ランニング後の免疫力は唾液の濃さか、一分間に出る量かで結論が割れる

夜のランニングのあと、口が粘ると免疫が落ちたとメモしやすい。5,000mでは唾液の濃さが上がり一分間の量は動かず、マラソンでは出てくる量が減って中の成分は濃くなり、50kmでは流れが同じなのに唾液IgAの毎分は下がった。残す欄を分けると、同じ夜の読みが変わる。

立川駅北口の改札を抜けたとき、舌が上あごに貼りついた。夜の10キロのあと、水は一口だけ。スマホのメモには、免疫が落ちた、と打つ指がもう動いている。

その粘りは、一分間に口へ出てきた量ではない。5,000mの競技を終えた18人、男女9人ずつでは、唾液の免疫成分の濃さは直後に上がり、一分間あたりの分泌速度は男女とも、有意には動いていなかった。[20]

口が粘る夜と、免疫が落ちた夜は、同じ夜とは限らない。

既存記事「ランニングの背中の筋トレは腕振りに移る?引ける重さと走る燃費を分ける確認法」には、引ける重さと走る燃費を譲る。ヨガで唾液の抗体の濃さと分泌の速さを分ける話は「ヨガの免疫効果は唾液の抗体濃度で分かる?分泌の速さと総量を読み分ける」に譲る。有酸素の直後と休息後で、いつ値が動くかの話は「有酸素運動で免疫力はいつ変わる?直後の唾液と休息後の変化を読み解く」に譲る。ここで分けるのは、ランニングのあとに残す欄が、唾液の濃さか、一分間に出る量かである。

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口の粘りは、一分間に出た量ではない

唾液IgAは、唾液に含まれる抗体で、口や喉の粘膜の表面にいる。濃さは、採れた液の中にどれだけ入っているかである。分泌速度は、一分間にどれだけ出てきたかで、精英のカヤック選手の記録ではマイクログラム毎分として計算されている。[7]

この二つは、同じ夜に逆を向く。濃さが上がっても、毎分の量は動かない夜がある。流れが減ると、中の成分は濃く見える。流れが変わらなくても、IgAの濃さと毎分の両方が下がる。どの論文を開くかで、粘りの意味が入れ替わる。[20][8][4]

中央線の夜に残せるのは、喉の感触を免疫の合否へ変える一文ではない。残せるのは、どちらの欄を見たかの一行である。濃さだけを見て「たくさん出た」と書くと、出てくる量そのものが減っていた夜を取りこぼす。毎分だけを見て「落ちた」と書くと、濃さが上がっていた夜を別の事件にしてしまう。

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5,000mの直後、濃さは上がり毎分は動かなかった

持久系のランナー18人、男性9人、女性9人が、競技の5,000mを走った。唾液は10分前と10分後である。総たんぱく質、唾液IgA、ラクトフェリン、コルチゾールの濃度と、α-アミラーゼの活性は、直後に有意に上がった。同じ成分の分泌速度は、男女とも有意には変わらなかった。[20]

試験管は濃くなり、毎分の列は座ったままである。口の粘りを「免疫が働いた」と読むのも、「免疫が枯れた」と読むのも、この競技の直後には、どちらの文も分泌速度の列からは出てこない。[20]

安静時の唾液IgAとα-アミラーゼ活性は、女性の方が男性より有意に高かった。その差はレース後も残った。女性の方が高い、は出発前からの差であり、5,000mが女性の免疫を特別に上げた証拠ではない。差が残ったことは、走ったあとも男女を一枚の基準へ潰さない、という注意になる。[20]

テストステロンの分泌速度は、男性だけで有意に下がり、女性では下がらなかった。テストステロンとコルチゾールの比は、男女ともレース後の方が有意に低かった。この比は成績の指標として使われてきた、と著者らは書き、走力との相関はさらに調べる必要がある、と留めている。比の低下を、唾液IgAの毎分が落ちたこととして書き写さない。[20]

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マラソンで濃くなるのは、出てくる量が減ったあとである

ストックホルムマラソンに出た20人は、女性3人、男性17人、24〜62歳で、よく訓練されているが精英ではない。20kmで2人がレースを止めた。唾液は直前、直後、1時間後の3回。パラフィンで刺激した全唾液、安静で刺激しない全唾液、クエン酸で刺激した耳下腺唾液の、3種類すべてで分泌速度は下がった。安静のままの全唾液を直後に出せたのは、18人中14人だけだった。[8]

出てくる量が減ったあとで、中は濃くなる。塩化物、リン酸、カリウム、アミラーゼ、ヘキソサミン、シアル酸、唾液ペルオキシダーゼの濃度は、レース後の方がレース前より有意に高かった。pHと緩衝能に有意な変化はなく、総たんぱく質はどの種類でも増えた。1時間休むと、多くの値は元へ戻った。ナトリウム、カルシウム、リン酸、唾液ペルオキシダーゼ、アミラーゼ、唾液IgAは、1時間後もまだ高かった。[8]

粘る感じの正体は、ここまでは「免疫のボーナス」ではない。蛇口が細くなり、残った液の中身が濃く見えている。その濃さの一部である唾液IgAが、1時間たっても高い。いっぽう流れは、直後にはすでに落ちている。濃い、と毎分が減った、を一つの文に溶かすと、マラソンの直後は読めなくなる。[8]

18人中14人しか安静の唾液を出せなかった、という事実のずれは小さいように見えて、メモの書き方を変える。出せなかった4人の粘りは、試料が濃かったことの証明にならない。試料が無い夜を、濃かった夜と同じ欄に入れない。[8]

流れが変わらない50kmでも、IgAの毎分は下がる

50kmのウルトラマラソンを完走した14人、女性6人、男性8人のタイムは7.81±1.2時間だった。唾液は開始前、直後、1.5時間後である。唾液の流れ自体は、時点のあいだで変わらなかった。それなのにIgAの濃度、分泌速度、浸透圧で割ったIgAは、1.5時間後の方が開始前より低かった。[4]

流れが同じなのに毎分が減るなら、減ったのは乾きの見た目だけではない。5,000mで見た「濃くなって毎分は動かない」とも、マラソンで見た「流れが減って中が濃くなる」とも、別の並びである。距離が長いほど粘る、という一本の定規は、この3本を並べた時点で折れる。[20][8][4]

ラクトフェリンの濃度は、1.5時間後の方が終了直後より高かった。コルチゾールは直後の方が1.5時間後より高く、開始前からの有意な変化は報告されていない。唾液の浸透圧は直後に上がった。著者らは、この強度ではリゾチームとラクトフェリンの分泌速度は変わりにくく、IgAの方が変化を拾いやすいかもしれない、と書いている。IgAが動いたことを、口の中の抗菌たんぱく全体が同じ方向へ動いたこととしては読まない。[4]

著者らは、長く走ったあとの病気の見通しに関わるかもしれない、と書いている。[4]

数字で読むランニング後の唾液

上がった濃さと、動かなかった毎分。持久系ランナー18人、男女各9人の競技5,000mでは、唾液IgAなどの濃度は直後に有意に上がり、分泌速度は男女とも有意には変わらなかった。安静時の唾液IgAは女性の方が高く、その差はレース後も残った。[20]

18人中14人。ストックホルムマラソンで、安静の全唾液を直後に出せた人数である。3種類の唾液すべてで分泌速度は下がり、多くの成分の濃度は上がった。唾液IgAは1時間後も高かった。[8]

流れは変わらず、IgAの毎分は下がった。50kmを7.81±1.2時間で完走した14人、女性6人、男性8人では、唾液の流れは時点間で差がなく、IgAの濃度と分泌速度と浸透圧比は1.5時間後に開始前より低かった。[4]

50〜65%。男性12人が自転車で60秒の超最大を5本踏んだあと、唾液IgA、IgM、IgGの流出速度が下がった幅である。8週間、週3回の同じ練習のあとでも、測った免疫の指標に訓練の効果はなかった。[6]

翌朝も戻らない分泌速度と、変わらなかった症状の回数。ウルトラのランナー、男性13人、女性4人では、唾液IgAの分泌速度は直後に低く、翌朝も平常へ戻らなかった。上気道症状の発生は、大会前2週間と後2週間で同じだった。[3]

30日と72日。精英の男性長距離ランナー20人の冬4か月で、乳酸菌を飲んだ期間の呼吸器症状の日数と、偽薬の期間の日数である。唾液IgAの変化に、二つの期間の有意差はなかった。[12]

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宮川涼 Founder

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