筋トレと有酸素運動で力が出るまでの遅れは変わる?筋電図と力の時差を読む

筋トレと有酸素運動を交互に行うと、力が出るまでの遅れも短くなるのか。筋電図から力の発生までを測る電気機械的遅延を、若い女性と男性のトレーニング研究で読む。短縮した試験と変わらなかった試験、脚の前後で違う結果を比べ、最大筋力や反応の速さ、運動スケジュールとは分けて考える。

スクワットで立ち上がる瞬間、力を入れたつもりなのに動き出しが重い。筋トレの日と歩く日を交互にしたら、もっと素早く踏み出せるのだろうか。ただ、その「つもり」と研究で測る「筋肉が活動し始めた時点」は同じ時計ではない。電気的な筋活動が始まってから力が現れるまでには、電気機械的遅延と呼ばれる時間差がある。[9]

この時間差は、筋トレで短くなる場合がある。しかし、若い女性の試験では脚を伸ばす筋群で短縮しても、曲げる筋群では有意な変化がなく、若い男性の別の試験でも短縮しなかった。測った筋群と課題によって、時間差の変化は異なる。[9][3]

有酸素運動との交互実施が、この遅れを最も短くするという予定表も、ここで扱う筋トレの試験からは決められない。既存記事「筋トレと有酸素運動で力を抜く速さも変わる?カルシウム調節と疲れを分けて読む」に脱力の話を譲り、ここでは力を出し始める側を見る。鍛えたら持てる重さは増えたのに、出発の時計は同じ、という結果も含めて読む。[3][4]

既存記事「筋肉痛の日に筋トレをしてもいい?こわばりと力の戻りを筋電図の研究で読む」は、運動後の回復と参加判断を扱う。こちらは回復したかどうかではなく、筋活動の始まりと力の始まりの間が、継続的な筋トレで変わるかを問う記事である。

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筋電図の始まりと、力の始まりは別の点である

電気機械的遅延は、筋の電気的活動の開始から力の発生までの時間である。筋電図はその電気的な活動を記録し、力の信号は実際に出力が現れた時点を示す。研究者は、この異なる信号の始まりを比べて遅れを求める。画面の波が動いたことと、力が測定されたことを同じ出来事として扱わないのが出発点だ。[9][8]

「音を聞いてから足が動くまで」と想像すると、測っている区間を広げすぎる。ここで問題にするのは筋活動の開始を起点にした区間であり、合図を理解したり、動く方向を選んだりする過程全体の成績ではない。自分が合図に乗り遅れた感覚を、そのまま電気機械的遅延の長さに置き換えることはできない。研究の物差しがどこから始まるかを先に確認したい。[9]

さらに、筋活動から力までの間を分けて調べた研究もある。男性12人が脚で押すレッグプレスを行った試験では、筋電図に加え、筋の機械的な振動を捉える筋音図と力の信号を組み合わせた。男性を対象にした試験であり、18〜39歳の女性で同じ成分の変化が起きるかは別に確かめる必要がある。筋電図から機械的な反応までの区間と、そこから力の発生までの区間を分けて評価している。[8]

その研究では、総遅延に対する前半の電気化学的な成分の寄与が42〜47%、後半の機械的な成分が53〜58%であった。力の発生までを見るには、電気的な活動に続く機械的な過程も追う必要がある。著者らは、異なる信号を併用することで、随意収縮に伴う成分ごとの変化を定量化できるとした。[8]

ただし、この割合をすべての人や種目に当てはめることもできない。対象は男性で、測ったのは太ももの外側にある外側広筋、課題は段階的に力を出す等尺性収縮であった。等尺性とは関節を動かさずに力を出す条件を指す。階段を上り切る時間や、自転車をこいでいるときの脚全体の反応を測った試験ではない。[8]

「神経の適応」という言葉を見ても、頭から足先までの伝達が丸ごと速くなった、と読み替える必要はない。どの信号間の時間が変わったのかをたどるほうが、実際の結果に近い。筋電図の波形は、身体能力の総合点ではなく、特定の課題で得られた測定値として読むものだ。[8][3]

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若い女性の脚では、前側と後ろ側で結果が違った

生活に近い対象として見ておきたいのが、筋トレ経験のない若い女性22人を対象にした対照群つきの実験である。平均年齢は21歳で、トレーニング群10人と対照群12人に無作為に分けた。トレーニング群はバーベルのバックスクワットとデッドリフトを週2回、4週間行った。[9]

測定したのは、膝を伸ばす側の外側広筋と、曲げる側の大腿二頭筋である。いずれも最大限に力を入れる随意収縮中の遅延を評価した。同じ参加者が同じ期間に下半身の運動をしていても、筋群を分けて測った点が大切だ。「脚の運動をしたから脚全体が同じように変わる」とは、最初から仮定していない。[9]

膝を伸ばす筋群の介入後の調整平均値は、トレーニング群で74.3ミリ秒、対照群で91.8ミリ秒となり、群の差は統計的に有意であった。調整平均値とは、この試験では介入前の値を考慮して比較した平均である。トレーニング群の全員が同じ時間だけ短縮した、という数字ではない。[9]

とりわけ、91.8ミリ秒から74.3ミリ秒へ自分の記録が変わる、と読まないこと。この値は異なる群の介入後の比較であり、同じ人の前後差ではない。著者らは個人の変化も評価し、トレーニング群の5人で、判定に用いた最小差を超える短縮があったと報告した。平均の話と個々人の話を分けると、結果の輪郭がはっきりする。[9]

一方、膝を曲げる筋群の調整平均値は98.0ミリ秒と90.0ミリ秒で、群の差は有意ではなかった。数値だけ見るとトレーニング群のほうが長いが、だからデッドリフトが反応を悪くしたと結論することはできない。研究の結論は、脚を伸ばす筋群では遅延が短縮し、曲げる筋群では短縮が示されなかった、である。[9]

スクワットとデッドリフトをした、という運動名だけで理解を止めないことが、この試験の読みどころだ。どの筋群で、どの収縮課題を行い、どの時点の値を比べたかまで必要になる。日記なら「下半身の日」のひと言で済むが、研究の脚は前と後ろに分かれている。[9]

この結果は、成人女性でも遅延が変わり得ることを示す一方、すべての女性、すべての筋肉、あらゆる期間で同じ変化が起きるという約束ではない。対象は未経験の若い女性であり、比較したのは特定の運動を行う条件と対照条件であった。有酸素運動を間に入れたほうが短縮するかは、この比較とは別の問いになる。[9]

短くならない試験も、筋トレの失敗ではない

男性15人を対象とした無作為化試験では、重い負荷と軽い負荷を比べている。平均年齢は21.7歳で、最大で持ち上げられる重さに対して80%の群と30%の群に分け、肘を曲げる筋トレを限界まで行った。頻度は週3回、期間は4週間であった。対象は若い男性であり、18〜39歳の女性に同じ負荷別の結果をそのまま当てはめることはできない。[3]

重い負荷の群では、力を出し始めてから200ミリ秒までのトルクの立ち上がりが改善した。トルクは関節を回す作用の強さであり、その立ち上がりは一定時間にどれだけ出力を増やせるかを表す。一方、電気機械的遅延と、刺激で引き起こした単収縮の特性には、有意なトレーニング効果がなかった。[3]

両群とも、筋活動開始後30ミリ秒の筋電図の積分値は増えた。著者らは、初期の運動単位の動員や発火頻度の増加を間接的に示す可能性があると述べている。ただし、この説明は可能性であって、筋電図が増えたから遅延も短くなった、という結果ではない。電気的な活動の大きさと、力が現れるまでの時間は分けて読む必要がある。[3]

さらに短い介入ではどうか。男性31人を無作為に分けた試験では、一定の外部抵抗を使う方法、動作速度を一定にする方法、対照条件を比べた。筋トレは3日間であり、介入前から各回の評価にかけて、遅延に有意な変化はなかった。報告された平均は4.5、4.7、4.5、4.5ミリ秒である。男性の短期介入の結果なので、18〜39歳の女性に同じ時間値や変化をそのまま当てはめることはできない。[4]

女性の試験にあった数十ミリ秒という値と、この試験の数ミリ秒を並べて、男性のほうが速いと判断してはいけない。これらは同じ条件で男女を直接比較した試験ではない。それぞれの研究の中で、何と何を比べて差があったかを読むことが先である。単位が同じことと、比較の条件がそろっていることは別だ。[4][9]

比較に使う数字には、平均値とばらつきの表し方にも違いがある。短期の男性の試験で示された4.5±0.2ミリ秒などの値は平均と標準誤差であり、女性の試験で紹介した値は調整平均値である。見慣れた数字の形にそろえてしまうと、何を比較したかが消えてしまう。単位の横に、どんな平均なのかも残しておくと読み違いを減らせる。[4][9]

数字で読む力の発生までの遅れ

22人:未経験の若い女性を、トレーニング群と対照群に分けた実験の対象数である。[9]

74.3対91.8ミリ秒:女性の膝を伸ばす筋群で示された介入後の調整平均値。個人の前後差ではない。[9]

4週間:男性の肘を曲げる筋トレでは、この期間で遅延の有意な変化はなかった。[3]

42〜47%対53〜58%:男性のレッグプレス試験で、総遅延に占めた電気化学的成分と機械的成分の寄与である。[8]

3日間:男性の短期筋トレ試験では、遅延の有意な変化が認められなかった介入期間である。[4]

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宮川涼 Founder

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