
同じ抵抗でも、器具と唇は交換できない
健康な11人の実験のうち6人は、口すぼめ呼吸と器具による呼気抵抗の比較にも参加した。両者は同程度に吐く抵抗を高め、吐くときの胸郭と腹筋の参加を増やした。しかし、呼吸の深さや、吐き終わった時点の肺の空気量への影響は同じでなかった。[7]
口すぼめ呼吸では、ひと息の量が増えたのに対し、器具による抵抗ではその変化がなかった。また、吐き終わりの肺気量は口すぼめ呼吸では変わらず、器具では安静時に0.20 L、運動中に0.24 L増えた。抵抗が同程度でも、呼吸全体の反応には違いがあった。[7]
つまり、器具で腹筋の反応が出たという結果から、道具を使わず強く唇をすぼめる方法を勧めることはできない。反対に、唇で変化した結果を、器具ならもっと大きく再現できるとも決められない。研究者が口すぼめ呼吸と呼気抵抗負荷を区別した理由は、筋の参加だけでなく、呼吸パターンにも違いがあったためだ。[7]
練習の場面では、息の音を抵抗の計器にしないことが大切になる。隣のマットから大きな音が聞こえても、その人の最大呼気圧や肺気量は音から測れない。音量の勝負を始めると、研究で測っていたものから離れてしまう。実験の数値を、自分に課す吐き方のノルマへ変えないでおきたい。[1][7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
患者研究が答えるのは、換気と運動耐容能の問い
ここからは、健康な人の体幹筋の課題比較とは別に、病気のある人の換気を扱う。患者研究の結果を、ピラティス中の腹横筋活動を裏づける証拠としては使わない。口すぼめ呼吸には、慢性閉塞性肺疾患の人を対象とした研究もある。慢性閉塞性肺疾患は英字でCOPDと表記される。呼吸時の筋の参加を調べた研究では、口すぼめ呼吸によって吐くときの腹筋の参加が増え、呼吸回数が減り、動脈血酸素飽和度が改善した。横隔膜を挟んだ圧には変化がなかった。対象が呼吸器疾患の患者であるため、18〜39歳の健康な女性の呼吸や腹筋活動に、この改善をそのまま当てはめることはできない。[4]
ただし、この結果を「腹筋を強く使うほど横隔膜の力も強くなる」と読み替えることはできない。筋の参加する組み合わせが変わったという話と、ある筋の力が一律に増したという話は異なる。この研究は、呼吸のタイミングと胸壁の筋の使われ方を合わせて、換気が改善する仕組みを検討している。[4]
また、40〜75歳の安定した慢性閉塞性肺疾患の患者40人を対象にした無作為化クロスオーバー研究では、同じ参加者が口すぼめ呼吸と対照の呼吸を、順序を無作為にして行った。高強度の自転車運動で持久時間が25%を超えて延びた9人を、改善群として分析している。年齢と疾患の条件が異なるため、18〜39歳の健康な女性のピラティスで持久時間が延びるかは、この試験では判断できない。[17]
その9人の持久時間は、対照の呼吸の6.42±2.36分に対し、口すぼめ呼吸では10.51±3.83分だった。しかし、これは40人全体の平均的な伸びではない。改善群は呼気のピーク流量が低いなどの特徴を持ち、改善しなかった群では運動途中に胸と腹の動きの同調が崩れる反応も見られた。[17]
この差を読むと、同じ病気の人にさえ反応の個人差があったことが分かる。健康な女性のピラティス初心者に、「この吐き方なら運動を長く続けられる」と約束する材料にはならない。腹筋が参加する仕組みを知る研究と、その人に合う呼吸法を決める研究では、答えようとしている問いが違う。[4][17]
医療のために呼吸法を教わっている人は、スタジオの合図に合わせて自己判断で方法を変えるのではなく、担当の医師に確認する対象である。病気のある人に起きた改善を、健康な人が追いかける目標にする必要はない。運動中の息苦しさが気になる場合も、腹筋の使い方の巧拙だけで片づけず、医師に相談する。
持久時間の数字には、もうひとつ読み方がある。改善群は、口すぼめ呼吸によって持久時間が25%を超えて延びた人を選んだ集団である。その集団の平均の伸びを、これから同じ方法を始める人の予測値にするのは飛躍になる。結果が出た人の特徴を探す分析と、参加者全員への平均効果を示すことを分けて読む必要がある。[17]
研究の場では、運動途中の同じ時点で比較した呼吸と、運動を終える時点で比較した呼吸も区別されていた。改善群では運動途中に吸える空気の量や酸素飽和度が改善したが、運動の終点では、分析した群の呼吸パターンに変化がなかった。どの場面の反応かを添えることで、単純な成功談にせず結果を受け取れる。[17]
家のマットでは、こうした医療の評価を自分で再現しようとしなくてよい。講師に伝えるなら、息の形を変えた場面と、動作を続けた場面を分けて言葉にする。そのほうが、持久時間だけでは呼吸の反応を代表できなかった試験の読み方にも沿う。合うかどうかを、周りと同じ音が出たかだけで判定しないための視点だ。[17]

よくある誤解
「唇を狭めれば狭めるほど腹横筋が働く」という理解は、実験の条件を省いている。腹横筋の厚さが増えた口すぼめ型の条件は、器具による5%の呼気負荷との組み合わせだった。口の狭さだけを段階的に増やして、最大が最善だと決めた研究ではない。[1]
「厚く映ったなら腹筋が育った」という理解も、測定の時間軸を飛ばしている。超音波研究で比較したのは呼吸課題中の筋厚の変化であり、立位・座位の研究が比べたのは課題中の筋活動だ。長期の筋力向上や、お腹の見た目の変化をそのまま表す指標として扱わないほうがよい。[1][3]
「呼吸を深くすれば運動中の換気量も必ず増える」とも限らない。健康な人の実験では、口すぼめ呼吸によるひと息の量の増加が、呼吸回数の減少を補えず、運動中の換気量は減った。深さ、回数、吐く時間はそれぞれ分けて読む必要がある。長く吐けた日を、そのまま呼吸機能が伸びた日と呼ばなくてよい。[7]
そして「医療で役立つ呼吸法なら誰にも同じように役立つ」という見方は、対象の条件を落としてしまう。慢性閉塞性肺疾患の比較試験でも、運動の持久時間が延びた人とそうでない人がいた。呼吸法の名前に安心を預けるより、誰に何が起きたかまで確かめるほうが、自分の練習に近づけやすい。[17]
今日からできること
- 呼吸の合図を聞いたら、「唇の形を変える合図か、吐く力を変える合図か」を講師に確かめる。健康な男性20人の研究でも、口の形と器具の負荷は別の条件として設定されていた。[1]
- 自宅練習の記録には、立位か座位かを添える。健康な33人の実験では、筋によってどちらの姿勢で活動が大きいかが違った。姿勢が違う日の感覚を、呼吸だけの差にしないためである。[3]
- 5%や15%という値を、自分の口を閉じる強さの目安にしない。研究の数値は最大呼気圧に対して器具で設定した負荷であり、唇の穴の寸法でも息の音量でもない。[1]
- 呼吸を確かめるときは、長く吐けたかだけでなく、安静時か運動中かも言葉に残す。健康な11人の実験ではその両方を調べ、運動中には換気量の減少も認めた。呼吸の深さだけで良し悪しを決めない観察に使いたい。[7]
- お腹の感覚を説明するときは、「吐く間に働く感じがした」と「続けて筋力が変わった」を分ける。筋厚を測った20人の研究は前者に関わる課題中の比較であり、後者の達成を判定する検査ではない。[1]

オンザショア立川店で、呼吸を確かめる時間を予定に置く
呼吸の合図を確かめるなら、まず参加する種目を決め、そのクラスで何を意識する合図なのかを質問したい。オンザショア立川店は、溶岩プレートを敷いた溶岩ホットヨガスタジオであり、ピラティスや常温のヨガ、パーソナルトレーニングも扱っている。ヨガだけで25種類以上のレッスンがあり、呼吸という共通の言葉でも、予約する種目を確かめておくと質問を具体的にしやすい。
参加条件も先に確認する。妊娠中は溶岩ホットヨガに参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。営業時間は全曜日8:00〜23:30、年中無休だ。所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F、JR立川駅北口から徒歩1分である。
種目や料金は店のトップと料金ページで確認できる。ヨガの体験レッスンは税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。ヨガを体験する場合は予約ページへ。ピラティスの呼吸への疑問とヨガの体験案内は分け、受けたい種目に沿って予定を立てたい。通える時間帯と参加条件を照らし合わせれば、呼吸の疑問を持って訪ねる予定も具体的になる。
参考文献
- Effects of mouthpiece shape and expiratory threshold loading on contraction of the lateral abdominal muscles: A cross-sectional study — Haruyama K, Furiya S, Tsuzura T, Hirano S, Yamaha Y, Kameda Y, Takino Y, Masubuchi K., 2022, Journal of bodywork and movement therapies. DOI: 10.1016/j.jbmt.2021.09.024
- The influences of position and forced respiratory maneuvers on spinal stability muscles — Park JW, Kweon M, Hong S., 2015, Journal of physical therapy science. DOI: 10.1589/jpts.27.491
- The pattern of respiratory muscle recruitment during pursed-lip breathing — Breslin EH., 1992, Chest. DOI: 10.1378/chest.101.1.75
- Effects of pursed-lips breathing and expiratory resistive loading in healthy subjects — Spahija JA, Grassino A., 1996, Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985). DOI: 10.1152/jappl.1996.80.5.1772
- Pursed lip breathing improves exercise tolerance in COPD: a randomized crossover study — Cabral LF, D’Elia Tda C, Marins Dde S, Zin WA, Guimarães FS., 2015, European journal of physical and rehabilitation medicine. DOI: なし
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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