
上がる角度が増えても、力が増えたとは限らない
可動域とは、関節が動ける範囲のことである。脚が前より高く上がれば、変化としてはうれしい。しかし、その変化をすべて「股関節の筋力がついた」と呼ぶと、別々に測るべき項目をひとつにまとめてしまう。柔軟性、最大の力、筋活動を分けて測った試験が、この区別を具体的に示している。[19]
健康で運動習慣のある若い成人を対象とした試験には、女性9人と男性8人が参加した。太ももの前後の筋に各180秒の静的ストレッチを行い、その2時間後に通常の準備運動を実施した条件を、活動的な対照条件と比較している。これはストレッチをして直ちに脚上げをする場面とは、時間の条件が異なる。男女を合わせた結果であり、18〜39歳の女性だけの効果として当てはめるには慎重な判断が必要だ。[19]
準備運動後の左股関節屈曲可動域は115.4°で、ストレッチ前の108.9°より大きく、効果量は0.28だった。右側も112.4°から117.2°となり、効果量は0.22だった。研究では小さい変化として扱われている。一方、膝を曲げ伸ばしする最大の等尺性筋力、筋電図、ジャンプの高さには有意な変化がなかった。[19]
ここでいう等尺性とは、関節を動かさずに力を出す条件である。脚が動ける角度には変化があったが、測った最大筋力の有意な増加はなかった。同じ日に撮った脚上げの写真で足先が高くなっても、それだけでは筋力の変化を読み取れない。写真は角度の記録にはなるが、力を測る機械の代わりまでは引き受けない。[19]
別の無作為化試験では、身体活動のある男性22人を、神経を滑らせる運動と静的ストレッチに分けて比較した。膝を伸ばして脚を上げる検査の成績は両群で増えたが、受動的に膝を伸ばす可動域と終末域の硬さの変化は同じではなかった。関節の位置を感じ取る能力には有意な変化がなかった。18〜39歳の女性でも同じ変化が起こるかは、この男性を対象とした試験だけでは判断できない。[5]
この試験は、伸ばしやすさの変化を「筋肉が柔らかくなった」のひと言だけで説明しない理由になる。実際、神経を滑らせる運動の群では、伸張性の増加と受動的な硬さの増加がともに見られた。動ける範囲が広がることと、測定した硬さが下がることは、この試験では別の方向へ変化した。[5]
したがって、太もも裏の張りがある人に、自宅で神経を強く伸ばす操作を勧めるための研究としては使わない。ここで得たいのは、脚上げの到達点に関わる条件を、筋力だけに絞らない読み方だ。新しい操作を次々に足すより、まず普段の動きを同じ条件で振り返るところから始めたい。
数値を見るときには、平均値の変化と自分の予定も混ぜないようにしたい。左股関節で示された115.4°という値は、この参加者と手順で得られた結果である。自分がそこまで上げる目標を立てたり、同じストレッチ時間を取り入れたりする根拠にはならない。とくに、この試験はストレッチのあとに時間を空け、さらに準備運動を行っている。単独の脚上げの成果として読み替えると、介入の順序が消えてしまう。[19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
柔軟性を求める日と、力を育てる日を分けて考える
「硬いから筋トレをしてはいけない」「筋トレをすれば動ける角度は狭くなる」という二択も、単純すぎる。未訓練の成人を調べた予備的な試験では、動ける範囲を使った筋力トレーニングと静的ストレッチを比較し、ハムストリングスの柔軟性と股関節の屈曲・伸展の改善に、両群間の差は認められなかった。対象は未訓練の成人であり、18〜39歳の女性に絞った効果としてそのまま使うことはできない。[9]
試験では25人が筋力トレーニング群か静的ストレッチ群に無作為に割り付けられ、別に活動していない12人を対照群とした。介入は5週間で、同じ筋・関節を、似た動きと範囲で伸ばすか鍛えるかを比べている。柔軟性に関する先の項目は、両介入群が対照群より改善した。[9]
ただし、筋力まで同じ結果ではなかった。膝を伸ばす最大トルクは筋力トレーニング群が対照群を上回ったが、膝を曲げる最大トルクには群間差がなかった。「筋トレとストレッチは同じ」という結論ではなく、どの項目を変えたいかによって結果を読み分ける試験である。[9]
対照群は無作為割り付けされた介入群とは選び方が異なり、研究者も予備的な結果としている。この試験から、膝を伸ばした脚上げだけを繰り返せば柔軟性と筋力が十分に育つ、とは決められない。研究で組まれた運動全体の結果を、ひとつのポーズの効果に置き換えないことが大切だ。[9]
自宅の記録も、目的に合わせて分けておくと読み返しやすい。動きの確認なら「どこまで太ももを近づけられたか」、体操の選択なら「どの形で落ち着いて動かせたか」を書く。筋力の変化を確認したいなら、その評価方法も指導者と相談する。研究が別々の項目を測っているのと同じく、記録にも別々の欄を用意する考え方である。[9][19]
膝を伸ばすことだけを進歩の物差しにしなければ、今日は曲げた形を選ぶ、という判断も説明しやすい。疲れた夜に見本の完成度を追いかけるより、その日の目的を書いたメモを先に読む。運動を続けるための工夫は、自分の動きを採点する言葉を変えるところにも置ける。

よくある誤解
「膝を伸ばすほど股関節がよくなる」という思い込みは、関節角度の研究を、長期的な健康効果の順位表として読んでしまっている。前ももの実験は、男性ボディビルダーの最大努力での膝伸ばしを調べたもので、膝を曲げた脚上げと伸ばした脚上げの健康効果を比べたものではない。測った条件を、そのまま誰もが目指す形にしない。[17]
「太もも裏が張るなら、股関節の筋力が弱い」とも決められない。ハムストリングスのレビューでは、関節の角度、筋のつくり、伸ばされる抵抗などを分けて扱っている。張りの感覚ひとつから弱い筋肉を特定するのではなく、どの動きの途中で気になったかを説明する方が、相談の材料になる。[2]
「脚が高く上がったから、今日の筋トレは成功した」という評価にも注意したい。若い成人の試験では、股関節屈曲の可動域が小さく増えても、最大筋力やジャンプの高さは有意に変わらなかった。角度が変わった事実を喜ぶことと、筋力が増えたと判定することは分けられる。測定結果に名前を正しく付けるだけで、体操への期待も具体的になる。[19]
今日からできること
- 膝を曲げた形と伸ばした形を比べる際は、太ももの向きや支える位置も記録する。角度で筋の力や伸張抵抗が変わるというレビューを、比較条件をそろえる手がかりにする。[2]
- 前ももの張りだけで「効いた」と採点せず、どの姿勢で何をしたかを残す。9人の実験でも、超音波で測った硬さと筋電図は同じ結果ではなかった。[17]
- 脚上げの到達点と、力の変化を別の欄にする。女性9人、男性8人の試験では、可動域の増加に最大筋力の有意な変化は伴わなかった。[19]
- 体操の目的を「動ける範囲の確認」か「力を育てること」か言葉にする。5週間の試験でも、柔軟性と筋力の結果は項目ごとに異なった。[9]
- 張りを変えようとして新しい操作を自己流で重ねない。22人の比較試験は、方法によって可動域と硬さの変化が異なることを示している。痛みやしびれ、日常動作の支障がある場合は、体操で判断せず医師に相談する。[5]

オンザショア立川店で、通う条件を選ぶ
脚上げの形だけを目標にせず、動ける範囲と力を分けて振り返る。そのための運動を生活のどこに置くかも考えたい。オンザショア立川店には、常温のヨガ、ピラティス、パーソナルトレーニングなどがあり、溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガも行っている。ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。研究で測った角度や筋力を、この店のレッスンの成果として示すことはできない。ここでは運動を続ける場所として、自分が通える時間帯や参加する種目を選ぶための情報を確認したい。
参加条件は、種目を選ぶ段階で確認する。妊娠中は溶岩ホットヨガには参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。営業時間は全曜日8:00〜23:30、年中無休。JR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。
通う時間を考えたら、料金と体験の予約で条件を確かめられる。ヨガの体験レッスンは税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。朝か仕事のあとか、自分の予定に組み込める時間を選ぶ入口として使いたい。
参考文献
[2] Hamstrings force-length relationships and their implications for angle-specific joint torques: a narrative review — Kellis E, Blazevich AJ., 2022, BMC sports science, medicine & rehabilitation. DOI: 10.1186/s13102-022-00555-6
[5] Immediate effects of neurodynamic nerve gliding versus static stretching on hamstring neuromechanical properties — Satkunskiene D, Khair RM, Muanjai P, Mickevicius M, Kamandulis S., 2020, European journal of applied physiology. DOI: 10.1007/s00421-020-04422-5
[9] Resistance training vs. static stretching: effects on flexibility and strength — Morton SK, Whitehead JR, Brinkert RH, Caine DJ., 2011, Journal of strength and conditioning research. DOI: 10.1519/jsc.0b013e31821624aa
[17] Effects of knee and hip flexion angle on region-specific and longitudinal compartmental muscle stiffness of the rectus femoris using shear wave elastography in male bodybuilders — Mitsuya H, Nakazato K, Okada T., 2025, European journal of applied physiology. DOI: 10.1007/s00421-025-05807-0
[19] The Effects of Static Stretching 2-Hours Prior to a Traditional Warm-Up on Performance — Shea A, Bahrami M, Sardroodian M, Behm DG., 2024, Journal of sports science & medicine. DOI: 10.52082/jssm.2024.663
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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