ヨーグルト味のプロテインが昨日より酸っぱく感じても、酸が増えたとは限らない。甘さへの順応と、直前の飲み物を基準にする対比を分け、ヨーグルトや味覚実験から確かめる。温度や口の動きによる違いも踏まえ、最初の口と飲み終わりを比べる際の記録と、研究を日常へ移す限界を考える。
シェーカーの最初のひと口は甘かったのに、飲み終わる頃には酸味が残る。いつものヨーグルト味のプロテインで、粉も水も変えていない。同じカップの中で何が変わったのか、まずは甘さと酸っぱさを別々に振り返ってみたい。
味は、口に入った成分だけで毎回同じ強さに決まるものではない。甘いヨーグルトを食べる実験では、時間とともに甘さが弱まった一方、酸っぱさの強さは変わらなかった。また、味の評価には先に経験した味との対比も関わる。[1][18] ただし、これで「甘い飲料の後ならヨーグルト味のプロテインが必ず酸っぱくなる」とまでは言えない。食品、味の種類、試し方を分けて読む必要がある。
既存の「ダイエットのプロテインは同じ粉でも苦さが違う?味覚の個人差と遺伝を読む」には、人による感じ方の違いを譲る。こちらで扱うのは同じ人の中の変化だ。誰の舌かではなく、その舌が直前に何を経験し、同じ飲み物のどの時点を評価しているかを問いにする。既存の「ソイプロテインの味は酸っぱい飲み物の後だと甘い?順番と好みを分けて読む」に順番と好みの問いを譲り、ここでは甘さと酸味が飲む途中で同じように変わるかを中心に据える。
既存の「プロテインを朝食の途中で飲むと遅い?パンより先に飲む実験との違いを確かめる」は食事順序と食後の反応を扱う。「ダイエットのプロテインは同じ香りに慣れる?飲み始めと終わりを比べる記録」には香りの印象と栄養効果を分ける問いを譲り、こちらは舌で感じる甘さと酸味の時間経過を読む。

甘さの低下と酸っぱさの維持を分ける
味覚順応とは、味の刺激が続くうちに感じる強さが徐々に低下することである。甘いものに飽きて別のものを選ぶ行動とは、まず区別したい。ヨーグルトの試験が測ったのは、食べる途中での甘さと酸っぱさの強度であり、買い直すかどうかではない。[1]
このランダム化比較試験では、ショ糖の濃度が3.75%と7.5%のヨーグルトを用いた。食べている間に甘さの強さは低下したが、酸っぱさの強さは低下しなかった。[1] この試験では、同じ食品の甘さと酸っぱさが異なる経過をたどった。飲み終わりに「甘さが引いて、酸味が目立つ」と表現したくなる場面を考える手掛かりになる結果だ。
ここには大事な区別がある。「酸っぱさが強くなった」と「甘さが弱くなった」は同じ測定結果ではない。このヨーグルト試験の結果を説明するときは、後者と酸っぱさが変わらなかったことを組み合わせるのが正確である。[1] 酸味の存在感が増したように感じる、という日常の表現を、そのまま酸の濃度が上がったという化学の説明に置き換えてはいけない。
たとえば、朝の最初の口を覚えておいて、支度をしながら飲み、出かける直前の味と比べる。その比較には、飲み始めからの時間と、途中で別の食品を口にしたかが一緒に入る。昨日と今日の感想だけを比べると、その違いを粉そのものの違いとして数えてしまう。日常で記録するなら「最初から酸っぱい」と「飲んでいる途中で甘さが薄れた」を別の言葉にするところから始めたい。
ここで、研究を日常へ移す限界を整理しておきたい。この試験は人が甘味を付けたヨーグルトを食べる実験である。[1] 18〜39歳の女性がヨーグルト味のプロテインを飲む際の変化を直接確かめた結果としては扱えない。 ヨーグルト味と書かれたホエイ飲料全般について、同じ幅の変化を約束する試験ではない。ここから持ち帰れるのは製品の順位ではなく、同じ飲食物の中でも味の時間経過を分けて見る視点だ。「酸っぱい」の感想を捨てる必要はないが、その感想だけで中身の変化まで決めないのである。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
直前の味との対比と、刺激への順応は違う
先に経験した味を背景として次の味が違って感じられる現象は、継時対比と呼ばれる。塩味の評価を調べた実験では、同じ味の種類が続く場合、直前が高濃度のときは、低濃度のときより次の刺激を弱く評価した。一方、別の味を繰り返した後では、今の味を強く評価する現象が扱われている。[18] 先ほどの飲み物は、次の味を測る際の背景になりうるのだ。
ただし、「違う味を飲めば、次の味は何でも強くなる」という単純な規則ではない。この実験では、対比の大きさは先行する刺激の種類や強度、評価する刺激の種類によって変わった。先行刺激と次の刺激の「似ていなさ」の評点だけでは、その大きさを説明できなかった。[18] 見た目がまったく違う飲料同士なら変化も大きい、と決める読み方はできない。
甘さへの慣れと対比を区別するうえで役立つのが、ショ糖を繰り返し味わった後に、食塩とショ糖を混ぜた液の塩味を評価した実験である。口に含んで吐き出す方法では、塩味が強く評価された分は継時対比で説明できた。甘さへの慣れによって塩味の抑制が解除された、という説明は支持されなかった。[6]
これは塩味についての結果であり、ヨーグルト飲料の酸味の結果に読み替えることはできない。[6] それでも、「先ほど甘いものを口にした」「次の別の味が目立った」という出来事だけで、舌が甘さに順応したからだと断定できないことは分かる。順応は刺激が続く間の感覚の変化、対比は先行する味との関係というように、説明の焦点が違うのである。[1][6][18]
夕方に甘い飲み物を飲んだ後と、水だけを飲んだ後で同じ粉を試すなら、比べたいのはその順番だ。ところが片方だけ氷を多くし、片方だけ濃く作れば、順番と作り方が一緒に変わる。自宅で試すときに研究のまねをして大がかりな実験をする必要はない。変えたつもりのない条件を書き留めておくほうが、「今日は味が違う」という記憶の中身を後から確かめやすい。
甘いカップから酸っぱいカップへ移った瞬間の感想と、同じカップを飲み続けた末の感想。この区別がつけば、直前の飲み物のせいなのか、飲んでいる間の変化なのかを一足飛びに決めずに済む。舌に昨日の採点表をそのまま再提出させない、という程度の慎重さでよい。
舌に載せる実験と、普段の飲み方には距離がある
ヨーグルトの研究では、甘い液を含ませたろ紙で測った順応と、ヨーグルトを食べるときの順応との相関は弱かった。[1] ろ紙の実験が間違いという意味ではない。舌の一部に刺激を与え続ける条件から、食品を口に入れて動かすときの変化を予測するには距離があるという話だ。
ショ糖溶液を口に25秒間保ち、5秒ごとに甘さを答える実験では、口を動かす条件は動かさない条件より順応が小さかった。ただし、口を動かす速さを変えても順応の程度は変わらなかった。[5] ここから「速く口を動かすほど、最後まで甘く飲める」と勧めるのは飛躍になる。動きの有無と、その動きを速くすることは別の比較だからだ。
さらに、別の実験では粘度が高い刺激ほど甘さは弱かったものの、粘度そのものは順応の速さを変えず、口の動きにも順応への影響が見られなかった。提示方法を比べると、舌に置いたショ糖入りのろ紙は、液をすする方法や舌へ流す方法より大きな順応を生じた。[20] 口の動きの結果がそろわないからこそ、飲み方の処方箋を急いで作らないことが重要になる。
食品の粘りで最初の甘さが違うことと、甘さが時間とともにどれだけ弱まるかも分けたい。[20] もったりした飲料が甘く感じにくかったとき、最初の甘さの弱さだけでは、順応の速さを判断できない。プロテインの濃さを変えて飲みやすさを探す場面では、最初の感想と途中の変化を別に記すほうが、この混同を避けられる。
実験の差を読むときは、「口を動かさない」という指示にも注意が要る。提示方法を比較した研究では、すする実験で残るようなごく小さな動きでも順応の過程を妨げうる、と解釈されている。[20] 動かしたか動かさなかったかという大きな分類だけでは、舌への刺激の続き方をすべて表せない。普段のシェーカーの飲み方を、ろ紙を舌に置く条件と同じものとして扱わない理由である。
また、ヨーグルトの研究では、唾液、味と香りの相互作用、口の動きが、食べる間の味の経過に関わると位置付けている。[1] 液の濃度だけを見て、食べる食品でも同じ速さで感覚が弱まるはずだと予測するのは難しい。食品として実際に食べる場面を調べた試験を重く見るのは、このためだ。舌へ成分を届ける方法まで含めて、味の実験の条件になる。
家庭の記録でも、机に向かって味を確かめた日と、朝の支度の合間に飲んだ日を区別しておきたい。前者は味だけに注意を向け、後者は着替えや鞄の支度を挟む。「最初と最後の味を覚えている」という感想にも、味へ向けた注意の違いが含まれる。途中で別の飲み物を挟んだなら、その時点も残しておく。これは感覚を正しく採点する訓練ではなく、自分の感想に付いていた条件を消さない工夫である。
数字で読む味の時間経過
3.75%と7.5%:ヨーグルト試験で用いたショ糖濃度。どちらも製品選びの推奨濃度ではない。[1]
25秒:口の動きを比べた実験でショ糖溶液を口に保った時間である。[5]
5秒ごと:同じ実験で甘さの評価を求めた間隔。普段の飲む速さの目標ではない。[5]
5〜12℃:温度の実験で、冷却が甘さの強度を直接低下させた温度帯である。[4]
39人と42人:甘味料の研究で比べた、低カロリー甘味料を習慣的に使う群と使わない群の人数である。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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