体調が悪い時のサウナは効くのか。風邪の人に熱い空気を吸わせた試験では、サウナの157人でも鼻の170人でも症状の重さの全体は偽の条件と有意な差がなかった。サウナ習慣と肺炎の少なさの結びつきは中年男性の観察研究で、治療の話とは別。熱がある日は控え、医師に相談する。
金曜の夕方、のどが少しいがらっぽい。鼻の奥も重い。来週は推しのライブで、週末に寝込みたくない。サウナで汗をかけば治る、と誰かが言っていた。本当に効くのか。
風邪をひいた人に熱い空気を吸わせた試験のうち、比べる条件を置いた大きな2つでは、症状の重さは全体として軽くならなかった。ベルリンのサウナで、風邪の症状が出たばかりの157人を2つに分け、片方に熱く乾いた空気を、もう片方に室温の乾いた空気を吸わせた試験では、日を追った症状の重さの合計に有意な差がなかった[17]。鼻に41度の湿った空気を1日2時間、5日間送った170人の試験でも、症状の重さと治るまでの日数は、偽の処置と変わらなかった[7]。
一方で、サウナに週に何回も入る習慣のある中年の男性は、25年あまりの追跡で肺炎などの呼吸器の病気が少なかった、という観察研究がある[1][3]。これは元気なときの習慣と、その後の病気の結びつきを見たもので、風邪をひいた日にサウナに入れば治る、という話ではない。この記事で読んだ研究の中に、熱がある人がサウナに入って安全かを確かめたものはない。熱がある日、具合が悪い日はサウナを控え、つらいときは医師に相談する。

サウナの中でコートを着た157人、違ったのはのどに当たる空気の温度
風邪の治療としてのサウナを、いちばん正面から試したのが2010年のランダム化試験である[17]。2007年11月から2008年3月までと、2008年9月から2009年4月までの2つの期間に、ベルリンのサウナで行われた単盲検の試験だ[17]。新しく風邪をひき、症状のある157人を、介入の群80人と対照の群77人に無作為に分けた[17]。
設計が面白い。介入の群は、熱いサウナの中で、冬のコートを着て、熱く乾いた空気を吸った[17]。対照の群も、同じ熱いサウナの中で、同じく冬のコートを着て、室温の乾いた空気を吸った[17]。どちらもサウナの中にいて、違うのはのどに当たる空気の温度だけ、という比べ方である[17]。処置は3日間、その後の追跡が4日間だった[17]。
主な評価は、2日目、3日目、5日目、7日目の症状の重さを、時間を追ってまとめた面積の値だった[17]。介入の群は平均31.2、対照の群は平均35.1で、差は−3.9(95%信頼区間−9.7〜1.9)、有意ではなかった(P=0.19)[17]。数字の上では熱い空気の群が少し低い向きだが、信頼区間は0をまたいでいる。
一方で、1日目の風邪薬の使用、2日目の症状の重さ、7日目に本人がつけた治療の効き目の評価では、群の間に有意な差が見られた[17]。それでも著者らの結論は、サウナの中で熱い空気を吸っても、風邪の症状の重さ全体には有意な影響がない、というものだった[17]。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
鼻に41度の湿った空気を1日2時間、170人の試験で差は出なかった
熱で風邪に挑む理屈は、ウイルスの性質から来ている。2021年の試験の背景によれば、風邪のおよそ3分の2を起こすライノウイルスは、増え方が温度に左右され、最もよく増えるのは33〜35度の間である[7]。温かい蒸気を使う理屈について、コクランのレビューは、蒸気で詰まった鼻水が流れやすくなること、そして試験管の中でそうなるように熱が風邪のウイルスを壊すかもしれないことを挙げる[8]。
この理屈を、鼻に高い流量の温かい空気を送る方法で試したのが、ニュージーランドの単一の施設で行われた単盲検のランダム化試験だ[7]。対象は、風邪の症状が出てから48時間以内で、症状の点数が7点以上、その場の検査でインフルエンザが陰性の18〜75歳の170人(平均27.5歳)だった[7]。
処置の群85人は、湿度100%の空気を、毎分35リットル、41度で、1日2時間、5日間吸った[7]。偽の処置の群85人は、湿度100%の空気を、毎分10リットル、31度で、1日10分、5日間吸った[7]。参加者は自分がどちらの群かを知らされず、14日間、毎日の症状を日記につけた[7]。
結果は、主な評価の4日目の症状の点数で、処置の群が平均6.33、偽の群が平均5.8で、差は0.37(95%信頼区間−0.69〜1.42)、有意ではなかった(p=0.49)[7]。わずかに高かったのは、温めたほうである。症状が消えるまでの日数も、平均5.96日と6.42日で差はなかった(p=0.91)[7]。処置による重い有害な出来事はなかった[7]。
著者らは、十分な人数をそろえたこの試験は、1日2時間、5日間、41度の湿った空気を送る方法が風邪の症状の重さや長さを減らすという証拠を示さない、と結論した[7]。そのうえで、インフルエンザの治療としては調べる価値がある、とも書いている[7]。この試験は、インフルエンザの検査が陰性の人だけを対象にしていた[7]。

30人の試験の大きな差は、偽の処置を置いた170人の試験で消えた
同じ方法には、先に小さな試験があった。2018年の試験は、ニュージーランドの研究施設で、風邪の症状が出てから48時間以内の大人30人を、2対1の割合で、温めた湿った空気の群と、少量のビタミンCを飲む対照の群に分けた[9]。温めた群の条件は、毎分35リットル、湿度100%、41度の空気を鼻から1日2時間、最大5日間だった[9]。参加者も研究者も処置を知っている、非盲検の試験である[9]。
この試験の目的は、本番の試験が実行できるかを確かめることだった[9]。候補者79人のうち30人(38%)が割り付けられ、処置はよく受け入れられ、全員が最後まで続けた[9]。症状の点数の下がり方は、2日目から6日目まで温めた群のほうが大きく、差が最も大きかった4日目には−6.4(95%信頼区間−9.4〜−3.3)だった[9]。臨床的に大きな利点とみなす目安は5点の変化で、それを超える差である[9]。著者らの結論は、ビタミンCと比べる試験は実行できる、というところまでだった[9]。
3年後、偽の処置を置き、参加者に群を知らせない170人の試験では、この差は見えなくなった[7]。比べる相手が、少量のビタミンCから、弱く短く当てる偽の空気に変わり、人数は6倍近くに増えた。差が消えた理由を一つに決める材料は、ここにはない。ただ、本人が処置を知っている小さな試験の差を、そのまま効き目と読まないほうがよい、と私は読む。
同じレビューが、版を重ねて慎重になった
温かく湿った空気を吸う方法の試験は、コクランのレビューが何度もまとめ直している。その結論の移り方は、それ自体が読み物になる。
2004年の版は、6つの試験、319人をまとめ、温かい蒸気の吸入は症状を楽にするという点で支持される、と書いた(オッズ比0.31、95%信頼区間0.16〜0.60)[12]。ただし症状の点数の指標の結果ははっきりせず、ウイルスが減った証拠もなかった[12]。熱の負担による軽い副作用は、すべての研究で報告されていた[12]。北アメリカの研究は客観的な改善を示せず、多施設の二重盲検の試験が勧められた[12]。
2013年の版は、6つの試験、394人をまとめた[10]。データを束ねられた3つの試験は症状を楽にする利点を示したが(オッズ比0.31、95%信頼区間0.16〜0.60)、症状の指標の結果ははっきりしなかった[10]。結論は、蒸気の吸入は一貫した利点を示しておらず、もっと二重盲検のランダム化試験が行われるまで、風邪の症状のふだんの治療には勧められない、に変わった[10]。
2017年の版は、5つの論文の6つの試験、合わせて387人で、新しい研究は加えていない[8]。それでも人数は394人から387人になっている。症状を楽にする効果は、固定効果の計算ではオッズ比0.30(95%信頼区間0.16〜0.56、2試験149人)と出たが、変量効果の計算ではオッズ比0.22(95%信頼区間0.03〜1.95)で有意な差がなかった[8]。どちらの計算にも理屈がある、とレビューは書く[8]。1つの研究が調べた鼻の洗浄液のウイルスの量に、処置と偽薬の差はなかった(オッズ比0.47、95%信頼区間0.04〜5.19)[8]。証拠の質は低いと評価され、結論は、いまの証拠は、装置で鼻に送る温かく湿った空気を風邪の治療に使うことの利点も害も示していない、だった[8]。
偽の装置の群のほうがよくなった日もある
この分野で、向きがはっきり逆に出た試験もある。1990年の二重盲検のランダム化試験は、風邪の人に、登録の日に20分の処置を、60〜90分あけて2回行った[18]。処置の装置は毎分40リットルの、40〜42度の湿りきった空気を送り、見た目が同じ偽の装置は毎分2リットルの、20〜24度の部屋の空気を送った[18]。偽の群は34人、処置の群は32人だった[18]。
鼻づまり、鼻水、くしゃみの本人の点数は、処置の期間のいくつかの日に、偽の群で有意によくなっていた(3日目に40%対25%、6日目に71%対60%、7日目に100%対67%。前が偽の群)[18]。鼻の通りにくさを測った値の改善も、7日目は偽の群のほうがよかった(11%対−6%)[18]。著者らは、蒸気の吸入に風邪の症状への利点は見られなかったと結論した[18]。
数字で読む風邪と熱い空気
- 157人: ベルリンのサウナで、熱い空気と室温の空気を吸い比べた風邪の人。症状の合計の差は−3.9(95%信頼区間−9.7〜1.9)で有意でない[17]。
- 41度・1日2時間・5日間: 170人の試験で鼻に送った湿った空気の条件。4日目の症状の点数は6.33で、偽の処置の5.8と差がなかった[7]。
- 33〜35度: 風邪のおよそ3分の2を起こすライノウイルスが、最もよく増える温度の範囲[7]。
- −6.4: 30人の非盲検の小さな試験で、4日目の症状の点数の差。臨床的に大きな利点の目安は5点[9]。
- 0.30と0.22: 2017年のレビューで、症状が楽になることを固定効果と変量効果で計算したオッズ比。後者の95%信頼区間は0.03〜1.95[8]。
- 100%対67%: 1990年の二重盲検の試験で、7日目に主観の症状がよくなっていた数字。高いほうが偽の装置の群[18]。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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