背筋の筋トレは握り続けると血圧も変わる?ジムで引く負荷と手の力を分ける

背筋の筋トレでハンドルを握り続けるとき、重りの負荷と手の力はどう考えればよいのか。握る運動と上半身の筋トレの研究から、運動中・運動後・継続後の血圧を分けて読む。握力が強い人の調査も照らし合わせ、ジムで負荷やきつさを記録するときの視点と、医師に確認したい点を整理する。

ジムで背中を鍛えたはずなのに、先に手が疲れた。ハンドルを引くたび、落とさないよう指にも力を込めている。重りの表示は見ていても、握っている間の力まで意識することは少ない。

心筋症患者の握る運動と、健康な若い成人の上半身の運動では、いずれも運動中の血圧上昇が観察されている。[11][13] 心筋症患者の結果を、18〜39歳の健康な女性の反応の予測にそのまま当てはめることはできない。 ただし、それを理由に「背筋の筋トレでは握る力を抜くほど安全」と決めることはできない。背中の種目での引く力と握る力の配分を、そのまま示した結果ではないからだ。

大切なのは、運動している最中の反応、終わった後の変化、続けた後の安静時の変化を混ぜないことだ。握る練習を続けて血圧が下がった研究があっても、ハンドルを握っている最中に血圧が下がるという意味にはならない。[1][5][11] ジムでメニューを考えるときは、重りの数字と手の働き、そして測った時点を分けて眺めたい。

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背中の重りと、握って保つ力は同じ数字ではない

背筋の筋トレでハンドルを引く場面を考える。メニュー表に残るのは重りと回数でも、手はハンドルを保持している。背中を動かすという目的だけで、手の力まで説明し終えたことにはならない。中央線でつり革を握った帰りに、今度はジムのハンドルを握る。手にとっては、勤務先が変わったような時間だ。

研究でいう等尺性運動とは、力を出しながら関節の動きを保つタイプの運動であり、握ったまま力を維持するハンドグリップなどが使われる。一方、動的な筋力運動は、重りを動かす運動として区別されている。[5][10] この区別を知ると、引く種目の重りと、握り続ける課題の強さを同じものとして読まずに済む。

握る運動の強さは、最大随意収縮、つまり自分の意思で出せる最大の力に対する割合で設定されることがある。高血圧で服薬中の男性を対象にした試験では、握る運動は最大の力の30%、動的な筋力運動は最大で持ち上げられる重さの50%で設定されていた。[5] どちらも割合だが、基準となる測り方が異なる。服薬中の男性の設定を、18〜39歳の女性の適切な負荷としてそのまま使うことはできない。

そのため「背中のマシンの重りを軽くしたから、握る力も研究と同じ割合になった」とは読めない。握力計の目盛りとマシンの表示は、別の質問への答えだ。この記事で研究を使う目的は、理想の握り方を数値で処方することではなく、見落としがちな手の課題をメニューの中に見つけることである。

ハンドルを保持する役割は残したまま、何が先にきつくなるのかを言葉にする。「背中を動かすのが大変」と「手を握り続けるのが大変」は、指導者に伝える内容として分けられる。研究の運動条件に照らして相談するためにも、どちらの話かを明確にしたい。

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握る運動中にも血圧の上昇は観察されている

不整脈原性心筋症のある18人、平均年齢43±9歳を調べた研究では、握る運動、腕を曲げて重りを持ち上げる運動、横になって行う自転車運動を比較している。握る運動と腕の運動は最大随意収縮の70%で1分間、自転車運動は呼吸の変化から定めた強度で20分間だった。[11] 心疾患のある患者の循環を調べた臨床研究であり、18〜39歳の健康な女性の背筋トレーニングへ反応の大きさや安全性をそのまま当てはめることはできない。

いずれの運動でも、安静時に比べて収縮期血圧と拡張期血圧、心拍数、大動脈の壁にかかる応力が有意に増えた。収縮期は心臓が血液を送り出すとき、拡張期は心臓が拡張するときの血圧を指す。自転車運動中の拡張期血圧は握る運動中より低く、心拍数は握る運動や腕の運動より高かった。[11]

ここで目を向けたいのは、心拍数の高低と血圧の高低が、運動によって異なる順番で並んだ点である。息が弾みやすい運動だけが循環への反応を起こし、じっと握る運動には何も起こらない、という図にはならなかった。[11] 手だけの運動という見た目から、血圧への関わりまで小さいと決めない方がよい。

ただし、この研究の対象は心筋症のある人であり、弁や大動脈の病変がない人だった。運動の強さも時間も決められている。[11] この結果をそのまま、立川駅前のジムに通う健康な女性の背中の種目に当てはめ、血圧がどれだけ上がるかを予測することはできない。対象と課題を添えて初めて、数字の使い道が見えてくる。

また、大動脈の壁の応力には運動間の差が認められなかった。[11] これは「同じ運動である」という意味ではない。血圧や心拍数では差があっても、別の指標では差がないことがある。運動の負担という言葉を使うとき、何を測った負担なのかまで確かめる必要がある。

この比較では、握る運動と自転車運動の時間も違う。[11] したがって、短い時間で大きな反応があったから効率がよい、長く動いたから負担が大きい、と順位をつけるための表ではない。運動の目的が異なる課題を比較したときには、測定値の差と、運動を選ぶ価値判断を切り離して読む。血圧が上がった量を筋トレの成果と扱う理由もない。

とくに背中のメニューを探している読者にとって、この研究は種目の優勝者を決めるものではない。ハンドグリップは背中を引く運動の代役として試されているわけではなく、循環の反応を比較するための課題である。[11] 自分の目的が背中の筋力なのか、血圧への配慮なのかを先に言葉にすると、指導者や医師に尋ねる内容も整理しやすくなる。

腕を動かす研究も、背中の握り方の正解には直結しない

より若い健康な人を調べた研究もある。女性16人を含む30人、平均年齢26±6歳が、片腕で重りを持ち上げる運動を行った。予測された最大挙上重量の60%で、10回ずつ4セット、1分間に15回のペースにそろえている。運動中の平均動脈圧は安静時より上昇した。[13]

平均動脈圧は、血圧を時間的な平均として捉える指標である。この研究は、拍動ごとの血圧に加え、左右の脳の動脈を流れる血液の速度や呼気の二酸化炭素も測っていた。腕を動かした側に対応する脳の血流速度が、反対側より明確に増すという結果にはならなかった。[13] 体の反応は、手の力だけを切り出せばすべて説明できるものではない。

ここから読めるのは、健康な若い成人の上半身の動的運動でも、運動中の血圧を安静時と同一視できないことだ。[13] 背中の引く種目で、ハンドルの握り方を変えて比較した研究とは区別して扱いたい。腕の運動で見られた上昇を、握り過ぎの証拠として紹介するのは飛躍である。

たとえば、前回より軽い重りなのに手がきつかった日を思い出してみる。そこで直ちに「今日は血圧が高い」と自己判定する必要はない。手のきつさは手のきつさとして伝え、血圧の話は測定の時点や健康状態と併せて医師に確認する。感覚を無視するのでも、感覚を血圧計の代わりにするのでもなく、役割を分けるのである。

研究条件をメニューの形で読むことも役に立つ。重さだけでなく、反復のペースやセットまでそろえて測っている研究なのだから、日常の比較でも「重りが同じだった」の一言で条件をそろえたつもりにならない。[13] 種目と進め方を一緒に残せば、次の相談の材料になる。

この腕の運動の試験には女性も参加しているが、結果を「女性の背筋の握り方」として独立に読み替えることはできない。比較されたのは片腕の動的運動中の左右の脳血流速度などであって、女性だけの背中の種目や握り方の比較ではない。[13] 参加者に自分と似た人が含まれることは参考になる一方、調べた動作まで自分のメニューと一致するとは限らない。

たとえば「今日は軽いから手にも余裕がある」と感じたなら、その感覚をそのまま記録すればよい。「軽いから血圧も変化していない」と補足する必要はない。研究では、最大挙上重量に対する割合をそろえ、血圧も実際に測っている。[13] 感じたことと測ったことを分けた記録なら、後で読み返したときにも、自分の推測を事実として扱わずに済む。

運動の説明を聞く場でも同じである。「この重りで引く」という説明に加え、手で保持する場面が続くのか、途中で重りを戻すのかなど、実際の動作を確認する。研究の条件をそっくり再現するためではなく、自分がどの課題を行っているかを共有するための確認だ。握る力の割合を見た目で決めるのではなく、今の種目で困っている点を具体化するところから始められる。

数字で読む握る運動と血圧

18人:運動中の血圧と大動脈壁の応力を比較した、心筋症のある人の研究対象数。[11]

30人:片腕の動的運動を調べた健康な成人の人数で、女性は16人だった。[13]

30%:服薬中の高血圧男性の試験で、握る運動に使った最大随意収縮に対する強度。[5]

−7±6 mmHg:同じ試験の動的筋力運動後の収縮期血圧の変化。運動中の値ではない。[5]

27人:有酸素運動と握る運動の直後から生活中の血圧を比較した、中年で肥満と高めの血圧がある人の試験対象数。[8]

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宮川涼 Founder

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