HIITと筋トレで乳酸の取り込みは変わる?作る量と運ぶたんぱく質の違いを読む

HIITと筋トレで乳酸の取り込み方は変わるのか。乳酸を運ぶMCT1・MCT4を手がかりに、人のトレーニング試験と動物実験を読み分ける。運動成績が伸びても輸送たんぱく質が増えない例、強度を上げても変化が比例しない例から、乳酸値だけで筋肥大や練習の成果を採点しない見方を考える。

短い全力走で脚が重くなったら、乳酸を運ぶ仕組みも鍛えられたのだろうか。「乳酸がたくさん出たから、筋肉にもよく効いた」と考えたくなる。ところが、男性ランナーを対象にしたトレーニング試験には、走る成績や筋力が改善しても、乳酸を運ぶたんぱく質の一種は増えなかった例がある。きつさから体の内部を一気に採点するのは難しい。18〜39歳の女性にも同じ変化が起こるかは、この男性の試験だけでは判断できない。[5]

HIITは高強度の運動を休息などと組み合わせて繰り返すトレーニングである。継続によって乳酸の輸送に関係するたんぱく質が増えることはある。ただし、種類によって反応が違い、活動的な男性の比較では、強度を上げても一様には増えなかった。18〜39歳の女性に適した強度は、この比較からは決められない。「乳酸が作られた」「運ぶ仕組みが変わった」「運動が上達した」は分けて確かめたい。[11]

既存記事「HIITの乳酸値は指を絞ったせい?採血操作と運動の変化を取り違えない確認点」には測り方の問題を譲る。ここで扱うのは、繰り返し運動した筋肉の輸送たんぱく質がどう変わるかである。乳酸を筋肥大の点数にせず、研究が測った場所と成果をたどってみる。[5][11]

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乳酸の量と、乳酸を運ぶ仕組みは別に測る

乳酸は、単なる不要物として片づけられる物質ではない。運動で生じ、細胞の代謝や情報の伝達に関わる可能性が研究されている。乳酸の働きを整理したナラティブレビューは、作用を考える際に、どのくらいの時間、どのような状況で乳酸にさらされたかが大切だとしている。運動中の一時的な上昇を、病的な状況で続く上昇と同じ意味には扱っていない。[1]

その乳酸の移動に関わるのが、モノカルボン酸輸送体、略してMCTと呼ばれるたんぱく質である。MCT1とMCT4は、乳酸輸送を考える際に登場する種類だ。レビューは免疫細胞への取り込みにもこれらの輸送体が関わることを整理している。ただし、免疫細胞の話をそのまま脚の筋肉の能力に置き換えることはできない。[1]

骨格筋から血液への乳酸の放出では、MCT4が主な経路として扱われている。MCT4を欠くマウスの実験では、高強度運動時に筋肉の内部で乳酸がより多く蓄積した。これは「乳酸が多い」と言う前に、どこで多いのかを決める必要がある例だ。筋肉の中に残る量と、筋肉の外へ移る過程は、同じ観察ではない。マウスの遺伝的な欠損を扱った結果を、18〜39歳の女性の通常の運動にそのまま当てはめることはできない。[3]

家庭で運動の感想を記す際にも、この区別は役立つ。脚が重かったことは感覚の記録として残せる。一方、そこからMCT4の量を推測するのは飛躍になる。人の試験では筋肉を採取して輸送たんぱく質を調べており、走る成績の改善とその量の変化が常にはそろわなかったからだ。感覚、成績、組織の測定を、それぞれの欄で読む姿勢が必要になる。[4][5]

また、輸送に関わるたんぱく質の量を調べることと、実際の運動中に乳酸がどれだけ移動したかを調べることも、問いが違う。人の介入試験が示したたんぱく質の増加は、輸送に関わる仕組みの適応として読むのが適切である。そこに「取り込みが何倍になった」と別の数値を付け足してはいけない。測定された指標の名前を残すだけで、期待が先走りにくくなる。[11]

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人の試験では、強度順に増えるとは限らない

活動的な男性を対象に、仕事量をそろえたHIITを比較した介入試験がある。乳酸閾値を少し上回る強度の群と、最大有酸素パワーに近い強度の群に、それぞれ8人が参加した。乳酸閾値は、この研究で運動の強度を設定する基準に使われた指標だ。期間は4週間であり、同じHIITという名前の中で強度の違いを検討している。18〜39歳の女性でも同様の反応になるかは、女性を対象に確かめる必要がある。[11]

結果は単純な強度順には並ばなかった。MCT1の量は両方の群で増えたが、MCT4の量が増えたのは、乳酸閾値を少し上回る群だけだった。輸送を助ける別のたんぱく質であるバシジンの量は、逆に高い強度の群だけで増えた。強い刺激への反応を「輸送体が全部増える」という一文で済ませると、この違いが消えてしまう。[11]

MCT4の増加に示された効果量は1.06である。これは増加率が106%という意味ではなく、研究で用いた尺度による変化の大きさを示す値だ。90%信頼限界は、効果量に対して×/÷0.77という形式で示された。小さな群を比較した結果なので、個人が同じ練習をしたときの増加量を約束する数字としては使えない。[11]

運動成績にも指標ごとの差があった。短い全力運動を繰り返す能力は両群で同じように改善したが、乳酸閾値でのパワーが改善したのは比較的低い強度の群だけだった。最大酸素摂取量には、どちらの群でも変化がなかった。息を使う運動の成果も、何を測るかで見え方が変わるのである。[11]

この試験は、強度を上げること自体が無意味だと示すものではない。仕事量をそろえた条件下で、強度差が多くのたんぱく質の適応差を生まなかったという結果だ。仕事量、対象者の運動経験、調べた期間を残して読む必要がある。「よりきつい方が必ず優れる」という採点方法を見直す材料にはなる。[11]

立川駅へ向かう前の限られた時間に、動画の最も激しい設定を選ぶか迷うこともあるだろう。この研究から個人用の強度は決められないが、きつさの順位を、そのまま体内の適応の順位にする必要もない。何を改善したいのかが走る能力なのか、筋力なのかで、確かめる成果を先に選ぶ方が研究の読み方に合っている。[5][11]

筋トレを組み合わせても、MCT4と成果はそろわない

筋トレとの関係では、中程度に鍛えた男性ランナー23人の無作為化比較試験が参考になる。介入群12人は短い高速走の後に高負荷の筋トレを続けて行い、有酸素トレーニングも組み合わせた。対照群11人は従来の練習を維持した。介入期間は8週間で、介入群では平均の走行距離が42%減っていた。18〜39歳の女性、特に運動経験の少ない人に同じ計画を適用できるかは別に検討する必要がある。[5]

ここで大事なのは、単に練習を追加した試験ではないことだ。介入群では走行距離を減らしながら内容を組み替えている。週の計画全体が変わっているので、普段の練習を残したまま高速走と筋トレだけを足す方法の証拠にはできない。忙しい日の予定に研究を当てはめる際には、増えた種目だけでなく減った練習も見たい。[5]

介入後は短距離側と長距離側の走る成績、走る経済性、動的な筋力に改善があった。一方で、MCT4の量や筋の形態には変化がなかった。走る経済性は、ここでは一定の距離を走る際の酸素消費量で評価された指標であり、筋肉が大きくなったかという問いとは分けて読む必要がある。[5]

筋の形態に変化がなかったから筋トレが無駄だった、という読み方も成り立たない。この試験では動的な筋力が伸びている。反対に、筋力が伸びたから筋肥大も確認された、とも言えない。同じ参加者の同じ期間の結果でも、力、形、輸送たんぱく質は別々に測られ、別々の結果になっている。[5]

もう一つ、人のMCT4が変わらなかった例として、男性18人の無作為化二重盲検プラセボ対照試験がある。参加者は事前のHIIT期間を経て、6週間のHIIT中にβアラニンかプラセボを摂った。これは補給を伴う条件での試験であり、HIITだけの効果と補給の効果を混ぜないことが前提だ。18〜39歳の女性でも同じ結果になるかは、この男性の試験では確かめられていない。[4]

補給群では反復スプリントの合計時間や最良時間に改善がみられ、筋カルノシンや運動後の神経筋機能にも関連する変化があった。しかし、MCT4の量には時間による変化も、群と時間の交互作用も示されなかった。走りの改善を見て、その説明をすべて乳酸輸送体の増加へ集めることはできない。ここでも成績と分子の結果は一対一になっていない。[4]

この併用試験では、改善が見える時期にも違いがあった。長距離走の成績には途中の測定で改善がみられた一方、短い距離の走りと間欠的な走行テストの改善は介入終了後に確認された。同じ計画の効果でも、能力によって変わる時期が異なる。途中の成績だけで計画全体を判断する前に、どのテストをいつ行った結果なのかを確かめたい。[5]

研究に登場する対象は、すでに運動をしている男性ランナーである。運動を始めたばかりの女性が、同じ組み合わせを同じ負荷で行う処方として読むのは適切ではない。ここで日常へ持ち帰れるのは、練習の名称だけで効果を決めず、計画の変更と複数の成果を照らし合わせる視点である。[5]

数字で読む乳酸輸送とトレーニング

4週間:活動的な男性のHIIT試験でMCT1などの増加を調べた期間だ。[11]

各8人:仕事量をそろえ、強度を変えて比較した各群の参加者数である。[11]

23人:高速走と高負荷筋トレの併用を調べた男性ランナーの総数だ。[5]

42%:その併用試験で減らした平均走行距離であり、乳酸の減少率ではない。[5]

6週間:HIITの刺激を除いた後、輸送関連たんぱく質と反復スプリント能力の適応喪失が確認された時点だ。[11]

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宮川涼 Founder

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