現れ方が典型的でないときには、すべての人でほかの原因を探るべきだとしている[12]。
「なぜ」については、正直に書くしかない。この頭痛の仕組みは、まだ十分に分かっていない[2][20]。そして、この記事で読んだ研究の中に、「久しぶりの運動」や「体力が落ちていること」と頭痛の関係を調べたものはない。暑い日や寒い中の運動で頭痛が増えるかを試した研究もない。手元の研究が示すのは、この頭痛がどんな人に、どんな形で起き、どんなときに医師に診てもらうべきか、という輪郭である。

運動で起きる頭痛には、名前と定義がある
2020年の総説は、一次性運動時頭痛を、激しい運動で引き起こされ、頭の中に大きな病気がない頭痛だと説明する[8]。過去にはいくつもの呼び名を経てきた頭痛で、現れ方があいまいなため、ほかの頭痛と混同されやすく、そのせいで十分に治療されていないことがあるという[8]。
「一次性」とは、ほかの病気が原因ではない、という意味で使われている。反対に、ほかの病気が原因で起きる頭痛は「二次性」と呼ばれる。2023年の総説は、咳で起きる頭痛、運動で起きる頭痛、性行為で起きる頭痛はいずれも、一次性のことも二次性のこともあり、頭の中の構造の異常を除くための検査が欠かせないと書く[16]。
国際頭痛学会は、1994年からこの頭痛を一次性の頭痛の診断名として認めている[20]。2013年の総説は、一次性運動時頭痛を、多くない、自然に治まる、短く続く病気で、運動がきっかけになり、片頭痛と一緒にあることが多いとまとめた[20]。一般には良性の病気と考えられている[20]。
国際的な頭痛の分類では、この頭痛は「その他の一次性頭痛」という群に入っている[15]。同じ群には、力んだときに起きる咳の頭痛、長い運動で起きる運動の頭痛、性的な興奮で起きる頭痛が並び、どれも雷に打たれたように突然強くなる形で現れることがあるため、突然起きる激しい頭痛(雷鳴頭痛)も同じ群に入れられている[15]。冷たい刺激による頭痛も、体に直接加わる刺激と結びついた頭痛として、同じ群の中にある[15]。冬の朝に冷たい風の中を走って起きる頭痛がこれに当たるかは、この記事で読んだ研究からは決められない。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
どのくらいの人に起きるのか:1,838人の調査と12本の解析
数字は、数え方でかなり変わる。
まず地域の調査から見る。2002年の研究は、Vågåの谷に暮らす18〜65歳の1,838人に、一人ずつ面接して頭痛を調べた[4]。用いた基準で数えると、生涯で運動の頭痛を経験した人の割合は12.3%だった[4]。女性がわずかだが有意に多く、女性と男性の比は1.38だった[4]。発作は短いものも長いものも混ざっていて、長く激しい運動や、疲れ切った後に起きていた[4]。起き方は、咳やくしゃみで起きる型とは根本的に違っていた[4]。判定を伏せた形で記録100件を見直し、41人を診察し直しても、判定はよく一致していた[4]。
次に、研究を束ねた解析を見る。2026年の系統的レビューとメタ分析は、2,083件の記録から条件を満たした12本の論文を集め、頭痛の外来と地域の調査に分けて割合をまとめた[7]。多くの研究は偏りの危険が低かった[7]。頭痛の外来を受診した大人の中では、一次性運動時頭痛はまれで、まとめた割合は0.46%(95%信頼区間0.18〜1.20%)だった[7]。地域の調査では多く、4.92%(95%信頼区間1.84〜12.49%)だった[7]。ただし研究の間のばらつきはとても大きかった(I2は94.86と98.73)[7]。始まる年齢は、典型的には20代後半(27.47歳)だった[7]。
2018年の総説は、最近の研究の推定として、大人の1〜26%に起きるという幅を挙げている[12]。0.46%から26%まで。頭痛の外来に来る人を数えるか、地域の人に聞くか、どんな基準で数えるかで、同じ頭痛の割合がこれだけ動く。
外来ではまれで、地域では多い。私の読みでは、運動で頭痛が起きても、医療機関を訪れない人が少なくないことを示しているのかもしれない。

中学生1,963人の3割:若い世代の数字は分けて読む
もっと若い人の調査もある。2009年の研究は、台湾の2つの中学校の13〜15歳の生徒に質問紙で答えてもらい、運動の最中かすぐ後に起きる頭痛を数えた[6]。答えたのは1,963人(回答率90.7%)で、運動の頭痛があったのは30.4%(596人)だった[6]。女子に多く、年齢が上がるほど少なかった[6]。
頭痛の形は、両側が51.4%、脈打つ痛みが59.4%、1時間以内で治まるものが79%だった[6]。片頭痛のある生徒は、ない生徒より運動の頭痛が多く(47.5%と21.1%)、その頭痛は片頭痛に似た特徴が多く、生活への差し障りも大きかった[6]。
一方で、国際頭痛分類の第2版の基準(基準の一部を除く)を満たしたのは200人、10.2%にとどまった[6]。運動の最中かすぐ後に頭が痛くなった生徒の数と、診断の基準に合う生徒の数は、3倍ほど違う。著者らは、運動の頭痛は若者にかなり多く、片頭痛のある若者は運動の頭痛を起こしやすく、発作も重いと結論している[6]。
13〜15歳の生徒の、質問紙の調査である。この30.4%を、大人の割合として読むことはできない。
両側に起きることが多い:総説が描く頭痛の形
頭痛の形について、総説の書き方も見ておく。2020年の総説は、イランと日本の2つの大きな疫学研究が、女性に多いこと、片頭痛と一緒にあること、両側に起きることが多いことを、さらにはっきりさせたと書く[8]。
続く時間は、短いものから長いものまである。定義の上では最長48時間まで続く頭痛であり[7]、地域の調査でも、短い発作と長い発作が混ざっていた[4]。2013年の総説は、短く続く病気だとしている[20]。
ここで「女性に多い」という話には、食い違いがある。地域の調査を束ねると女性に多いが、頭痛の外来ではほぼ同じ頻度で診断されていた[7]。2023年の総説は、若い男性であること、ある種の薬に反応すること、診察で異常がないことが、ほかの病気によらない頭痛を示唆する手がかりになると書く[16]。2018年の総説は、性別を、ほかの原因を疑う危険な合図に含める十分な証拠はないとしている[12]。誰に多いかは、どこで数えるかで違って見える。
なぜ起きるのか、まだ分かっていない:首の静脈の弁を調べた研究
仕組みを調べた研究の一つを読む。2008年の研究は、一次性運動時頭痛の仕組みは分かっていない、という一文から始まる[2]。体を強く動かすと、息をこらえていきむような動き(バルサルバの動き)が伴いやすい[2]。この動きは胸の中の圧を高め、脳から静脈の血が戻りにくくなる[2]。首の太い静脈(内頸静脈)の弁がうまく閉じないと、いきんだときに血が逆に流れ、頭の中の圧が一時的に上がる[2]。
研究は、運動の頭痛のある20人と、対照の40人で、安静のときといきんだときの首の静脈を超音波で調べた[2]。弁が閉じきらず血が逆流していたのは、頭痛のある人で70%、対照で20%で、差は有意だった(P=0.0004)[2]。逆流は、いつも、静脈の血が主に流れる側で見られた[2]。著者らは、首の静脈の逆流による頭の中の静脈のうっ滞が、この頭痛の仕組みに関わっているかもしれず、弁の閉じにくさが危険の因子だと示唆している[2]。
20人の研究で、示されたのは「関わっているかもしれない」までである。2013年の総説も、この頭痛は割合の面でも仕組みの面でも、まだ十分に分かっていないと書いている[20]。
数字で読む運動で起きる頭痛
- 48時間: 一次性運動時頭痛の定義で、運動の最中か直後に起きた頭痛が続く長さの上限[7]。
- 12.3%: Vågåの谷の18〜65歳の1,838人で、生涯に運動の頭痛を経験した人の割合[4]。
- 0.46%と4.92%: 12本を束ねた解析で、頭痛の外来と地域の調査でまとめた割合[7]。
- 27.47歳: 同じ解析で、この頭痛が典型的に始まる年齢として示された値[7]。
- 30.4%と10.2%: 台湾の中学生1,963人で、運動の頭痛があった割合と、診断の基準を満たした割合[6]。
- 70%と20%: 首の静脈の弁が閉じきらず血が逆流していた人の割合。頭痛のある20人と対照の40人[2]。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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