運動前のコーヒーは粉の細かさも記録、抽出時間と液量から一杯の違いを考える

運動前のコーヒーの量は、カップの大きさだけでは比べにくい。粉の細かさでカフェイン抽出が増えた実験と、水出しでは挽き目の差が有意でなかった実験を読み分ける。粉と水の比率、抽出時間、できあがった液量をどう記録するか、味の濃さと成分量を区別しながら考える。

運動着を用意する横で、コーヒーがいつもよりゆっくり落ちている。昨日と同じカップなのに、今日は苦く、落ちるまでに時間もかかった。変えたのはミルの目盛りだけだ。そんな朝、「同じ一杯」を飲んだことにしてよいのだろうか。

運動前のコーヒーの量を比べるなら、飲んだ液量に加え、粉の細かさと抽出条件を残したい。細かい粉でカフェインの抽出が増えた調製実験がある一方、水出しでは挽き目の違いによるカフェイン濃度の有意差がなかった実験もある。細かくすれば必ず同じ割合で増える、という答えにはならない。[5][15]

ここで扱うのは、運動能力を高める飲み方ではなく、その前提となる飲み物の比較である。「コーヒーは深煎りほどカフェインが多い?焙煎の色とクロロゲン酸の違いを読む」には焙煎の問いを譲る。「朝のコーヒーは水の硬さで味が変わる?酸味と成分の抽出を分ける一杯の比べ方」には水の成分の論点を譲る。また隣の記事が扱う抽出温度と時間そのものの比較から一歩絞り、本記事では粉を変えた日に何を同時に確かめるかを考える。

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粉の細かさは、一杯のカフェインを変えるのか

抽出とは、ここでは粉から飲み物へ成分を取り出す操作である。Barrera Lópezらの調製実験では、抽出方法、粒子の大きさ、コーヒーの種類を変え、成分と味を評価した。細かい粒子ではフェノール類とカフェインがより多く抽出され、苦味と渋味も強くなった。細かい粉の条件で報告されたカフェイン濃度は1.01 mg/mLであった。[5]

ただし、この値はその実験で作られた飲料の濃度である。自宅の一杯と比べるには、粉以外の調製条件もそろえる必要がある。同じ研究ではコーヒーの種類によっても違いがあり、スペシャルティでは0.72±0.10 mg/mL、一般流通のコーヒーでは1.13±0.14 mg/mLのカフェイン濃度が報告された。粉の目盛りだけを見て量を決めるには、条件が多い。[5]

この研究の対象は調製したコーヒーであり、測ったのは飲料の成分と感覚的な特徴である。18〜39歳の女性が飲んだ後の運動への効果や適量は、この調製実験からは判断できない。したがって「細かく挽くと抽出が変わる」という読み方と、「細かく挽いたコーヒーで運動の効果が増す」という読み方は区別する必要がある。この記事で生活に持ち帰るのは、前者を踏まえて記録をそろえるという工夫だ。[5]

たとえば家のコーヒーと職場のコーヒーを、同じマグで飲んでいる場合を考える。容器が同じでも、豆の種類や粉の状態が違うことがある。カップは飲んだ量の目安にはなるが、調製条件の代わりにはならない。昨日の飲み物を再現したいなら、カップの写真だけでなく、何をどういれたかも記録の対象になる。

粉を購入する場合も、「細挽き」という言葉だけで比較を終えないほうがよい。研究の粒子径と、袋に書かれた挽き方の名称は別の記録である。家庭で粒子径を測る必要はないが、どの粉を使ったかは残せる。測れない値を推測で埋めるより、袋の表示やミルの設定など、自分が次回も確認できる情報を選ぶほうが比較しやすい。

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エスプレッソでは、微粉が水の通り道を変える

粉の細かさには、代表的な大きさだけでなく、小さな粒がどれだけ混じるかという面がある。Smrkeらのエスプレッソ抽出実験では、微粉を100 μm未満の粒子として扱った。同じ中央値の挽き目でも、粉砕技術によって微粉の割合は異なりうる。中央値とは、粒子の大きさの分布を代表させる値であり、混じっている粒のすべてを示す値ではない。[6]

この実験では、ふるい分けた微粉を加えて割合を変えた。微粉が多くなると粉の層の透過性、つまり水の通りやすさが下がり、流量が減って抽出時間が長くなった。「細かい粉だから成分が出る」という話には、水がどう流れるかも組み込まれている。[6]

家庭で気づける変化は、ミルの数字より先に、液が落ちる様子かもしれない。同じつもりで用意したのに出てくる速さが違う。そのとき、時間の差を単なる待ち時間として捨てず、粉の状態と一緒に記録する意味がある。研究では微粉の割合を操作して流れを測っており、抽出時間は粉の状態と切り離せない観測値だった。[6]

ただし、エスプレッソで粉の層を通る水と、容器の中で粉を浸しておく水は、同じ条件ではない。この実験の結果を、家にあるすべての器具へ一律に当てはめないことも大切だ。どの器具で見た変化かを記録しておけば、抽出方法をまたいだ比較を避けられる。短く「細かいほど濃い」と覚えるより、条件の見取り図を持つほうが役に立つ。[6][15]

抽出時間だけでなく、できあがった量を見る

Schmiederらはエスプレッソを抽出しながら、液を連続する10の画分に分けて採取した。画分とは、途中で区切って集めた試料である。カフェインなどの成分と、液に溶けた成分全体を示す総溶解固形分を測り、挽き目、水の流量、温度の影響を検討した食品調製の実験だ。[8]

調べた条件のうち、カップに入る成分の質量には流量の影響が最も強かった。その影響は細かい挽き目や高い水温で目立った。一方、それらの影響全体は、最終的に抽出された飲料の質量の違いによる変化に比べると小さかった。粉を変えたときには、何秒かかったかだけでなく、どれだけの液を得たかが重要になる。[8]

たとえば抽出を同じ時間で止めても、流れ方が違えば得られる飲料の量も変わる。「毎回同じ時間だから同じ一杯」という記録には、この抜け道がある。反対に、できあがり量をそろえた場合は、かかった時間のほうに差が現れるかもしれない。何をそろえ、何が動いたかを分けて読むのが、この実験から得られる比較の視点である。[6][8]

濃度と総量も分けておきたい。mg/mLは液の単位体積あたりのカフェイン量を示す。カップ全体の量を考えるには、その濃度と実際に飲んだ液量の両方が必要になる。濃度を測っていない自宅の一杯は、液量だけからカフェイン量を確定できない。だからこそ、記録の目的は数字を作り出すことではなく、条件の違いを見失わないことになる。[5][8]

薄めた飲み物を比べる場面では、抽出した液と、あとから加えた水を同じ欄に書かないようにしたい。抽出の段階で何が変わったのか、仕上げの段階で何を変えたのかを区別するためである。持ち歩くボトルの目盛りには最終的な液量が見えるが、粉と水が接していたときの条件までは映らない。

微粉を増やした実験では、香気成分も測っている。香気成分とは、香りに関わる成分である。抽出率が上がるにつれて、カップ中の香気成分は単純な比例ではなく、曲線的に増加した。著者らは、成分を取り出す効率と抽出後の蒸発による損失の両方が、最終的な香気成分の濃度に影響するという仮説を示した。これは測定結果を説明する仮説であり、香りを使ってカフェインを量る方法ではない。[6]

この点からも、ミルの設定、抽出時間、香りをひとつの点数へまとめないほうがよい。液がゆっくり落ちたという観察と、香りを強く感じたという感想は、それぞれ残せる。そこでカフェインの量まで増えたと書き加えるには、その成分の測定が必要になる。記録の欄を分けることは、家庭で確認した事実と、まだ確認していない推測の境目を残すためでもある。[6][8]

もうひとつ、成分名を分ける意味もある。エスプレッソを連続採取した研究では、カフェインだけでなく、トリゴネリン、5-CQA、総溶解固形分が調べられた。5-CQAはクロロゲン酸の一種である。飲料に含まれる成分を別々に追った実験を、「濃いコーヒーになった」というひと言へ縮めると、何を測った研究かが見えなくなる。自宅のメモも同様で、測っている液量と、感じている味を別に書くところから始められる。[8]

数字で読む粉と抽出の関係

1.01 mg/mL:細かい粒子の条件で報告されたカフェイン濃度。調製実験の値であり、家庭の標準値ではない。[5]

100 μm未満:エスプレッソ実験で微粉として扱った粒子の大きさ。混じる割合で流れ方が変わった。[6]

10画分:抽出中の成分変化を調べるため、エスプレッソの液を分けて採った数である。[8]

6〜7時間:水出し実験でカフェインなどの濃度が平衡に達した時間。この条件では挽き目による有意差はなかった。[15]

約21%:全浸漬の実験で、広い粉と水の比率にわたり報告された抽出率。カフェインの割合ではない。[13]

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宮川涼 Founder

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