心肺機能の高強度練習は全力走も測って決める?有酸素速度との差から負荷を読む

心肺機能を鍛える高強度の走りは、最大有酸素速度だけで負担をそろえられるのか。全力走との差である無酸素速度予備量を手掛かりに、カヤックやボート、サッカーの研究を読む。平均の改善と個人差を分け、予備量が減っても成績が伸びる理由や、競技者の方法を日常へ持ち込む際の考え方を整理する。

公園で短い走りを繰り返すと、隣の友人はまだ余裕がありそうだ。こちらは休憩の合図が待ち遠しい。高強度の運動で「みんな同じ速さ」は分かりやすいが、研究では、有酸素能力を基準にそろえた速さでも、全力で出せる速さとの関係が人によって違う点が問題にされている。[11]

答えの芯は、全力走も測ることで負荷設定に使える情報は増える、ということだ。最大有酸素速度と最大スプリント速度の差を「無酸素速度予備量」と呼ぶ。この差のどこまで使って走るかを考える方法がある。ただし、差が大きいほど心肺機能が高いという意味でも、この方法が常に最良という意味でもない。[11][3][7]

既存記事「HIITの負荷は最大出力から決める?最大酸素量と何%の基準を研究で読み分ける」には、強度を示す基準全般の話を譲る。ここでは、有酸素側の速さが似ていても、全力走の速さが違う人に同じ練習を割り当ててよいか、という問いに絞る。

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有酸素の上限と全力走の間にも幅がある

最大有酸素速度とは、最大酸素摂取量に対応する走行速度を指す。最大酸素摂取量は運動中に取り込んで使える酸素量の最大値であり、速度そのものではない。一方、最大スプリント速度は短い全力走で出す速さである。無酸素速度予備量は、この全力側の速さから最大有酸素速度を引いて求める。[11]

英語ではこの速度差をASRと略す。自転車やボートのように出力を使う場合には、最大有酸素出力と最大の瞬発的な出力の差を、無酸素出力予備量として扱う。速度の差と出力の差は同じ数値ではないが、有酸素側の基準に全力側の上限を加えて個人の特徴を見る、という発想は共通している。[11]

ここでいう「予備量」は、まだ何分走れるかを示す残り時間ではない。測った速さの間隔である。研究のレビューは、最大有酸素速度を超える運動では、その速度の何%かだけでなく、予備量のどれほどを使う速さなのかが重要になりうると論じている。無酸素という名前から、酸素を使う働きと切り離した別のタンクを想像するより、負荷を位置づける物差しと捉える方がこの定義に沿う。[11]

同じ最大有酸素速度を持つ人でも、全力走が速い人と、それほど速くない人では、両者の間隔が異なる。最大有酸素速度を同じ割合だけ超える走りを指定すると、予備量のうち使う割合は、間隔が狭い人の方が大きくなる。これは、差を使う定義から分かる関係である。横に並んで同じペースを守ることと、個人の上限に対して同じ位置で走ることは一致しない。[11]

駅まで友人と並んで走れたかどうかを、心肺の検査に見立てる必要はない。競技の現場でさえ、有酸素側と全力側の組み合わせを測って選手の特徴を見ようとしている。走る速さの差を、そのまま努力の差へ翻訳しないためにも、この区別には意味がある。[11]

差を使う指標では、測定値の役割も整理しやすい。有酸素側の速度は一方の基準点であり、全力側の速度はもう一方の基準点になる。片方だけを伸ばす話と、両方を使って今日の負荷を決める話を混ぜないことが重要だ。レビューが提案する選手の特徴の把握は、練習の強さだけでなく、短い反復、長い反復、繰り返すスプリントなどの形式や、練習間の回復を考える入口にも位置づけられている。[11]

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同じ割合でも何に足すかで指定が変わる

男子大学サッカー選手を対象にした無作為化比較試験は、負荷の決め方を具体的に比べている。18〜39歳の一般女性へ同じ負荷設定をそのまま当てはめるには、競技経験と性別の違いを考慮する必要がある。参加者は競技経験のある30人で、無酸素速度予備量を使う高強度インターバル、有酸素速度だけを基準にする高強度インターバル、負荷を対応させたスプリントインターバルに割り付けられた。[1]

予備量を使う群の指定は「最大有酸素速度に、予備量の30%を足す」である。対して、有酸素速度を基準にする群は最大有酸素速度の130%だった。どちらも30という数字を含むが、足している対象が違う。前者は有酸素側から全力側までの個人の幅を使い、後者は有酸素側の速度を基準に上乗せする。[1]

この違いは、運動の案内で「何%で行う」とだけ聞いた場面を考えると分かりやすい。割合の後ろに付く名詞を落とすと、全く別の指定が同じものに見える。予備量の割合なのか、有酸素速度の割合なのかを確認して初めて、計算の意味が定まる。研究でも両者は別の処方として比較されている。[1][11]

サッカーの試験では30秒の走行を繰り返す形式が使われた。ここで読者が持ち帰るべきなのは、その秒数で走ればよいという指示ではない。走る時間をそろえても、速度をどう決めたかという別の条件が残る、という読み方である。同じ「短いきつい走り」でも、方法を比べるには負荷設定まで見る必要がある。[1]

さらに、高強度インターバルトレーニングを表すHIITという言葉にも、統一された定義がない。専門家による論考では、競技力を扱う文脈と健康づくりの文脈で強度の捉え方を区別し、スプリントインターバルは最大近くから全力の努力を繰り返す方式として整理している。名前が同じ運動を探すだけでは、中身がそろわない。[2]

自分が参加する運動の説明を読むときも、HIITという見出しだけで難しさを判断せず、何を繰り返し、どのような休みを挟むのかを確認する材料になる。インターバル運動の基本は、比較的強い運動と、軽い運動または休息を交互に行うことだ。全ての参加者に全力を求めることだけが、その定義ではない。[2]

全力側の測定は、負荷設定のうち速度の幅を捉える手続きである。強い運動の時間、回復の挟み方、何を目的に行うかを残したまま、速度の個人差に対応する情報が加わるのである。専門家の論考も、持久系競技者に最適なHIITの具体的処方や強度配分には不明な点があるとしている。精密な名前が付いた方法にも、検討すべき条件は残る。[2][11]

カヤックでは伸び方のばらつきも調べている

高度に訓練されたスプリントカヤック選手24人を無作為に分けた試験では、4週間の練習を比較した。予備量を使う群、有酸素速度を基準にする群、従来の持久的なパドリングを行う対照群が設けられた。パドルをこぐ競技で同じ発想を検証したものだ。18〜39歳の一般女性のランニングへ移すには、競技経験に加えて運動様式の違いも検証する必要がある。[3]

予備量を使う群は最大有酸素速度に予備量の20%を上乗せする強度で60秒の反復を行い、有酸素速度を使う群は最大有酸素速度で2分間の反復を行った。この比較では、速度の決め方と同時に反復時間や組み方も異なる。結果に差があっても、予備量という計算だけの効果として切り出すことはできない。[3]

練習前と比べた最高酸素摂取量の変化は、予備量を使う群で6.9%、有酸素速度を使う群で4.8%の増加だった。最大有酸素速度の変化も、それぞれ7.2%、4.8%の増加だった。どちらにも改善があり、単に一方は効き、他方は効かなかったという結果ではない。[3]

競技のタイムでは、予備量を使う群で500mが1.9%、1,000mが1.5%短縮した。ここでの数字は、訓練されたカヤック選手がその期間に示した変化である。一般の大人のランニングや、スタジオの運動で同じ割合だけ持久力が伸びると読み替えることはできない。[3]

この研究のもう一つの焦点は、選手ごとの変化の散らばりだった。平均値の上昇と、選手ごとの変化の分布は別の情報である。研究では、変化率のばらつきを平均との関係で示す変動係数を用い、予備量を使う群で小さい値を報告した。平均の改善と、改善のそろい方を別々に評価している点が大切だ。[3]

各群8人という規模にも注目したい。変動係数は、変化の散らばりを平均値との関係で表すため、平均の変化量と組み合わせて読む指標である。競技者を少人数ずつ割り付けた結果を、日常の運動で達成すべき数値へ置き換えず、比較された負荷と測定項目を確認するために使う。[3]

カヤックの比較では、通常の持久練習を続けた対照群も置かれていた。異なるインターバル同士を比べる視点と、従来の練習と比べる視点が同じ試験に含まれている。改善率の数字を読む際は、練習前からの変化なのか、別の群との差なのかを区別したい。ここに示した酸素摂取量の増加率は、それぞれの群の練習前に対する変化である。[3]

数字で読む全力側を含めた負荷設定

30人:男子大学サッカー選手を、異なる負荷設定の群へ無作為に割り付けた試験。[1]

30%:サッカーの予備量群では、最大有酸素速度に足す速度差の割合。[1]

24人・4週間:スプリントカヤックの比較試験の対象と期間。[3]

6.9%と4.8%:カヤックの両インターバル群で、練習前と比べた最高酸素摂取量の増加。[3]

25.1%減:カヤックの予備量群で、成績の改善と同時に起きた予備量の縮小。[3]

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