産後の内転筋の筋トレはヒップアップになる?脚を閉じる力と測った筋活動を読む

膝の間のクッションを押す運動は、姿勢と測る部位によって読み取れることが変わる。ブリッジやスクワットで測ったお尻の筋活動と、産後女性で測った骨盤底の活動を分けて読む。筋電図の数値が増える意味、測定への信号の混入、種目を選ぶときに医師や指導者へ伝えたい目的まで、研究の対象と条件から整理する。

赤ちゃんが眠ったあと、膝の間のクッションはお尻の運動にもなるのだろうか。床に座って押すと、内ももには力が入る。それでも、お尻にも役立っているのかは分からない。「産後の内転筋の筋トレ」と「ヒップアップ」を同じ動画で見かけると、この感触で正解なのか迷う。

脚を閉じる動作を加えたブリッジで、お尻の筋活動が高くなった研究はある。ただし対象は健康な成人女性であり、測ったのは運動中の電気的な活動である。産後の体形変化を追った結果として読むことはできない。[15]

産後女性を調べた研究では、内ももの運動と骨盤底の活動の関係が検討されている。こちらの主役はお尻の形ではない。目的が違えば、同じ「膝で挟む」動作から受け取る答えも変わる。[13]

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脚を閉じる力と、お尻の活動は別に確かめる

ここでいう股関節の内転は、脚を体の中心へ寄せる動きである。膝の間に挟んだものを押す課題は、内転方向へ力を出す運動として研究されている。筋電図とは、筋肉が働く際の電気的な信号を測る方法だ。動かす向きと、同時に活動する筋肉は同じ話ではない。[13][15]

健康な女性の実験では、脚を閉じる力を加えたブリッジ中に、腹部とお尻の筋肉の活動が通常のブリッジより高くなった。内ももを使う条件で、お尻も活動するという組み合わせは存在する。「内ももだけにしか効かない」と切り離すのも早い。[15]

研究を生活に取り入れる前には、成果として何を確かめたいかを決めておきたい。指導者に相談するなら、床から立つ動作を楽にしたいのか、お尻を使う種目を知りたいのかを言葉にする。同じブリッジでも、目的が決まれば尋ねたい内容が絞れる。研究で比べたのは運動中の筋活動であり、産後の外見の変化や回復の速さは、この実験からは判断できない。[15]

既存記事「女性のヒップアップ筋トレは膝にバンドを巻く?外へ押す力とお尻の働きを読む」には外へ押す運動の論点を譲る。ここでは内側へ力を出すときに何を測っているかに絞る。しゃがむ深さや足首の硬さ、スクワット中の息止めも別の問いであり、挟む強さだけでまとめて判定しない。

既存記事「ヒップアップのうつ伏せ筋トレは足首も伸ばす?膝をそろえて比べたい筋活動」は足首の条件、「ヒップアップの横向き脚上げはつま先を下げる?脚の回転とお尻の筋活動を読む」は脚の回転、「ヒップアップの脚を開く器具は前傾する?座る角度とお尻の筋活動を研究で読む」は座る姿勢を扱う。それらの問いには踏み込まず、内転の追加と産後女性の骨盤底測定を区別する。

産後という言葉が付くと、家で手軽にできる種目を早く見つけたくなる。しかし、候補を探すことと、その日に実施してよいと判断することは別である。個別の運動再開の可否は医師に確認し、そのうえで「お尻を鍛えたいのか」「骨盤底の使い方を相談したいのか」を分けて伝えたい。

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ブリッジに内転を加えた実験は、何を比べたのか

腰痛の既往がない健康な成人女性14人を対象にした比較実験では、通常のブリッジと、股関節の内転を加えたブリッジを行った。腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、大殿筋の筋電図を記録し、同じ種目に内転を加える違いを調べている。大殿筋は、この研究で測定されたお尻の筋肉である。[15]

内転を加えた条件では、測定したすべての筋肉の活動が有意に増加した。この結果から言えるのは、ブリッジという課題では、脚を閉じる力の追加がお尻だけでなく腹部の活動にも関わったということだ。内ももに意識を向けたつもりでも、測定上の変化は内ももの感触だけに収まらない。[15]

この比較は、お尻と腹部のどちらかだけが働くという二者択一でもない。記録した腹部の筋肉と大殿筋は、内転を加えた条件でいずれも活動が高かった。お尻に意識を集めたいから腹部は働いてはいけない、と考える読み方とは合わない。狙う部位を決めることと、それ以外の活動をゼロにすることを同じ目標にしない点も、この実験から考えられる。[15]

ここで大切なのは比較の相手である。内転を加えたブリッジと比べたのは、内転を加えないブリッジだった。クッションを挟む運動なら何でも同じ結果になるという比較ではない。座って膝を押す場面へ、そのまま結果を移すのは飛躍になる。[15]

また、この実験は産後女性を対象とした回復プログラムの試験ではない。健康な成人女性の運動条件の比較として、種目を相談するときの材料になる。産後の読者に役立つのは、実験の動きを自宅で完全に再現しようとすることより、「ブリッジに内転を加える目的は何か」と質問を具体化できる点だ。[15]

床でお尻を持ち上げる姿だけを見れば似ていても、内転を加えたかどうかで測った活動は変わった。動画の種目名が同じでも、研究の条件まで同じとは限らない。相談時には「ブリッジをしている」だけで終えず、何を挟み、どちらへ押しているかまで伝えると、動作の説明が明確になる。[15]

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スクワットでは、お尻と太ももの前を分けて読む

健康で座りがちな生活を送る女性15人を対象にした実験は、通常のスクワットと、内転または外転方向へ力を加えたスクワットを比較した。負荷は体重の25%で、中殿筋と膝周辺の筋肉の電気的な活動を記録している。これは膝の痛みがない女性での条件比較だった。[19]

中殿筋の活動の報告値は、通常の条件で0.33、内転を加えた条件で0.47、外転を加えた条件で0.59だった。内転を加えた条件では、太ももの前の内側にある内側広筋斜走部の活動も高かった。脚を閉じる力は、スクワットの中で複数の筋肉の働き方と関係していた。[19]

この比較を読むときは、内転だけでなく外転の条件も見ておきたい。中殿筋の報告値は外転条件で最も高く、内転条件では太ももの前の内側も活動した。どこへ力を加え、どの部位を狙うかをセットで考える材料になる。膝で挟む道具を買う前に、今の種目を選んだ目的を指導者に確認するほうが、相談の焦点は明確になる。[19]

さらに、座りがちな女性28人、平均年齢44.5歳の実験では、スクワット、膝を伸ばす運動、脚を伸ばして上げる運動を、内転の有無で比較した。ここで測ったのは大腿四頭筋、つまり太ももの前の筋肉である。種目によって各部位の活動が異なり、脚上げでは大腿直筋の活動が高かった。中年女性を中心とする結果なので、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには年齢層の違いを考える必要がある。[9]

同じ内転という言葉があっても、測った筋肉が違えば答えの用途が変わる。太ももの前を測った結果は、お尻の活動を直接測った結果とは区別する必要がある。検索結果で「女性の下半身に有効」と短く紹介されていても、産後のお尻という自分の問いに合うかは、対象と測定部位を見て判断したい。[9][19]

産後女性の研究が見ていたのは骨盤底だった

最近経腟分娩を経験した産後女性21人の実験では、骨盤底の筋活動が測定された。骨盤底は、この研究で内転運動との連動を調べた部位であり、お尻の筋肉とは測定対象が異なる。比較したのは、骨盤底を意識して収縮させる運動、腹部の運動、内転の運動、それらを組み合わせた課題である。[13]

内転の課題には、ボールを挟む運動と、自分で抵抗を加えて脚を閉じる運動があった。各課題は5秒間で、骨盤底の電気的な活動を記録した。腹部・内転筋・骨盤底を組み合わせた課題で、ほかの課題より活動が最も高くなったと報告されている。[13]

内転の課題は、骨盤底だけを収縮させる課題よりも高い活動を示した。研究者は腹部や内転の運動を、骨盤底の運動に加える補助として位置づけている。ここでの「補助」は、骨盤底を意識する練習の代わりに、ひたすら膝を挟めばよいという意味にはならない。[13]

また、組み合わせた課題では、腹部、内転筋、骨盤底の収縮を一緒に行っている。そこで最も高い活動が得られたことを、内転だけの手柄として説明することはできない。複数の要素を合わせた課題の結果は、その組み合わせの結果として読む。自分が膝でクッションを押す動作だけをしている場合と、研究で比較した複合課題を同一視しないことが大切である。[13]

家庭での相談に置き換えるなら、「ボールを挟むだけ」「腹部にも力を入れる」「骨盤底の収縮を意識する」を区別して伝えたい。産後女性の実験にはこれらを組み合わせた課題があるため、見た目が似た動作でも説明を省くと別の課題になってしまう。[13] 自分で組み合わせを増やす前に、医師や指導者に今の動作を説明し、何を加える必要があるか確認する。

自宅で内ももに力が入ったという感触からは、実験で記録された骨盤底の活動の大きさは分からない。気になる症状の相談と、運動時の手応えの報告は分けておくとよい。尿漏れや痛みなどの悩みがある場合は医師に伝え、自己判断で挟む力を増やす理由にはしない。

数字で読む内転と筋活動

14人:内転を加えたブリッジと通常のブリッジを比較した健康な成人女性の人数である。[15]

15人:内転・外転を加えたスクワットを比較した、健康で座りがちな女性の人数である。[19]

21人:骨盤底の活動を調べた、最近経腟分娩を経験した産後女性の人数である。[13]

5秒:産後女性の実験で、各課題の筋活動を測定した時間であり、家庭での推奨時間ではない。[13]

20人:骨盤底の筋電図への信号の混入を検討した、出産経験がなく尿禁制が保たれた女性の人数である。[18]

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宮川涼 Founder

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