運動前のあんぱんと羊羹を、立川駅北口の売店で同じ補食とみなす前に読んでおきたい。炭水化物を50gにそろえた豆飯でも血糖の曲線は豆の種類で分かれ、白いんげん抽出物の体重は試験で食い違う。小麦の生地と粒の残りが運動前に違う点も、論文の数字で分けて整理する。
あんぱんを割ると、パンの内側にあんの層がある。羊羹を切ると、切り口まであんが続く。レッスン前の空腹にどちらを選ぶか。「どちらも豆の甘いもの」で済ませると、この違いが消えてしまう。
食品の形は違うが、運動前の消化や血糖の速さの優劣は、この研究からは決められない。2型糖尿病の成人17人(35〜70歳)に、12時間絶食のあと朝食として、利用可能な炭水化物を50gにそろえた白米と、ピント豆・黒豆・赤いんげんをそれぞれ米に合わせた食事を出した交差試験がある。食後90分、120分、150分の正味の血糖は、三種類の豆飯とも米だけより有意に低かった。一方で、増分の曲線下面積まで米より有意に低かったのはピント豆と黒豆で、赤いんげんはそこまで下がらなかった [12]。豆が入っている、という一言では山の形は決まらない。患者の朝食の結果を、18〜39歳の女性の運動前の補食にそのまま当てはめることはできない。
あんぱんは小麦の生地にあんを包んだ菓子で、羊羹はあんを寒天で固めた菓子である。粒が残るあんと、裏ごしした練りあんでは、歯が潰す仕事が違う。小麦の生地が載るかも違う。米の品種と消化の速さを扱う「運動前の白米と赤飯は同じ糖質量で比べる?米の品種と消化の速さを分ける視点」は、皿の中の米の話である。ここでは米を譲り、運動の前に手に取る豆の菓子だけを見る。

豆と書いてあっても、運動前の一口は別の食品になる
講義が延びて、中央線の満員を降りた足で北口まで歩く日ほど、棚の選択は雑になる。甘い、豆、すぐ食べられる。この三語がそろうと、あんぱんも羊羹も「運動前の補食」という一つの箱に入る。箱に入れる前に、食品としての境界を分けたほうがいい。
境界は三つある。一つ目は、豆の粒が形を残しているかどうか。二つ目は、砂糖と寒天で固めた練りあんか、小麦の生地が外側にあるか。三つ目は、食べる時刻がレッスンの前か、運動の最中か、終わったあとなのか。三つ目を混ぜると、別の記事の問いまでこの棚に落ちてくる。運動の最中に固形の糖を使う話は、ここでは扱わない。見るのは、動き始める前の一つである。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
米に豆を足しても、種類が違えば曲線下面積はそろわない
トンプソンらの無作為化交差試験は、2型糖尿病の男女17人を対象に、4種類の朝食を比べた。対照は白米の長粒種で、試験食はピント豆と米、黒豆と米、ダークレッドキドニー(赤いんげん)と米である。いずれも利用可能な炭水化物は50gにそろえ、12時間の絶食のあと朝食で食べた。毛細管血の血糖を、食べる前と、食後180分まで30分おきに測っている [12]。糖尿病のある男女の試験なので、18〜39歳の女性一般の血糖反応を直接示す結果ではない。
正味の血糖が米より有意に低かった時刻は、三つの豆飯に共通して90分、120分、150分である。増分曲線下面積が有意に低かったのはピント豆と黒豆だけで、赤いんげんでは有意な低下がつかなかった [12]。食後の一時点が下がることと、180分までの面積が下がることは、同じ豆でも一致しない。
この皿に載ったのは、米と一緒に食べたピント豆、黒豆、赤いんげんである。裏ごししたあん、寒天で固めた羊羹、小麦の皮に包んだあんぱんを、この曲線の上にそのまま乗せる材料ではない。持ち帰る事実は別にある。利用可能な炭水化物をそろえても、豆の種類で曲線下面積の結果は分かれた [12]。ただし、比べたのは豆飯同士であり、菓子同士の速さを判定する試験ではない [12]。

消化を遅らせる白いんげんは、菓子そのものではない
別の層に、白いんげんから取り出した成分がある。インゲンマメはα-アミラーゼ(でんぷんを小さく切る消化酵素)を妨げる成分を作り、炭水化物の消化と吸収を遅らせる候補として臨床研究が重ねられてきた。バレトらのレビューは、この成分を1日500mgから3000mg、1回または分割で用いた臨床研究をまとめ、体重を減らし、炭水化物による食後血糖の山を下げる働きを示した、と書いている。重い副作用の報告はなく、胃腸の不調はまれで、使い続けるうちに薄れる、ともまとめている [19]。
同じ用量の幅の中にある4週間の二重盲検試験は、もう少し地味な顔をしている。健康な成人25人に、独自に分画した白いんげん抽出物1000mgか、同じ見た目の偽薬を、食事の前に1日2回飲ませた。両群とも、食事の変更と運動と行動の介入を受けている。実薬群は開始時から体重6.0ポンド(p=0.0002)、ウエスト2.2インチ(p=0.0050)減り、偽薬群も4.7ポンド(p=0.0016)、2.1インチ(p=0.0001)減った。群と群の差は、体重でp=0.4235、ウエストでp=0.8654と、有意ではなかった [13]。健康な成人の減量プログラムの結果であり、18〜39歳の女性だけの効果としては扱えない。
著者らはその後、炭水化物の摂取量で対象を三分位に分け、いちばん多い層だけを探索的に見た。その層では実薬が偽薬より体重(8.7ポンド対1.7ポンド、p=0.0412)とウエスト(3.3インチ対1.3インチ、p=0.0100)を大きく減らした、と報告している。同時に、より長く、より人数の多い研究で確かめ直す必要がある、と自分たちで書いている [13]。
ノーランらのレビューは、この抽出物の体組成への影響を「小さいが、意味を持ちうる」と置き、減量の土台は依然として食事と運動だと書いている。食事と運動は続きにくく、エネルギーの出入りの別の項が補償して、期待より効果が出ないこともある、とも述べる [8]。レビューがまとめた「体重が減る」 [19] と、4週間試験の主解析で群間差がつかなかったこと [13] は、矛盾として両方残す。いま言えるのは、ミリグラム単位の阻害成分と、売店の甘い菓子が、同じ操作ではないということである。運動前のあんぱん一個の炭水化物を、カプセルが帳消しにする、という読みは、どちらの論文の結論からも出てこない。
そら豆のたんぱく質は、運動の直後でも合成速度を押し上げなかった
甘い菓子とは別に、「豆のたんぱく質なら筋が増える」という期待がある。デイビスらは、健康でふだんから体を動かしている若い男女16人(年齢25±5歳)を、並行群の二重盲検で8人ずつに分けた。片脚の膝伸展のレジスタンストレーニングの直後に、そら豆(Vicia faba)たんぱく質を体重1kgあたり0.33g飲む群と、必須アミノ酸を含まない対照の混合物を飲む群である。摂取の前と3時間後に、血漿、唾液、外側広筋を採っている [4]。若い女性も含むが男女を合わせた小規模試験であり、18〜39歳の女性全体の効果を示すものではない。
運動そのものは、筋原線維の合成速度(筋の収縮に関わるたんぱく質が新たに作られる割合)を上げた(p=0.012)。そら豆たんぱく質は、その上に合成を足さなかった。安静時の平均変化率は、そら豆群29%(95%信頼区間 -5〜63)、対照12%(-25〜49)で、p=0.409。運動後はそら豆群78%(33〜123)、対照58%(9〜107)で、p=0.732である [4]。信頼区間はどちらも広い。著者らの結論は、体重1kgあたり0.33gのそら豆たんぱく質は、若い健康な成人の安静時と運動後の筋原線維合成を高めるようには見えない、である [4]。足した時刻は運動のあと、負荷は片脚の膝伸展で、レッスン前の羊羹とは条件が違う。
数字で読む運動前の豆菓子
利用可能な炭水化物50gの豆飯では、食後90分・120分・150分の正味血糖が米だけより低く、増分曲線下面積まで有意に下がったのはピント豆と黒豆だった。赤いんげんは面積では有意な低下がつかない [12]。
白いんげん抽出物のレビューは、1日500〜3000mgで体重減少と食後血糖の山の低下を臨床研究が示した、とまとめている [19]。
同じ幅の中の4週試験では、1000mgを1日2回飲ませても体重の群間差はp=0.4235、ウエストはp=0.8654で有意でなかった。実薬は6.0ポンドと2.2インチ、偽薬は4.7ポンドと2.1インチ減っている [13]。炭水化物が多い三分位だけを後から見ると、体重8.7ポンド対1.7ポンド(p=0.0412)だった [13]。
片脚の膝伸展の直後にそら豆たんぱく質0.33g/kgを飲んだ8人の運動後の変化率は78%(95%信頼区間33〜123)、対照8人は58%(9〜107)、p=0.732。運動そのものはp=0.012で合成速度を上げた [4]。安静時はそら豆群29%(-5〜63)、対照12%(-25〜49)、p=0.409である [4]。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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